不格好オヤジの日中のぼやき

主に日本と中国の話題についてぼやきます。

また1つ蘭州ラーメン店を発見

2019-12-10 22:49:49 | グルメ
 東京で着実に浸透しつつある蘭州ラーメンですが、また、1つ店を見つけました。池袋駅西(北口)から徒歩圏内にある「火焔山」。この店はメニュー、看板等日本語の表記もありますが、店員、料理人、お客を含めて店内は中国語が飛び交い、味も含めてほぼ中国の蘭州ラーメン店と同じ言って良いです。この店はハラル店であることから中東系のお客さんも見かけます。


 火焔山の店内では中国語が飛び交う

 中国の文献記載によれば蘭州ラーメンは、約200年前の清朝嘉慶年間に陳維精という人物が最初に作り出したといいます。現在、蘭州ラーメンの特徴を中国では、「一清・二白・三紅・四緑・五黄」といいますが、その特徴は陳維精の生み出した麺を継承した人々が改良を重ねていく中で形成していったようです。「一清」とはスープが透明でさっぱり系、「二白」は白い大根が入り、「三紅」は赤い唐辛子(の入った油)、「四緑」はコリアンダーかニンニクの茎の緑、最後の「五黄」は麺が黄色がかっていることを指します。


池袋「火焔山」の蘭州ラーメン
神保町「馬子禄」の蘭州ラーメン

 しかし、現在のように一椀一椀でアツアツ面を食べる食べ方は、陳維精が最初に蘭州麺を生み出してから100年ほどが経過した1919年、現在の甘粛省蘭州で馬子保という人物によって考案されたものです。甘粛省とは中国のウイグル自治区にも近く、イスラム系の回族が多く住む地域です。元々は馬子保は貧しい家での飢えと冬の寒さを紛らわすべく、家の鉄鍋でアツアツの牛肉面を作って家族で食べていたようですが、貧しい家計を支えるためそれだけでなく牛肉面を担いで街に出て呼び売りを始めたのだそうです。その後、牛、羊の肝などを良く煮込んでからスープだしを取るという方法が功を奏し、その香り、だしの味の良さから地元では一気に人気が沸騰しました。

 馬子保は1925年まで店を経営していましたが、その後は息子の馬傑三が後を継ぎ、この蘭州の牛肉ラーメンに改良を重ねる努力を継続します。結果、「聞香下馬、知味停車」(「その香りを嗅ぐと下馬し、その味を知りたくてそこに留まる」、つまり大変な美味であることの比喩表現)という名声を得ました。


「火焔山」の壁にある「馬保子店」の様子

 ただし、広まったと言ってもその名声は蘭州に留まり、現在のように中国で大規模に食べられるようになったのは90年代以降のことです。今では各地でチェーン店もできて、中国全土で見かけるようになりました。蘭州市だけでも千数百店、中国全土では5万の蘭州ラーメンのお店があるといいます。

 中国の麺の多くは、日本のラーメンと同じ小麦メインですが、カンスイが入っていないものが多く、腰がなく柔らかいため、歯ごたえはむしろそばに近いかもしれません。この蘭州ラーメンにはカンスイが入っているため、腰があり日本のラーメンに近い歯ごたえです。そこも日本人が蘭州ラーメンに親しみを感じるところかもしれません。

 2017年の夏に神保町で「馬子禄」がオープンし、大行列ができた(今も結構昼時は並んでいる)のが、日本での蘭州ラーメンの最初のブレイクだと思いますが、今年の10月に「馬子禄」は東京駅にもオープンしました。「馬子禄」の成功を見てか、今では池袋、川口、横浜、上野など東京近郊各地に蘭州ラーメンの店を見かけるようになりました。先日も東京大学近くの本郷でも蘭州ラーメン店を見つけました。

本郷の東大近くで見かけた蘭州ラーメン店

 蘭州ラーメンは羊の臭みやコリアンダーの苦手な人にはちょっとしんどいとは思いますが、それが苦にならない人にとっては癖になる味です。私の知り合いの日本人や中国人で蘭州ラーメンに嵌っている人は、定期的に食べたるなるそうです。かくいう私もその一人です。

 最初に日本でブレイクした「馬子禄」は日本人が経営していることもあり、店も綺麗で味も本場そのものです。私も神保町の本屋街などをぶらついている時にたまにお世話になっています。ただし、サイドメニューがほとんどないため、もう少しがっつり別のものも食べたいという時にはちょっと物足りなさも感じます。

 一方、今回見つけた池袋の「火焔山」は若干ワイルド系で、量も多く、サイドメニューもそれなりにある(シシケバブも食べられる)ので、中国の蘭州ラーメン店を思い出しながら、軽くビールの一杯もやりながら味わいたいという方には手頃な店だと思います。値段も結構良心的です。

シシケバブも食べられる「火焔山」

2019年11月時点の「火焔山」のサイドメニューより

 まだ、一度も蘭州ラーメンを味わったことのない方が日本には多いと思いますが
興味のある方は一度味わってみてください。ダメな人はダメ、癖になる人は嵌ると両極端に分かれるとは思いますが・・・・


