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巡り合い<6>聖志と葉月の再会の愛と幸福

2021-02-03 12:31:20 | 恋愛小説:巡り合い


最終話


本部の会社では代休と有給休暇を合わせると30日間の自由な時間を持てるようになった聖志だったが、聖志が実家に戻ってくるのを知り森山印刷会社に赴任してくると知った事で、葉月の母親と長女が運営する観光ホテル旅館菜の花のフロントにある椅子に葉月の両親と聖志の両親は座り、2人の今後について話し合いをしていた。
お見合いや結納などはなく婚約者であり早く婚姻届を出すよう進めていく事と観光ホテル旅館菜の花の教会では両家の親戚だけの結婚式をしてから披露宴をする方向で話はまとまった。葉月と聖志の住居は、駿河家の本家の敷地内の離れに既に建築されていて、聖志は休暇2日目には、婚姻用紙を渡され両親達から早く入籍するよう言われ婚姻用紙に名前を書き2人で婚姻届を役場に提出し、旧姓野村葉月は駿河葉月と苗字が変わり新婚生活の始まる。葉月と聖志の間には4歳になる子供がいるが野村正志だったが、苗字が変わった駿河正志は聖志の胡坐にすっぽり入ると離れようとしなかった。聖志は以前に見た夢を思い出し、その夢が現実になるとは思ってはいなかった。
休暇3日目からの葉月と聖志は、2人でウェディングドレスの衣装を幾つか決めたり、聖志の車で正志も連れて3人で都会へ行き営業先だったジュエリーショップで結婚指輪を見て回り探して忙しい日を送りながら都会のホテルに一泊して実家に帰った時に、2日後に結婚式を挙げると両親達から聞き、もっと先でも良かったのにと思ったが予約されている事も聞き、葉月と聖志は従うしかなかったが結婚式の予定日は旅館菜の花からの連絡で変わった。旅館菜の花での結婚式の招待状や教会の準備や披露宴会場を準備する事を聖志の両親は確認すると、聖志の休暇6日目に結婚式の日は旅館菜の花からの連絡で決めた日で結婚式となった。教会での結婚式には、駿河家、野村家、成島家の80人が教会の椅子に座り参列していたが、参列者の中に成島奈菜の姿もあったが葉月と聖志は気づかないふりをしていた。しかし奈菜は教会での結婚式で、奈菜は葉月と聖志を見つめていたので親戚関係だったと気づいた時だったのかもしれない。
教会での結婚式後には、旅館菜の花での披露宴会場には500人が集まっていた。本部の取締役社長や営業部統括部長や営業部の第二課第三課の課長と企画部の社員や営業先の役員達や町役場の職員達や観光協会センターの職員達や大学での教授や准教授や大学の同期生等、これまで関わっていた人達だった。招待状を作成して郵送しいたのは聖志の両親と葉月の両親であったはずだったが、他にも招待状を作成して郵送した人物がいた。それは、葉月の叔父にあたる会社のトップの会長の野村藤次郎であり、聖志と葉月の両親が知らない人物にも招待状を送っていた。
河野春奈の姿や結婚式の招待状を出していない笠原結衣と大原桔梗の姿があり大学での教授や准教授の姿もあり、聖志は驚いていたが葉月は元課長で出向社員の先輩の手紙の中には笠原結衣と大原桔梗の写真があった事で驚く事はなく、聖志と葉月が通った大学での教授や准教授の姿を見ても驚く事はなかった。
司会者によって呼ばれ会場にいた数人が、マイクを通し聖志と葉月の過去の姿を披露宴会場に来た人達に話したり、ウェディングドレスの衣装替えをしたり、カラオケで歌をうたっていたり名刺交換もあったりで結婚披露パーティーは3時間ほどで終わると披露宴会場から出て来る人達と聖志と葉月の両親が会話をしたり握手をしたりで両親達はともかく聖志と葉月は少し疲れ気味であり都会の様に二次会はなかった。その後は駿河家の大部屋で親戚関係の人達が集まり今後の予定や色々な話し合いがあり聖志と葉月は黙って話を聞いていた。
そして奈菜は、聖志と葉月に声をかけてきた。
「結婚おめでとうございます、成島家は親戚関係だったのですね、今後とも宜しくお願い致します」
「すまない、親戚関係だった事を伝える事が出来なかったんだ」
「いいえ全く問題はないと思います、私にとっては先生であり個人講義をしてくれた事や推薦状に感謝します」
「ねえ聖志、成島奈菜さんの事、知らなかったの?お付き合いしてるの私は知ってたよ」
「ああ、奈菜の事は、お袋に聞いてから知ったんだよ」
葉月は実家に戻ってから両親から成島家の事を聞いていたようで、奈菜との関係も全て知っていた。
「親戚なので、これからも聖志と宜しくお願いしますね、奈菜さん」
3人での会話が続き、聖志は過去を思い返すとしどろもどろになり返す言葉はなくなった。
親戚関係の人達と話し合いが終わり、駿河家から野村家や成島家の親戚は夜遅くに帰っていく。
親戚が帰った後には、駿河家では母親は黙っていたが、父親が今後の生活の事で聖志に声を掛けてくる。
「おい聖志、葉月と正志を幸せにしろ、離れの自宅で家族を守っていけよな」
「分かったこと言うなよ、仕事と両立するからよ、覚悟してんだ」
親戚が帰った後で葉月は聖志と父親との会話を聞いて葉月は笑いながら、改めて愛情のある家族の絆と家族の大切さを思いさせられた。再会した巡り合いの愛情のある日常生活で、愛情のない苦渋の決断と切磋琢磨していた過去があったからこそ葉月と子供と30日間充実した生活が遅れると聖志は思っていた。しかし、聖志の思いとは別に両親からの思いで違う方向へ向かってしまった。入籍と教会での結婚式と結婚披露パーティーで聖志の休暇6日間の間で早い期間で行われ聖志と葉月は疲れ気味で、供の正志も疲れたのか自宅に戻ると布団の中で眠ってしまう。
4日間の休息後、聖志と葉月は疲れがとれたが葉月の体調の事で話し合う。
「ねえ聖志、来るものが来なくなってるの」
休暇10日後に葉月は体調不良になり病院の内科に受診すると内科医から病院内の産婦人科へ行くよう進められた。正志を身ごもっていた時は葉月は、つわりが酷かったが、今回はつわりはなく産婦人科でエコー検査をすると子供のが画像が見られ葉月は身ごもっていた。
看護師が聖志に声を掛け聖志と正志は診察室へ行くと産婦人科医から妊娠してから2か月半で女の子と言われる。
聖志は良く分からなったが、葉月は分かっていた。
「あの時だったのか?」と聖志は思い出した。
土曜日の休日に、お忍びで町おこしプロジェクトがどのくらい進んでいるのか1人で確認に行っていた事を聖志は思い出した。
土曜日の休日で数か月前に葉月との今後の事で野村家の父親と酒を飲み、葉月の離れの自宅に泊まり男女の関係を持った事を覚えていた。
「入籍する前に、お父さんと酒を飲んで止まった時があったでしょ」
「あの時だったのか?」と聖志は思い出す。
休暇11日目には駿河家の離れの自宅では産婦人科医から妊娠してから2か月半である事を葉月と聖志の両親に伝える。正志は保育園や幼稚園に行く事はなく葉月が仕事の時は葉月のお婆さんが正志を見てくれていた事で正志は自宅の敷地で遊んでいて外出をする事は殆どなかった事からの要望もあった。
「お父さん、外に行きたいよ、何処かに行きたいよ」観覧車では正志は喜んでいた。
残された休暇期間は、聖志と葉月と正志で3人で車に乗って外出し町おこしで建築された全ての飲食店で外食をする様になり町おこしプロジェクトで第2地区から第5区の現在の状況を観察できる事で聖志にとっては営業先を見つける事も出来るきっかけで都合が良い事だった。そして春奈が課長と室長を兼務して町おこしプロジェクトチームを動かし成功させたかを確認する事も出来ると聖志は思った。
駿河家と野村家の本家と分家ある土地が広くある第1区では、元課長で出向社員の大崎サトルの課長時期によって既に全ての整備がされていた。第2地区から第5区でも閉鎖されていた4つの民宿や旅館がありリフォーム工事後に開業を始めている為、新入社員の募集広告を出し4地区の支社役場と観光協会センターからも募集をかけていた。
第2地区から第5区では全てのテナントは3階建で1階には飲食店や御当地グルメお見上げ店が多くあり2階から3階のテナントでは飲食店もあるが個人事業主や様々に脱サラをして物作りをする起業家等また人材派遣企業が賃貸契約して働く人達がいる。そして、リサイクルショップや町の里という大型スーパーや大型ホームセンターや学習塾もあり日常生活には欠かせない企業もある。遊園地ではなく大きな1つの観覧車と高さ30メートルの展望台もあり各都心からの移住者の増加、農地が多くあるので農業をする移住者の増加、脱サラしてくる移住者の増加等で働く場所が多くある為に都会での失業者にとっては助けられる町となり若い世代の移住者の増加もある。新築一戸2階建500万円からで購入でき、新築一戸2階建ての賃貸の家賃は5万円から駐車場付きで過ごしやすく住みやすい静かな町で森林に囲まれた自然があり春の光景では菜の花畑や田んぼや森林の緑一色で、秋の光景では緑の森林は紅葉一色になり、春と秋には観光客は増加で大型バスも多くなり駐車場では満車の状態になる。古い空き家は耐震リフォーム工事をして約200万円で購入出来るようになり、都心部より家賃の安さをパンフレットでアピールしていた。
