
先ほど、参議院平和安全法制特別委員会で、いわゆる「安全保障関連法案」が「採決」されたことになっているのですが、昨日から24時間中継してきたNHKのアナウンサーでさえ、
「散会したということでしょうか?」
「詳しいことは分かりませんが、なんらかの採決が終わったとみられます」
と混乱し、ずいぶん経ってから
「採決されたようです」
と言わざるを得ないような、わけのわからない状態でした。
決を採る、というのは、何が議題かが明示され、それに対する採決をすることが宣言され、それに対して議決権のある人が意思表示をして、その結果誰が賛成で、誰が反対かがはっきり示されて数を数えなければならないはずのものです。
ところが、鴻池委員長が何を言ったのか、何の採決をしているのかさっぱりわからず、というか決を採っているのがそもそもわからないまま、佐藤正久自民党筆頭理事が与党議員らに立つように手で合図をしただけで、採決をしたということになってしまっています。
本日の参議院特別委の速記録が出ました。まったく聴取不能で、何をやったのかわかりません。自民党の説明では、採決動議、法案二本、付帯決議、委員会報告の5回採決したと言うのですが、そのような記録なし。まったく無法、無効です。 pic.twitter.com/EHd8N40OnZ
— 小池晃 (@koike_akira) 2015, 9月 17
そもそも、鴻池委員長に対する不信任動議が民主党の福山議員から出された時点で、いきなり、鴻池委員長が佐藤議員に
「委員長を委託する」
と言ってしまいました。
しかし、国会法で国会の委員長職は委員会の理事会で決定することになっていますから、これは明らかに法律違反で違法です。
それを指摘されて、鴻池委員長ははっきり
「取り消します」
と言ったのに、なぜか、佐藤議員が委員長でもないのに委員長席にちゃっかり座って仕切り始めたんです。
安倍政権って、そもそも最初からルールを守る気が全くないでしょう?!
安倍政権は中国が南沙諸島に勝手に埋立地を作っていることを「国際法の秩序に反する」「法の支配に反する」と再三批判しているんですが、自分が国内法を守りもしないでいて、どうして中国を批判することができるでしょうか。
法律の世界には、デュー・プロセス・オブ・ロー(適正手続の保障、手続き的正義)という原則があります。
法律の内容が適正であることはもちろんのことなのですが、それが成立する手続きがルールに則っていなければ、必ず悪い内容の法律ができてしまうので、まず、手続きを適正に行いましょうという原理原則です。
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今回の安倍政権のやり方は、半世紀にもわたって維持されてきた「集団的自衛権の行使は憲法違反で許されない」という政府解釈を、閣議決定でいきなり覆すところから始まって、そもそもルールを守ろうという気が全くありません。
憲法と法律では憲法が上位の最高規範であり、憲法に反する法律は無効であると憲法に規定されています。また、憲法も絶対に変えられないものではなく、ちゃんと改正手続きが規定されています。
憲法は勝手な解釈で変えていいものではありません。国民代表機関である国会と、そこで選ばれた政府が憲法も法律も守る気がないのなら、誰がルールを守るのですか。
日本国憲法第96条第1項
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
第98条第1項
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
今回、鴻池委員長が職権で、参議院特別委員会は最後の締めくくり質疑を行うと決定していたのに、それも行なわないままいきなり「採決」をしてしまいました。最終日は鴻池委員長の不信任動議の議論しか行いませんでした。
つまり、安保法案の議論をとうとうしないで、いきなり決だけ採ってしまったのです。
約束もルールも、憲法も法律も、国民の代表が全く守らない姿を子どもたちに見せつけて、こんなんでどうやって「教育再生」なんてしていけるんですか。
今日は暗黒の木曜日ですよ。
こんなことがまかり通っていたら、日本の将来はお先真っ暗です。
混乱する委員会の様子を報じるニュースをご覧になったら、あるいは、野党議員が暴力的なのではないかと見えるかもしれません。
しかし、もみ合っている議員の過半数は与党議員ですし、実際に「手続的正義」を踏みにじったのは与党です。
そして、憲法違反の法律が通らないようにするべき「憲法尊重擁護義務」が国会議員全員、一人一人に課されていることを忘れてはなりません。
この後、参議院本会議が予定されていますが、徹底抗戦するのが国会議員の義務です。
安倍首相は9月17日午前に違憲の「安保法案」を強行採決することに決めた。野党の徹底抗戦にご理解を!
