不格好オヤジの日中のぼやき

主に日本と中国の話題についてぼやきます。

アメ横に浸透していく中国商人

2014-12-27 20:29:35 | 中国
 昨日(2014年12月26日)は本当に久しぶりに年末のアメ横をぶらついた。平日の日中ではあるもの相変わらず相当な賑わいであった。正直、私も含めて地元の人間は、アメ横の海産物はそれほど鮮度も質も良くないことを知っているが、それでも本当に安いので庶民としてコストパフォーマンス的には十分許せるということであろう。かく言う私もその安さにつられ、鍋の具材となるエビ、カニ、サケ、カキなどの海産物を大量に買ってしまった。基本アメ横で売っているものは海産物に限らず、何でも安いのだが、何故安いのかは、それぞれの商品でそれなりに理由がある。チョコレートなどのお菓子で極端に値の安いものは、(商品表示をよく見ればわかるが)消費期限が真近に迫ったものが多かったりする。メーカーや小売店が廃棄するよりはマシと安値で叩き売ったものが流れてきているのだが、日を長く置かなければ食しても全く問題なく、市価の半値近くなら文句もあるまい。



 実家が徒歩圏にある私にとっては子供の頃から慣れ親しんできたアメ横だが、最近は随分趣が変わってきたようだ。外国人、その中でも特に中国人が経営する店が増えている点は注目に値する。アメ横と言えば、かつては在日韓国人が経営する小売店や焼き肉店が多く、私の小学校時代の同級生や実家の近所にもアメ横で商売をする在日韓国人が数多くいた(というか今も数多くいる)。しかし、最近は在日韓国人に加えて中国人やトルコ人の存在が目立ってきているのである。



 最近アメ横に行ったことのある方が印象に残る店としては、イスラム圏でおなじみの焼き肉ケバブを売るトルコ人経営の店と中国人の経営する小吃店(ちょっとした中華の軽食店)があるのではないだろうか。どちらも屋台店であり、複数の屋台店が隣接して並んでいる。昨日小吃店でしばらく立ち止まった後、隣にあるケバブ店の横を通ったところ、私を中国人と勘違いしたのか、トルコ人のおにいちゃんに「你好!ケバブ、好吃(ハオチー、おいしいの意味)」と中国語で呼び込みをされてしまった。アメ横でトルコ人に中国人と勘違いされるとは何事か?という感じがするが、まあ、無理もない。中国の小吃店で食事をしている人たちはその多くが中国人である。アメ横を見に来た観光客や、買い物にやってきた来た在日中国人もいるようだ。こうした屋台の中には今日(27日)からは屋台店をたたんで正月の食材売りに変身する店もあるようだが、気軽に屋台で本場の味を食べられる場所は、中国人にとって真に有難いことであろう。私もたまにアメ横を訪れるとつい立ち寄ってしまうことも多い。





 日本にも中華料理店は多いが、実のところ本場中国の味を味わえる店は非常に少ない。その多くは、日本人の口に合うように味を調整してしまっている「なんちゃって中華」である。私も中国に長く駐在するまでは、それでも横浜の中華街の店ぐらいは、本場に近い味を提供していると信じていた。しかし、そんなことはない。かなりの店の料理は日本式の中華である。サラリーマン時代に中国のお客さんや中国人の知り合いを、中華街に連れて行ったことが数多くあるが、中国人から「これ中国の味とは違う」「おいしくない」とはっきり言われたことが何度もある。すでに中国本場の味を知ってしまった私自身も今はそう思う。まあ、それも仕方がないことだ。そもそもメインの顧客である日本人の味覚が本場中国とは違うことに加え、食材調達の難度や価格も違う中で、日本で商売が成り立つよう長い時間をかけて味やスタイルを調整してきた結果なのだから。そういえば、中国で食べた日本食のかなりも「なんちゃって日本食」であった(一部はとても日本人が食べれる代物ではなかった)が、多くの中国人はそんなことは全く知らないので、自分が口にしているものが日本食と信じ、それなりに楽しんでいるのである。所詮、世の多くの外国料理はそんなものだろう。

