最終話
全学年集会には一年生から三年生が出るのは当たり前だったが、どういうわけか両親達もいたのだ。いったいなんだろう?と思いながら直也は一番後ろの椅子に座った。最初に壇上に上がり話をしたのは教頭であった。次に壇上に上がったのは生徒会長で、これからの学校がどうか等、つまらない話が続き、その後は校長が用紙を読みながら長々と話す、ところが校長は最後に直也が、市町村対抗ボクシング試合で優勝を果たしたと直也を全学生の前で紹介をして壇上に呼び、何か伝えたい事があれば話しなさいと言うのだ。直也は突然の事で何を言ったら良いのか何もわからずにいた時、体育館全体を見回していると由子が立ち上がった。まさかユウコがこの集会を開かせたのか?と思った時『後は直也の一言だけ』とユウコに言われた事を思い出していた。静まり返った体育館、直也は今自分が思っている事を言えばいいのかと思い思いのまま話を始めた。
そして最後の言葉は「いじめのような事をする人間は許さない、そんな人間は俺がぶっ倒す」
と言った時、後ろに立っていた親達の中から拍手が湧き生徒達からも盛大な拍手が湧いていた。この全学年集会後、些細な喧嘩はあったにせよ全ての登校拒否をしていた生徒達ではないが徐々に学校へ通学するようになり『いじめや校内暴力』は減少していく。ユウコの言っていた通りの事が起きていたのだ。直也が存在する意味をユウコは長きにわたり直也を見ていた事で知っていたのかもしれない。全学年集会が終わり、しばらく時が流れると直也はもう中学三年生だ。もう直也の通う中学校では、いじめや校内暴力の問題はほとんどなくなっていた。そして静かな学校になったもんだなあーと生徒の誰もが思っていた事だろう。もう苦しむ事もなくなった直也。この一年間だけは。
あとは今後の進路の事だけ両親や仲間達と相談し合いながら、者面談、模擬試験、進学への道を直也と仲間達は歩いていた。直也は地元の公立高校と春樹のいた街にある私立高校を受験をする。誰もが直也と同じ地元の公立高校へ通えると思っていたが直也は春樹のいた街へ地元から2時間かかる私立高校を選んだ。直也の父と春樹の父は兄弟である。直也にとって春樹の父は叔父であった。直也は、この3年間で失った命への思い出がある地元に残る事ができなかった。ユウコは自分の気持ちを直也に告白したが直也は受け入れる事はなかった。卒業前の事である。直也の竹馬の友と言える暴走族の特攻隊長の『=宇冶木大地(うじきだいち)=』とある約束をしていた。大地は、直也のボクシングトーナメントを壁に寄りかかり見ていたのだ。直也が試合中もうろうとした時、見つめていた『ヤツ』というのは『大地』の事であったのだ。
「お前は俺とは違う、お前は強い、俺の誇りだな」
「なに言ってんだ、俺なんかどうでもいいだろ」
「試合見てたよ、お前は強くて優しい、仲間が慕うのがわかるぜ、俺はお前とは狂い方が違うの感じたよ」
「大地よ、俺はもう、地元に残るつもりはないよ」
「そう言うと思ってたよ、苦しかったろ直也、でもただ約束してくれ」
「約束なんかするかよ、お前なんかと・・・」
「俺は、これから年少に入るが、直也の拳は凶器だ絶対に使うなよ」
「年少かー、大地も覚悟してたんだよな、特攻野郎!」
「ああ、お前と同じ、覚悟して生きてきて苦しんだかな」
「たまには会いに行くよ、大地の馬鹿顔見にな、学校は年少に、近くなるからさ」
「お前、春樹の所行くんか?」
「さあな、お前に話しても意味ないし年少入れば、大地は静かになれるよな」
「ああ、お前とは違う道だったけど、面白かったな」
「長い付き合いだし、お前との約束守ってみるか?」
「あのよ、これな久美子が、俺のところにも、持ってきたよ」
「久美子のドリームキャッチャーか、大地にも渡してたんだな、それが無かったら、きっと勝てなかったよ」
直也は大地の思いを受け入れ自分の道を歩くと約束し地元から2時間先の春樹の街へ向かう。
私立高校へは春樹の自宅から通う事になった。『運命』とは言い切れないが、直也は2度と会う事はないと思っていた、あの『=加藤真一(かとうしんいち)=』が同じ高校に入学していた。高校へ通う直也には中学と同様の再び襲いかかるもの『いじめと暴力』のフラッシュバックがあったが、真一や仲間達と共に直也は『悲しみや苦しみ』を克服し高校を卒業していく。久美子のお守りドリームキャッチャーに始まり、ドリームキャッチャーで終わった直也の青年期時代だった。そして・・・
従兄弟の春樹の代わりになる大島直也は2時間先の街の高校で心穏やかになるはずだった。しかし心穏やかになるどころか直也の運命というものなのか更なる災いの問題が直也を襲う事になる。この時にはユウコは地元の公立高校へ通う事になっていた。久美子の『お守り』は6年間、直也を守り続けていく、そして高校の3年間も直也は守られ続ける。その後、高校を卒業しユウコではなく別の彼女と婚約し成人式を向かえる前に多大な衝撃を受ける直也がいた。従兄弟のはずだったが現実であり直也と春樹との関わりの本当の真実を知る事になる。
「叔母さん、ボクとハルキって・・・約束って・・・」
「父さんや母さんはボクには弟がいるからって・・・」
父さんも母さんも何もかも知りながら叔父さんも叔母さんも何もかも知りながら。近くにある公園のベンチに座っていると直也は仲良くしていた公園の主に相談する。公園の主の叔父さんは運命って創られていたのかも知れないなと言い直也をなだめるようだった。
「運命なのか?」
これまでの過去を思い出しながら過去は過去かと自分の過去への思いを清算し直也は全てを受け止める事になる。
直也は婚約者に全てを話し成人式後、結婚式を挙げた。
「直也、私、全部聞いてたんだよ」
結婚式後、妻となった彼女は直也の気持ちを考えながら告白をした。
それからの生活は穏やかで口喧嘩はあるものの初めて幸せを直也は夫婦共に感じるようになれたようだ。
「直也、たまには実家に行ってもいいからね」と、叔父夫婦は直也に声をかけるようになる。
直也は養子になったが元々大島の苗字は変える事もなく、ただ妻の苗字は大島となると大島優子となる。
完
お読みくださりありがとうございました。
高校からの大島直也は新たなポリシーの元、生活を送ります。
(仮)タイトル「HARU」としていますが、タイトルは変わる場合があります。
今現在「HARU」は第4話まで描いていますが、
その後は再編集予定で内容を含め考え新しいタイトルになる場合があります。
セイネンキシリーズ
「蒼い時のドリームキャッチャー」「セイネンキレジェンド」「ポリシーレジェンド」
また「兄妹の秘密」「白いYシャツと青いTシャツ」などミステリー小説や恋愛小説があり再編し予定しています。
かなり時間がかかると思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
恋愛小説:「巡り会い」は完了しましたので
カテゴリーより読んで頂ければ幸いです。
https://blog.goo.ne.jp/rooroo1234/c/3403da48d22acd6ef24ad9240211c761