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砂川判決と戦争法案 最高裁は集団的自衛権を合憲と言ったの! ? |
旬報社 |
あの砂川事件最高裁判決が、集団的自衛権の行使を憲法違反ではないという論拠になるはずがない。
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こんな無茶なゴリ押しには弁護士として黙っていられない。
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安保で大揺れの参院特別委員会、自民党がルール無視の越権行為に→速記停止中に「強行採決」
先日から大混乱の続いている参議院平和安全法制特別委員会。野党の抗議で開催が今朝8時50分にずれ込みましたが、さらなる大混乱が引き起こされています。
まず、今朝8:50から開催される予定だったのは委員会の理事会。しかし鴻池委員長は理事会室ではなく委員会室で、他の委員も着席の状態で理事会を開催するという極めて異例の行動を取り、開会を宣言。
しかし、前夜の取り決めと段取りが異なっているとして野党がこれに激しく抗議。その後一旦休憩となり、理事会室で理事会が開かれることとなりました。その後9時45分から鴻池委員長が委員会の再開と質疑の集結を職権で宣言。このタイミングで野党は鴻池委員長に不信任動議が提出されました。
不信任動議の提出を受けた鴻池特別委員長は退席。その際佐藤正久与党筆頭理事を委員長に指名し、佐藤議員が委員長席に着きました。しかし、委員長には次の委員長を指名する権限はなく、理事会での互選で決定する必要があり、これは明白な越権行為。野党の強い抗議を受けた鴻池委員長はその後すぐにこの指名の取り消しを余儀なくされます。
ですが、佐藤議員はそのまま委員長席に座り続け、審議を進めようと目論みました。しかし佐藤議員が委員長として議事を進める権限は一切ないため、野党側はこれに猛反発。佐藤議員も最終的には退出し、委員会は再び休憩に入っています。
鴻池委員長 pic.twitter.com/gfXBoDCGv8
— きーちゃ (@Key_noco) 2015, 9月 17
同委員会のインターネット中継は以下から。
この時点で少なくとも鴻池委員長が理事会の互選なしで独断で代理の委員長を指名するという越権行為と、佐藤議員が無効であるにもかかわらず委員長席に座り審議を進めようとするという明確なふたつの越権行為が行われています。
これらはひとつだけでも問責されてもおかしくないレベルの極めて重大な違反。国会のルールすら守られないまま、重要法案の決議が進められようとしています。
鴻池氏が退席し、与党筆頭理事が委員長席に – 47NEWS(よんななニュース)
【追記】
その後不信任動議に関し、野党議員らがフィリバスターと呼ばれる長時間の演説を行っていましたが、最後の山本太郎議員の演説の直後、鴻池委員長が自席に戻った瞬間、突然「強行採決」が行われ委員会は騒然となりました。与党議員らが鴻池委員長を取り囲み、委員長は法案の読み上げを行っている模様でしたが、NHKも採決を含めた詳細の確認ができないほどの大混乱。その際に佐藤正久議員が与党議員らに起立を呼びかけ、拍手が起こっていたことは確認できます。その後、佐藤正久議員が採決した旨をインタビューで語りました。
なお、この際には速記が止まっており、法案の読み上げも聞こえず、議事録に残っていないとすれば採決無効となる可能性もあるということです。このまま本会議での攻防に雪崩れ込むのか、再び差し戻されるのか、現時点では不透明な状況です。
安保法案 参院特別委で可決

そして、鴻池委員長が、委員会の開会を宣言すると、野党が、鴻池委員長に対する不信任動議を提出しました。
これを受けて、午後、開かれた委員会で動議の採決が行われた結果、自民・公明両党などの反対多数で否決されました。
続いて直ちに、質疑の打ち切りを求める動議が出され、自民・公明両党などの賛成多数で、質疑の打ち切りが決まりました。
そして、民主党などが抗議するなか、法案の採決が行われ、自民・公明両党と、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の賛成多数で可決されました。
また、自民・公明両党と、次世代の党など野党3党の合意に基づいて、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」では、日本が武力攻撃を受けるおそれがあるときなどを除いて、自衛隊を派遣する際に例外なく国会の事前承認を求めるなどとした付帯決議が可決されました。
