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石丸幹二×つのだたかし「歌のマルシェへようこそ」

2018-08-29 22:31:00 | 音楽

一昨日の8/27、浜離宮朝日ホールで行われた【浜離宮アフタヌーンコンサート】石丸幹二さんとつのだたかしさんによる『リュートとつむぐ歌と詩の世界4「歌のマルシェへようこそ」』へ行って来ました。遅くなりましたが簡単な感想などを。

【浜離宮アフタヌーンコンサート】石丸幹二×つのだたかし リュートとつむぐ歌と詩の世界4「歌のマルシェへようこそ」(浜離宮朝日ホール公式)

お昼を朝日新聞東京本社ビルのレストラン【アラスカ】で食べてから(月曜はカレービュッフェの日でした)いざ会場へ。同様の方たちをたくさんお見かけしました。
例によって写真などは撮っていませんが、NHKの【うたコン】や作家の池井戸潤氏から石丸さんに贈られたお花が飾られていました。
朝日ホールへ行くのは初めてですが、広すぎず小さすぎす、客席もゆったりして、音楽ホールとして良い感じです。
初めてと言えば、石丸さんとつのださんのコンサート、通称「つのまるコン」に参加するのも今回が初めて。リュートも好きなので興味はありながら、なぜか機会を逸しているうち、既に4回目の公演となりました。

つのだたかしさんのプロフィールはこちら↓から。ここには記していませんが、漫画家つのだじろうさんがお兄さん、「メリー・ジェーン」で有名なミュージシャンつのだ☆ひろさんは弟さんだったんですね。

Dowland & Company

以下セットリスト。

[第一部] リュートの調べとともに

お嬢さん方、きれいな小物はいかが?
流れは広く
七つの水仙
スカボロー・フェア
小さな空
ダニーボーイ
朗読「幸福の王子」より

[第二部] ギターの音色とともに

愛のよろこび
パリの屋根の下
さくらんぼの実る頃
愛の讃歌
行かないで
黄昏のビギン
灰色の瞳


オープニングは16世紀イギリスの作曲家ジョン・ダウランドによる行商人の歌。「歌のマルシェ」に相応しい呼び込みです。
他はイングランド、スコットランド、アイルランドの古謡(民謡)中心。「小さな空」は武満徹作詞作曲のポップソング。石丸さんはソロコンでもよく歌っていますね。
オスカー・ワイルドの「幸福の王子」朗読は、抜粋かと思っていましたが、ほぼ全文でした。朗読と言うよりひとり芝居でしょうか。王子とツバメはもちろん、町の人たちや市長なども様々な声を使い分けて演じます。ずっと聴き入り聞き惚れて、なんと悲しく切ない話なのだろうと改めて思いました。ふと『シークレット・ガーデン』のアーチボルドがコリンに絵本を読み聞かせるときもこんな感じなのかな、と思ったり。
自分は元々ルネッサンス期やバロック期の音楽が好きで、リュートの調べにも親しんできました。つのださんの演奏するその調べに乗る石丸さんの歌声。リュートが決して「伴奏」とはならず、さりとて互いに過度に主張することもなく、美しいハーモニーに包まれるようでした。
「スカボロー・フェア」は歌ではなく、石丸さんもアルトリコーダーを演奏してのセッション。幕間に「やはり歌ってほしかった」との声も聞きましたが、リコーダーの響きがリュートと合って、メロディーの美しさを堪能できました。
お二人のトークがまた絶妙。「マルシェ」に合わせたかのようなつのださんの骨董集めのお話や、すぐマイクを持つのをお忘れになるマイペースぶりに、「師匠」と呼びつつツッコミを入れる石丸さん。なごなごほんわかした空気に、こちらも思わず笑顔になってしまいます。

