蓮月銀也

小説、呟き等々……。

魔導士は胸キュン! 第5話 手紙

2024-08-01 07:07:51 | 小説

 夜明けの時間だ。朝は、決まったように大体同じ時間に目が覚める。習慣って凄いと思うよ。
 昨晩は、夢を見た。最初の冒険のような夢。杖を忘れて、慌てる夢。
 あの日の素敵な歓迎会の夜から、どの位の月日がたったかなぁ……。うーん。もう三年も経過してるよぉ。今まで、無我夢中な感じで、冒険依頼をこなしてきたもん。

「あっと言う間だったなぁ」

 サムとの関係に進展が無い。胸キュンな気持ちは、むしろ増大してるのにな……。

「魅力ないのかなぁ。私……」
 
 ううん。そうじゃないよ。サムも私の事を好きな気がするんだ。私は鈍感《どんかん》じゃないもの。
 そんな他愛もない事を考えながらテーブルの上に朝食の準備をする。準備といっても、パンと珈琲だけなんだけど。すると、昨日は読まずに置きっぱなしの手紙が目に留まった。封筒から出してぇー。片手でパン食べながら読んじゃえ! 流石にサムには、見せれない行儀の悪さだと我ながら思うよ。

「くちゃ。くちゃ。師匠《ししょう》から何だろう? くちゃ」

 魔導士の師匠からの手紙の内容は、簡単に言うと仕事の紹介だった。魔導士学校の初級魔法の教師の欠員が出来る予定なので、私に就任してはどうだろうと聞いてきたのだ。
 師匠の紹介ならば、間違いなく就任は確約だよなぁ。悪い話じゃないよ。

「うーん。ちょっと悩んじゃうなぁ。返事する期限には余裕があるから……」

 パンを食べ終え、カップに残る珈琲を一気に飲み乾す。迷いをも飲み乾したい思いの強さの現れのよう。ゴクッと喉が鳴ったの……。



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