夜明けの時間だ。朝は、決まったように大体同じ時間に目が覚める。習慣って凄いと思うよ。
昨晩は、夢を見た。最初の冒険のような夢。杖を忘れて、慌てる夢。
あの日の素敵な歓迎会の夜から、どの位の月日がたったかなぁ……。うーん。もう三年も経過してるよぉ。今まで、無我夢中な感じで、冒険依頼をこなしてきたもん。
「あっと言う間だったなぁ」
サムとの関係に進展が無い。胸キュンな気持ちは、むしろ増大してるのにな……。
「魅力ないのかなぁ。私……」
ううん。そうじゃないよ。サムも私の事を好きな気がするんだ。私は鈍感《どんかん》じゃないもの。
そんな他愛もない事を考えながらテーブルの上に朝食の準備をする。準備といっても、パンと珈琲だけなんだけど。すると、昨日は読まずに置きっぱなしの手紙が目に留まった。封筒から出してぇー。片手でパン食べながら読んじゃえ! 流石にサムには、見せれない行儀の悪さだと我ながら思うよ。
「くちゃ。くちゃ。師匠《ししょう》から何だろう? くちゃ」
魔導士の師匠からの手紙の内容は、簡単に言うと仕事の紹介だった。魔導士学校の初級魔法の教師の欠員が出来る予定なので、私に就任してはどうだろうと聞いてきたのだ。
師匠の紹介ならば、間違いなく就任は確約だよなぁ。悪い話じゃないよ。
「うーん。ちょっと悩んじゃうなぁ。返事する期限には余裕があるから……」
パンを食べ終え、カップに残る珈琲を一気に飲み乾す。迷いをも飲み乾したい思いの強さの現れのよう。ゴクッと喉が鳴ったの……。