テナント家賃3万5千円で飲食店の増加、テナントでは個人事業主や個人の起業家の増加、第1区には総合病院は各地区5軒の個人の診療クリニックや保育園や幼稚園がある。私立の学校では小中高まで通学ができ高校卒業出来る。過疎化と高齢化が進む事で4地区では4階建ての集合住宅は第2地区から第5区にあり家賃は1万5000円 アパート家賃は4万円から5万円駐車場は1台1000円で 中小企業や工場や商社企業では土地代家賃は月10万円から15万円と規模によって違う。特に広い駐車場は多く整備され所々では3階建ての立体駐車場や大型バス用の広い駐車場も整備がされた。
各都心での失業者への対応は、医師や看護師、保育士や保育園や幼稚園教諭等の資格者や資格不要者、但し原付免許や普通免許保持者の条件付きで募集をして見学から面接で就職ができ様々企業によっては社員寮がありアパート等の住まいもある移住者の増加し駅の近くには交番があり2地区から5地区では駐在所は2軒ある。家賃が安く都心までは車で30分電車では1時間で通勤でき限界集落の過疎地域の第2地区から第5区の町も観光地や就労等ができる街と速い期間で変貌していた。道路が整備された事で電柱は無く歩道の地下にあり信号機もない道路で国道線では信号機があるが信号機がない事で裏道となり車両の通りが多くなり全5地区には様々なものがあり観光地として宣伝した事で立ち寄る人も多くなっていたのは、女性ならでの春奈の発想と行動力で先を見る目の付け所だと聖志は思った。休暇が終わり30日後にはグループ企業の株式会社森山印刷会社に出向き挨拶をした時には森山社長と全員の従業員が立ち上がり聖志に頭を下げ挨拶を交わした。
「駿河部長、デスクはこちらです、全ての設備は整っています」
「そうですか、ありがとうございます、役職ですが平等に普段通りに接して頂ければ幸いです」
部長なのに上下関係は全くない姿を見て、社長と全員の従業員は言葉を失っていたが聖志を見て、しばらくすると拍手と笑顔が見られた。そして聖志の出向先では営業部の部長職として出向社員となり手取り50万円と給料は上がっていた。葉月と聖志は同じ森山印刷会社で働く事になるが葉月は受付で聖志は町おこしプロジェクトアドバイザーのみの役割であった。出向先の以前の森山印刷会社の社員は10人だったが20人となり忙しい時は本社から数日間の5人の社員が出向してくる。町おこしプロジェクトアドバイザーだけではなく以前の様に役場や観光協会センターや農家や個人の起業家や商社等の企業相手と営業をしたいと聖志は本部の営業部統括部長に伝える。聖志が営業する事の意向を営業部統括部長は認める事にし役員会にも聖志の意向を話すと過重労働ではないか部長ならデスクワークのみではないか等と賛否両論あったが野村会長からの指示もあり承認された。
5人は町おこしネットサイトホームページの作成と更新をする役割があり5人は聖志の部下として勤務、グループ企業になる以前の森山印刷会社の社員達の10人は5つの地区の役場や観光協会センターから依頼を受ける企画広報印刷部門として勤務だが、聖志が出向する以前に営業部統括部長は本部から企画部のプロジェクトチームの社員達を選び、精鋭の社員10人を送り込んでいた。聖志には部長職だがアドバイザーでデスクワークでは物足りず、やりがいのある仕事にする為に職場環境とそれなりの待遇を受けるようになれた。グループ企業の森山印刷会の社長は町おこしプロジェクトによって選挙が行われ1区から5区の全域の町長になり駅名は「町おこし駅」となる。
聖志は部長として出世し出向社員となり野心というものから解放され家庭を持って愛情のある家族となった葉月は2人目の子供を身ごもり女の子を出産後には、家族の絆は強くなり騒がしい日々を送る事になる。そして聖志は父親としての覚悟を持って仕事や家庭内では忙しい日々は喜びと愛情の中で両立ができ常に笑顔を絶やす事はなくなった。
「なあ、葉月、次は3人目の子供か?長女の名前はどうする?」と聖志が葉月に言った時だった。
「こら聖志、お前は何を言ってるのか分かってるのか?葉月のいう事が正しいんだぞ」と聖志の父親は言った。
聖志は葉月に両親の前で言うと嬉しかったのか恥ずかしかったのか上を見ながら笑顔で無言だった。野心家の聖志の姿しか見た事がなかった葉月は初めて見た聖志の本当の笑顔を見せる姿が嬉しかったのかもしれない。
「そうね、出産したばかりで、今すぐには子供は作れないでしょ、でも名付け親はいるみたい」
「そうなのか?だれだ?オレは聞いてないよ」
「たぶん、聖志は知ってる人かもしれないよ」
「え?、統括部長か?オレの知ってる人ってだれだろ?」
「この手紙見て、木葉(このは)駿河木葉か小野葉か古葉のどれか選べって書いてるでしょ」
「あれ、この文字って?見た事があるな、会社の会長の文字かもしれない」
「会長なの?だったら私の叔父さんだよ、どれを選ぶ?ねえ聖志が決めてよ」
「オレなら木葉(このは)がいいと思うけどな、わかりやすいし子供でも書きやすいと思うし葉月の葉が入ってるし」
「それじゃあ、木葉に決めようね、今後先の学校の先生達も誰でも分かりやすそうだしね」
葉月と聖志は手紙を読んで話し合いながら長女の名前を決めた。
葉月の叔父である野村藤次郎は聖志が勤務している会社の会長であり他の企業の顧問もしていた。野村藤次郎は葉月と聖志の思いを知っていた為、2人の再会によって葉月と聖志の幸せになるよう考えていたのかもしれない。そして2人の結婚を早く進めるよう駿河家や葉月家の本家や分家と成島家の親戚を動かしていたのかもしれない。
名前を決めた後で聖志は過去の出来事を思い出し春奈との過去の出来事や野心を抱く女性達との過去の出来事や生徒の成島奈菜との出来事を葉月に全てを話していた。黙って聖志の話を聞く葉月だったが届いた手紙を読んで知っていたが手紙には書かれていない出来事もあり初めて聖志の全てを知った葉月である。そして2人で良く考えてみれば葉月と聖志の大学での卒論レポートは終活とサラリーマンとしての覚悟の為だけの卒論レポートであった事に気づいたようだ。
「ねえ聖志、卒論レポートには就労後の先の事は書いてなかったよね」
「そうだね、出向の事や葉月とオレの事って全く書いてないし想像もつかなかったよ」
「もしもだけど神様がいたら、今の生活って運命的だったのかもしれないね」
「そうかもしれないけど、神様っているのか?」
「ハハハ、冗談で言ってるのに聖志は真に受けるんだね知らなかったですよ」
「冗談なの?オレってどうなってんのかな?」
「以前の聖志は野心まる出しだったと思うし卒論レポートの内容を現実にして根回しとか思惑とかで考える事はなかったと思う」
「そうなのか?でもオレ、出向前に少し考えてた事があるよ、でもなって」
「実家に戻ってから私は変わったのかもしれない、子供が出来た時には野心なんて関係ないって思ったから」
「そうか環境が変われば、その環境によって人って変わるのかもしれないね、今は野心的な事はないし」
「そうね、これからは聖志は父親としての覚悟してるように見れるけどね」
「ああ、仕事と家族の事しか考えられなくなってるような感じがするよ」
葉月と聖志の会話によって互いの思いや真実の気持ちを確認していたのだろう。
そして巡り合いによって再会した愛情に恵まれ、聖志と葉月は互いに助け合いながら幸せな人生を送る事になる。家族として家庭を持ち充実した日常生活が続き仕事も充実したものになっていく。葉月と聖志は2児の母と父となり愛情に満ちた暖かい家族での日常生活が続き親戚関係との付き合いもあり見守られながら幸せな日常生活は続いていく。




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巡り合い<5>聖志の辞表は無効根回しと思惑

2021-01-09 11:32:01 | 恋愛小説:巡り合い


聖志は人事部に辞表を出したはずが、以前に会社の役員会と(取締役会)理事会での判断で辞表は先送りで無効とされていた。
しばらくすると、聖志に営業部統括部長から出張命令が出された。
「駿河聖志君、忙しいと思えるが少し話があるのだが、今大丈夫かな?」
