「二人の美術記者」をきっかけに手に取った「序の舞」。
読む物がなく、何気なく読んだ「錦」。
どちらも作者の魂が込められた、引きずり込まれる作品でした。
宮尾作品は、いくつか知っていますが、
それが本だったか映像だったかの記憶は定かではありません。
最も記憶に残っているのは「天涯の花」。
四国の剣山が舞台で、美しいキレンゲショウマという花の存在をこの小説で知り、
いつか見てみたいと願ったものです。
小説は、映像では表現できない良さがあります。
何冊か読んでみるかな~と思い立ちました。
まずは自伝的エッセイから。
*
「生きてゆく力」

私がもの心ついたころ、父の職業は「芸妓娼妓紹介業」という、
貧しい家の少女たちを妓楼にあっせんする仕事だった。
家の職業のため、私がどれだけ苦しんだか、
父への怨みと憤りのために作家を志したようなもので、
げんに拙著『櫂』、『春燈』などにはその怒りをぶちまけてある。
満州で夜空の満月を仰いでは想いを馳せた、故郷の豊かな川。
幼子を抱え結核を患いながらも、農家の嫁として家事をこなした日々。
作者の万感の思いを込めて綴った自伝的エッセイです。
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