不格好オヤジの日中のぼやき

主に日本と中国の話題についてぼやきます。

中国的な人の出会いと身内の範囲

2015-05-06 18:40:08 | 中国
先日ある日本の中堅企業の社長さんに呼ばれて何人かで食事をしたが、この社長さん、いつも目的も参加者名も明かさず、とにかく「何人かで飯を食いましょう」と言って声をかけてくれる。知らない人と知り合いになれるので有難いことだが、日本的にはこういう集いは極めて少ないのではないかと思う。

ところが、中国ではこれに似た、というよりこれよりすごい集いを散々経験した。自分自身、友人の親戚(つまり赤の他人)の結婚式に当日になって突然参加させられたこともあるし、ビジネス交渉の宴席に、友人や知り合いの経営者はおろか、美人の彼女や小さな子供を連れてきた企業経営者もいた。私がかつて外食案件で日中企業間の合弁交渉をサポートしていた時のことだが、中国側経営者が友人だという別の外食大手チェーンの幹部(華僑)を突然交渉に同席させ、機密保持違反になるとして日本企業側の怒りを買ったこともあった。

ある種、自由奔放で無邪気といえなくもないが、日本的にはそうした行為は無神経極まりないものであり、そうした行動をとる中国人や中国企業に一気に興ざめしてしまうことが多い。しかし、直接関係のない人物を連れてきたり、同席させたりというのは、ダブルブッキングをうまく解決してしまおうという不純な動機も時としてあるかもしれないが、中国的にはある種「おまえの将来の商売上のネックワーク作りに役立つかもしれない」との善意の意味も込められている面があるようだ。さすがに美人の彼女を連れてくるのは、気を許しているとの示唆なのか、はたまたひけらかしたいからなのか分からないが、とにかく、中国人同士では、そんな場合であっても、それほど場が白けるということもなく、結果、知らない者同士が知り合いになったり、それがきっかけでビジネスパートナーになったり、ということがあったりする。

ところで、中国人は同郷人同士の結びつきが強いことで知られているが、家族の範囲も日本よりははるかに広く、その結びつきも強い。中国人にとっての身内(中国語で「自己人」)は、日本で言うところの「はとこ」ぐらいまでを含むのもである。一人っ子政策の影響で、兄弟姉妹のいない子が増えたせいか、従姉妹をおねえさん、いもうと、従兄弟をおにいさん、おとうと呼ぶ言い方が普通であり、実際にも兄弟姉妹以上に親しかったりする。身内の行事(結婚式、正月、墓参り等)には大挙して集まり、誰かが困っている(不動購入の頭金、留学資金等)と、身内にの中で助けられる人が徹底的に援助の手を差し伸べることも多い。

友人でもそれなりに深い関係になれば身内扱いになることもある。たとえば、自分が所属する会社が何かを購買したり、発注したりする場合、友人や身内のビジネスになりそうな機会(例:自分の会社が内装リフォームする必要がある場合に、友や身内人に内装業者がいれば、そこへの発注を考える等)だと判断すると、何とかその機会をその友人や身内に与えようと必死に画策・行動する人などがいたりする。直接的なリベートを期待している可能性もあるが、そうでない場合でも、その恩を受けた相手が、別の機会にその恩を返すことで、彼らの関係はより強固なものになっていく。そんなことをいつも考えられたら、油断も隙もあったものじゃないと考えるのが日本人だが、中国人は日常的に自分や身内の商売(金儲け)チャンスを考え、情報をキャッチするアンテナを張り巡らせているがゆえに、ある種、中国人的なビジネスセンスが研ぎ澄まされているのだと思う。

日本は経済的な利害関係がないところに真の友情や信頼関係を感じたり、企業間でも経済的な結びつきはそれほど強くないのに長期的な信頼関係が築かれていたりすることもあるが、世界的には日本が極めて特殊なのではあるまいか?多民族国家といえる欧米各国でも、民族や宗教をベースに多くの強固な集団が形成されてきたと思うが、ビジネス的にも何らかの拠り所がないと気は休まらず落着けない。だからこそ、欧米では資本関係を築くためのM&Aが盛んに行われてきたともいえるのではあるまいか?