「他の社員に任せているので、大丈夫です」
「君の会社への貢献した事を上層部と役員会で話し合いをしたのだが、人事部に提出した辞表は今すぐには認められなかったんだが君の思いを知りたいんだ」
「そうですか、率直に申し上げて思いを変える事はありません」
「そうか君の思いは変わらないのか、理事会でも決まった事だが、出張は初めてだろうが、第一課の課長としての役割として出張をする事も仕事の1つなんだ」
「そうなんですか?はい、分かりました、会社の以降なら出張します」
「よろしく頼むよ、駿河課長、頼りにしている」
人事部に提出した駿河聖志の辞表は、役員会で認めるかどうか判断をする会議でもあった。
役員会では、駿河聖志の営業部第一課から第三課までの職員の意識改革や第一課から第三課を統括した部署を作るという助け合い提案書などで、会社への売り上げの上昇で年商を上げた経緯があり、優秀な社員の駿河聖志の辞表は認められず理事会でも認められなかった。
役員達は頭を悩ませながら、駿河聖志が会社に残る策を考えるようになる。
数人の第一課で課長を務めた優秀な人材を、他の企業に出向させている事で、聖志を会社に繋がりをもたせる事を考え始める。
この時は、何処の企業に就職をするのか全く分からなかったが、人事部の部長からの他の極秘任務の話を役員会で発言をしていた。
「駿河聖志は、元同棲相手の元に戻るかもしれません」
「どういうことか?わかるのかね?」
「はい、野村葉月をご存知でしょうか?」
「そうか、だいぶ過去の事で駿河聖志と野村葉月の事を忘れかけていたよ、誰もが知ってる事だったね」
「そうです、恐らく野村葉月の勤務先で就職を考えている可能性はあります」
「現在の情報では、野村葉月は印刷会社に勤務しているはずです」
「それならば、その印刷会社を調査しておこう、しかし現在は河野春奈君と同棲していると聞くが」
「それは大丈夫です、彼らの極秘で調査をしてるのは彼女です」
「なるほど、役員会での調査だけでなく、他の調査もしているとは知らなかったよ」
「人事部では、履歴書から常に調査し、推薦枠や推薦する人材確保がもっとうですから、内定者がいれば役員会に知らせしてます」
営業部第一課の元課長を出向させてるのは、待遇や出向先からの依頼を続けるように、そのままの企業名を名のって根回しをして先手を打って出向先には投資し合併しクループ会社にしていた。
野村葉月の実家と勤務先の情報を得てから、役員達は行動に移す事を役員全員が一致で賛同された。
聖志は出張した事が無かった為、出向させる為には、幾度か出張させて慣れるよう、理事会では役員会へ指示を出していた。
営業部統括部長からの指示によって聖志は出張する事になる。
初めての3日間の出張だが、葉月の実家に近い企業の出張先があり聖志は時間が空いた時には、数年間の離れ離れになっていた葉月に会いに行く予定を立てた。
水曜日の1日目は、挨拶回りと今後の仕事の打ち合わせで精一杯であった。
木曜日の2日目は、朝早くから原稿整理に追われ、仕事が終わったのは夜中になってしまった。
金曜日の3日目は、午前中で早く仕事が終わり、午後には葉月の実家へ立ち寄る事ができたが、この時の聖志は、顔を合わせたのは、葉月の父親と兄だけであった。
土曜日と日曜日は休日この日は、葉月の実家の近くの観光ホテルの旅館の菜の花に2泊3日で泊まる事にし聖志は一大決心をする。
会社は土曜日と日曜日は休日で月曜日には、聖志は会社に出社し受付で挨拶を交わして、営業部第一課の課長と企画部室長としての部屋へ行く予定だった。
しかし、夕食後にベッドで横になっていた聖志の部屋にホテル側からの電話がかかってきた。
「駿河様、野村葉月という方から、お電話がありました、どうしますか?」
「はい、電話をつないでください」
「もしもし、聖志、久しぶり、お元気でいますか?」
「元気でいるよ、どうして泊ってる事が分かったの?」
「お母さんからきいたの、泊っているのは私のお母さんの旅館に泊まってるって」
「え、お母さんの旅館に泊まってるのか?」
「そうよ昔と違って、お母さんは女将をやってて名簿記録に駿河聖志って書いてあるって」
「そうなんだ、まったく知らなかったよ」
「あのね、大崎サトルさんって聖志の上司で出向している元課長の先輩だよね」
「ああ、僕を課長に推薦してくれたんだ、僕にも連絡があるよ」
「私の所にも時々手紙が届いて、聖志の生活環境とか、これからの聖志についても書いてあるよ」
「僕のこと?どんな事かな」
「詳しい事は、会ってから話すから、待っています」
「わかった、幾つかの仕事が終わったら、実家に帰るから、その時に手紙を見せてくれる?」
「いいよ、聖志には嘘は付けないし嘘は見抜かれるから、ハハハ」
この時の電話の会話では、河野春奈の事を伝える事はなかった。
一通の手紙を残され離れ離れになったはずなのに、葉月の優しさを感じていた聖志だったが、葉月との電話で会話をした夜に聖志は奇妙な夢を観る事になる。
「葉月の実家は、山林に囲まれた、空気の清んだ町だった。田んぼや畑、そして虫たちのメロディーが聖志の心を休ませてくれる。葉月の実家の入り口で、小さな男の子が砂遊びをしている。そして、葉月の母が、子供の相手をしている。今の時間は15時過ぎ、葉月の母は家に入り、代わりに父親が子供の面倒を見ながら縁側でお茶をはじめた。大きな旧家だ。昔ながらのつくりで、ほのぼのしている。聖志が、道で葉月の実家の様子をみていると、後ろから声を掛けてくるものがあった。どなたですか?と聖志は聞くと男女の姿であった。男性は見た事もなく、女性は葉月の姿であった。聖志は、結婚をしてしまったのかと一瞬思った。男性は葉月に知り合いかと声を掛ける。葉月は、首を縦にふり、男性は家の中に入っていった。結婚したんだねというと首を横にふる葉月だが、男性は四つ違いの兄であった。聖志と葉月は、最初は会話が上手くいかなかった。すぐに家には入らず、少し道を歩きながら話をした。春奈さんって綺麗な人ねと、葉月は聖志に話しかけた。聖志は、春奈と会ったのかと聞く。
聖志が来る以前、有給休暇をとり、葉月に会いに行き、聖志の事を全て話していた。死を考えた事も、同棲の事も、付き合っている女性たちの事も全てだった。葉月は春奈の話を聞いて、東京にいた頃の懐かしさと、聖志の事を考えるようになる。聖志は、子供の名前を葉月に聞いた。名前は「正志(まさし)」、聖志の志をつけていた、正志は聖志の子供であることを話した。「会いたい?」と葉月は聖志に聞いた。会わせてはもらえないと思っていた聖志は、首を縦にふった。「会いたいな」と聖志は葉月に言った。葉月は、写真を見せていたから、きっと正志は、すぐわかると思った。聖志は、葉月の後をついて、葉月の実家へ向かう。葉月は冷静でいられるのは、春奈が全てを話し、お膳立てをしたからだ。聖志は玄関へ入ると足がすくむ思いがあった。葉月が、帰ったよと一言を言うと、真っ先に出てきたのは、正志だった。正志は、葉月に抱えられ、誰だかわかる?と言って聖志に会わせる。しばらく無言で、正志は指をくわえ、じっと聖志の顔を見詰めていた。
「パパ」この一言が、聖志と葉月の「絆」であった。聖志と葉月は、目に涙を浮かべていた。葉月は、聖志に正志を抱かせる。正志は口をあけて笑顔で「パパ」と繰り返す。上にあがったらどうかと、葉月の家族に言われ、居間へ通され、両親や兄へ挨拶を交わす聖志。葉月や両親、兄、聖志は何から話していいやらという感じであったが、正志が話し出すきっかけを作ってくれた。正志は、写真でしか見たことがなかったはずだったが、父親の聖志にべったりで笑う。その笑顔が、家族や聖志を笑顔にしていた。葉月の両親は特に何も言わず、母は日本酒と摘まみをテーブルに持ってくる。
父親と兄と聖志は日本酒を飲みながら、正志を見ては笑い葉月が正志を抱きかかえようとすると正志は嫌がり、聖志の胡坐(あぐら)の中にすっぽり入る」
聖志は現実的でも何だ夢だったのかと思いながら起床時には汗をかき、浴衣はびっしょり濡れていた。
自分の思いが夢になったのか?マサシって誰だ?奇妙な夢だと常に自己分析をする聖志は思った。
時計のアラームが鳴り、夢によって目覚め朝になると聖志は、本来は自分の実家へ行くだろうが、実家には行かず観光ホテルの旅館の菜の花から電話をかけ少しだけ話をしたが、葉月は聖志の何もかも知られていた。
聖志と葉月の関わりは、小学校から中学校では同じクラスの同級生、高等学校では教室は一クラスで理数系を選んだ事で同じクラスの同級生になると2人は交際を始める。
葉月の実家と聖志の実家は歩いて30分ほどで、葉月と聖志の家族同士の行き来して長い付き合いがあり、2人は同じ大学付属の経済学専門学校を受験し合格した。