 いずれにしても、アメ横の中国の小吃店は、中国人自らが料理し、顧客ターゲットのかなりが中国人のため、中国本場の味が結構楽しめる。アメ横という日本の大衆が多く集まる場所(日本では値切り交渉ができる場所は少ないが、アメ横では店と時間帯等により値切り交渉ができる点でも何となく中国の自由市場に似た雰囲気がある)で、これまた庶民的な屋台で食事を提供しているという点でも中国人の郷愁を誘うのかもしれない。

 さて、今回久しぶりに足を踏み入れて驚いたのがアメ横センターの地下にある、食材スーパーだ。以前訪れた時も中国を含めたアジアの食材を売ってはいたが、今は完全に中国食材店に様変わりしている。もはや日本人の姿はほとんどなく、売っている人も買っている人もほぼ中国人である。そもそも商品表示のかなりが日本語でなく中国語になっている点がそのことを如実に表している。日本人があまり食べない帯魚(タチウオ)、黄魚(イシモチに似ている魚)などの魚、鳥の一羽丸ごと売り、スッポンや豚足など中国人が料理することを前提とした食材が所狭しと並んでいる、それぞれの食材の奥行は深くないかもしれないが、調味料やインスタント食品などもそれほど高くない値段で売られていて、一通りの中国食材はここで揃う感じである。











 法務省の在留外国人統計によれば、日本で在留資格を有する中国人は2013年で約65万人、かつて国別で圧倒的にトップであった韓国人(2013年で約52万人)を押さえて現在は国別トップである。それ以外に今年は訪日中国人(主に旅行者)が昨年比で約80~90%増の240~250万人(昨年は135万人)に達する見込みで、いずれにしても日本にいる中国人の数は急速に増加していることになる。訪日観光客の増加は円安の影響が大きいとは思うが、あれだけ反日キャンペーンを張っている国からの観光客が急増しているということは、日本人が想像するほどすべての中国人が反日感情を持っているわけではないことを物語っているともいえるであろう。そして、これからもこれらの中国人観光客が増え続けることはほぼ間違いない。

 日本での在日中国人や訪日中国人観光客の増加に関しては、いろいろな意見があることは承知しているが、私は大局的に見て良いことだと思う。もちろん、犯罪に手を染めるような輩に来られては困るが、中国人旅行者についてはその多くが、日本で多くのお金を落としていることに加えて、ネットの書き込みなどを見てもわかるように反日教育を受けた若者たちの多くさえも、実際の日本を見て大変好意的な印象を持って帰国している点は軽く見るべきではない。領土問題等もあり短期的には日中両国が政治的緊張関係から解放されることは難しい。そうした状況下にあって心からの日本シンパを中国に数多く作ることが、外交関係の改善以上に重要なのである。今、日中関係を改善させる最強の手段は、多くの中国人観光客に日本に来てもらい、実際の日本を見てもらうことだと思っている。

 増え続ける在日中国人の後押しもあって、アメ横ではこれからもますます、中国商人がビジネスを拡大していくであろうが、日本人はその様子を指をくわえて見つめているだけでなく、商機ととらえて対応していくべきだ。例えば、すでに横浜、神戸、長崎等の中華街では一般的になっている春節(中国の旧正月)の催しも、これからはますます活発になっていくはずだ。今でこそ、日本人にとっても当たり前となったクリスマス商戦。戦前にも、一部百貨店やホテル等にクリスマスツリーが飾られたり、イベントが営まれたケースはあったが、キリスト教徒のさほど多くない日本にクリスマスが年中イベントとして本格的に定着したのは、第二次大戦後のことであるという。日本の百貨店をはじめとする小売店等が欧米のイベント、商戦を真似することで、新たなビジネス機会を生み出し、様々な消費に火を点ける努力を重ねたことで、徐々に年中行事としてのクリスマスが日本人の意識の中に定着していった。

