《レポート》5/21「ディアブ・ガッサンさんに教わるアラブ料理」 難民と故郷の料理をつくる会主催
5月21日、ヨルダン出身のパレスチナ人、ディアブ・ガッサンさんにアラブ料理を教わる会に参加しました。会場は小平市中央公民館の実習室。通称「難民お料理会」は今回で4回目。過去にもパレスチナ人、クルド人、ビルマの少数民族シャン族の方を講師に招いて開催してきました。ろばやは食材調達を担当しています。この日も暑い中、14名の参加者とスタッフが集まり、ディアブさんに「マクドゥース」「グリーンサラダ」「フンムス」という3つの料理の他、デザート「クッラージュ」と「アラビックコーヒー」の作り方を教わりました。
私自身は2回目の参加でしたが、巷の料理教室とは一味違い、講師と生徒の間で巻き起こるカルチュアルギャップとカオスが魅力のイベントです。アラブvs日本、で、今回最大の衝突(?)はスライスしたナスの揚げ方でした。先生のディアブさんは「色がゴールドになるまで」と指示。ところが日本の私達はどうしても「いい塩梅に」揚げようとして油に浮かぶナスをほぼ無意識に菜箸で回して加減を見てしまうので、そのたびに先生は「NO!さわらないで!」。最終的に、私達からすると「限りなくこげ茶色」に、「片面ずつ」「揚げ過ぎた!」と思うまでひっくり返さないのが正しいといことが分かりました。そういえば、以前パレスチナ人のマフムードさんに教わった時も、「うそー!」という衝撃が走るほどにじゃがいもをしっかり揚げていました。塩加減も不思議なもので、ディアブさんが塩をどっさり鍋に投入するとき日本の参加者たちからは「Oh!!」と悲鳴が漏れるのですが、最終的に食べてみるとおいしくできていて、あの塩はどこへ行った?という感じになります。ディアブさんは「日本の人(の反応)はいつもそう」と慣れた様子でしたが。
「アラビックコーヒー」は本来ものすごーく細挽きにした粉を使い、フィルターで濾さないそうなのですが、ろばやの業務用ミルではそこまでできず。結局ディアブさんはコーヒー、カルダモンパウダーと砂糖を混ぜたものを鍋で煮出した後、ペーパーフィルターで濾すという形でアレンジしてくれました。これが予想以上においしく、参加した方々にも大好評でした。コーヒーの苦さと砂糖の甘み、カルダモンの爽快な後味が忘れられません。
料理講習の後は、難民支援団体「パレスチナ 子どものキャンペーン」の松田さんが、スライドを見せながらディアブさんの出身国ヨルダンや、その人口の7割近くを占めるというパレスチナ系住民の状況について説明して下さいました。時々ディアブさんの解説も入ります。その国のお料理を作って、食べた後に、その国の話を聞くという流れがとても自然で、「パレスチナ」という言葉が身近になったのがとてもよかったと思います。
パレスチナ子どものキャンペーンの会報『サラーム(平和』によると、約70年前のイスラエル建国(1948年)によってパレスチナの200以上の村が破壊され、70万人以上の人が家と故郷を失いました。ヨルダン、シリア、レバノンなどの周辺国で避難生活を続けるパレスチナ難民は三世代目、四世代目となり、現在では約500万人に達して、世界の難民の4人に1人がパレスチナからの難民なのだそうです。その後も繰り返されるイスラエルからパレスチナへの大規模な攻撃、パレスチナ自治区を分断する隔離壁の建設などによってさらに難民が増える状況が続いているほか、シリア内戦によって多くのパレスチナ難民は避難先からもさらに逃げなければならない状況に追い込まれています。ヨーロッパでも難民の受け入れを拒否する傾向が強まっていることは報道で知られていると思いますが、あまりにも長い年月にわたって生命の危険にさらされていることで、教育や娯楽、文化的な環境から遠ざけられ、精神的な健康、親子関係の構築などにも問題が出ている、ということが強く印象に残りました。
内戦によってシリアから逃れてきたパレスチナ難民世帯の45%が1日1食で暮らし、91%の子供が栄養不足だという国連の調査結果があります。「マクドゥース」のようなごちそうを頂くことで、難民としてのパレスチナ人ではなく、私達と同じように、日々料理し、団らんするべき人々としてのイメージを持ち続けたいと思いました。 (早川)
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