大学付属の経済学専門学校では2年間、その後の2年間は経済学専門大学の学生となり4年制の大学卒業生となった。
そして、2人の家族達の実家は地主で大きな旧家で、聖志と葉月の同棲生活をしている事も家族達は知っていたが、家族達は将来を見据え良く話し合いをしていた。
本来、家族達の実家は地主で大きな旧家では、両親が写真を見せ相手を選び許嫁(いいなずけ)として顔を合わせ、お見合いをするのが当たり前だったが、長い付き合いから恋愛での2人の交際は認められていたが、ただ葉月は次女で結婚する相手は長男ではならない事は変わら無かった。
聖志は土曜日と日曜日は出張後の記録を書き終えたら、ゆっくり休息して月曜日には会社へ戻るはずだったが、日曜日の朝に営業部統括部長から会社から与えられた携帯電話に電話連絡があった。
「駿河課長、今どこにいますか」
「地元の観光ホテルの旅館の菜の花に宿泊しています」
「そうですか、それは良かった、月曜日その地域の観光協会センターに出向いてくれますか?」
「どういう事でしょうか?」
「とりあえず観光協会の担当者と名刺交換と話をするだけいいです」
「それだけでよいのですか?」
「金曜日の午前中に連絡があり観光協会センターから当社への仕事の依頼があり第三課では内容が曖昧で何もわからないので現地で話を聞いてみて下さい」
「わかりました、内容の詳細を聞いてみます」
「駿河課長、よろしくお願いしますね」
これこそが聖志を出向させる為に役員会や理事会で決められ会社での根回しの先手を打つ1つだったが、聖志はまったく気づく事なく全く知らなかった。
旅館の支配人に観光協会センターの電話番号を聞いて、月曜日の午前9時に観光協会センターの担当者宛てにアポの電話連絡をする。
「営業部第一課の駿河聖志と申します、これから観光協会センターへ伺います」
「はい担当者に伝えておきます、よろしくお願い致します」
「何かの書面があれば全て集めるよう、お伝えください、30分後にはセンターへ行けると思いますので、ではまた」
聖志が観光協会センターに到着後、名刺交換をした後すぐに観光協会センター広報部の担当者5人との会話を始め話し合いをした。
5つの町は合併され周辺の環境が変わり「合併後の町おこし案」という企画書があった。
その企画書には欠点があり、聖志は全てを読み、町おこしに必要な項目だけをチェックをして企画書の内容をまとめ、聖志から質問を始める。
「企画書だけでなく、広告やパンフレット等はありますか?」
「はい、ありますが秋用のものでもいいですか?」
すぐに、テナント募集中の広告や旅館で写真と料理等が紹介しているパンフレットを一枚ずつ持ってきた。
「とりあえず見せて下さい、紅葉の秋の風景ですね、紹介分の内容は良く書かれてますね、これでも良いと思います、どのくらいありますか?」
「今現在は、テナント募集中の広告は10万枚、パンフレットも10万枚の印刷されたものはあります」
「それでは、今すぐ僕が書いた合併後の町おこし案の企画書面をファクスしてください、宛名は企画部でお願いします」
「それから出来れば10万枚を追加して印刷しておいてください、印刷会社なら印刷前の版下があると思いますので、少し安くなると思います」
「今すぐに印刷会社に連絡をしてみます」
「それから今あるテナント募集中と旅館のパンフレット10万枚の全てを当社に送ってください、今できる事から始めましょう」
「5つの町を車で案内しますので見てもらえたらいいのですが」
担当者からの依頼で、聖志は合併した5つの町の景色を見に行く事になり、車の中で左右の景色を見ながら気づいた事があった。
それはテナントでは疎らに数件の店があり、旅館の整備や道路の整備も終わっていると思い、すぐに携帯電話で春奈に連絡をした。
「もしもし春奈、僕だ、今大丈夫かい?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「新たに仕事だ、今のプロジェクトは、幾つあるのかな」
「8件あったけど、今は4件になってます」
「よし、ファクスを見てくれ、町おこし案の企画書を読んでみて、新しくプロジェクトチームを作る、人数はカメラマンを含む10人体制でやるよ」
「今見たら、ファクスが届いてますよ、これって何?企画書だけなの?」
「とにかく体制作りが必要だからな、明日には広告とパンフレットを一枚ずつ持って、会社に出社するから」
「はい、分かりました、企画書を読んで担当者を決めておきます」
「春奈は4件のプロジェクトと営業部第一課のフォローするだけでいいからな、僕が担当する」
春奈は第一課の課長になる前の様に、自分の能力を発揮させているような聖志の様に思い感じていた。
広報部の担当者3人と町の案内中に、電話で的確に指示を出していた聖志の行動力に驚きを隠せなかった。
「もう始まっているのでしょうか?」
「はい、今出来る事があるというのは、チャンスでもあるんです、広告とパンフレットで様子見です」
「広告とパンフレットだけでよろしいのでしょうか」
「だだ、どういう方向性で動くか分からないので、しばらく様子を見ながら、2週間か1か月以内の猶予を下さい」
「はい、わかりました、よろしくお願いします」
「町おこし案でプロジェクトチームを立ち上げますので、しばし待っていて下さい」
広報部の担当者3人は、こんな営業マンがいる事に衝撃的だったのだろう。
車の中での話した内容としては、町では、あまり働く場所がなく、若い世代の人は、他の地域へ流れてしまっている事、また、5人の町長の集まりで過疎化への危機感で5つの町が1つになり合併すると(約1万5千人以上となる)という事、そして、合併をしてから道路の整備が行われ生活道路だけでなく、上りと下りの左右二車線で四車線の道路が整備されていた事、元々は5つの町で観光組合だったが合併した事で観光協会センターと変えた事、小学校と中学校は同じ敷地にあり、高等学校は公立高等高校となった事
「駿河聖志さんて、ご実家は何処ですか?」と担当者は聞いてくる。
「僕の実家は、この地域です」と聖志は答えた。
「そうでしたか、やはり駿河様の御子息でしたか、恐らく町役場で勤務する同級生がいると思います、森山印刷会社で働く野村さんてご存知ですか」
「そうですか、それは心強いですね、野村葉月の事でしょうか?僕とは同級生です」
こんな世間話から聖志の実家の現在や野村葉月の実家の現在を話してくれる担当者だった。
まず最初は、駿河家の本家と分家と野村家の本家と分家のある広い地区の一つの町から始まり この地区には苗字が違う住人達もいた。
聖志の実家は資産家で地主であった為、花の栽培が主体で全てが畑となっていた為に、ガラスハウス栽培以外の他の土地の一部を更地にして、賃貸契約のテナントが中心でベンチャー企業や中小企業や個人事業にテナントを貸し、駐車場を整備するよう依頼をしていた事で、賃貸契約での不動産業に舵を切った事や葉月の実家も資産家で地主であった為、農家であったが田んぼの農地だけを残し、畑の土地では、飲食店やスーパーが中心で駐車場等を整備するよう依頼をした事や葉月の実家では、閉鎖された旅館を6階建て再改築工事をして、新たな観光地開発の為に、旅館の運営は、葉月の母は女将と長女は若女将として任せるという事や働く場所を多く作り出す事で、他の地域から働きに来るように、そして若い世代の人が移住者の人口を増やし、観光地として観光客を増加される構想を承認してる事や賃貸契約での不動産業に舵を切った事。
聖志にとっては実家の現在の情報を知った事で、旅館の菜の花の宿泊ではなく、久しぶりに実家に行き泊めてもらおうと思う聖志である。
実家の近くいると聖志は実家に電話をすると、母親が出て父親に代わると、すんなりと戻って来いと言われた。
観光協会センターでの仕事は午前中には終わっていた。実家では聖志の部屋が以前と同じように整理したままだった。
その後、午後に春奈からの電話での連絡があり、観光協会センターの担当者が車で広告とパンフレットを持ってきたとの事だった。
「それなら、すぐに広告とパンフレットを見て、問題がなければプロジェクトチームで旅行会社や本屋やトラベル関係の会社に10枚ずつ配っといてくれ」
「はい、了解しました、コネを使って配って、お願いしますと伝えるようにしていきます」
「それから、広告とパンフレットがあるなら会社に出勤せず3日間の有給休暇の用紙に書いて営業部統括部長に提出してくれ」
「はい、了解しました」
聖志は有給休暇を取れば、企画書の提出には部長達数人の捺印が必要になる時間がかかる組織に縛られる事なく自由に動けると思い、今の観光協会センターの仕事を早いうちに方向性を見いだそうと考えていた。
