予約した本がなかなか届かないので、すぐに借りられる本と言えばずいぶん前の物。
2008年発行の本ですから、表紙はすっかり色褪せています。

明治から大正にかけての京都・西陣を舞台に、
斬新な絹織物を次々に送り出した男の一生を描いた作品です。
主人公・菱村吉蔵のモデルは、
龍村美術織物の創設者、龍村平蔵。
大阪の船場の豊かな商家に生まれた主人公・菱村吉蔵は、
祖父の死によって家が没落、その後自力で西陣の織物を学び、
新たな織物を開発して財を成していく。
そんな吉蔵のもとに、法隆寺の御戸帳や、正倉院の御物・琵琶袋の復元という仕事が次々と持ち込まれ、
成功させていくことで、次第に『美術工芸家』としての名声が高まっていく。
織りの過程も、染の顔料選びから配色、文様に至るまで詳しく丁寧に描かれた渾身の大作で、
ずっしりと読み応えのある作品でした。
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