私達は、冒険者ギルドの依頼を数多く受けた。主にCランク。ランク別で、最も低い部類の依頼が多かった。お金持ちのペットの犬探し。子犬の鳴き声は、かわいかったよ。ネズミ駆除は、チュウチュウと向かってくる奴が怖かったよぉ……。その他も色々あったなぁ。Cランクが多いのは、サムが私の身を案じての事だよね。サムは、優しいから。たまにBランクの簡単のを受けたけど、やりがいはあった。成功報酬が良いし。ロタノーラも張り切ってたもん。
Aランクの派手さは無い。それでも受けた依頼は、全て達成してきた。だから、冒険者パーティーの森の木漏れ日のギルドでの評価は高い。この街で、知らない者など無い程になっていたの。戦士サムの名声も高まってる……。
今日は、久々のBランク冒険の大ミミズ退治に来たの。あのニュルニュルが気持ち悪いだろうなぁ。でも、頑張らなきゃね。
「僕が、おとりになって逃げる。その隙にチェリルは、魔法攻撃をお願い」
「うん。了解。気を付けて」
「あたいは、最後に出番だね」
大ミミズは、剣を振り回しながら突撃したサムを敵と認識したのね。狙いを定めて追いかけ出した。ボーっと見てちゃ駄目だ。
「私が、やらなきゃ……。天の雷《いかづち》よ。我の杖に宿りて、あの者の体に向かい力を放出せよ!」
ビギャー! その音と共に空から杖に雷光が降りた。
「はあー!」
杖を巨大ミミズに向けて振りかざす。ドゴーン! 落雷の様な音がした時。すでに巨大ミミズの体は、電撃で光輝いた後なのよね。
「やったわ!」
「止《とど》めは、あたいが!」
「ロタノーラ頼む! 奴は虫の息だよ! 虫じゃないけど」
「うふふ」
サムったら。こんな時でも、面白いよぉ。余裕だね。胸キュンだよぅ。
そんな事を思ってる間に大ミミズは、ロタノーラに体を半分にされてたぁー。
「チェリルの魔法の御蔭で助かったよ。ありがとう」
「あっ。そんな。サムが頑張ったから出来たんだもん。無事で良かったわ」
「チェリル」
「サム」
パンと手を叩く音。でも、慣れてしまったなぁ。
「二人は、その行為を老人まで続けるつもり? そろそろ進展した方がいいんじゃない? あたいは、心配になって来たよ」
「う、うん。考えておくよ」
「私は……」
せっかくの、ロタノーラが心配してくれたのに。それで、もたらしてくれた好機だよ。私が此処で告白すれば、胸キュンの思いが実るかも? でも、でも。師匠の手紙の件もあって、心の踏ん切りがつかないよ。それに、サムから言って欲しい思いが強くて……。
「チェリル。どうしたの? 何だか元気がないね。悩みなら、あたいが相談に乗るよ」
「ありがとう。後で言うね」
そして、私達は、冒険者ギルドへ向かう。巨大ミミズの亡骸の頭部を持参するために。こんなに淋しい思いは、今まで無かったなぁ。だって、道中に誰も会話が無いんだもの。
*****
冒険者ギルドに着くと、サムは真っ直ぐにカウンターへと。少しの時間は受付の者と会話してた。それが終わると、ギルドマスタールームに案内されたようだよ。
残された私は、ロタノーラに師匠の手紙の件を話す事にしたんだぁ。
「ふーん。そう言う事だったんだね。あたいの本心は、チェリルに居て欲しいよ。でも、チェリルの人生の大事な決断だからね。決めた事には、反対なんかしない。むしろ応援したいさ」
「ロタノーラ……。ありがとう。よく考えて、決断するね」
*****
ギルドマスターの部屋から出て来たサム。私達に向かって歩いて来るけど、その表情に和やかさは感じられない。なんだか、重々しい雰囲気《ふんいき》だよ。
「依頼を受けたよ。Aランク相当の」
「へぇー。凄いじゃん。あたいは、サムを見直したよ」
「サム。どうして?」
その依頼は、ギルドマスターから直々の命令に近いものだそう。冒険者ギルドに資金提供を莫大にしている程の街の有力者。その御令嬢を護衛して、目的地に送り届けるの。万が一にも御令嬢に何かあれば、私達の人生も破滅するかも?
「依頼主は、森の木漏れ日を御指名なんだから。やるしかないよ。今日は、これで終了だ。帰宅して、しっかりと休息すること。明日の朝、今日と同じ位に、この建物前に集合だよ」
「うん。了解」
「了解したよ」
なんだか、初冒険よりも緊張してきたよぅ……。今夜は、眠れるかなぁ?