午後6時頃には、聖志の実家へ葉月からの電話での連絡があり、一人で葉月は聖志の実家に訪問すると聖志の両親は笑みを浮かべていた。
「よく来たね、聖志は部屋にいるから、会って良く話をした方がいいね」
葉月は聖志の部屋に入って、2人だけで久しぶりに話をしていた。
「葉月どうしたの?」
「会いたかったから会いに来たんだよ、あのね、もう限界ですと書いた手紙は聖志が嫌で書いたんじゃなくて、妊娠が分かってからつわりで吐く事に我慢できなくて書いた手紙だったの、ごめんね」
「そうだったのか、それで全ての荷物を置いて離れていったのか、僕は思い違いをしてたんだな」
「会社は退社して、東京では無理だったから、私の実家に戻って近くにある産婦人科の病院に通院して子供を授かって出産して育ててたの」
「そうだったんだ、戻ってくる思ったから葉月の荷物はタンスの中に入れてた、そんな時に別の女性と同棲生活をしてしまったんだ、ごめんな」
「私は良かったと思ってた、同棲生活をした彼女がいて、聖志は彼女に助けられたんだよね」
「うん、仕事忙しくて早く出世したくて卒論レポートを現実にしようと思ってさ、過労から睡眠障害で死を考えた時に彼女に助けられた、何で知ってるの」
「だって、出向先の元課長の先輩の大崎サトルさんからも教えてもらってたから」
聖志は、葉月の話を聞いて、なぜ先輩の大崎サトルを知っているのかと思い黙ってしまうが、葉月は自分の思いを聖志に伝えていく。
「私は聖志に会いたかったから会いに来て、誤解された手紙の意味を話したかったの、本当にごめんなさい」
聖志は葉月に、3日間の有給休暇を取った事や観光協会センターでの町おこしの依頼で担当者として仕事をしてる事を伝えた。
「えっ?観光協会センターからの10万枚の印刷依頼があったのは、聖志からのアドバイスだったの?」
「どうして知ってるの?」
「それは、今は秘密、後で教えます」
葉月は聖志に自分の当時の状況と思いを伝えると、葉月は聖志の実家から自分の実家に帰っていく。
そして次の日は、聖志は広告とパンフレットを一枚ずつ持って会社に出社する事になるはずったが、すぐに有給休暇が認められた。
聖志の出向への為の第一歩と捉えた営業部統括部長は有給休暇20日間を超えていた為、聖志の3日間の有給休暇を、すぐに認める事にした。
有給休暇1日目には、町おこしプロジェクトチームの担当者から電話連絡があり、昨日一日で3人の課長達の名刺にある営業先や新たな旅行会社にも広告とパンフレットを全て配り終わりましたとの事だった。
名刺先だけでなく使える情報は何でも使えと聖志は、常にプロジェクトチーム達に言っていた。
さすがプロジェクトチームだなと聖志は思い効果の方はと聞くと、配った先では協力してくれるとの事だった。
そして、聖志は観光協会センターへ出向き、今日はどうですか?と聞くと、旅行会社からの予約の内容について等や個人からのテナントの内容等の問い合わせの電話が少し多くなっているとの事だった。
「とりあえず、問い合わせには丁寧に対応してください」と言い少しは効果があるのかと思い、この大切なチャンスを見逃さない様にと聖志は思った。
第2弾は、追加印刷した広告10万枚とパンフレット10万部を配布出来ていない東京内の旅行会社への配布だなと思い、会社にいる町おこしプロジェクトチームの担当者へ電話でその旨を伝える。
そして聖志は、本社の役場へ行くと同級生がいて、新たに整備された全ての建物や農地等についての情報をまとめている書面があるか確認すると、あるとの事で書面をコピーしてもらう。書面を良く見ると5つの町では、新たに整備されたものは、都会にあるような国民生活に関わる建物や観光地としての条件を満たしていた。
聖志は、プロジェクトチームの担当者へ電話連絡をして、チームのデザイナー2名とカメラマン2名を決め、車で約35分で来れる事を話し観光協会センターへ来るよう指示を出す。
デザイナー2名とカメラマン2名が観光協会センターに到着すると、観光協会センターの5人の担当者と聖志達は今後のプロジェクト企画会議を開き話し合いをする。
そして、観光協会センターの担当者を10人出来れば20人に増やす事を問い合わせの電話が多くなっていくと5人では対応不可能になる事を前提として要請した。
森山印刷会社ではパソコンでは、イラストレーターのソフトでレイヤーを使いA4サイズで広告とパンフレットのデザインをしていた為、チームのデザイナー2名を森山印刷会社に派遣する。
パンフレットの紅葉の写真のあるトップページだけをコピーペーストして、パソコンを持ってきているチームのデザイナー2名でパンフレットのトップページだけを編集して、表のタイトルや裏面には新たに整備された建物を載せ、メインタイトルは「超格安町おこし見学ツアー」サブタイトルは「町おこしの里より」「料金:1人だけ:1000円:ご家族様:1000円」という広告を作成し終えたら、すぐに観光協会センターの担当者から広告20万枚を森山印刷会社に印刷依頼をするようにした。
カメラマン2名は観光協会センターの担当者2名と車に乗り道路沿いの建物の全ての写真を撮影し、聖志は電柱がない事をアピールするよう指示を出す。5つの町でも同じ事があり閉鎖していた旅館を再改築工事で5つの旅館を開催され、役場は本社は聖志の実家の役場と4つの町では支社となった事を聖志は聞いていた。
聖志は、久しぶりの営業周りで、懐かしくなり初心を忘れない入社当時を思い出していた。
まずは名刺交換から始まり顔見知りになり、最初は全ての情報を取り何をしたいのか、担当者の意見や状況などを把握する事から、聖志の手腕が問われる事になる。
営業から企画を立て見積もりは後で作り、まずは行動に移しチャンス見逃さず、交渉していくのが聖志のやり方である。
もしもだが、この案件が自分が担当する事になると、5つの町の地域を発展させる大きなプロジェクトとなり、常に葉月の元にいる事が出来ると聖志は考えていたのかもしれない。
聖志は、旅館の菜の花に宿泊せず、3日間の有給休暇の時は、自分の実家に帰って家族に声を掛ける事なく自分の部屋で泊まる事にした。
「せっかく帰って来たのに、話し合う事も出来ないのか?全く礼儀正しくない、どういう教育をしたんだ」
「お父さん、聖志は疲れてるのだろうから声を掛けなくてもいいじゃない、休暇を取っても仕事の事で頭がいっぱいなのよ」
森山印刷会社で印刷する20万枚の広告はいつになるのか、印刷後には何をすべきかを考えていたが思いつかず、町おこしの両親に詳しく話をする事にした。
「父さん、町おこしについて聞きたい事があるんだけど」
「お、話に来たな、この馬鹿たれが、もっと早く来ればいいのによ、なんだ」
「町おこしって5つの町の合併から始まったの?何で葉月の実家と家の実家の土地だけに、旅館や飲食店や企業や個人事業主の会社が多くあるのか?教えて」
「合併前に役場から道路の整備計画があるので道路になる土地を売っていただけませんかって頼まれんだ、それで聖志が高校卒業前に道路になる土地代とか町おこしの事を役場と話し合ってたんだ」
という事で、聖志は父親から町おこしが始まった時の事から教えてくれた。
詳細は聖志の地区の町は、聖志が育った町が一番広い町だった、そして当時は町長も町おこしになるからと言われ、土地の面積を調べてから道路になる場所の土地を売却する事になり、葉月の実家のと聖志の実家の土地だけではなく他にも土地を持っている人達も協力して、土地を売買していた。
最初は聖志が育った地区の町だけで、道路の整備が始まり電柱はなく電柱の代わりに道路の歩行者道路の地下に作られ、町おこしが始まっていた。
そして葉月の実家では、閉鎖されていたが改築と増築工事をした旅館の菜の花の運営を任され、葉月の母は女将となり長女は若女将となっていた。
旅館の周辺では、飲食店等やお見上げ店等を増やし駐車場も整備された。
聖志の実家では、起業家やベンチャー企業関連や個人事業主の会社を呼び込む事になり駐車場も整備され、他の地域から働く社員や職員達の為に集合住宅やアパートや戸建ての住宅等も多く建設されていた。
私立の小学校から高等学校まで、そして保育園、病院、スーパーマーケット等の生活に関わる場所が次々と建設されていったとの事だった。
役場では町おこしプレジェクトという事で、企画やプロジェクトチームがあるという企業に依頼してようだった。
その企業というのは聖志が推薦で選ばれ勤務している企業で企画広告代理業の会社であった。
聖志は父親に企業の担当者って誰かと聞くと、名刺が残されていてプロジェクトチーム担当リーダーの名前は、元営業部第一課の課長の大崎サトルという人物だった。
