貫之集 631
ふるあめに いでてもぬれぬ わがそでの かげにゐながら ひちまさるかな降る雨に 出でてもぬれぬ わが袖の 陰にゐながら ひちまさるかな 降る雨の中でもあまり濡れない私の袖が、雨の
貫之集 623
うつつには あふことかたし たまのをの よるはたえずも ゆめにみえなむうつつには 逢ふことかたし 玉の緒の 夜は絶えずも 夢に見えなむ...
貫之集 617
いろもなき こころをひとに そめしより うつろはむとは おもはざりしを色もなき 心を人に そめしより うつろはむとは 思はざりしを...
貫之集 606
いろならば うつるばかりも そめてまし おもふこころを しるひとのなき色ならば うつるばかりも そめてまし 思ふ心を 知る人のなき...
貫之集 596
おほぞらは くもらざりけり かみなづき しぐれごこちは われのみぞする大空は くもらざりけり 神無月 しぐれごこちは われのみぞする...
貫之集 589
あきはわが こころのつまに あらねども ものなげかしき ころにもあるかな秋はわが 心のつまに あらねども ものなげかしき ころにもあるかな...
貫之集 577
としつきは むかしにあらぬ けふなれど こひしきことは かはらざりけり年月は むかしにあらぬ 今日なれど 恋しきことは かはらざりけり...
貫之集 566
あさなあさな けづればたまる わがかみの おもひみだれて はてぬべらなり朝な朝な けづればたまる わが髪の 思ひ乱れて はてぬべらなり...
貫之集 565
あふことを つきひにそへて まつときは けふゆくすゑに なりねとぞおもふ逢ふことを 月日にそへて 待つときは 今日行く末に なりねとぞ思ふ...
貫之集 557
ももはがき はねかくしぎも わがごとく あしたわびしき かずはまさらじ百羽掻き 羽掻く鴫も わがごとく 朝わびしき 数はまさらじ...
貫之集 551
なげきこる やまぢはひとも しらなくに わがこころのみ つねにゆくらむなげきこる 山路は人も 知らなくに わが心のみ つねに行くらむ...