烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

タンザニア 恐竜切手 1991年

2018-05-31 | 切手


私が恐竜切手を集め始めた頃に、おこづかいで買った切手である。
コントラストのはっきりした迫力のある色遣いと、トリケラトプスのかっこよさに一目惚れした。たしか、デパートの切手・コイン売り場だったと思う。


20年くらい前までは、百貨店のおもちゃ売り場の近くなどに、切手の専門店が必ずといっていいほどあった。小さなスペースだけれど、ガラスケースの中やケースの上の箱に、外国の切手がたくさん並んでいたのだ。
家族でデパートに行くこと自体、我が家では1~2ヶ月に一度くらいの大きな楽しみであったから、おしゃれをして、おこづかいを握りしめて、わくわくしながら車に乗り込んだものである。大人の買い物が終わり、みんなで喫茶店に入ってチョコレートパフェや白玉あんみつを食べたら、子どものお買い物の時間である。おもちゃ売り場へ向かい、そこを素通りして切手売り場へ向かうのだ。
そんな、切手収集の最初の頃を思い出す。


さて、そんな思い出の「タンザニア切手 1991年」をご紹介しよう。
上段左から、ステゴサウルス、トリケラトプス、エドモントサウルス。
下段左からディプロドクス、プラテオサウルス、イグアノドン、シルヴィサウルスである。

恐竜自体の描き方も、なんというか、アフリカの民族絵画みたいな色合いを感じる。独特の色遣いが私は好きだ。
存在感のある恐竜の背後を見てみると、繊細なタッチで背景が描かれている。恐竜の背後に奥行きを感じさせる。




ステゴサウルスとトリケラトプスの背後の森の描き方が細かい。神秘的な感じすらする。
エドモントサウルスの後ろに見えるのは、どうやら滝のようだ。




ディプロドクスは湖から上がって来るところで、対岸の山がみえる。プラテオサウルスの背後に生えているのはシダ植物だろうか。ラベンダーの花のようなものがみえる。イグアノドンの後ろの山も美しいし、シルヴィサウルスの背後の河原も素敵だ。
プラテオサウルスとイグアノドンの頭に額面が隠れている。ディプロドクスの頭は「Tanzania」のaを隠している。恐竜の大きさを表現する演出なのか。
こういうところも、ちょっと珍しいのではないかと思うのだ。


さて、タンザニアと言えば、フンボルト大学のジラファティタン(ブラキオサウルスの亜種)が発見された、「テンダグル」という化石の宝庫がある。
そんな「タンザニア 恐竜切手 1991年」の中で興味深いのが、「プラテオサウルス」である。「古竜脚類」と呼ばれるグループに属する。

古竜脚類(Prosauropoda)の仲間は比較的原始的な恐竜の仲間で、小さい頭部に長い頸部、円筒状の胴体、そして長い尾をもっていた動物で、三畳紀後期からジュラ紀前期のオーストラリア大陸を除くすべての大陸に分布していた。多くの種で前肢が後肢よりもやや短く、前肢後肢ともに5本の指がそろっていた。古竜脚類の手の親指には半月状の大きな鉤爪が備わっていた。この鉤爪は食物を採るのに使っていたのか防御に使っていたのか、あるいは何らかの社会的行動に用いられていたのか、その機能についてはよく分かっていない。(『恐竜学入門』p.149)

古竜脚類(Prosauropoda)はかつて、竜脚類よりも初期に現れた祖先的な仲間だと考えられていたこともあった。現在では、古竜脚類が十分に特殊かしているため、竜脚類の直接的な祖先ではなかったということが共通認識として広まりつつある。というよりも、おそらく三畳紀後期の初期には古竜脚類と竜脚類の恐竜祖先である竜脚形類の一種がいて、古竜脚類はこの共通祖先がもっていた数多くの特徴を保持した仲間であると認識されている。古竜脚類は単系統であり、系統解析を行った近年の研究によると、古竜脚類はおもに二つのグループに分岐し、一部の種がそれらの外群に位置するという結果が得られたようだ。(『恐竜学入門』p.162)


トリケラトプスやステゴサウルスなどの人気恐竜の影に隠れて、ちょっと地味な存在のプラテオサウルスだが、結構面白い存在なのではないかと思う。
最近気になる恐竜の一種である。



【参考文献】
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)
・『世界恐竜発見地図(ちしきのぽけっと 18)』 ヒサ クニヒコ 絵・文 (岩崎書店、2017年5月31日)