聖志は、同姓同名なのか?とも思ったが、間違いなく出向している元課長の先輩である事を知った。
その後は、隣接している他の4つの町は過疎化が進み危機感から、各町では各役場に相談し5つの町での町おこし計画案が出されたとういう事だった。
4つの町では空き家が多くあり、リフォーム工事をして、移住希望者を増やそうとする企画書もあり、企画書の内容には道路の整備する事の内容も書かれていた。
そして4つの町では道路沿いにテナントを多く作り、脱サラした起業家や農地があるので農業に従事する人材を集めようとする内容も記載されていた。
聖志は驚く事ばかりで、今の町おこし企画に自分が担当になった理由を知った。
営業部第一課の元課長の大崎サトルの事を知っているはずだが、営業部統括部長からは何も言われてはいない。
これは誰かに巧妙に仕組まれたものだったのだろうか?と思う聖志だったがプレジェクトの導きと思考を変え考えていたが、気になるのは「大崎サトル」という人物とは何者だろうか。
社員を導いていく人物だったのだろうか?と聖志は思うようになり自分の名刺を両親に渡すと、大崎さんと同じ会社に勤務して、現在の聖志は営業部第一課の課長になってた事を知らなかった両親だった。
聖志は勤務先や自分の立場を両親に伝える事はなかったのは、営業回りでの忙しさで伝える事ができない状況が続いていた。
「父さん、母さん、ごめん」と聖志は謝るが、両親は首を縦に振り笑顔で愛情からか「聖志、町おこし企画、頑張れ」と応援してくれた。
有給休暇2日目には、再び町にある整備されている建物を見て回り、全ての建物や農地やテナント等についての情報をまとめている広告の裏面の書面の内容を確認していく。
午前中に早い段階で森山印刷会社で印刷した20万枚の広告が観光協会センターに届き、聖志は広告の表と裏を確認し、デザイナー2名に20万枚の広告を持って、すぐに車で東京の会社の企画部へ届けるよう指示を出し、午後から以前と同じように、東京の会社にいる町おこしプロジェクトチームの担当者達に新たに印刷した広告を旅行会社や本屋など様々な場所に配布し、大型バスで超格安町おこし見学ツアーの曜日を考え、配布した旅行会社では、協力してもらうよう指示を出した。
その後、東京の会社にいる町おこしプロジェクトチームの担当者から電話連絡があり、毎週金曜日と土曜日と日曜日で、大型バスを持つ旅行会社は協力してくれるとの事だった。
大型バスを持つ旅行会社は必ず協力してくれると考え、旅行会社にとっても大型バスを動かせる事は利益にもなる、多くの旅行会社は聖志の営業先でもあったからだ。
観光協会センターの担当者にも、その旨を伝え聖志は今後は様子を見る事にしたが、観光協会センターから中小企業やテナント希望者等からの多くの電話が絶えないと言う事だった。
また、合併前の4つ地区の役場でも移住希望者やテナント希望者等からの問い合わせが多くなっているという事、旅館への予約件数が多くなっているとの事だった。
「超格安町おこし見学ツアー」の広告での宣伝で効果があると、見えないものが現実味を帯びて、やっと動き出したと確信した聖志だった。
有給休暇3日目には、多くの旅行会社は聖志の営業先で聖志は企画アドバイザーでもあった。
午前中には直接的に聖志に連絡があり、旅行会社の担当達と話し合いをすると「超格安町おこし見学ツアー」のツアー客の予約や旅館の予約の問い合わせの電話もあり、どう説明したら良いのかわからないという事で、超格安町おこし見学ツアー広告を見ながら説明し広告の裏面を見れば対応できるのではと、聖志はアドバイスをすると旅行会社の担当達は納得した。
その後、4つの地区の役場を回りながら、移住者希望等の問い合わせ内容を聞きながら、職員達に対応マニュアルを作成し対応していく事が賢明かと思いますと、チャンスを逃さないよう対応をして下さいと聖志はアドバイスをしながら、午前中で仕事を終わらせた。
何故なら聖志は4つの町おこしの基礎を築き上げ、後は役場や観光協会センターが独自で対応していけば必ず成功するだろうと聖志は思った。
そして、基礎を築き上げた後は、春奈を営業企画プロジェクトチーム担当リーダーと任命して、聖志は担当リーダーから外れ他の仕事に専念し辞表が受理されるのを待つ事にした。
聖志は、春奈に電話連絡をして、全ての営業部のフォローと企画プロジェクトチームのリーダーを務めるよう伝えると春奈は頷きながら理解した様だ。聖志は春奈を課長に推薦して課長である自覚と覚悟と野心を持たせる目的でもあった。
食事をとり一段落した午後には、聖志は20分の道を歩いて葉月の実家へ向かい、葉月への思いや今後の事を話し合おうとするが玄関前では少し緊張感を抱いた。
しかし、玄関を開ける声を掛けると子の姿を見て、その緊張感はなくなった。
「こんにちは、聖志です、誰かいますか?」と玄関を開けて声を掛けると聖志の前で姿を見せたのは子供の姿だった。
「お母さん、お父さんが来たよ、お父さんが来たよ」と子供は部屋の奥にいる葉月を呼びに行った。
「驚いちゃったよ、町おこしの仕事で忙しいんじゃないの?」
「もう、僕にはやる事はないよ、担当リーダーから外れて担当者は別の人に任せたから」
「別の人って誰?河野春奈さんでしょ」
「何で知ってるんだよ」
「ある人からの手紙で聖志の行動は、お見通しです」
「もうしかしてだけど、手紙の相手の名前は、大崎サトルじゃないのか?」
「玄関で話す事じゃないから、私の部屋で話しましょ」と葉月は聖志に言った。
葉月は聖志を自分の部屋に案内しながら、子供の名前知ってるのと言うと聖志は夢の事を思い出した。
「もしかしたら、子供の名前は、マサシだったりして」というと葉月は驚いていた。
「何で知ってるの?」「奇妙な夢を観た事があってさ、子供が出てきて、マサシってな」
葉月の部屋の中に入ると、子供がブロックの組み立てをして遊んでいた。
「ねえ、聖志、子供の名前の漢字で書くと、どう書くか知ってる?」
聖志は少し考えたが、分からずにいた。
「正しいと聖志の志を取って、正志って書くんだよ、聖志の子供だからね」と葉月が正志を見て声を掛ける。
「お父さんだよ、お父さんの顔ずっと見てたから絵も書いてるよ」というと正志は聖志の胡坐の中にすっぽりと入った。
そんな姿を見た葉月は聖志の驚く顔を見て笑っていた。
「お母さん、ジュースが飲みたい、お菓子も食べたいよ」と正志は聖志の姿を見ても平気だった。
「はいはい、聖志は何が飲みたい?コーヒーだよね」と葉月は言った。
こんな会話が続くと聖志は、まるで愛情があって家族のようだと思うと言葉を失っていた。
「正志はオレンジジュースでいいですか」「うん」
そして、葉月は飲み物やお菓子を持ってきたが、白く塗られた木箱も持ってきた。
「聖志、この木箱は、私が大切にしていたものが入ってるの、見たいでしょ」
「ああ、見てもいいのか?」と聖志が言うと葉月は木箱の蓋を開ける。
木箱の中身は15通の手紙が入っていて、聖志は手紙の裏を見て書いた人を確認する。
「なるほどね、全て同じ名前だな、大崎サトルか」
「全部、聖志の事ばかり書いてあるの、聖志の勤務状況と営業活動や女性関係と生活に関わる内容ばかりだよ」
聖志は、一通ずつ手紙を読むと、本当だ僕の事ばかりで、葉月は聖志の全てを知らされていた。
「出向している元課長の先輩の顔を見た事あるのか?」
「見た事はないけど、手紙が届いていると、まるで幽霊の言霊みたいって思ってた」
「僕は、電話で話した事はあるけど会った事はない、幽霊の言霊か面白い表現だ」
葉月は河野春奈と会い、全ての事を話した事を聖志に明かし、春奈と同棲生活をしている事も知っていた。
正志は聖志の胡坐の中で眠っていて、マサシを布団に葉月と聖志で布団に寝かせる。
「なあ、葉月、今後はどうするか考えてみるか?」と聖志は葉月に言った。
「ねえ、それって、プロポーズの言葉ととらえていいの?」
「今は分からない、会社に辞表を出したけど、まだ承認されてないし、後は1つだけ最後の役割があって新入生の面接官をやってから受理されるかもしれないしな」
「そう、組織ってそうなんだよね、良く分かる、私もそうだったし、今は実家に帰って良かったと思う、明日は会社に戻るの?」
「ああ、会社に戻って色々と整理する事があるから、実家に帰ってくる時があると思うから、また話し合おう」
葉月と聖志は、この日の夕方まで2人で自分達の思いを確認しながら話し合っていた。
有給休暇3日間が終わり聖志は会社に出社すると、聖志の机の上には、営業企画書は山積みになっており課長の捺印を押していた。
