まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

伊豆の長八美術館

2023-03-29 22:10:54 | ディテール
松崎の続き。

遅くならないうちに伊豆の長八美術館を見に行く。
伊豆の長八は、本名入江長八。鏝と漆喰の芸術家と言われる、江戸の左官の名人であった。


敷地の一角に建てられたこちらの円柱形の建物は、鏝塚。「うなぎづか」ではない(笑)。「こてづか」。
左官に使う道具である鏝を祀る施設として、伝統的左官技法を駆使して2005(平成17)年に作られた。
ちなみに「鏝塚」の文字は小泉純一郎氏の揮毫だとか。


壁はなまこ壁。軒下の壁には鶴がたくさん。


入口の見上げには華やかな牡丹の花が鏝絵で描かれていた。


美術館の入口はポルトガルのカルサーダスのようなカラフルな玉石を埋め込んだ舗装。これも左官の仕事か。
この美術館自体、長八の偉大な業績を後世に伝えるため、全国の有能な技術者により左官技能の粋を尽くして
造られたものだという。


ここ松崎出身の出江長八は、12歳で地元の左官棟梁関仁助に弟子入り、19歳のときに江戸で喜多武清に
狩野派の絵を学んだ。その末に、左官と絵画を組み合わせた独自の「漆喰鏝絵」は出来上がった。
長八の鏝絵の魅力は左官の技術の確かさだけでなく絵の美しさも大きい。


長八は江戸を中心に多くの作品を作ったが関東大震災で多くが失われた。この美術館には貴重な長八の作品が
約50点展示されている。鏝絵だけでなく若いころの絵画作品も展示されているのが興味深い。
ただ、基本撮影NGでちょっと残念。。。ここに載せている写真は何点かあった撮影OKの作品だが
ガラスに反射して撮りにくい(汗)


こちらの「富嶽」は富士山を描いた風景画だが、蔵の壁などでよく目にする鏝絵に比べると凹凸は薄く繊細。
蒔絵も施されている。


端の方をよく見ると、部分的に漆喰が盛り上げられている。


竹を模したデザインの枠も漆喰で作られていて、何と本物の竹の枝が練り込まれている。笹の葉も鏝絵で。
風景には関係ない枠に遊び心が感じられるな!


この「ランプ掛の龍」は鏝絵らしい鏝絵だな。これは旧岩科村役場のホールの天井にあったものだ。
上の縦長の鏝絵2枚「貴人寝所の図」「春暁の図」も同じ部屋にあったもの。
この建物は、岩科商社の商工会議所として1875(明治8)年に建てられ、その後岩科村役場として使用された。
現在は、重要文化財岩科学校の敷地内に移築復元されて「開化亭」という休憩所・売店となっている。


左官の道具も展示されていた。壁全体を塗る大きなものから、繊細な鏝絵を表現するための極細のものまで。
他にも漆喰の材料や土蔵の部分の名称などの解説もありいろいろと勉強になった。


敷地の一角にあった「夢の蔵」は、「なまこ壁の土蔵づくりプロジェクト」により2010(平成22)年に
建てられたもの。松崎の景観を特徴づけるなまこ壁の町家や蔵であるが、新たに造られなくなってから
当時すでに70年ものブランクがあった。小さな蔵でも新築することで一から十までひと通りの工程を全て
経験することができ、伝統技術の継承が図れる。まちの景観を守るためには補修は必須。重要なことだな!


美術館を出て、長八の代表作「八方睨みの龍」があるという「長八記念館」へ行こうと思ったら、時間が遅く
すでに閉館。残念・・・

おや、これは教会?「ギャラリー松崎」と書いてあるけど??


屋根には十字架が載っているからやっぱり教会なんだろう。それほど古くはなさそうだ。
近寄って見ていると人が出てきたので尋ねたらやはり教会らしい。快く見学させて頂けた。


日本基督教団松崎教会。教会らしくない入口だなぁと思ったら、もともと幼稚園だったとか。
そう言われてみれば確かに幼稚園っぽいな。


ここが礼拝堂。オルガンの練習をされていたところをおじゃましてすみません。


壁際に背の低い物入れなどが作りつけられているのも幼稚園の名残だ。


十字架のついていた建物の2階が旧礼拝堂だとのことで、そちらも案内して頂く。


階段を上ると、、おぉ、簡素だが今もなお厳かな雰囲気が感じられる。これも戦後の築だろう。
手狭になったのと階段の上り下りが大変なので幼稚園のホールに礼拝堂を移したという。
この空間は現在「ギャラリー松崎」として使用されていて、アート作品展などが催される。


年代物のリードオルガン。今も弾けるそうな。


鉄製の装飾が取り付けられたオルガンのペダル。


プロテスタント系の教会は建物の見学者にオープンでないのかと思っていたけど、親切にご案内頂いて感謝!


続く

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