第二部は、つのださんの楽器がリュートからギターに代わります。随分と小ぶりなギターだと思ったら、現代の制作ではなく、1815年頃作られたものだそうです。ギターがそれまでの複弦から単弦6本という形になったのが19世紀初頭だったとのこと。ちなみにリュートは複弦です。棹上部の弦の張りを調整する部分も現代とは違うようでした。実はオペラグラスを忘れてしまい、それでも比較的前方席だったので鑑賞には支障ありませんでしたが、ギターのその部分だけはアップで見たかったです。
現代ギターとは違う柔らかく温かい音色に乗せて歌われるのは、古謡から現代のものまで広義のシャンソン。自分は一時(ジャンルとしての)シャンソンにも凝っていたので、好きな曲がいろいろ聴けて嬉しかったです。
「パリの屋根の下」は劇団四季時代に『思い出を売る男』の中でも歌ったことがあるそうです。加藤道夫作のあの作品を舞台にかけることは浅利慶太先生にとっての悲願で、現在は四季ではなく浅利事務所が権利を持っているはずです。多くの人の思い入れが込められた作品の中の一曲ですが、石丸さんの歌唱はあくまでも軽やかでした。自分も好きな曲なので心踊りました。(「躍る」ではなく……)
「愛の讃歌」は、公演直前に長谷川きよしさんが「男歌」として歌ったバージョンがあることを知り、プログラム記載とは別の訳詞を使用したそうです。会場内にもその旨掲示されていました。有名な岩谷時子訳と違い、比較的原曲に忠実な訳詞です。ピアフが当時どのような状況でこれを歌ったか考えると、やはり凄絶なる名曲で、その想いが伝わってくるようでした。
「黄昏のビギン」は元々、水原弘さんがレコード大賞を受賞した「黒い花びら」のB面曲で、後にちあきなおみさんがカバーしてヒットしました。と言われてもピンと来なかったのですが、聴けば「ああ、これか」と思い出しました。
アルゼンチンのフォルクローレ曲「灰色の瞳」も良い曲で、石丸さんの歌も素晴らしく拍手もひときわ大きかったです。原曲では楽器はケーナを使っているそうです。

更に付記:学生時代にフォルクローレをやっていた息子に原曲の音源を聞かせてもらいましたが、ケーナは伴奏ではなく主旋律でした。なお(どうでもいいことですが)息子自身は演奏したことないとのこと。

ラストは再び武満徹の「翼」。そこで一度退場してからのアンコール曲は「聞かせてよ、愛の言葉を」。これもシャンソンの名曲ですが、武満徹さんが戦時中ひそかに聴いて作曲家を志すきっかけとなった曲でもあるそうです。

いろいろ書いてきましたが、素晴らしいコンサートでした。音楽ホールでの公演ですが、サロンコンサートの趣もあり、更にこじんまりした会場で、ソファや椅子などを半円形に配置して聴いてみたいと思いました。石丸さんも終始リラックスした感じで、なんだか可愛らしかったです。石丸幹二さんの歌唱と言うと、とにかく声の「圧」がすごくて、「声量で殴る」タイプなどとも言われますが、このコンサートでは全体に優しく柔らかい雰囲気で、聴く側はただそこに身を委ねているだけで幸せな気持ちになれました。選曲のゆえか、つのださんの奏でる音色の賜物かは判りませんが……

個人的な話を少し。
第二部で歌った「行かないで」はシャンソンの名曲として知られていますが、作詞作曲のジャック・ブレルはベルギー出身。元歌詞はフランス語で訳詞は加藤登紀子さんによるものだそうです。
実はわたくし、昔ジャック・ブレルが好きで、LPレコード(!)やCDも持っていました。現在手元にあるのはこれ。

ジャック・ブレルのすべて
クリエーター情報なし
オーマガトキ


もちろん「行かないで」も収録されていますが、残念ながら現在は廃盤のようです。
そして、このコンサートで石丸さんが歌った「行かないで」。日本語歌詞ながら、ジャック・ブレル自身の歌唱に寄せていることに驚き、そして感動しました。特に「行かないで」という言葉(歌詞)を原語の「Ne me quitte pas」の音節に合わせていたのが印象的でした。この曲を歌ってくださってありがとうございます。

閑話休題。
先ほども言いましたが、歌や演奏がじんわりと心身に沁みわたり、時々ほろっと泣けて、ゆったり幸せな気持ちになれる素敵なコンサートでした。「5」があれば、是非また聴きに行きたいです。

終演後、ロビーで石丸幹二さんの握手会がありました。娘ともども握手券を持っての参加。流れ作業ながら、目の前にあの石丸幹二さんがいて、その手を握って──という状況に舞い上がり、ドキドキして「ありがとうございました」と言うのが精一杯でした。もっと気の利いた感想でもお伝えできれば良かったのですが。家事で荒れた手が恥ずかしかったです……

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