 私は早晩、日本にも「春節商戦」なるものが、中華街のみならず日本のあちらこちらの繁華街に出現していくものと確信している。春節は中国大陸のみならず、香港、台湾、シンガポールなどの華人圏に加え、韓国でも同様に本当の意味での正月である。中国の経済力が増し、訪日中国人観光客が増えていく中で、かつて、欧米のクリスマスを模して商戦を拡大してきた小売店、ホテル、外食産業、それにマスコミ等もそれに便乗する形で、大々的なキャンペーンを張る日もそう遠くないのではないかと思う。その時アメ横はどうなっているのであろうか?

お金持ちになると海外移住する中国人

2014-12-11 23:09:03 | 中国
中国の国内線に搭乗する時、いつも思うが、何故乗客に「上海証券報」(新聞)を配っているのであろうか?今日も上海浦東空港の搭乗口(北京行)でほぼ全乗客に配っていた。日本で言ったら、株式新聞を国内線の乗客みんなに配っているようなものであり得ない話だ。そんなことをしたらすぐに航空会社がマスコミの批判の標的になるし、文部省辺りが教育上も、風紀上も宜しくないと抗議し、国土交通省が航空会社に行政指導で即刻ストップをかけるであろう。しかし、中国ではこれに対して何らの批判も起きないし、誰も不思議がらない。中国に長くいると不感症になるのか、日本人駐在員ですら、さほど不思議に思っていないようだ。



とにかく、中国の人は総じて投資の話、お金儲けの話が大好きだ。新中国の成立(1949年)から小平の改革・開放政策(1978年~)が始まるまでは、公然とお金儲けの話をすることは資本主義の道を進むことと見なされ大きなリスクが伴った。そのため皆沈黙を保っていたが、元はといえばある種、何千年の歴史を持つ商人国家でもある。特に90年代初頭以降は社会主義市場経済という大義名分の下に、社会主義を標榜しながら、実際にはかなり泥臭い資本主義の道を歩んできた。この間、副作用として共産党幹部の腐敗は目を覆いたくなるほど蔓延し、格差はどんどん拡大していったが、それでも人民(国民)が総じて豊かになっていたため、何とかここまで政権が持ちこたえてこれたのだと思う。

お金の話は日常の生活の中に本当に良く出てくる。日本人だと普通訊かないこと、例えば給与やボーナスなどについて「自分はいくらもらっているが、お前はいくらもらっている?」などと平気で(親しくない人にも)訊いてくることがある。また、日本だと商売や株、不動産などで大金を儲けても公然と言わない人が多いし、それが美徳とされているような気がするが、中国では公然と人前で金儲けについて自慢する。さらに「誰々が不動産でいくら儲けた」等他人の金儲けの話までも日常会話の話題に良く上る。日本人からするとまことに嫌らしい文化だと思うが、中国では金儲けに成功したことそれ自体が、自分の人生の成功の証、自らに対する評価と考えている人が多く、自分を成功者に見せることで、さらに大きな金儲けのチャンス(多くの人が群がってくる、商売チャンスが広がる)が巡ってくると信じている人も多いのであろう。

今回訪中時に一部知識人、学識者と呼べるような人にも会ったが、そうした人も投資や金儲けに関心が強かった。「日本の不動産は、どうやったら買えるのか?」「日本の不動産売買の税金やコストはどうなっている?」「今買っておけば東京オリンピックまでに上がるのではないか?」「日中関係が改善すれば、中国の資金は日本にいくぞ」等等。不動産バブルで豊かになった人が増えている一方で、中国の不動産には高値警戒感があること、加えて為替が大きく円安に振れたため日本の不動産を相対的にものすごく安く感じているようで、日本の不動産への関心はとても強いものを感じた。日本で学者や知識人が、そうした金儲けや投資に関する話を人前で語ると、下品なヤツとの烙印を押され、軽蔑されること間違いなしだと思われるがそんなことは中国ではお構いなしだ。そもそも、日本の学者や知識人で海外の不動産相場に関心を持ち、アンテナを張っている人がどれだけいるであろうか?