さすが「玉ひで」の親子丼

2016-03-04 10:39:12 | グルメ
 昨年末、郊外の自宅から狭いながらも水天宮や人形町に近い都心に事務所(といってもただの小さなマンションの部屋)を移したが、引っ越したことによって食事処の楽しみが倍増した。人形町・水天宮界隈は、今時の大手外食チェーンやラーメン屋などどこにでもある店もそれなりにはあるが、江戸の昔から栄えただけあって老舗レストラン、独特の雰囲気を醸し出す小店も多い。夜の一杯も悪くはないが、新規開拓はどちらかというとお手頃価格で済むランチ中心に行っている。

 老舗の中でも一番の有名どころは、「玉ひで」であろう。人形町の地下鉄駅から出てすぐ目の前にあるこの店は、創業宝暦十年(1760年)と言われ、昼時ともなるといつも長蛇の行列ができる。正式には軍鶏(シャモ)鍋等、軍鶏を使った鳥料理を前面に打ち出しているのだが、明治の昔に鳥鍋の残りに卵をとじて食べる客にヒントを得て、五代目当主の妻(店内に写真あり)が考案したといわれる親子丼が今となっては店のトレードマークとなっている。「玉ひで」は親子丼発祥の地なのである。

 



「玉ひで」を紹介するTV番組も何度かは目にはしてはいたが、ランチで並ぶのには抵抗もあったし、何より店の入り口に置かれた価格表(親子丼で1500円~2200円)を目にして、親子丼ごときに1000円以上払えるか?というケチ臭い気持ちから、しばらくの間入店を見送った。

 


 ただ、本当に昼時はいつも行列である。やはり、これだけ並ぶ親子丼がどんなものか気になる。まあ、せっかく近くで仕事しているので、話のタネに一度は試してみるかとばかり1月下旬に初めて行列に並んだ。時間は11時45分頃、前に20人ほどが並んでいたが、皆親子丼一杯食べて立ち去るためであろう、それほど待たされることもなく15分~20分程度で、店の中に入った。と思いきや店の廊下にも人が並んでいた。





 店の廊下の途中に前払いで注文精算する場所があり、そこで一番ノーマルかつ低価格(と言っても1500円)の親子丼を2つ注文した。言っておくが、一人で二杯食べるのではない。もう一杯は連れの分だ。店内廊下は10分程度だったと思うが、想像より待たされることもなく、席に案内された。







 ちなみに、「玉ひで」は13時までに行列していないと、中に入れてもらえずシャットアウトとなる。13時以降行列は突如なくなるが、打ち切られているからである。私の前に並んでいた老夫婦はかつてここで並んでいて、自分たちの何列か前で打ち切られた経験をされたとのことだった。



 そんな調子なので、店側としては稼働率、回転率を高めるため、4人未満の少人数だとほぼ間違いなく相席での案内をしている。もっとも昼は基本、親子丼一杯で立ち去るわけで相席で十分だと思う。席はきれいだし、ギュウギュウ詰めでもないのでご安心あれ。

 席に座ると、茶と軍鶏で取った鳥スープの2つの茶碗が運ばれてくる。鳥スープには若干の塩味が効いていて、まあ、その辺の鳥鍋屋のものとそれほど変わらない感じである。廊下で注文した時点で、店の女中さんが誰が何を注文したかを把握しており、席で再度注文内容を告げる必要はない。



 いよいよ親子丼が運ばれてくる。蓋を開けるとトロトロの卵と軍鶏肉がうまく絡み合って見た目も大いに食欲をそそる。口の中に入れても、素材と割り下、また、お米が抜群のハーモニーを生み出し、何とも言えない味わい深い味である。



 

 なお、「玉ひで」の親子丼は、卵と軍鶏肉それに割り下(+お米)以外は一切使用しておらず、他の店で普通入っている玉ねぎや三つ葉等は入っていない。昔は玉ねぎも三つ葉もそう簡単には手に入らなかったであろうし、この親子丼が考案された明治時代の味をそのまま引き継いでいるともいえるであろう。いずれの素材も厳選されたものを使い、余計な香りに邪魔されず軍鶏と卵(まさに親子丼)のもつおいしさを最大限引き出すべく様々な工夫がなされているのであろう。とにかく味は格別である。食して見るまでは親子丼にしては値段が高すぎと疑いの目を持っていたが、コストパフォーマンスで考えれば、十分納得できるものであり、これまで玉ひでさんには誠に失礼であった。

 ところで、玉ねぎや三つ葉など箸で絡めないと食べにくい素材が入っていないからであろうか?テーブルの上には箸が準備されておらず、小さなしゃもじが置かれていているだけである。皆この小さなしゃもじだけで親子丼を食している。これなら、箸が使えない欧米人でも問題ない。



 さて、「玉ひで」の親子丼は絶品だが、育ちざかりの若者や食欲旺盛な人には、間違いなく量的に物足りないだろう。かくいう私もその1人である。昼は親子丼以外にサイドメニューもないので、どうしても腹に貯めたい若者は玉ひでの後、甘酒横町にある柳屋のたい焼きでも食べたら良いであろう。大食の友達を連れていくと、「1500円出したのに腹いっぱいにもならない」との反応になるかもしれないが、小食の彼女を連れてのデートや老母などを連れて食せば、満足感、達成感は得られるはずだ。

その後も玉ひでには二度行って、「三昧親子丼」「上レバ親子丼」を食した。いずれも絶品であるが、私のお勧めは「親子丼」または「三昧親子丼」である。時間が立つと無性に恋しくなる味である。