蓮月銀也

小説、呟き等々……。

魔導士は胸キュン! 第6話 冒険ランクと依頼

2024-08-01 07:10:46 | 小説

 私達は、冒険者ギルドの依頼を数多く受けた。主にCランク。ランク別で、最も低い部類の依頼が多かった。お金持ちのペットの犬探し。子犬の鳴き声は、かわいかったよ。ネズミ駆除は、チュウチュウと向かってくる奴が怖かったよぉ……。その他も色々あったなぁ。Cランクが多いのは、サムが私の身を案じての事だよね。サムは、優しいから。たまにBランクの簡単のを受けたけど、やりがいはあった。成功報酬が良いし。ロタノーラも張り切ってたもん。
 Aランクの派手さは無い。それでも受けた依頼は、全て達成してきた。だから、冒険者パーティーの森の木漏れ日のギルドでの評価は高い。この街で、知らない者など無い程になっていたの。戦士サムの名声も高まってる……。
 今日は、久々のBランク冒険の大ミミズ退治に来たの。あのニュルニュルが気持ち悪いだろうなぁ。でも、頑張らなきゃね。

「僕が、おとりになって逃げる。その隙にチェリルは、魔法攻撃をお願い」

「うん。了解。気を付けて」

「あたいは、最後に出番だね」

 大ミミズは、剣を振り回しながら突撃したサムを敵と認識したのね。狙いを定めて追いかけ出した。ボーっと見てちゃ駄目だ。

「私が、やらなきゃ……。天の雷《いかづち》よ。我の杖に宿りて、あの者の体に向かい力を放出せよ!」

ビギャー! その音と共に空から杖に雷光が降りた。

「はあー!」

 杖を巨大ミミズに向けて振りかざす。ドゴーン! 落雷の様な音がした時。すでに巨大ミミズの体は、電撃で光輝いた後なのよね。

「やったわ!」

「止《とど》めは、あたいが!」

「ロタノーラ頼む! 奴は虫の息だよ! 虫じゃないけど」

「うふふ」

 サムったら。こんな時でも、面白いよぉ。余裕だね。胸キュンだよぅ。
 そんな事を思ってる間に大ミミズは、ロタノーラに体を半分にされてたぁー。
 
「チェリルの魔法の御蔭で助かったよ。ありがとう」

「あっ。そんな。サムが頑張ったから出来たんだもん。無事で良かったわ」

「チェリル」

「サム」

 パンと手を叩く音。でも、慣れてしまったなぁ。

「二人は、その行為を老人まで続けるつもり? そろそろ進展した方がいいんじゃない? あたいは、心配になって来たよ」

「う、うん。考えておくよ」

「私は……」

 せっかくの、ロタノーラが心配してくれたのに。それで、もたらしてくれた好機だよ。私が此処で告白すれば、胸キュンの思いが実るかも? でも、でも。師匠の手紙の件もあって、心の踏ん切りがつかないよ。それに、サムから言って欲しい思いが強くて……。

「チェリル。どうしたの? 何だか元気がないね。悩みなら、あたいが相談に乗るよ」

「ありがとう。後で言うね」

 そして、私達は、冒険者ギルドへ向かう。巨大ミミズの亡骸の頭部を持参するために。こんなに淋しい思いは、今まで無かったなぁ。だって、道中に誰も会話が無いんだもの。


*****

冒険者ギルドに着くと、サムは真っ直ぐにカウンターへと。少しの時間は受付の者と会話してた。それが終わると、ギルドマスタールームに案内されたようだよ。
残された私は、ロタノーラに師匠の手紙の件を話す事にしたんだぁ。

「ふーん。そう言う事だったんだね。あたいの本心は、チェリルに居て欲しいよ。でも、チェリルの人生の大事な決断だからね。決めた事には、反対なんかしない。むしろ応援したいさ」

「ロタノーラ……。ありがとう。よく考えて、決断するね」


*****

 ギルドマスターの部屋から出て来たサム。私達に向かって歩いて来るけど、その表情に和やかさは感じられない。なんだか、重々しい雰囲気《ふんいき》だよ。

「依頼を受けたよ。Aランク相当の」

「へぇー。凄いじゃん。あたいは、サムを見直したよ」

「サム。どうして?」

 その依頼は、ギルドマスターから直々の命令に近いものだそう。冒険者ギルドに資金提供を莫大にしている程の街の有力者。その御令嬢を護衛して、目的地に送り届けるの。万が一にも御令嬢に何かあれば、私達の人生も破滅するかも?

「依頼主は、森の木漏れ日を御指名なんだから。やるしかないよ。今日は、これで終了だ。帰宅して、しっかりと休息すること。明日の朝、今日と同じ位に、この建物前に集合だよ」

「うん。了解」

「了解したよ」

 なんだか、初冒険よりも緊張してきたよぅ……。今夜は、眠れるかなぁ?



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