「かたばみ」「漂砂のうたう」に続いて、木内昇作品3冊目。

これは9つの物語から成る短篇集ですが・・・

それぞれ、江戸時代から昭和30年代に生きた人達の何ら関わりのない話ではありますが、
その9篇が不思議に繋がっていて面白い。
一話の染井吉野を造った植木職人の悲話「染井の桜」が二話や七話等に出て来る。
三話の「茗荷谷の猫」
毎日、妻には小役人としての出勤を装いつつ、実は浪曲化の見習い弟子という二重生活を送る男。
これは、五話、六話にも思いがけない形で出て来る。
他の話も、どこかで繋がっている。
これが木内昇作品の構成の妙かと、ポンと手を打ちたくなります。
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どこかで聞いたことのある、中原中也の詩が、この作品にいい味を醸し出しています。
『ポッカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。』
いい作品でした。
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