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青木尚佳 ヴァイオリン・リサイタル

2024年12月12日 | pocknのコンサート感想録2024
12月6日(金)Vn:青木尚佳/Pf:ボリス・クズネツォフ/Hp:早川りさこ
~紀尾井レジデント・シリーズⅢ - 第2回 “Fantasy”~

紀尾井ホール

【曲目】
1.シェーンベルク/幻想曲 Op.47
2.シューベルト/幻想曲ハ長調 D934
3.シューマン/幻想曲ハ長調 Op.131(クライスラー編)
4.サン=サーンス/幻想曲 Op.124
5.サラサーテ/カルメン幻想曲 Op.25
(アンコール)
♪ シューマン/夕べの歌

ミュンヘン・フィルのコンマスを務める青木尚佳さんの一時帰国リサイタルを聴いた。プログラムは全て「幻想曲」。しかも全てSから始まる作曲家の作品。リサイタルを聴いて、世の中にはたくさんの「名ファンタジー」があると気づかされた。

尚佳さんのヴァイオリンは、どの曲でも知と情のバランスが実にうまく配分されていると感じた。この配分はプログラムが進むにつれて情の割合が増してくる。シェーンベルクは知が勝りながらも、12音技法の音楽から人肌の情感が伝わってきた。クズネツォフ氏の透徹としたピアノの響きにも惹かれた。シューベルトはどこまでも優しく切ない。ヴェールを纏ったような柔らかなピアノのトレモロに導かれて始まった導入部はこのうえない美しさ。過度に感情移入することなく、冷静な目で音楽全体を見つめ、晩年のシューベルトが心の奥底に抱えていた孤独や寂寥を伝えていた。

シューマンでは俄然「情」が幅を利かせた。尚佳さんは作品に果敢に挑み、ズシリとした重みと熱いパッションを迸らせた。弓が弦にぴったりとくっついて、しなっているように見えるほど音の密度が濃厚で、柔軟性と力強さと機動性を併せ持ち、強烈なパワーで聴き手をグイグイと引きつけていった。ここでも「知」が失われることはなく、役者としての冷静な眼が逸れることはない。

そしてサン=サーンス、パガニーニの華やかでエモーショナルな世界へと進んで行く。サン=サーンスでは早川りさこさんのハープとの共演で、繊細で優美なデュオを繰り広げた。青木さん持ち前の格調高い美色が惜しげもなく溢れ出て、美しいフォルムを作り上げて行く。プログラムの最後に置かれた「カルメン幻想曲」では「情」が最もウエイトを占めた。自由なテンポで揺らぎや心憎い歌いまわしを聴かせ、沸き上がる民族的なエモーションを捉えて畳みかけて来る。青木さんの演奏はここでもタガが外れることなく、細部に至るまで一縷の隙も見せず、音楽がどこへ向かって行くかを見極めて、全体を美しく、かつエキサイティングに形作っていった。

リサイタルではクズネツォフ氏のピアノの存在も大きかった。温かみと深みのある音色で尚佳さんのヴァイオリンに親密に寄り添い、頼もしく安定したピアノを聴かせた。

聴く度に着実な進化を遂げていることが伝わる青木尚佳さんのソリストとしての活躍が益々楽しみだ。

G=ティーラ指揮 ミュンヘン・フィル(次席:青木尚佳)~2023.9.12 ベルリン・フィルハーモニー~
青木尚佳、ジャノ・リスボア、ウェン=シン・ヤン ~2023.4.13 東京文化会館(小)~
ジョナサン・コーエン 指揮 紀尾井ホール室内管弦楽団(Vn青木尚佳)~2022.4.22 紀尾井ホール~
青木尚佳・三井静・大井駿 ピアノトリオコンサート ~2021.7.27 Hakuju Hall~
青木尚佳&ウェン=シン・ヤン デュオリサイタル ~2018.12.4 武蔵野市民文化会館(小)~
青木尚佳&津田裕也 モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ ~2018.3.8 東京文化会館(小)~

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