その時に人事部から第一課営業部に戻った聖志に電話連絡があり、12月そろそろ履歴書を読み、新入社員の内定者を選ぶ時期が来ているとの事だった。
担当は人事部の課長と営業部第一課の課長の聖志が担当する事になっていた。
そして、人事部の部長からは入社試験の内容は聖志に全て任される事になり、聖志は営業部での全社員の意識改革をした時の事を思い出しながら、入社試験の内容を考えながら作成していく。
問題は、自分の長所と短所を書く事と自己分析や発想力や行動力を文章で書くことが中心で、あとは文章の問題によって、レ点チェックシートの内容を採用した。
そして聖志は人事部に試験用紙を届けて試験内容を人事部で確認と精査してもらう事になるが、内容を読んでもらい人事部長からは次の日に承認された。
募集をすると200人の履歴書が会社に送られていた。
人事部の課長と聖志は全ての履歴書を読み、入社試験定員は100人に絞り込まければならなかった。
試験後には、更に入社試験に合格した70人に絞り込み、内定者として面接の日時を記載した書面を送る事になる。
会社の規模を広げる為には過去では30人であったが、更に会社の規模を広げる事と定年退職者が多くなっているとの事で以前よりも多く内定者は70人雇用する事になった。
4年の大学を卒業者で、経済学専門の大学卒業生と他の企画に関わる大学卒業生に限られた条件付きだった。
営業部では50人、企画部では20人、営業部では第一課から第三課に振り分けられる事になり、面接で企画部を選択した学生は企画部に配属される。
面接官は人事部長と人事課長と営業部の社員と企画部の社員と、面接官の聖志は履歴書と卒業論文のレポート内容で部署を決める役割があり人事部に決定した書面を提出する。面接期間は2月1日から一日10人で7日間、入社日は4月5日で、ホテルで入社式が行われる予定がたてられる。
面接が始まり面接期間は2月1日から一日10人で7日間であるが土日も休日出勤で休みなしで始まった。
一人30分以内で午前5人午後5人に分けて人事部長と課長と営業部の社員と企画部の社員からは質問する。
聖志は書記の役割で履歴書と卒業論文のレポート内容を見て記録を取るだけで質問する事はなかった。
最終日の最後の入社試験は受ける事がなく推薦状があった奈菜はスーツ姿で面接に来た時は、人事部の課長と聖志は質問をするようになる。
人事部の課長の質問は5分で終わり聖志以外の面接官は、面接室から出ていき、面接室にいるのは聖志と奈菜の2人となった。
成島奈菜については、個人講義をして誰よりも知っていたのは推薦状を提出した聖志けだったと面接官達は知っていた。
大学での聖志は経済学だけはなく男女の心理的な事や社会人としての覚悟なども講義していると、常に一番前の席の中央に座り講義を聞いていた事で、奈菜が信じられるのは聖志だけだった。
奈菜の卒業論文レポート内容を見ながら聖志は次々と質問をし営業部第一課の社員になれるかどうか試す事にした。
個人講義をしていくうちに男女の関係を持つようになると、奈菜は自分の過去の生い立ちの全てを聖志だけに話を打ち明けていた。
奈菜は、人との関わりや交流が出来ず孤独に生きていた人生を送っていたが、卒業論文レポート内容には社会人になり会社員となる覚悟や人間関係や人との交流や会社への貢献や心理的な自己分析や相手への尊厳や尊敬心やコーチング等の内容が含まれていた為、営業部の課長として聖志は1つ1つ確認するかのように質問し答えるよう接していた。
「奈菜、久しぶりだね、君は営業部第一課に配属になれるよ、たぶんね」
「ありがとうございます、先生との出逢いと2人だけの個人講義で自分自身についても考えながら経済学の予習復習してました」
「そうか、それは良かった、君との関わりは、僕も勉強になりました」
「先生は以前とは違い丁寧語を使うのですね」
「ああ、それは今の僕は営業部第一課の課長として話をしてるんだ、どうして僕を先生というのか教えてください」
「私にとっては、今でも先生であって、いつまでも先生なんです、入社したら変わるかもしれませんが」
奈菜は微笑みを浮かべながら質問に答えてくる。
「それから私は、春奈さんから先生の事を聞きました」
「春奈と会ったのか?どんな事かな?」
「それは春奈さんとの約束で秘密です、私も変わらなければと思っています」
「成島奈菜さん、君のレポート内容を実行する事で、きっと変われると思いますよ」
聖志は奈菜との会話で、春奈が密かに自分の為に動いていた事に気づいた時で質問は終わり、聖志は奈菜を会社の1階までエレベーターで降りて玄関先で奈菜を見送ったが、気になる生徒だっただけに、成島奈菜の過去を調査していた。
本当の両親は事故で亡くなり、奈菜が1歳の時に施設に入った時の旧姓の名前は小島奈菜であったが2歳の時に、子供が出来ない夫婦は施設を訪れ奈菜を養女として引き取り、成島奈菜という名前となり奈菜は本当の両親の事は記憶にはなく、育ての資産家の両親に何不自由なく可愛いがれていて両親とは仲良く育っていたが、小中高と人見知りがあり生徒達や他人との交流が出来ず大学生になっても社交性は全くなく、講師だった聖志との出逢いにより、聖志は個人講義をし奈菜の人生は変わっていた。
しかし聖志は、高校時代に資産家で成島家の葬儀行った時に奈菜と良く似た少女を見かけた事で、成島という苗字が気になり実家に電話をして確認をする。
聖志の母によると、成島家は資産家だった為、資産家同士のお見合いで駿河家の分家の数人の次女が嫁いでいる事を聞き、母に成島奈菜の名前を伝えると子供が出来なかった成島信二さんと京子さんの娘さんとの事で養女を迎えた事を知り受験した大学は何処か聞くと、母からは聖志と同じ大学である事を知らされた。
聖志は、親戚関係を母に聞くと苗字は違うが成島家とは親戚である事を聞かされ、聖志は奈菜とは親戚関係だった事を知ると偶然だったのか必然だったのか。
「奈菜は気づいていたのだろうか、知っていたのだろうか?」
巡り合い出逢う運命だったのかと思ったが、血縁はないが奈菜に親戚関係の事を話す事はなかった、いずれにしても後には知られるだろうとも思った。
奈菜の現実を知った聖志だったが、奈菜との過去の関係については冷静になり今後は会社員として距離を置き接していこうと判断した聖志だった。
そして、この時に聖志は、この面接が最後の仕事だと思い辞表が承認されるだろうと思っていた。
聖志は会社の仕事から全てを退き、今の自分がすべき事を考えていた。
聖志が思い描いた人生とは、会社を辞めて実家の町の第1区にある商社会社で営業する事を考えていたが、その人生は叶うかどうか。
これまでの給料は、手取り40万円、葉月の田舎へいけば、半分にもならないだろう。
聖志は、給料よりも葉月の姿を思い浮かべ、家族を選ぶ事になるのだろうと考えていた。
しかし、営業部統括部長から会社の営業部第一課の元課長の社員として出向の話があった。
「駿河君、君の辞表を承認する事は出来なくなった、取締役会と役員会で判断した事で、会社の社員として元課長の社員として出向の辞令が決定した申し訳ない」
「え、どうしてでしょうか?」
「君への対応として、それなりの最善の待遇で出向させるという事に全員が一致し辞表は無効となったんだ、そして会長の鶴の一言で取締役会(理事会)や役員会では、会長の指示には従うしかなかった」
「そうですか、わかりました、ですが出向先は何処になるのですか?」
「駿河君の実家の株式会社の森山印刷会社の営業部が出向先になると思うが、どうかな?」
「サラリーマンですので会社の指示に従いますが、有限会社ではなくなったのですか?」
「実は、町おこしプロジェクトの時に、会社の規模を広げる事で印刷機など設備投資をしてグループ企業になって株式会社になっていたんだ伝えず申し訳ない」
「いえ、そんな事は気にしてはいません、出向先が近くで良かったです」
「プライベートの話がするが、野村葉月さんと実家は同じだったね、過去の話を聞いていたんだ」
「葉月との事は知られていたんですよね、僕は分かっていました、もしかしたら部長は葉月の事を知って出向先を選んだのですか?」
「いや、そうではないが今後もプロジェクトアドバイザーとして町おこし企画に関わって欲しくてね」
「出向先でもプロジェクトに関わるのですか?」
「まあ、そういう事だ、それから1か月に3日間は会社に来て企画部のサポートと営業先の接待をしてもらいたいんだが役員会からの依頼なんだ会長も私も断る事は出来なかった」
「営業部統括部長と会長も大変ですね、わかりました、役員会は何かと偏屈ですね」
営業部統括部長と話をしてると聖志は自分の卒論レポートの内容を思い出し、聖志の幸せも考えてくれたのではなかろうか?
