貫之集 661
ひとりねは わびしきものと こりよとや たびなるよしも ゆきのふるらむひとり寝は わびしきものと こりよとや 旅なる夜しも 雪の降るらむ ひとり寝はわびしいものだから懲りよととで
貫之集 660
あひみずて わがこひしなむ いのちをも さすがにひとや つらしとおもはむあひ見ずて わが恋ひ死なむ 命をも さすがに人や つらしと思はむ...
貫之集 659
あひみずて こひしきことを たとふれば くるしきたびは ことならなくにあひ見ずて 恋ひしきことを たとふれば 苦しき旅は ことならなくに...
貫之集 658
ひこぼしも まつひはあるを いまさらに われをいつとも ひとのたのめぬ彦星も 待つ日はあるを いまさらに われをいつとも 人のたのめぬ...
貫之集 657
ひとしれず われしなきつつ としふれば うぐひすのねも ものとやはきく人しれず われし泣きつつ 年ふれば 鶯の音も ものとやは聞く...
貫之集 656
いつとてか わがこひざらむ ちはやぶる あさまのやまの けぶりたゆともいつとてか わが恋ひざらむ ちはやぶる 浅間の山の 煙たゆとも...
貫之集 655
うちよする うらなみみれば わがこひの つきぬるとこそ まづしられけれうち寄する 浦波見れば わが恋の 尽きぬるとこそ まづ知られけれ...
貫之集 654
けさのとこの つゆおきながら かなしきは あかぬゆめぢを こふるなりけり今朝の床の 露おきながら 悲しきは あかぬ夢路を 恋ふるなりけり...
貫之集 653
まれにあふと きくたなばたも あまのがは わたらぬとしも あらじとぞおもふまれにあふと 聞くたなばたも 天の川 渡らぬ年は あらじとぞ思ふ...
貫之集 652
てるつきも かげみなそこに うつりけり にたるものなき こひもするかな照る月も 影水底に うつりけり 似たるものなき 恋もするかな...
貫之集 651
ぬきみだる なみだもしばし とまるやと たまのをばかり あふよしもかなぬき乱る 涙もしばし とまるやと 玉の緒ばかり あふよしもがな...