ぬきみだる なみだもしばし とまるやと たまのをばかり あふよしもかな
ぬき乱る 涙もしばし とまるやと 玉の緒ばかり あふよしもがな
貫いている緒から乱れ落ちる玉のような涙も、あの人に逢えばしばし止むかと思うと、わずかの時間でも良いから逢えないものかと思うことよ。
「玉の緒」には「美しい宝玉を貫き通すひも」に加えて、短い時間のたとえの意もあり、この歌ではその両方の意味を巧みに入れ込んで歌っていますね。
この歌は、続後撰和歌集(巻第十二「恋二」 第711番)に入集しています。また拾遺和歌集(巻第十一「恋一」 第647番)にはこの歌とほぼ同じよみ人知らずの歌が採録されており、それを貫之が改作したものでしょう。
ぬきみだる なみだのたまも とまるやと たまのをばかり あはむといはなむ
ぬき乱る 涙の玉も とまるやと 玉の緒ばかり あはむといはなむ