与党側は、法案を17日、参議院本会議に緊急上程して速やかに可決・成立させたいとして、午後6時すぎから開かれた参議院議院運営委員会の理事会で本会議の開会について野党側と協議しました。
その結果、17日午後8時10分から本会議を開くことが中川議院運営委員長の職権で決まりました。
これに対し、民主党は、参議院に中川議院運営委員長の解任決議案を提出しました。
さらに、民主党などは、今後、参議院に安倍総理大臣に対する問責決議案、衆議院に安倍内閣に対する不信任決議案を提出するなど、あらゆる手段を講じて対抗するとしていて、与野党の攻防は、一層緊迫してきました。
鴻池委員長「審議はほぼ尽くされた」
自民・佐藤元防衛政務官「ひとまず安ど」
自民・佐藤国対委員長「参議院の努力に感謝」
公明・西田参院幹事長
次世代・和田幹事長「絶対に通さなければならない法案」
民主・枝野幹事長「到底許されない暴挙」
民主・福山幹事長代理「可決は認められない」
維新・松野代表「言語同断でルール無視」
共産・志位委員長「言語道断の暴挙」
社民・吉田党首「安倍政権暴走の極みだ」
生活・山本代表「日本に民主主義は根付いてない」
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しかし、これも国政選挙の投票を、目の前の景気や暮らし向きのみで投票先を決めた「つけ」を払わされている、日本国民の自業自得とも考えています。民主党への政権交代も、リーマンショックによる不景気がなければ起きえなかったことです。景気が良ければ、後の政治はお任せ、という有権者の姿勢も、この状況を生んでいます。自分の子供の躾をろくにせず、子供に問題が起きればすぐに学校に文句と言う今の親の姿とダブって見えます。
これまでの政治への無関心や人任せの態度を改めないと、今回の悪法を廃案にすることも難しいです。有権者はもっと痛い目に合わないと目を覚まさない可能性もあり、行く末が心配な気持ちもあります。
今回のように、一つの争点だけで考えて投票することの危険性を身をもって知る良い機会にして欲しいです。特に、安倍のような一般国民軽視の政治屋がトップにいるときの危うさを見抜く力をつけておく必要もあります。
現在の日本は、愚かな戦争ごっこをしている隙はありません。 日本国債の発火点が迫っているのです。
でも、愚か者の集団が政権に就いている限り、日本の破綻目指して針は進むばかりです。 そして、この間に、発火点を目指す針は、速度を増すばかりです。
愚か者を選んだ大馬鹿者の有権者のみが報いを受けるなら、勝手にすれば良いのですが、こちらも連れにされるのは、何とも不合理なことです。
知性の欠片も有していないような輩にこの国を席巻されるのは我慢がなりませんが、衆愚政治の観察機会を提供して頂いた、と理解するしかありません。。。
今回の違憲法案の強行採決が日本国民自身の自業自得という考えは変わりません。しかし、頻繁に投稿されている「とら猫イーチ」さんと同じ意見で、安倍をはじめとした右翼売国議員、そいつ等を選んだ有権者と道連れにされるのは、本当に勘弁してほしいです。
小学生の頃に憲法を初めて学んだ時、憲法に対する素直な感想として、日本は戦争をしない良い国だなあ、という思いを持ったことを思い出しました。
次の国政選挙で今回の法案を廃案にする公約を掲げる政党が与党になる可能性はあるので希望は持ってはいます。でも、実際に強行採決という現実を見せられると、落胆と怒りがこみ上げてきますね。
あまりお答えできませんがコメントを歓迎しています。 記事に批判的でも一向にかまいませんが、必ず記事を読んでからコメントしてください(笑)。
名誉毀損・プライバシー侵害・わいせつなど違法なもの、人を不愉快にする・品が悪いもの、感情的なもののみ承認しません(URLがある場合、そのリンク先を含む)。
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以上のようなハンドルネームのないコメントは原則として承認いたしませんので、よろしくお願いいたします。
とはいえ、堅苦しいことは言いませんので、どんどんコメントをお願いいたします!
野党も法案に賛成してた気がしますが?
安倍内閣は日本の歴史の「汚物」として後世の教科書に掲載されるだろう。
そして、ネトウヨ諸兄も「汚物のコバンザメ」として後世の教科書に掲載されるだろう。