一方気になることがある。中国では金儲けに成功し、急速に富裕層は拡大しているが、その富裕層の半分近くが海外移住を考えていることが複数の調査機関の調査で明らかになっている。実際に多くの人の話を聞いても(私の友人はシンガポールへの移住手続きを行っている)、多くの富裕層が自らの資産を海外に移転することに必死になっていることは明らかだ。どんどん中国で豊かになっているのに、その人々が中国の国籍を捨てて海外移住するというのは一体どういう理由からなのだろう。

おそらく様々な要因があると思う。1つは現共産党政権が将来どうなるかわからないということに関する不安。もし何らかの政変が起き、大混乱に陥った場合、自らの中国での資産が没収され、没収されなくても大きく減価する可能性があるという不安、また、中国でビジネスに成功している人は政府との関係の中で商売をしている場合も多く、権力闘争や汚職に巻き込まれるリスクが付きまとうため、その時に備えてリスクヘッジをしておくこと。その他、子供の教育、環境、食の安全、ビザの問題(自由に海外を移動できる)、汚職役人が単に海外逃亡したい等様々な要因があると思う。ただ、こういった富裕層が海外移住後、中国との関係を完全に断ち切るのかと言えばそうではないだろう。それは香港返還の時に、多くの香港人が海外国籍を取ったものの、商売は外国国籍の中国人として同じ香港で継続しているのと同じである。国籍に対する考え方が全く日本人と異なり、自らがまた家族が、この世に生を受けている間、上手に生きていくための、うまく立ち回るための手段の1つとして考えているにすぎないのであろう。中には家族で違う国籍を取得するなどの例も非常に多い。自国に対する愛国心、忠誠心はどこにいってしまったのだろうかと思うが、ある意味、発想は非常にグローバルだ。

なお国連の報告書によると中国人移民数は2013年時点で930万人に達し、移民先で人気なのはアメリカとカナダ(胡潤の報告書)だという。日本の人口の13分の1がすでに移民してしまっているというのは驚きだが、そういう国家では現共産党政権も長く持たない、と習近平総書記も考えているに違いない。「トラもハエも叩く」でおなじみの反腐敗運動は当初の期待以上に大物も捕まえ一定の成果を上げている。それもあり中華民族の偉大な復興という中国の夢をスローガンに掲げる習近平政権は、中国ではかなりの世論の支持を得ている(と言っても、マスコメディアによる支持率統計も普通選挙もないが)と思う。しかし、ある種ビジネスの成功者ともいえる富裕層の多くが、中国の国籍をいとも簡単に捨てて海外移住していく現象は、せっかく誕生した多くの人材や資産が流出しているという点で、国家運営上の失敗といえなくもないのではあるまいか?共産党政権を維持しながら、豊かになった人々をいかに中国籍にとどめることができるか?習近平政権は今、大変な難題に直面している。

上海の出店流行り廃り

2014-12-09 22:04:36 | 中国
 上海の徐家匯という東京で言えば渋谷のようにデパート、ショッピングモールが集積する繁華街に小売り、外食を中心に最も日本ブランドの出店が集中している「五番街」という場所(「美羅城」地下)がある。かつてコンサルティング会社で総経理をしていた時は日系大手外食企業の出店支援等のため、様々なモールを見て回ったこともあり、職業病と言っては何だがついどうなっているのか見たくなって行ってみた。



 ここを見るのは10か月ぶりなのだが、結構出店ブランドが入れ替わっていて、新しいブランドも目についた。その中でもキティのケーキ喫茶は若い女の子に特に人気のようで、盛況であった。



 一方、少なくとも10か月前まではいつも大行列が当たり前だった出来立てチーズケーキチェーンの「徹思叔叔(おじさん)」は、何と閑古鳥が鳴いていた。他のモールでもすごい行列であったはずが同様に閑古鳥。聞くところによれば、最盛期ではあっという間に120店近くまで店が増えたものの、類似店も出てきて、最近では不採算店は閉めている模様である。まさに上海の流行り廃りの早さを象徴するようである。



