MSRリアクター、一昨年の涸沢でのグループキャンプ以来の利用ですが最近一番小さい1.0リットルサイズを入手したので一人で利用してみたらその威力を再認識。
これまでその大きさと重さからソロ登山での利用は敬遠してましたが、これはアリですね。
何が凄いかって、コーヒーカップ1杯量のお湯なら、バーナーに火を入れてから、モンカフェを袋から出してカップにセットし終わる前にもう沸騰している! 早すぎて逆に慌ててしまう。
なので、お湯が湧くのを耳を澄ませて待つという煩わしさがゼロ、沸騰待ち時間から完全に解放される。
更に付け加えると、これは1リットルの小さいのに限ったことではありませんが、丸い熱源部がポットで覆われるので風の影響を受けにくく、いちいち風防やら岩で囲んだりバーナーの配置を変えたりする煩わしさがない。
説明書にはバーナーユニットがあまりにも高温になりガス缶の爆発を引き起こす可能性があるとして風防を絶対に使わないようにとの記載。
使用中、赤く浮かび上がるMSRのロゴを見ることができないのはご愛嬌。
この熱源は強烈で、誤って空焚きするようなことでもあったらポットの底が溶けてメルトダウンするのだとか。 さすがリアクター(原子炉)と言うだけあります。
開発を担当した元MSRエンジニアのレッドウッド氏によると燃料効率が通常タイプのバーナーだと約40%であるのに対してこのリアクターユニットは約80%なのだとか。
これはすなわち同じ量の湯を沸かすのに必要な燃料が半分で済むということ。 但し皮肉にもMSR指定の赤缶は日本では倍の値段するのでコスト的には変わらない。 とはいえ環境配慮という点で素晴らしいイノベーションですね。
高効率をもたらす仕組みの1つとしてレッドウッド氏によると、一般的なバーナー(図では競合のジェットボイルらしき絵が示されている(右)はバーナーヘッド上の開放された空間で燃料と空気中の酸素があわさり燃焼するために、風など環境変化によって燃料と酸素との配合が一定にならず最適な燃焼が得られない一方で、リアクター(左)ではユニット側面から外気を取り入れて流れを制御し常に一定量の酸素と燃料がユニット内のノズル直近で合わさり燃焼することにアドバンテージがあるらしい。 燃焼中に赤く見えるのはノズルではなく触媒で、実際のノズルはユニット内部にあるから風の影響は受け難い構造のよう。 てっきり天面の巨大な網状ノズルからガスが広拡散に噴射されているものと勘違いしておりました。
確かにジェットボイルではノズル下周りが開放系で大きな空間がある。3方に開く穴から入り込む空気量は風まかせと言うことでしょう。
MSRに言わせれば、この手のものは形や見た目は変われど基本構造は一般的バーナーと同じということになります。
リアクターに話しは戻して、発生させた燃を余すことなく受けとめるポットのルーバーデザインが加わり、結果、一般的なバーナーに対して倍もの効率を叩き出していると言うことになります。
リアクターが高価な理由はどうやらこうした構造上の大きな違いから来るようです。
そんなことを知るとあのアミカバーの中がどうなってるか見たくなりましたが安全上、分解はしないほうがいいですね。
現在、3サイズがラインナップされてます。
サイズ感がわかるよう重ねてみました。
1.0リットルポット(MAX0.5リットル)、1.7リットルポット(MAX1.0リットル)、2.5リットルポットには何故かMAXの目盛表記がなく2リットルとある。
カップヌードル6〜7個相当量のお湯を一度に沸かすことができるのでグルキャン向きと言えます。
なお2.5リットルポットのみハンドルに赤いロック機構がついてます。
〈高温検知による自動停止問題〉
リアクターの場合、いつ何時でも高温化を避けることがとても重要なようで、
バーナーユニットが異常な高温になると熱融金属が溶けてガスの供給管に栓をしガスの供給を塞ぐ、いわゆるサーマルトリップ機構が働くらしいですが、問題なのはこのトリップが作動してしまったら最後、そのリセット作業はMSRでしかできないということ。 これは大変困る仕様ですね。
森林限界上での登山キャンプ中に止まったりしたら、火を得る手段がなくなるわけで死活問題。
ガスが止まれば英語の説明書には、”Return to an Authorized Dealer”とあるけれど日本代理店のモチヅキではリアクターを扱ってないので、本国に送り返しリセットしてもらう必要がある、って。。
長年認可の降りなかった赤缶の販売が開始されたわけだからリアクターも扱ってくれたらいいのに、と愚痴をこぼしたくなる。
もしくは禁断の一手として海外のサイトには自己責任でほじくり出す様子をレポする猛者もいるようだけど、ここでは安全のため詳細の説明は控えておきたい。
いずれにしてもリアクター自体は2007年に発売されて以来これまで製品リコールもなく本国ではまだ現行SKUとして息長く売られてますので設計品質的には問題は無く、また気づかないところで熱対策の改良がコツコツと加えられていることでしょう。
何せ社名がMountain Safety Researchです。 個人的にはこの手の安全に関わるガジェットは最新ロットのものが最も改良の進んだ最良のものと思います。
そして後発のウィンドバーナーにはこれがMSRの手を借りることなくリセットできるようになったらしい。性能はリアクターより劣るらしいが信頼性は高い。
余談になりますが、このウィンドバーナーは以前キャンピングガスから出ていたトレックオートに似ていますね。
以上から察するにリアクターの場合、設計性能が担保される最大容量2.5リットルポットにある実用2リットル目盛くらいまでの水や雪を沸かす時間以上にダラダラとバーナーに火を入れっぱなしなんかしたらアカンということでしょうか。
試しに2リットルの水を純正赤缶で沸かしてみるとギリギリ吹きこぼれることなく沸騰しました。時間にして7分15秒! 夏ならもっと早く沸くことでしょう。更に高度が高いと沸点も低くなるから早い?
