5月22日(水)広上淳一 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
《ベートーヴェン・ザ・634+1》第2回~東京スカイツリータウン1周年~
すみだトリフォニーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
2.ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 Op.67「運命」
今日、東京スカイツリーが開業一周年を迎えた。これを記念して、スカイツリーを間近で望めるトリフォニーホールで行われた「634」の数字にちなんだベートーヴェンのシンフォニーによる広上淳一指揮新日本フィルの演奏会シリーズの第2回を奥さんと聴いた。広上淳一は日頃から聴きたいと思っている指揮者の一人だが、なかなか実際に聴く機会がなくて、今夜はかなり久々の3年振り。
1曲目は4番。ねっとりとした入りから、さっそく広上さんの強い意思が伝わってくる。とても濃い導入を経て、渾身の力を込めた主要部に突入!この溜め、エネルギーの充溢、そしてダイナミックな振幅からはクライバー張りの熱いパフォーマンスが感じられる。やっぱり広上さんの演奏は熱いなー、と身を乗り出したくなる。これまでに聴いた新日フィルは、デリケートな表現や透明感のある響きが印象に残っているが、今夜の新日フィルはそうしたスマートでお上品なものではなく、ひとつひとつのフレーズが、意思を持った熱い塊となって果敢に迫ってきた。それは全体としてゴツゴツとした、山あり谷ありといったある種のいびつさも感じたが、それがベートーヴェンの持つ赤裸々な姿を浮かび上がらせているように感じた。
広上さんの指揮は、演奏そのものだけでなく指揮姿を見るのも楽しみ。指揮棒をしばしば左手に持ち替えて、右手の指先まで使って表現を伝えつつ、体をくねらせてお馴染みの「たこ踊り」とまでは行かないまでも、「こんにゃく体操」のノリで全身で音楽を伝えるのを見るのは楽しいし、まさにそんな体の動きを体現した演奏がリアルに出てくるところがスゴイ。第4楽章では空手の型のような颯爽とした動きに乗って、キビキビとして力みなぎる演奏が展開され、明快かつパワフルに曲を締めくくった。
広上さんは情熱的に演奏を進めて行くが、気分任せで徒にオケを煽り立てるようなことはなく、音像のフォルムを崩すことなくそこに魂を入れ込み、それを堅実に積み上げて行く。後半の「運命」も、情熱と堅実さのバランスがよく取れた好演ではあったが、個人的にはそうした堅実さよりも、もっとぶっ飛んだ演奏を期待していたので、その意味では少々物足りなさが残った。指揮台の上での「踊り」も4番のときの方が激しかったような… それでも、広上淳一/新日フィルの「運命」からは、地底深くでマグマが煮えたぎるようなエネルギーは感じられた。
《ベートーヴェン・ザ・634+1》第2回~東京スカイツリータウン1周年~
すみだトリフォニーホール
【曲目】
1.ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
2.ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 Op.67「運命」
今日、東京スカイツリーが開業一周年を迎えた。これを記念して、スカイツリーを間近で望めるトリフォニーホールで行われた「634」の数字にちなんだベートーヴェンのシンフォニーによる広上淳一指揮新日本フィルの演奏会シリーズの第2回を奥さんと聴いた。広上淳一は日頃から聴きたいと思っている指揮者の一人だが、なかなか実際に聴く機会がなくて、今夜はかなり久々の3年振り。
1曲目は4番。ねっとりとした入りから、さっそく広上さんの強い意思が伝わってくる。とても濃い導入を経て、渾身の力を込めた主要部に突入!この溜め、エネルギーの充溢、そしてダイナミックな振幅からはクライバー張りの熱いパフォーマンスが感じられる。やっぱり広上さんの演奏は熱いなー、と身を乗り出したくなる。これまでに聴いた新日フィルは、デリケートな表現や透明感のある響きが印象に残っているが、今夜の新日フィルはそうしたスマートでお上品なものではなく、ひとつひとつのフレーズが、意思を持った熱い塊となって果敢に迫ってきた。それは全体としてゴツゴツとした、山あり谷ありといったある種のいびつさも感じたが、それがベートーヴェンの持つ赤裸々な姿を浮かび上がらせているように感じた。
広上さんの指揮は、演奏そのものだけでなく指揮姿を見るのも楽しみ。指揮棒をしばしば左手に持ち替えて、右手の指先まで使って表現を伝えつつ、体をくねらせてお馴染みの「たこ踊り」とまでは行かないまでも、「こんにゃく体操」のノリで全身で音楽を伝えるのを見るのは楽しいし、まさにそんな体の動きを体現した演奏がリアルに出てくるところがスゴイ。第4楽章では空手の型のような颯爽とした動きに乗って、キビキビとして力みなぎる演奏が展開され、明快かつパワフルに曲を締めくくった。
広上さんは情熱的に演奏を進めて行くが、気分任せで徒にオケを煽り立てるようなことはなく、音像のフォルムを崩すことなくそこに魂を入れ込み、それを堅実に積み上げて行く。後半の「運命」も、情熱と堅実さのバランスがよく取れた好演ではあったが、個人的にはそうした堅実さよりも、もっとぶっ飛んだ演奏を期待していたので、その意味では少々物足りなさが残った。指揮台の上での「踊り」も4番のときの方が激しかったような… それでも、広上淳一/新日フィルの「運命」からは、地底深くでマグマが煮えたぎるようなエネルギーは感じられた。