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臼木あい ソプラノ・リサイタル

2007年03月01日 | pocknのコンサート感想録2007
3月1日(木)臼木あい ソプラノ・リサイタル
リリア・ジュネス・コンサート ~21世紀をになう演奏家たち~
リリア音楽ホール
【曲目】
1. モーツァルト/歌曲より
 1)すみれ 2)ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時 3)クローエに 4)別れの歌 5)魔術師
2. モーツァルト/モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」K.165
3. ヘンデル/歌劇「ジュリアス・シーザー」~クレオパトラのアリア
 1)「この胸に息のあるかぎり」 2)「嵐の海で難破した小船は」 
4. ヴェルディ/歌劇「リゴレット」~ジルダのアリア「慕わしき人の名は」
5. R.シュトラウス/歌劇「ナクソス島のアリアドネ」~ツェルビネッタのアリア「偉大なる女王様」
【アンコール】
1. ビゼー/てんとう虫
2. 山本正美作曲/美智子さま作詞/ねむの木の子守唄
【演 奏】S:臼木あい/Pf:山岸茂人
【朗 読】松垣陽子


今日のコンサートダブルヘッダー夜の部は臼木あいのソプラノリサイタル。2003年の日本音楽コンクール声楽部門の2次予選で初めてその歌声を聴いた時から魅了された臼木あい、その後オペラシティでの同コンクールの本選(もちろん1位!)と受賞者発表演奏会、この本選前にあった芸大の芸術祭でのオペラ公演・シューベルトの「4年間の哨兵義務」や、それが好評で浜離宮朝日ホールで行われた再演で聴く機会があり、その度に大きな感銘を受けてきたが、今夜のようにリサイタルという形で臼木さんの歌を聴くのは初めて。もしかしてこうした本格的なリサイタルは臼木さんにとっても初めてかも知れない。そうした殆ど初めてとも言えるリサイタルで臼木さんは魅力溢れる本領を見事に発揮した。

1曲目のモーツァルトの「すみれ」の何とチャーミングな表現。健気な中にも自己主張する「すみれ」の思いをさり気なく、しかしとても印象深く聞かせる。モーツァルトの「アレルヤ」やヘンデルの「嵐の海で難破した小船は」で見せる見事なコロラトゥーラの歌いまわしは、針穴を通すような1つ1つの音程の正確さや声の配分のコントロールでも、それらが連続して生まれるラインとしての滑らかさや表情の豊かさでも際立っている。それに何とも艶やかで色彩豊かで瑞々しく張りのある声そのものの美しさ。

ヘンデルの「この胸に息のあるかぎり」の中間部で聞かせた深い情念の表現力や、ヴェルディの「慕わしき人の名は」で聴かせた初々しさの中に漂う濃厚なお色気の魅惑、極めつきはシュトラウス! 多感で恋多きツェルビネッタの、解き放たれ、自由自在な生き様を水もしたたるような魅力でたっぷりと聴かせる歌は聴く者を引き付け、捕え、虜にしてしまう。音コンの2次予選でも歌ったこのアリアをまた臼木さんの歌で聴くことができる幸福感!そして是が非でもオペラの舞台でのツェルビネッタを聴きたい気持ちに駆られた。

臼木さんの声は魔法にかけられたように魅力的、なめらかでしなやかで艶やかでたっぷりとした豊潤さに満たされている。そしてどんな表現や表情でも的確に描く誤魔化しのない細やかで抜群のテクニックも大きな強みだ。グルベローヴァの再来と言っては褒めすぎ?いやいや、実際臼木さんの歌はグルベローヴァを思わせるし、ウィーンのシュターツオーパーに出てもきっと大喝采を浴びるに違いない臼木さんにはこれから力をどんどん発揮して世界で活躍してもらいたい。これからが本当に楽しみだ。

今夜のリサイタルでは俳優座の研修生を終えたばかりという松垣陽子さんが、モーツァルトでは手紙を、オペラではアリアの役になりきってそれぞれにお芝居を見ているかのような名朗読を聞かせ、歌への感情移入をさらに高め、場を盛り上げたのは効果的だった。ピアノ伴奏の山岸茂人さんは、モーツァルトでは表情の乏しさに物足りなさを感じたが、オペラになると雄弁でオーケストラ的な多彩な音色を駆使してリサイタルを成功に導いた。大満足のリサイタル

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