私が「新月印」と呼んで、密かに楽しんでいる消印がある。
使用済み切手の中でも、消印の丸部分がほとんど切手に押されていない物である。
これは、「満月印」という物に対する呼び名であることはご想像の通りだ。
手元に完璧な「満月印」というのはないが、その一例がこんな感じである。
消印がほぼ完璧にまん丸と切手に押されている物である。無論、消印の文字、すなわち郵便局名、押印年月日が完全に読み取れる状態でないとあまり価値は無いかもしれない。
偶然「満月」のように押印された物もあれば、窓口で記念印のように「満月」状に押印してもらうという物もあるらしい。
私が「新月印」と呼ぶ物は、完璧に偶然の産物であることが条件だ。加えて、消印の存在自体が確認できるように、台紙が残っている物が好ましい。
私が「おお!」と密かに喜んでいるのは、目打ちと目打ちの間の部分(←なんて呼ぶのか分からない)1~5個程度しか消印の丸部分がのっていないものである。
消印係の局員さんが、「あ、ちょっと失敗だったかも」と思ったような物が「新月印」である。
そんな、一見すると「押したか押してないか分からない」アクシデンタルな消印こそ、「新月印」である。
どうだろう!よく見ないとインクがのっているのかいないのか分からない位だ。
左の「七夕祭り」は、波線が飾りの房のような部分と同化しており、「小笠原」の方は波線が海の波と同化している。デザイン的にも波線と図案が一体化しており、とても気に入っているのだ!
というわけで、私が勝手に「新月印」を定義する際に用いる条件をご紹介しよう。
《新月印の条件》
①偶然の産物であること
→実際に使用された切手であり、風景印や記念印なども含め窓口でわざわざ押してもらったものではないこと。
②できれば台紙が残っていること
→消印が押されたことが確認できなければならないので、台紙ごと切り抜くか、あるいはそのままの状態の葉書、封筒であるともっと良い。消印全体が残っている状態ならばさらに好ましい。
③消印の丸部分が、切手の外枠、もしくは目打ち部分に押印されていること
→波線部分が図案にかかっていても、まあ、良しとする。極上の物は波線さえかかっていない物であることが必須条件。
「なんだ、波線が切手にのっていても良しとするのならば、それほど珍しい物でもないじゃないか」。
そんなお声も聞こえてきそうだ。
しかし先日、「休日の切手剥がし」の回で数百枚の使用済み切手を一枚一枚じっくり眺めたのだが、上記の条件に当てはまる切手は約400枚中わずかに2枚であった。さらに台紙に消印が完全な形で残っている物はその内の1枚である。(ちなみに満月印もどきも2枚確認できた。)
確率にして0.5%である。
結構珍しいのである。
だから、上記の条件を完璧に満たす物があったら、それは極上のお宝なのだ。
波線が図案にのっていても、一見すると未使用かと見まがうほどである。
昨今、郵便物に切手が貼られている割合が少なくなったように思う。
そんな中で、いつの日か、「目打ちの間1つ分しか消印がのっていない郵便」―「限りなく未使用に近い使用済み切手」―に出会えたら、すごく幸せだなあと、想像しているのである。
そしていつか、「新月印を楽しむ会」とか「新月印愛好会」なんてのができて、仲間と新月印を持ち寄ってわいわいやるのが、ちょっとした夢なのである。