上海の外食市場では新規出店の約9割が1年で市場から退出すると言われているが、出店企業にとっての最大のネックは、店舗賃料の高さである。日本では売上に対しせいぜい10%前後が賃料相場だと思われるが、上海では流行っていない店だと30%はざらで、中には50%を超えているところもある。昔はその分人件費が安いなどと悠長な事を言っていたが、人件費も急上昇しているため、売り上げが立たなければ即賃料倒れしてしまう。

小売りも外食の出店と同様で、とにかくモールの中のブランドの入れ替えが激しい。今週、とある日系外食企業の総経理さんに会うため、ある大型モールの中にある店舗を訪問したが、何とモール全体の半分が埋まっていなかった。オーナーが代わり、過去のブランドを総入れ替えしているらしい。人気もなく、これではこのモールに出店しても、テナントがある程度埋まるまで売り上げは立ちそうにない。

中国のモールも最低賃料は確保した上で、売り上げに応じて賃料を徴収する方式が主流となっており、その意味では多くの国の慣行と同じであるが、売上が立たないテナントはとっとと追い出し、売上が立ちそうなところを入れようとする。出店テナントを必死で支えようなどという気のあるモールは少なく、基本テナントは自己責任で生存を図るしかない。そのため、どこのモールも同じようなブランドが目につく。

 店舗の入れ替えがあまりに早いため、久しぶりに食事をしようと店にやってきたらすでに閉店していたなんてことも良くあった。こうした状況は、小売、外食産業のみならず、不動産(賃貸業)の発展にとっても極めて不健全な状況だと思うが、それでもまだかなりのモールが生き残っているということは、出店希望企業が次から次に出現していることがその背景にあろう。

 さすがに雨後の竹の子のように大型モールが出現し、ガラガラのモールも数多く出てきていることから、賃料の大幅調整や、出店テナントの特色、中身に重点をおいたモールづくりがなされてしかるべきと思うが、多くのモールは依然似たり寄ったりで特色を出せないまま、今日も店舗の入れ替えが繰り返されている。

久方ぶりの上海

2014-12-08 12:26:05 | 中国
半年ぶりに中国にやってきた。中国での人脈づくりと挨拶回りのためである。今後の人生をいろいろ考えたが、やはり、20年以上もいた中国とは縁が切れそうもない。リスク覚悟で、再び前職の日中間のコンサルティングを今度は自分でやってみようと思う。

日本人が中国を好きか嫌いかにかかわらず、世界中の金融、経済等多くの領域でこの国の影響力が増すことは間違いない。中国人と多くの接点を持ち、中国人の考え、発想を理解しておくことは、今後あらゆるビジネスを展開するうえで、また、自己防衛のために必要になってくると思う。世界のエネルギー、金融市況などにおいて、すでに中国の影響力は無視できないものになっているし、いずれ中国の為替規制、資本規制などが緩和されるに従い、日本の株式市場や不動産市場などをもかく乱することになるかもしれない。

最近日本では中国に関する負のイメージ情報ばかりが蔓延している感じがするが、急拡大する消費パワーの取り込みに成功すれば、多くの日本企業で業績への貢献も期待できる。もちろん、中国だけでなく、アジアのその他新興国(インド、ベトナム、ミャンマー、ラオス等)でも消費は拡大しており、そうした新興国での展開も考える必要があろう。少子高齢化、人口減少という大きな構造問題を抱えながら打つ手がない日本で落日を待つより、市場が拡大している新興国に打って出て勝負する企業が増えていかないと、日本は本当に大きく地盤低下しかねない。

