新型コロナ第五波の急拡大は、今の所収まる気配もなく緊急事態宣言も効果を発揮していません。
そんな中、にわかに「日本もロックダウンを」という議論が出てきています。
今回はその議論について考えてみようと思います。
その前にいつもの各国の感染状況について。
昨日発表のイギリスと米国の新規陽性者数は
イギリス 31808人
米国 102335人
でした。
イギリスは一旦は20000人台まで減少しましたが、その後微増が続いています。
イギリスは2回目接種率が7割を超える世界でもダントツのワクチン接種先進国。来週大きく増える事がなければ「2回接種7割で感染拡大は抑えられる」というエビデンスが確立するかもしれません。
とはいえ、「ワクチン接種済者でも感染は防げず(発症は防げる)、感染した接種済者が排出するウイルス量も減らない」という研究結果が次々と出てきています。
ということは「ワクチン接種済の無症状感染者」は増えているわけで、症状がないため検査をせず、表に出ない感染者はかなりの数になるはずです。
新たな変異株が心配されている中、はたしてその状況が良いことなのか。今は良くても、将来の問題とならないか一抹の不安があります。
米国は「今週中に20万人を超えるかも」と心配されていましたが、約10万人の横ばいで推移しました。
イギリス同様、基本的に制限を解除している米国ですが、ワクチン接種率はイギリスに比べて低く、2回接種したのは人口の50%程です。
この接種率では陽性者数が減ることは考えづらく、来週の新規陽性者数が引き続き注目されます。
ひるがえって日本といえば、新たに緊急事態宣言やマンボウが出されても危機感は薄く、新規陽性者数が減る気配は見えません。
そんな中、分科会の尾身会長が
「ロックダウンを検討すべき」
と発言し、波紋を呼んでいます。
前置きが長くなりましたが、この「ロックダウン議論」について思うことが色々あります。
まず、ネット上でも多く意見されているように
「今になって言うな」
という意見。
今まで「ロックダウンは日本では法制度上出来ない」と言ってきたのは当の尾身会長です。
この危機的状況になってから「検討すべき」と言うのなら、もっと前から検討しておけよ!というのはしごく真っ当な意見だと思います。
それに、日本はロックダウン云々の前にそもそも正確な感染状況を把握する努力をしていません。
前述したイギリスや米国はもちろん、主要国は初期からPCR検査を拡大し、抗体検査キットなど使えるものは全て使い感染状況の把握を進めてきました。
国全体の検査状況、新規陽性者数、入院者数、ワクチン接種率etc,必要な数値を揃え、政府や主要機関が毎日発表しています。
日本はどうでしょう。新規陽性者数や検査状況、入院者数は都道府県が個別に発表するのみ。しかも数値の基準がバラバラなので、
東京都の基準に沿った本日の病床使用率は〜
などと発表されている始末。
これでは正確な数値が望めない、ということで、他の主要国は政府主導で基準を統一し、政府が集計をして発表しています。
それに比べ、日本政府はこの1年間いったい何をしてきたでしょうか??
「実際の対策は各都道府県の権限」
と、ここぞとばかりに税制的に進んでもいない地方分権を盾にとり、言い訳に利用。
「専門家の意見を伺い」
と言いながら、都合の悪い事は伺わない。
こういった政府の不誠実な対応が、少しずつ緊急事態宣言の効果を削いできたのだと思います。
今までの緊急事態宣言についても、gotoキャンペーンの尻拭いや、科学的根拠に乏しい短期間の発出→結局は延長、毎回変わる制限内容、飲食店の狙い撃ち など、結果的に感染減少に結びついたものの疑問の残る運用が多くありました。
その極めつけが今回の オリンピック開催しながらの緊急事態宣言 です。
メダルに湧くテレビ放映を見ながら自分は自粛、などと出来るのは聖人君子みたいな人だけでしょう。
これだけデタラメな運用をしながら、「効果がないからもっと厳しい制限を」というのは政府の怠慢そのものであり、国の無策を国民の犠牲に転化するものでしかありません。
しかも「ロックダウンを可能にする法整備の議論」というのは、安倍前首相が悲願としていた「緊急事態条項」の制定に直結します。
私は緊急事態条項の議論そのものには反対ではありませんが、国民生活に直結するだけに政治的にフラットな状況で議論するべきだと思います。この自民党の下での議論には絶対反対です。
また最近の自民党の法案に見る、
大枠だけ決めて細かいことは後付け
というやり方は、ナチスドイツの例を挙げるまでもなく、緊急事態条項には最もやってはいけない方法です。
最近の重要法案にみる自民党には、緊急事態条項を模索するだけの政策立案能力自体がないと思います。
そもそも緊急事態宣言が適切に運用されれば日本はロックダウンなく感染を押さえ込める事をこれまで証明してきています。
特に1度目の緊急事態宣言時には、法的制限がなくとも「要請」というお願いベースでロックダウン並みの効果を出せる事を、当の安倍前首相が証明してみせました。「一斉休校」です。
ロックダウンというのは、あの状態を罰則付きで行うだけのことです。
「一斉休校は影響が大き過ぎる」ということで、あれ以後はタブー視されている感がありますが、一斉休校ができないのにロックダウンを検討というのは矛盾でしかありません。
正直言って、私は今のタイミングで9月からの一斉休校を要請すべきだと思います。それしか残された政策手段はないと思います。
昨年の一斉休校は明らかに時期尚早でしかも突然すぎました。
今の状況ならば、一斉休校もやむ無しという世論の同意を得られるのではないか。それどころか「打つ手なし」と見える現状に則した判断と受け入れてもらえるのではないか。
もちろん「今すぐ」ではありません。来週以降も感染拡大が進んだ場合に備えて今から議論・調整する事が必要なのだと思います。そしてそういう「備える」姿勢が今の政権に最も足りない物だと思います。
話がそれましたが、この段階にきて尾身会長が「ロックダウンを」と発言したのは、自民党政府が得意とするアドバルーンと思われます。
比較的、発言に信頼感を持たれている尾身会長に発言させ、政府は難色を示してみせる。
それに対する世論の反応を見て、手応えあれば即座に憲法改正=緊急事態条項制定に向けて動く。
体調不安で辞職した前首相が、表に出ない形で信じられないほど精力的に活動している内容に注意する必要があると思います。
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