『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想その2。ネタバレ有りにつきご注意下さい。
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この作品、これまでのシリーズとは切り離したものと考えた方がいいと言われ、確かに齟齬や矛盾が散見されます。
たとえば『ファイナル ディシジョン』の冒頭、ジーンをスカウトに来たチャールズとエリックはどの時点の二人なのか?(おまけに教授は自分で立って歩いていました)とか、『ZERO』の最後に出て来た教授は?とか。
第一作では、チャールズとエリックが出会ったのは17歳の時ということでしたが、今作ではずっと上の年齢になっていますし。
またセレブロはチャールズとエリック二人で設計したという設定もどうなるんでしょう。もっともハンク設計のプロトタイプは破壊されてしまったから、いつかは作り直すことになると思います。続編が作られるとしたら、彼らが再び協力、共闘する可能性もあるかも知れませんし。
でも、所々にはいる前シリーズを想起させる小ネタは、ちょっと嬉しかったです。「ハゲ」ネタみたいな軽いくすぐりから、「キュア」のようなテーマに関わるものもありました。
そして、以前も書いたように、『X-MEN』シリーズの基本はチャールズとエリックの物語である、ということだけは一貫して揺るぎません。たとえば『ファースト』を観た後だと、第1作ラストの二人の会話や、『ファイナル』ラストのエリックなど、しみじみと切なくなります(正直『ファイナル』は二人のファーストシーンとラストだけでいいという気も……)。
彼らについては、後日また改めて書きたいと思います。
というわけで、以下好きなところや気になる部分を列挙。
・少年エリックが収容所に送られるシーンは第一作の忠実な再現。音楽も同じものを使用しています。
・少年チャールズと幼いレイブンの出会いには、開巻早々ウルウルと……でも、これを観た後だと、前三部作のミスティークの所業に「ひどいよレイブン!」と言いたくなったりします。
・シュミット博士の部屋で向き合う博士とエリック。視点が切り替わった瞬間、二人の背景に映し出されたラボに息を呑みました。恐ろしいシーンだけど、「この監督、期待できるかも」と思った瞬間でもあります。
・上記シーンの「チョコレート」と、チャールズとレイブンの「ホットチョコレート(ココア)」は対になっているんですね。
・悲惨な過去を背負いつつも母と深い愛情で結ばれ、その記憶をしっかり留めていたエリックと、大富豪の家に育ちつつ母に愛された記憶のないチャールズ、というのも対照的。短いシーンや台詞でそれを表現し、奥行きを作る脚本、本当に巧いです。
・そして大人になったエリック、マイケル・ファスベンダーがカッコいい!初登場のローブ姿がセクシー!復讐行のコートにスーツもポロシャツ姿も素敵。アルゼンチンの酒場でのナイフさばきも、とにかくカッコいい!ドイツ語、フランス語、スペイン語、そして英語の台詞、すべてこなせるところもいいですね。動いた後で前髪がパラリとなるところもセクシー。「セクシー」感度の低い私(何しろヒューのことも「セクシー」と感じたことがないという…)でもそう思うくらいだから相当です。
・ジュネーブのホテルでのコイン投げは、後のショウとの対決の伏線。
・プロフェッサー役のジェイムス・マカヴォイは上手いです。この人は本当に上手い。剥き出しの「演技派」タイプではなく、さりげない表情や台詞回し、発声の変化等、若いのに素晴らしいです。
・しかし、この時のチャールズが24歳というエンドクレジットの表記は、どう考えても変。1944年と62年では18年経っているので、チャールズ28歳、エリックは30歳くらいということになるのでは?
・プロフェッサーXが、昔から今に到るまでミュータントたちや人間たちに期待するものは、「善意」や「優しさ」ではなく「理性」でしょう。そうでなくては対話も成り立たないし、現実世界のキューバ危機を回避させたのもそれです。しかし今作中では、その影で「理性」とかけ離れた新たなる殺戮がなされようとしていた──その展開が巧みです。
・その問題は、リンカーン像前でチャールズとエリックがチェスしながら語り合うシーンでも触れられていました。この場所の設定がまた効果的です。
・チャールズとエリックが集めて来た若いミュータントたちの合コンノリが楽しい。ちょっとイタイけど。そして「プロフェッサー」も「マグニートー」も名付け親がミスティークだったとはビックリです。
・ダーウィン……最年長っぽかったし、リーダーの資質もあったのに……彼らの初めてのチームプレイの結果がああだったからこそ、その後一所懸命訓練する姿が生きて来るのだと思います。
・アレックスの姓は「サマーズ」。コミックスではスコットの弟という設定なんですね。この映画だとどうなんでしょう。歳の離れた兄か若い叔父さんとか?チャールズがセレブロで見つけたサングラスの少年がスコットというわけではないのかな?このセレブロのシーンでは、オロロ(ストーム)らしき少女もいましたね。
アレックス役のルーカス・ティルくん、可愛い顔に似ず声がシブいところが気に入ってます。
・そしてハンクは万能過ぎ。
・対するヘルファイヤークラブの面々も、それぞれキャラが立っています。まずショウ=シュミットにケヴィン・ベーコンというキャスティングが絶妙。いい意味でB級感漂う変態悪役にぴったりでした。
・エマ(ジャニュアリー・ジョーンズ)のコスチュームが素敵。後で着ていたボディスーツやミニスカも髪型ともども60年代っぽくて良かったです。
・エンドクレジットにジェイソン・フレミングの名前を見つけてびっくり。後でパンフを見たら──あれか!某漫画のせいで、日本では「さん」付きで呼ばれるアザゼルさんです。能力はナイトクローラーと同じ。ナイトクローラーはアザゼルとミスティークの子供ですよね。
・今回登場のストライカー氏は、あのストライカー大佐のお父さんらしいです。息子は独自にミュータント軍団を作り、更に孫は……というわけでしょうか。まったくミュータントとはろくな関わり方をしない一族です。
・米艦隊司令官がマイケル・アイアンサイドだったのにもちょっと驚きました。
・吹替版も観ましたが、概ね引っかかる個所なく聴けて、字幕で判りにくかった部分も補完できました。但し、収容所シーンやエリック復讐行の台詞は全て原語と字幕です。
・三木真一郎さんのエリックは、まずそのキャスティング自体が驚きです。嫌いではないし、演技自体にも問題はないのですが、やっぱり違和感が……
あ、でも「いけないねえ」は妙に好き(笑)。原語の皮肉めかした "Kinky." とは大違いでしたが。
・カメオ出演については一応伏せます。
エリックに「子供の相手はしない」と言われたレイブンが「この方が好き?」と変身した姿は、レベッカ・ローミンさん。これは気の利いた演出だったと思います。
そしてあの人!画面に葉巻が映っただけで笑ってしまいました。殆ど出オチのウルヴァリンこと我らのヒュー・ジャックマンさん!
チャールズ&エリックが「おととい来やがれ」であっさり引き下がったのは、やっぱりコワかったんでしょうか?ローガンはあの姿で百年くらい生きているはずなので、あの時点では二人の方が年下でも問題ないのです。
そして吹替版では、あの一言のためだけに山路和弘さんが出演されているんですね。ヒューもノーギャラ出演だったそうで、いろいろ有り難いサービスシーンでした。
長々書いてしまいましたが、以上は私自身の覚え書き的な意味もあるので、また何か見つけたら更に増える可能性もあります。
■当ブログの『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』感想■
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