さて、久々の上海だがこのところの円安もあってか、円ベースに直すと物価が非常に高く感じられる。スーパーの中を見渡すと、飲料、それに一部食料品、地元の日用品ぐらいはまだまだ日本と比べて安いが、相対物価でみると決して安いともいえない。上海は一人当たりGDPがおよそ1万数千ドルで日本の3分の1程度だと思われるが、絶対物価でも高いものも結構ある。ちょっとしたレストランや喫茶店は日本より高く感じるし、昔は安いと感じたマックもKFCも商品によっては、絶対価格でみてもほとんど格差はないのではないかと思われる。

タクシーや地下鉄、飛行機や高速鉄道など交通手段は日本よりはかなり安い。しかし、タクシーは相変わらずオンボロで乱暴な運転であり、身の危険を感じるので、できるかぎり地下鉄に乗るようにしている。飛行機も高速鉄道の料金も日本と比べれば安いが、中国駐在期間中累計で数百回は乗った飛行機は遅れが頻繁かつ遅れた時の乗客への対応が悪く、あまり快適だったという記憶はない。高速鉄道は速いが、駅のごちゃごちゃした待合室で待たされ、いざ乗る時にも関所を通り抜けるように、つっかえながら進まなければならないため、3~5分前に駅に到着すれば新幹線に十分間に合う日本とは効率が全く違う。また、飛行場や高速鉄道の駅は大見栄をはってしまったせいか無駄に広く、出入りの時間がかかる。せっかく、乗り物は高速なのに、トータルの時間で見るとあまり高速でなくなってしまうのは真に残念である。

さて、話を物価に戻して最後は不動産である、私が中国駐在を解かれた今年の年初と比べ、元ベースでの不動産価格はそれほど変わっていない感じであるが、円ベースにすると日本的にはオンボロのマンションでも、市の中心なら億ションは当たり前である。したがって、不動産価値で換算すれば億万長者(資産家)は、石を投げても当たるほど数多くいる。元々不動産バブル撲滅のため、様々な規制を加えていたはずだが、経済成長率の減速にさすがに李克強首相も肝を冷やしたのか、9月に不動産のローン規制も緩め、11月には金融緩和も行った。



もはや新規で住宅に投資して賃貸しても、預金金利よりかなり低い2%程度の利回りも出せるか分からない状況だと思われるが、それでも大きな値崩れを起こしていないのは中国七不思議の1つであろう。何せ中国では、信じられないことだが中古と新築の値段にそれほど開きがない。正直、中国の不動産物件は構造も資材も総じて安普請で、内装もほとんどないに等しいため、高級マンションも普通のマンションも建屋自体の価値にそれほど大きな差はないと思われる。メンテナンスも悪いため、老朽化はものすごいスピードで進んでいる。マンションの中には、完成から数年で外壁が薄汚れて、ボロボロになり、エレベーターにガタが出ているものも多い。私がかつて上海で住んでいたところは賃料からして、高級マンションだったが、そんなマンションでも水道管が破裂し、部屋中水浸しになったことが2度あった。

また、老朽化の激しさに加えて、中国の不動産は日本の定期借地権に似た、期限付きの土地使用権であり、物件の価値は理論的には毎年減価しているはずだが、これも不動産価格にはほとんど反映されていない。そんな先の事は、誰にも分からない、或いは政府がそんな人民を敵に回すことをできるわけがないということだと思うが、確かに本当にそこで期限を切ってしまったら大暴動が起きるだろう。

中国の不動産市場はまちがいなくバブルだと思うが、中国政府が崩壊しないようにコントロールしている点では、バブル崩壊を野放しにせざるを得なかった日本より賢いのかもしれない。そして、政府のそうしたコントロールを可能にしているのが、共産党の一党独裁のマスコミ統制がもたらす世論に対する政策パフォーマンスと情報の非対称性であろう。シャドーバンキングの実態も明らかにせず、政府と完全に一体の金融当局等を動かし、大げさにパフォーマンスすることで、人民はひとまず安心するのである。政府にとって一部情報を知らせないことは真に都合がよく、人民にとっても知らないことはある意味幸せなことなのかもしれない。所詮は問題の先送りにすぎないとは思うが、当面はまた不動産市場が持ち直す可能性もゼロではないのかもしれない。