のち
まだまだ続く『オーストラリア』感想。今回は主演二人(ニコール・キッドマン&ヒュー・ジャックマン)及び悪役(デイヴィッド・ウェナム)の脇を固める皆さんについて。
この映画の主要キャラクターは要するに記号だと、以前の感想でも何回か書いてきました。それは脇役たちもまた同様ですが、それぞれがいい意味でキャラ立ちして印象に残ります。
このような娯楽映画に於いては、キャラクターの配置は文字通りストーリー上必要な「役割」であっていいし、「お約束」に徹したほうが望ましいのですが、彼らを演じるオーストラリア映画界の大物、重鎮、ベテラン俳優陣たちは、それぞれが役割に徹しつつ、映画に厚みを加えてくれました。豪映画としてはまさにオールスター・キャスト作品だったわけです。
私自身も詳しく知るわけではないけれど、豪俳優や豪映画には関心を抱いているので、次々登場するオーストラリア的豪華キャストを眺めているだけで嬉しくなります。ストーリー序盤で、主要登場人物をその役割や性格を明確にしつつほぼ全員見せてくれるのは、娯楽映画の本道と言っていい導入でした。あのテンポをずっと保ってくれれば良かったのに、と思ったりもしますが。
そんなわけで、以下の感想にはだいぶ贔屓目がはいっていると思います。個々の俳優さんたちについて詳述する余裕はありませんが、ちょっと寸評。
実質的主人公と言うべきナラ役のブランドン・ウォルターズくん、可愛かったですね。声も。
ナラくんの母親(Ursula Yovich さん)の役名が「デイジー」なのってわざとですよね(笑)。
David Ngoombujarraさん演じるマガリ、単にドローヴァーの仲間の一人かと思いきや、実は義兄でもあったというのがツボです。
しかし、キング・ジョージのデイヴィッド・ガルピリルさん……アボリジニ俳優を代表するかたですが、アボリジニの描き方があんなで本当に良かったんですか?と訊いてみたくなります。
マガリたちが比較的リアリティを以て描かれている一方、キング・ジョージが超自然的存在みたいになってしまっていることは、やはり気になります。何と言うか視点が定まらない感じで、アボリジニの捉え方も結局どっちつかずになってしまったようです。
その他の人たちでは、まずキプリング・フリン役のジャック・トンプソン氏。まさに「役割に徹しつつ、映画に厚みを加えてくれ」ました。彼とナラの交流はもっと見たかったです……
キング・カーニーのブライアン・ブラウン氏については、この人こそ元祖「オーストラリア・ナンバーワン・セクシー俳優」ではないか?と何度か書きましたが、ハンサムさとセクシーさに於いては、ヒューやデイヴィッドの比ではないと思います。ディナージャケット姿は誰よりもカッコよく、サラを籠絡することに失敗した後、ビールをラッパ呑みしながら笑う姿も素敵。
それだけにあの最期には驚きました。そこに到る過程も、もうちょっとちゃんと描いてほしかったです。
また、キングの所有する財産(もちろん牛を含む)や、町や軍に対しての影響力、権力の大きさについては、殆どが台詞で説明されるだけだったので、今ひとつ伝わって来ませんでした。ただ1カット、有無を言わさぬ説得力ある画面があるだけでいいんですよ。往年のハリウッド超大作は、ちゃんとそれを見せてくれていました。また映画自体への文句になってしまいますが、そこはやはり手を抜いてはいけないところだと思います。
そして、ダットン大尉役のベン・メンデルソンさん。デイヴィッド・ウェナムも出演している豪映画『ハーモニー』(Cosi)主演俳優です。
大尉は当初もっと小さい役、むしろ悪役寄りかと思っていたので(初期の頃出た画像がこれだったし)、終始ストーリーに絡んで、しかも儲け役だったのが、意外であり嬉しくもありました。彼は何となくサラが好きだったんでしょうか?
その他、アイヴァン役ヤツェク・コーマン、行政官(知事?)役のバリー・オットー、バーカー博士(でしたっけ?)役ブルース・スペンス等々、豪映画ファンなら嬉しい顔ぶれが揃っています。特にアイヴァンさんは後半大活躍でしたね。
バリー・オットーさんは、『ロード・オブ・ザ・リング』のエオウィン役ミランダ・オットーのお父さんでもあります。デイヴィッド・ウェナムとは舞台、映画で何度も共演し、前述『ハーモニー』でも重要な役を演じていました。そんなわけで、ダットン大尉と行政官、そしてフレッチャーが顔を揃えるシーンは嬉しかったです。
IMDbのキャスト&スタッフページを見ると、その他にもマックス・カレン、レイ・バレット、ビル・ハンター等、豪的名優の名前が記載されていますが、殆どカメオ出演みたいな感じですね。本当にどこに出ていたんでしょう?
何にしても、オーストラリアでの出演映画が実は少ないヒュー・ジャックマンなどにとっても、これだけの同郷の名優たちに囲まれて主演するというのは、嬉しいことだったのではないかと思います。
しかし、そんな多士済々な登場人物たちの中で、デイヴィッド・ウェナムのフレッチャーだけは、やはり異質な存在ですね。
デイヴィッドの演技のせいか、バズ・ラーマン監督の演出の失敗か、はたまたそれが狙いだったのか、どうにも判断がつきかねます。いろいろと想像を巡らす余地のある人物でもあり、あの上映時間では描き足りない部分も多々あったのではないか、とも思われますが。
やはりディレクターズカット版が出ることを期待するしかないでしょうか?