いずれにしても目安として10分以上の加熱はバーナー部への熱負荷が設計想定以上にかかりリスクは高いと思われます。
ですので煮込みが必要なカレーとか鍋物とか蒸し物とか時間をかける調理はやめた方がいい。
まぁいったん湯が沸いてしまい、更に火にくべる必要があるならば他のバーナーに移し替えればいいわけで。
試しにプリムス2243バーナーに乗せてみたらどのサイズもしっくりいく。
要するに瞬間湯沸かし器の役割りに徹する、沸いたらすぐ火を止める。
それだけの用途と割り切るのが得策かと。だけどその価値は十分すぎる。
また、サードパーティ製のゴトクをセットしスキレットで炒め物とかも出来るようですが、長く火を入れたままというのは避けたほうが良さそう。 ティファールに色々とさせないのが無難。
〈重すぎる問題〉
ここまで高温停止問題について書きましたがこれらは注意すれば回避できるとしても、どうにもならないことがあります。
それは、重量。 どのサイズもかなり重いので登山で長く携行するにはキツい。
最小サイズの1.0リットルポット(スキレット無し)とバーナーの組み合わせで実測408グラム、1.7リットルでは479グラム、2.5リットルは599グラムある。 ガス缶を付けたら1キロ近くにもなるって、、ヘビィーすぎるやろ😅 昔のワンゲル部でもあるまいし。。 単独行登山なら当然1.0を選択することになる。
一方で後継モデルのウィンドバーナーについては、カタログ値465グラムもありリアクター1.0より約60グラムほど重いらしい。 新しいモノ好きな自分が購入に躊躇する理由はこの重量増と性能低下につきる。
一方でいつも登山で使用頻度の高い左側のプリムスのP-115バーナーとモリタのチタンクッカー(鍋とスキレットになる蓋)の組み合わせは228グラム。
リアクター1.0との200グラムほどの重量差をどう捉えるかだけど、自称グラムカッターとしてはこれは看過できない重さ。加えてリアクターの場合、注意深く使用しててもいつ高温でサーマルトリップが作動するかもしれない恐怖からバックアップのバーナーを持つ必要に迫られ更に重量増となる。
結果的にオートキャンプやバックアップの望めるグループ登山、すぐ下山できる低山ハイキングでしか出番がなく、滅多に使わない。
〈純正OD缶問題〉
MSR純正の赤OD缶(イソブタン80%、プロパン20%)は長らく日本では入手できませんでしたが、昨年になってようやく売られ始めました。やっと入手することができた喜びも束の間、構造上脱着時にプシュウ〜とガス漏れすることに幻滅。
結局、自分はもっぱら漏れ音があまりしないプリムスのパワー缶(ノーマルブタン75%、プロパン25%)を自己責任で優先利用。配合的にはMSR指定と近似しているからか、今のところ問題無く使用できている。
こちらがMSR指定のガス配合。
配合的にはプリムスのウルトラ缶(イソブタン75%、プロパン25%)も近いけど、封印シールに、外気温の高い場所では絶対に使用しない、と丁寧な警告が但し書きされているのを見ると、これからの時期、使うのが億劫になる。
噂では赤の専用缶の方が深くバーナーに刺さり、設計意図がそうで赤缶の方が高温化しないのでは?という憶測もあるが、見た目ほんとわからない。でも確かなのは赤缶は装着時にガス漏れするということ。それに輸入品だからか何せ高価。これ1個でプリムスパワー缶が2個買える。
おかげで勿体ぶってもあってか勢いで購入したストック赤缶がずっと棚にあるまま。棚に静置してるうちはガス漏れはないだろうけどやっぱ怖いから早く使わないと。。
話しを市ケ原でのモーニング に移して、朝食パンはTHE BAKE というお店の焼き立て。朝8時からやってるのはうれしい。
チョイスしたのはゴルゴンゾーラのとクロワッサン。
やっぱ朝はパンですね。コーヒーとのコンビネーションはパーフェクト、うまい!
この後、大龍寺経由で超高速下山。eMTBのバッテリーは75%残でトータル90分ほどのモーニング ハイクでした。
関連記事(火器系)
昔はプロパンを充填してくれる店があって冬でもガス器具が使えたのですが、
今は厳しくなってほとんど充填してもらえません。
液燃のスベア123Rがメインになりますが、
それでも-20℃を下回ると余熱が追いつかず
そうなると余熱不要のMUKAストーブの出番です。
冬キャンプは好きなのですが冬でもガスの使えるいーさんの地域がちょっとうらやましいです。
地方へ行けば土地も山も安いので
大きく買って庭の森から大雪山系でも眺めながらキャンプ、なんてことも可能ですよ。
ぜひ。