12月17日(火)葵トリオ
~Pf:秋元孝介/Vn:小川響子/Vc:伊東裕~
東京オペラシティリサイタルシリーズ B→Cビートゥーシー[267]
東京オペラシティリサイタルホール
【曲目】
1.シュニトケ/ピアノ三重奏曲(1985/92)
2.細川俊夫/メモリー ─ 尹伊桑の追憶に(1996)
3.山本裕之/彼方と此方(2001)
4.藤倉大/nui(縫い)(2022)
5.藤倉大/nui 2(縫い2)(2024、葵トリオ委嘱作品、世界初演)
6.バッハ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021
7.ヴァインベルク/ピアノ三重奏曲 Op.24(1945)
10月の紀尾井ホールでのコンサートを聴いて、これはオペラシティのB→Cも聴かずにはいられないと思った葵トリオ。チケットは既に完売だったが、当日券情報を頼りに当日の朝にチケットを予約出来た。
バッハ(B)とコンテンポラリー(C)を入れればプログラミングは出演者の自由というこのリサイタルシリーズでは、意欲的なプログラムで臨む演奏者が多く、葵トリオも挑戦的なプログラムを組んで来た。そしてどの曲でも、それぞれの音楽の特徴を見事に捉え、完璧と云える演奏でこのスーパートリオの底知れぬ能力と可能性を見せつけた。
シュニトケの音楽は多くが人を食ったような、斜に構えたところがあるが、このピアノ・トリオは終始シリアスな緊迫感に支配された音楽。葵トリオはこれに真正面から対峙し、音楽からただならぬ深刻で不穏な空気と痛みを引き出した。続く3人の邦人作品でも3者三様の音楽を聴かせた。細川作品からは凍てつく沈黙の大地に佇む孤独を、山本裕之の「彼方と此方」では、目まぐるしい動きから押さえることのできない疼きや衝動を、そして藤倉大の委嘱初演を含む2作品からは、柔らかなテクスチャと淡い色彩や香りが立ち昇るのを感じた。どの作品でも音がピュアで研ぎ澄まされ、作品それぞれが持つ空気感が鮮やかに表現されている。葵トリオの作品の本質を捉える感性の鋭さ、得られたイメージを明確な音で表現する能力に感嘆せざるを得ない刺激的な前半だった。
そして後半はバッハから。通奏低音にピアノを使うのは珍しいが、モダン楽器によるソナタは、トリオ・ソナタの趣きで3人は実にしっくりとアンサンブルを紡いでいった。ヴィブラートを極力抑えた小川のヴァイオリンと伊東のチェロがふわりとした浮遊感で舞い、秋元のピアノも軽やかに戯れる。大バッハの音楽に取り組むといった気負いが全く感じられず、3人はピリオド奏法のエッセンスを会得して楽しんでいるようにも見え、伸びやかで幸福感溢れるバッハを聴かせた。
最後はヴァインベルクのトリオ。重量感のある密度の濃い音楽で、葵トリオはバッハのときの軽やかさとは真逆の熱気ムンムンの演奏を繰り広げた。葵トリオの素晴らしいところは、アンサンブルで合わせるためにそれぞれの個を抑えたり遠慮したりすることなく、それぞれが全身全霊で演奏にエネルギーを注ぎ込み、ダイナミックに音楽を表現しながら、緻密でがっちりと隙のないアンサンブルを構築するところ。ヴァインベルクのトリオは、そんな演奏で聴いてこそ音楽が命を得て息づいてくるように思えた。
葵トリオはプログラムのメッセージで「3つの新しさ」を共有したいと述べていた。「モダン楽器による新たなバッハ」「新たな日本人作曲家との出会い」そして日本ではまだ演奏機会が多くないシュニトケとヴァインベルクの「新たなピアノトリオの名曲との出会い」。葵トリオはこれら3つで、どれも最高の出逢いを提供してくれたと云えるだろう。
葵トリオ 2024.10.3 紀尾井ホール
シューマン 室内楽マラソンコンサート第4部 2024.2.23 東京オペラシティ
ごほうびクラシック 葵トリオ 2023.10.9 第一生命ホール
葵トリオ ピアノ三重奏の世界 2022.6.8 ブルーローズ
紀尾井レジデント・シリーズ I 葵トリオ 2022.3.16 紀尾井ホール
葵トリオ & 磯村和英 ~日本モーツァルト愛好会例会~2022.1.19 自由学園明日館
キラめく俊英たちⅢ 葵トリオ 2021.6.19 ブルーローズ
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4.藤倉大/nui(縫い)(2022)
5.藤倉大/nui 2(縫い2)(2024、葵トリオ委嘱作品、世界初演)
6.バッハ/ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021
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10月の紀尾井ホールでのコンサートを聴いて、これはオペラシティのB→Cも聴かずにはいられないと思った葵トリオ。チケットは既に完売だったが、当日券情報を頼りに当日の朝にチケットを予約出来た。
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シュニトケの音楽は多くが人を食ったような、斜に構えたところがあるが、このピアノ・トリオは終始シリアスな緊迫感に支配された音楽。葵トリオはこれに真正面から対峙し、音楽からただならぬ深刻で不穏な空気と痛みを引き出した。続く3人の邦人作品でも3者三様の音楽を聴かせた。細川作品からは凍てつく沈黙の大地に佇む孤独を、山本裕之の「彼方と此方」では、目まぐるしい動きから押さえることのできない疼きや衝動を、そして藤倉大の委嘱初演を含む2作品からは、柔らかなテクスチャと淡い色彩や香りが立ち昇るのを感じた。どの作品でも音がピュアで研ぎ澄まされ、作品それぞれが持つ空気感が鮮やかに表現されている。葵トリオの作品の本質を捉える感性の鋭さ、得られたイメージを明確な音で表現する能力に感嘆せざるを得ない刺激的な前半だった。
そして後半はバッハから。通奏低音にピアノを使うのは珍しいが、モダン楽器によるソナタは、トリオ・ソナタの趣きで3人は実にしっくりとアンサンブルを紡いでいった。ヴィブラートを極力抑えた小川のヴァイオリンと伊東のチェロがふわりとした浮遊感で舞い、秋元のピアノも軽やかに戯れる。大バッハの音楽に取り組むといった気負いが全く感じられず、3人はピリオド奏法のエッセンスを会得して楽しんでいるようにも見え、伸びやかで幸福感溢れるバッハを聴かせた。
最後はヴァインベルクのトリオ。重量感のある密度の濃い音楽で、葵トリオはバッハのときの軽やかさとは真逆の熱気ムンムンの演奏を繰り広げた。葵トリオの素晴らしいところは、アンサンブルで合わせるためにそれぞれの個を抑えたり遠慮したりすることなく、それぞれが全身全霊で演奏にエネルギーを注ぎ込み、ダイナミックに音楽を表現しながら、緻密でがっちりと隙のないアンサンブルを構築するところ。ヴァインベルクのトリオは、そんな演奏で聴いてこそ音楽が命を得て息づいてくるように思えた。
葵トリオはプログラムのメッセージで「3つの新しさ」を共有したいと述べていた。「モダン楽器による新たなバッハ」「新たな日本人作曲家との出会い」そして日本ではまだ演奏機会が多くないシュニトケとヴァインベルクの「新たなピアノトリオの名曲との出会い」。葵トリオはこれら3つで、どれも最高の出逢いを提供してくれたと云えるだろう。
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