★映画『オーストラリア』その他の感想★
オズの国の偉大なるペテン師
夢の男
デイヴィッド・ウェナムの悪役
まだまだ続く『オーストラリア』感想。今回は主演二人(ニコール・キッドマン&ヒュー・ジャックマン)及び悪役(デイヴィッド・ウェナム)の脇を固める皆さんについて。
この映画の主要キャラクターは要するに記号だと、以前の感想でも何回か書いてきました。それは脇役たちもまた同様ですが、それぞれがいい意味でキャラ立ちして印象に残ります。
このような娯楽映画に於いては、キャラクターの配置は文字通りストーリー上必要な「役割」であっていいし、「お約束」に徹したほうが望ましいのですが、彼らを演じるオーストラリア映画界の大物、重鎮、ベテラン俳優陣たちは、それぞれが役割に徹しつつ、映画に厚みを加えてくれました。豪映画としてはまさにオールスター・キャスト作品だったわけです。
私自身も詳しく知るわけではないけれど、豪俳優や豪映画には関心を抱いているので、次々登場するオーストラリア的豪華キャストを眺めているだけで嬉しくなります。ストーリー序盤で、主要登場人物をその役割や性格を明確にしつつほぼ全員見せてくれるのは、娯楽映画の本道と言っていい導入でした。あのテンポをずっと保ってくれれば良かったのに、と思ったりもしますが。
そんなわけで、以下の感想にはだいぶ贔屓目がはいっていると思います。個々の俳優さんたちについて詳述する余裕はありませんが、ちょっと寸評。
実質的主人公と言うべきナラ役のブランドン・ウォルターズくん、可愛かったですね。声も。
ナラくんの母親(Ursula Yovich さん)の役名が「デイジー」なのってわざとですよね(笑)。
David Ngoombujarraさん演じるマガリ、単にドローヴァーの仲間の一人かと思いきや、実は義兄でもあったというのがツボです。
しかし、キング・ジョージのデイヴィッド・ガルピリルさん……アボリジニ俳優を代表するかたですが、アボリジニの描き方があんなで本当に良かったんですか?と訊いてみたくなります。
マガリたちが比較的リアリティを以て描かれている一方、キング・ジョージが超自然的存在みたいになってしまっていることは、やはり気になります。何と言うか視点が定まらない感じで、アボリジニの捉え方も結局どっちつかずになってしまったようです。
その他の人たちでは、まずキプリング・フリン役のジャック・トンプソン氏。まさに「役割に徹しつつ、映画に厚みを加えてくれ」ました。彼とナラの交流はもっと見たかったです……
キング・カーニーのブライアン・ブラウン氏については、この人こそ元祖「オーストラリア・ナンバーワン・セクシー俳優」ではないか?と何度か書きましたが、ハンサムさとセクシーさに於いては、ヒューやデイヴィッドの比ではないと思います。ディナージャケット姿は誰よりもカッコよく、サラを籠絡することに失敗した後、ビールをラッパ呑みしながら笑う姿も素敵。
それだけにあの最期には驚きました。そこに到る過程も、もうちょっとちゃんと描いてほしかったです。
また、キングの所有する財産(もちろん牛を含む)や、町や軍に対しての影響力、権力の大きさについては、殆どが台詞で説明されるだけだったので、今ひとつ伝わって来ませんでした。ただ1カット、有無を言わさぬ説得力ある画面があるだけでいいんですよ。往年のハリウッド超大作は、ちゃんとそれを見せてくれていました。また映画自体への文句になってしまいますが、そこはやはり手を抜いてはいけないところだと思います。
そして、ダットン大尉役のベン・メンデルソンさん。デイヴィッド・ウェナムも出演している豪映画『ハーモニー』(Cosi)主演俳優です。
大尉は当初もっと小さい役、むしろ悪役寄りかと思っていたので(初期の頃出た画像がこれだったし)、終始ストーリーに絡んで、しかも儲け役だったのが、意外であり嬉しくもありました。彼は何となくサラが好きだったんでしょうか?
その他、アイヴァン役ヤツェク・コーマン、行政官(知事?)役のバリー・オットー、バーカー博士(でしたっけ?)役ブルース・スペンス等々、豪映画ファンなら嬉しい顔ぶれが揃っています。特にアイヴァンさんは後半大活躍でしたね。
バリー・オットーさんは、『ロード・オブ・ザ・リング』のエオウィン役ミランダ・オットーのお父さんでもあります。デイヴィッド・ウェナムとは舞台、映画で何度も共演し、前述『ハーモニー』でも重要な役を演じていました。そんなわけで、ダットン大尉と行政官、そしてフレッチャーが顔を揃えるシーンは嬉しかったです。
IMDbのキャスト&スタッフページを見ると、その他にもマックス・カレン、レイ・バレット、ビル・ハンター等、豪的名優の名前が記載されていますが、殆どカメオ出演みたいな感じですね。本当にどこに出ていたんでしょう?
何にしても、オーストラリアでの出演映画が実は少ないヒュー・ジャックマンなどにとっても、これだけの同郷の名優たちに囲まれて主演するというのは、嬉しいことだったのではないかと思います。
しかし、そんな多士済々な登場人物たちの中で、デイヴィッド・ウェナムのフレッチャーだけは、やはり異質な存在ですね。
デイヴィッドの演技のせいか、バズ・ラーマン監督の演出の失敗か、はたまたそれが狙いだったのか、どうにも判断がつきかねます。いろいろと想像を巡らす余地のある人物でもあり、あの上映時間では描き足りない部分も多々あったのではないか、とも思われますが。
やはりディレクターズカット版が出ることを期待するしかないでしょうか?
★映画『オーストラリア』その他の感想★
オズの国の偉大なるペテン師
夢の男
デイヴィッド・ウェナムの悪役