をしからで かなしきものは みなりけり うきよそむかむ かたしなけれは
惜しからで 悲しきものは 身なりけり 憂き世そむかむ かたしなければ
惜しいわけではなくただ悲しいものは人の身であるよ。この辛い世を離れるすべもないのだから。
現世が辛いのでこの身は惜しくはないけれども、さりとて実際にこの世から離れることもできないことが悲しい、という嘆きの詠歌ですね。
この歌は、後撰和歌集(巻第十六「雑二」 第1189番)に入集しており、そちらでは第五句が「かたをしらねば」とされています。