あはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれ
あはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれ
「あはれ」ということに、なにか目印があるわけではないけれども、そう感じたときには言わずにはおられないものなのであるよ。
この歌は後撰和歌集(巻第十八「雑四」 第1271番)に入集しており、そちらには「ある所に簾の前に、かれこれ物語りし侍りけるを聞きて、内より女の声にて、『あやしく物のあはれ知り顔なる翁かな』といふを聞きて」との詞書が付されています。