David Bowie の Blackstar のシンボルは日本の家紋では「銀星★」であり、銀星とは今の西洋式の星の名前で呼ぶとふたご座Geminiの異父兄Castor、金星は異父弟のPolluxとなり、Brian Enoへの電子メールでの最後の署名が夜明け(Dawn)であったことや、この唄がイスイス国の事を唄っているという記事もあることから、旧約聖書イザヤ書14:12の地に落ちる"輝かせる夜明けの子"、ふたご座流星群の小惑星ファエトン(3200 Phaethon)とギリシャ神話の夜明けの女神エーオースの馬車の馬または息子パエトーンや、金星の神ポースポロスを先の記事にて連想しました。
聖書における明星とは何を指すのか
悪魔?ルシファー
聖書には登場しないルシファー-明けの明星と同一視される悪魔-の由来は、対象の悪魔視+間化による攻撃激化への興味から気になっていました。
聖書と黙示録の明けの明星
イザヤ書14:12
日本語:
黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった。もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れてしまった
ヘブライ語
אֵיךְ נָפַלְתָּ מִשָּׁמַיִם, הֵילֵל בֶּן-שָׁחַר; נִגְדַּעְתָּ לָאָרֶץ, חוֹלֵשׁ עַל-גּוֹיִם
אֵיךְ どうやって נָפַלְתָּ あなたは落ちた מִשָּׁמַיִם 天から הֵילֵל 輝かす、照らす(へれる) בֶּן- 息子(ベン) שָׁחַר 夜明け、曙(シャはル) נִגְדַּעְתָּ あなたは切り落とされた לָאָרֶץ 地に חוֹלֵשׁ 討ち滅ぼした者よ עַל- ~を גּוֹיִם 諸民族を 117頁 イザヤ書Ⅰ ヘブライ語聖書対訳シリーズ20 ミルトス・ヘブライ文化研究所編 2002年
ヘブライ語ではHelel ben Shahar「輝かせる夜明けの息子」と記載されているようです。この本では、明けの明星の詩的表現と説明されていました。パエトーンとみなす説もあるようです。
ギリシャ語
シナイ文書
πωϲ εξεπεϲεν εκ του ουρανου ο εωϲ φοροϲ ο πρωϊ ανα τελλων ˙ ϲυνετρι βη ειϲ την γην · α ποϲτελλων ειϲ
オンラインのギリシャ語聖書
πως O how εξέπεσεν fell εκ from out of του the ουρανού heaven ο the εωσφόρος morning star ο the one πρωϊ by morning ανατέλλων rising συνετρίβης was broken εις unto την the γην earth ο the one αποστέλλων sending προς to πάντα all τα the έθνη nations
ギリシャ語翻訳の時点で「輝かせる夜明けの息子」という詩的な表現から、εωσφόρος暁・夜明けの女神エーオースの息子明けの明星の神ヘオースポロス(別名ポースポロス Φωσφόρος 輝かせる者(Φωσφόροςは鉱物のリンも意味する))へ定義されたようです。参考ブログ:「西洋の惑星の名まえ」
ラテン語
quomodo cecidisti de caelo lucifer qui mane oriebaris corruisti in terram qui vulnerabas gentes
ヘブライ語→ギリシャ語→ラテン語で「lucifer」という表記になります。luciferは光をもたらすlumineux, qui apporte la lumière
や、金星l'étoile du matin ou de Vénus.
という意味プラス、悪魔ルシファーという意味があります。
ヘブライ語→ギリシャ語→ラテン語へと翻訳されて悪魔の意味合いが出たようで、本来は悪魔ではなさそうです。
黙示録22:16
わたしイエスは、使をつかわして、諸教会のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの若枝また子孫であり、輝く明けの明星である」。
ギリシャ語
シナイ文書
φιλων ψευδοϲ ε γω ιϲ επεμψα το αγγελον μου μαρ τυρηϲαι ϋμιν ταυ τα επι ταιϲ εκκλη ϲιαιϲ εγω ειμι η ριζα και το γενοϲ δαδ ο αϲτηρ ο λαμ προϲ ο πρωϊνοϲ
オンラインギリシャ語聖書
Ἐγὼ Ἰησοῦς ἔπεμψα τὸν ἄγγελόν μου μαρτυρῆσαι ὑμῖν ταῦτα ἐπὶ ταῖς ἐκκλησίαις· ἐγώ εἰμι ἡ ῥίζα καὶ τὸ γένος τοῦ Δαβίδ David, ὁ the ἀστὴρ star ὁ the λαμπρὸς bright καὶ ὀρθρινός relation to the dawn, morning
イザヤ書14:12のヘブライ語の"輝かせる夜明けの息子(へレル ベン シャハル)"と上記の黙示録22:16"the star bright dawn morning"は、同じく明けの明星をさすのか、比喩表現または象徴的にもに全く別のことなのかは明瞭ではありませんでした。
ユングの元型論
ニューソート系の方々が様々な神話を同一視したり、悪魔化するのは深層心理学者ユングの学説が原因ではという意見がありますが、それは大きな誤解と思われます。 確かに下記の部分のみを引用すれば、全て対立物は同じシンボルで同一視できるかのように思えますがそうではありません。
「すなわち、原始教会にまでさかのぼる教父神学的聖書解釈においては、キリストは一連のシンボルないしは「寓喩(アレゴリアエ)」を悪魔と共有しており、たとえばそれは獅子、蛇(serpens、毒蛇coluber)、鳥(悪魔のことを「夜の鳥nocturna avis」ともいう)、鳥(キリストを表わすnycticorax[梟]はNachtrabe[夜の鳥]の意)、鷲、魚といったものである。さらにまたルシフェルつまり明けの明星(ステラ・マトウテイナ)はキリストと悪魔のいずれをも指すのである。」91頁 C・G・ユング アイオーン 人文書院 1990年
対立物を同じシンボルで表象できる=対立物は同じ、ではありません。対立物の相対するを補償し、全体性を象徴する作用をシンボルは持っている、とも言えるかもしれません。その時々の教義において魚や金星でシンボライズできるからキリストと悪魔は同じであるわけではありません。もし同じなら、「キリスト」と「悪魔」の定義は同じでよく、別々に呼ぶ意味はありません。正反対に対立するものの全体性を補償するのが象徴の性質です。シンボルが対立物を象徴するのは、深層心理学的または神話学的に意味があることであって、信仰の次元のお話ではありません。
「キリストと自己(ゼルプスト)が類似していることを私が認めたのは、心理学上の問題でしかない。キリストと魚の類似関係を認めるが、神話学の問題以上の何ものをも意味しないのとそれは同じである。それは決して形而上学、すなわち信仰に介入することではない。」86頁 C・G・ユング アイオーン 人文書院 1990年