貫之集 644
このごろは さみだれちかみ ほととぎす おもひみだれて なかぬひぞなきこのごろは 五月雨近み 時鳥 思ひ乱れて なかぬ日ぞなき このごろは五月雨が近いためか、時鳥が鳴く。私も思い
貫之集 639
ねられぬを しひてねてみる はるのよの ゆめのかぎりは こよひなりけり寝られぬを しひて寝て見る 春の夜の 夢のかぎりは 今宵なりけり...
貫之集 630
やまびこの こゑのまにまに たづねゆかば いづこともなく われやまどはむ山彦の 声のまにまに たづね行かば いづこともなく われやまどはむ...
貫之集 624
わびわたる わがみはつゆを おなじくは きみがかきねの くさにきえなむわびわたる わが身は露を おなじくは 君が垣根の 草に消えなむ...
貫之集 619
はぎのはの いろつくあきを いたづらに あまたかぞへて すぐしつるかな萩の葉の 色づく秋を いたずらに あまた数へて すぐしつるかな...
貫之集 609
すみのえの まつにはあらねど よとともに こころをきみに よせわたるかなすみのえの 松にはあらねど 世とともに 心を君に 寄せわたるかな...
貫之集 606
いろならば うつるばかりも そめてまし おもふこころを しるひとのなき色ならば うつるばかりも そめてまし 思ふ心を 知る人のなき...
貫之集 602
あきののの くさばもわけぬ わがそでの ものおもふなへに つゆけかるらむ秋の野の 草葉もわけぬ わが袖の もの思ふなへに 露けかるらむ...
貫之集 590
をしからで かなしきものは みなりけり うきよそむかむ かたしなけれは惜しからで 悲しきものは 身なりけり 憂き世そむかむ かたしなければ...
貫之集 581
あはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれあはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれ...
貫之集 554
たむけせぬ わかれするみの わびしきは ひとめをたびと おもふなりけり手向けせぬ 別れする身の わびしきは 人めを旅と 思ふなりけり...