聖志は全てを退き今の自分がすべき事を考えていたが、営業部統括部長と話し合う事で頭の中では考えすぎていたのかもしれないと聖志は思ったのだろう。
営業部統括部長からの臨機応変な性格がある聖志を出向させる為に、会社での根回しと考える聖志であったが、そんな事など気にする聖志では無かった。
サラリーマンとしての覚悟は、聖志が大学卒業時の卒論レポート内容に書いていた事で、当時の常務取締役と人事部長に大学の教授から推薦書と卒論レポートは届けられていた。
覚悟とは野心を持ち根回しや思惑や臨機応変で自由な発想で企業への貢献する事や出世後は社員達の意識改革等そして社員達は人材ではなく人財(財産)であるという事が書かれていて聖志は自分自身も変わっていけばならないという考え方を持って大学の卒論レポートの内容を現実のものとしていた。
どんな組織の環境であっても様々な環境に、すぐに慣れる事も聖志の能力の1つである事を現在の営業部統括部長も卒論レポートを読み見抜いていたようだ。
そして組織の中でも自由にさせる事によって年商を上げる為に会社に貢献できる優秀な社員でもある事も気づいていた。
営業部統括部長は会社の会長とは切っても切れない関係である事や極秘任務で春奈が聖志の身辺調査や身辺整理をしていた事や役員会などで聖志への対応など上層部全体で今後の対応を話し合った事を辞表を出していた聖志に全ての出来事を営業部統括部長は話していく。
会社の会長の名前は「野村藤次郎」であり、野村家の分家の親戚で葉月は姪にあたるという事で葉月や駿河家の聖志の全てを知っていて、それなりの最善の待遇で出向させる為だけでなく聖志の幸せも考えていた様だった。
上層部では様々な聖志への対応について様々あったが、野村会長の鶴の一言で上層部では会長の指示には従うしか無かったが役員会の条件だけは断る事は出来なかった。
聖志は、営業部統括部長からの話を黙って聞いていたが、弱さを見せない聖志でも心の中では弱さがあり様々な出来事があり気になっていたのだろう。心の中では負担や重荷や後悔がある事に聖志は気づいてしまったが、社内で人目を避け1人になると初めて聖志は涙が溢れてしまう。
しかし全てが明らかにされた事で負担や重荷や後悔から解放感を感じて喜びを感じて、聖志は何度も深呼吸をしてから社内の業務に戻った。
そして聖志は町おこしのプロジェクトの基礎を築いたあと全ての業務から退き、春奈に全ての営業部のフォローと企画プロジェクトチームのリーダーを務めるよう伝え、聖志の目を合わせると同棲生活では野心を抱く目つきだったが、野心を持たない聖志の優しい目を初めて見た春奈は下を向き涙をこらえて頷きながら理解した様だった。
春奈は聖志と葉月との「心の絆」という愛情が深く長きにわたり繋がっているのだと、元課長の出向社員の先輩の言葉を再度思い出し、春奈は12歳も離れた彼への思いと関係を真剣に考えるようになっていた。
いつもの通りに聖志は社内を歩いていると、野心を抱く事はない聖志には社内は全く別の世界にいるかのように感じていた。
野心を持っている時には全て記憶に残されていたが、野心を捨てた聖志が室長をしている企画部の部屋に入るまでに多くの社員達から挨拶をされたのか全く記憶に残る事はなかった。
企画部の部屋へ入り椅子に座るとテーブルの上にはプロジェクト企画書などの書類が置かれていて聖志は目を通すだけで、営業部第一課の課長の椅子に座ると営業企画見積書があり捺印をする聖志だった。
聖志は営業部の職員達を歩きながら見回していると春奈は言葉はなく静かに気づくまで、聖志の机の前に立っていた。
いつも通りの春奈の表情と姿で営業企画見積書を読んで持ち手渡されるとハンコの捺印をしていくと、最終のページに付箋(ふせん)が貼られていた。
笠原結衣、大原桔梗、成島奈菜の身辺整理はつきました。私の気持ちも整理出来ました。
後は私が全ての彼女達を引き受けます駿河課長の営業先も私が全てを引継ぎますと書かれていた。
元課長の出向社員の先輩と春奈は長きに渡って何でもどんな事でも話せる関係が築かれていた事で春奈は気づき先輩からのプロポーズで婚約から結婚をする事になる。
そして春奈は両親に電話で先輩の大崎サトルとの婚約の話をしてから、両親に彼を合わせていた。
聖志には元課長の出向社員の先輩から聖志に婚約と結婚の手紙が届けられ、聖志は春奈が幸せな人生を送れるだろうと思った。

春奈は聖志が辞表を出したタイミングで、聖志から距離を置くよう笠原結衣と大原桔梗に伝えると彼女達は、聖志との男女の関係は断つ事になった。聖志が辞表を出したタイミングで出向命令が出されるという噂があった時には春奈は第一課長の聖志の仕事の全てを引継ぐ事を伝えていた。
笠原結衣と大原桔梗は河野春奈を本当に信じられるかどうか試していた頃でもある。
常連客も増え年間の年商も上がった事で、全て春奈に任せる事になったが、女性に接待はできるのかと不安を感じていた時に、常連客でもある営業部統括部長が聖志の接待していた店に出向くと笠原結衣と大原桔梗に、第2課と第3課の男性の課長が接待する事と、毎月3日間は全ての情報を持つ聖志が接待をする事を伝えると彼女達は納得したようだ。
全ての情報とは笠原結衣と大原桔梗には黒皮の手帳の中に書かれたもので、聖志は手帳に書かれた情報の全て知ってメモリーカードに保存していた。
会社の本部には毎月3日間は聖志は出勤し定時後には、高級料亭と高級クラブで接待をする事を営業部統括部長から聞いていた。
そして新情報があれば聖志に伝える事が出来ると笠原結衣と大原桔梗は思い、彼女達は第2課と第3課の男性の課長と春奈に黒皮の手帳を見せる事はなかったのは聖志以外に知ってはならない内容もあったからだ。
聖志との男女の関係は断つ事が出来たが信じられるのは聖志のみ彼女達には、まだ野心というものだけが聖志との繋がりでもあった。
この付箋の意味は、聖志はこれまでの事がどういう事だったのか考えていたが気にする事には当たらないと思っていた。
春奈は、自らの片思いの恋と聖志の自殺未遂(診断書には過労による睡眠障害)を隠し、聖志が生きたいと思えるようになるタイミングを計っていた。だからこそ聖志を見守り支えながら自由にしてくれていた春奈だった。
春奈の両親から同棲相手の聖志に会わせるようにと言われていたが、春奈の先輩への気持ちに変化した事で会わせる事をしなかった理由も聖志は理解していた。
聖志は手取り40万円という高額な給料よりも葉月の田舎へいけば半分にもならないだろうと考える聖志だったが、家族を選ぶ事になり春奈であれば接待以外は自分の後を引き継ぐ事もできるだろうし、企画部や営業部他の社員も、それなりに一人立ちをしていると聖志は感じ取っていた。
聖志は上司の営業部統括部長に退職の話をし、田舎でも小さいながら同じ業種があると話をする聖志だった。
しかし上司の営業部統括部長からは今後も続けられないのかと言われ、一身上の都合で辞表を受け取ってもらえたが役員達には聖志へ対処する思惑があった。
春奈の聖志の身辺調査を元に観光協会や役所からの依頼を全て請け負っている印刷会社に聖志は就職すると考えてられ、今まで勤めた企業から田舎の小さい企業への仕事を回せると思っていたのだろう。
この頃には春奈が持っていた依頼した興信所の情報は過去の表向きの情報の内容だけであり、数年の時が過ぎ現在の葉月と家族の情報の内容ではなかったと聖志は確信に至った。
春奈が身辺調査をしている事は、しばらくしてから葉月からの連絡の手紙と笠原結衣と大原桔から聞いて人事部からの依頼を受けている事も葉月と会っていた事も全て知っていたが知らないふりをしていたが会社の役員達の極秘の思惑だけは気づけなかった。

聖志が引き出しの中と机の上の私物や書類を整理して今後の営業の仕方などの申し送りを営業部の社員達にした。
「駿河課長、会社を辞めるのですか?課長がいなくなったらどうなるのですか?」
「辞める事はないよ、ただ会社の社員として出向するだけだ、毎月3回は戻って来るよ」
「そうなんですか?社員達の中では、辞表を書いたと噂で聞いてましたけど」
「お前達は、もう自分で動けるんだから一人前になったんだよ、俺がいなくても大丈夫だ、噂を信じるな、新しい課長なるだけだ」
「え?誰が課長になるんですか?」
「俺は何も知らない俺がいなくなれば、掲示板に辞令書が提示され課長が分かると思う」
聖志は全員の社員達から尊敬されていた存在であり、大学での卒業論文レポート内容は、社会人になって会社内で現実となった事で全てやり遂げたと思うと気が楽になり野心というものは抱く事もなく、新しい人生を歩む世界を思い描くようになると、営業の仕事の内容を細かく書いて申し送りをした後に一段落ついた聖志は私物や書類を持って実家が同じ葉月の元へ向かう。
出向先の森山印刷会社に出向してから数日後に会社の掲示板の壁に貼られた人事の辞令用紙を見ると、営業部統括部長や役員達の捺印があり最後には推薦者の名前は駿河聖志と大崎サトルと書いてあり、もう1つの推薦状は聖志と先輩が推薦状を書き、人事部に提出していた事を春奈は知った。
営業部第一課の課長と企画部の室長は春奈が引き継ぎ、接待などは聖志と一緒に仕事をしていた他の営業部の社員達が引き継ぐ事となる。
掲示板に提示された辞令用紙を春奈と社員達が見ていると、春奈は社員達に挨拶を交わしただけだったが、営業部の部屋では自分の立場をはっきりさせる言葉使いだった。
「女性の課長ですが平等で普段通りの皆さんでいて頂ければ幸いです」
と聖志の言葉を引用して社員達と接していた。
会社では女性初めての課長となった事で少し驚いた様子だったが、社員達は春奈に挨拶をしてると営業部統括部長が社員達に声を掛ける。
「会社初の女性の課長だが常務取締役や代表取締役社長と会長からの推薦もあったので、皆さん宜しくお願いしますね」
課長になった春奈からの言葉で聖志と同じ様にサラリーマンの社員達は従う様になっていたが、聖志は社員達の意識改革は継続され春奈は聖志と同じ手腕でモチベーションは保たれ維持された。
聖志が森山印刷会社に出向が始まる30日後には、会社の掲示板の壁に貼られた人事の辞令用紙には部長として出向を命ずると駿河聖志の名前が記され出向先も書かれていた。
森山印刷会社の企画営業部の部長としての役付けで出世していた。
社員達の反応は、ただの出向社員ではなかったと営業部第一課長からグループ企業の部長に昇進したんだと社員達の誰もが思っていた。 
「駿河課長は知ってて、何で言わなかったのだろう、河野部長の事は知ってたのかな?」
「河野部長ってさ、駿河課長と同じ言葉を使ってると思わない?」
「そういえば、同じこと言ってて、俺ら社員のモチベーション変わってねえよな」
課長が変わっても何も変わってない事を社員達は気づいた時だった。
そして営業部統括部長から代休と有給休暇の話があり出向前に30日間、ゆっくり休んでから出向先に出勤するよう聖志は言われる。
葉月の親戚関係にある会長をしてた野村藤次郎は葉月と聖志の関係は良く知っていた為2人の幸せを考え指示を出し、聖志への今後の優遇措置対応は営業部統括部長に任せる事にした。


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巡り合い<4>聖志の為に動く河野春奈

2020-11-28 13:13:18 | 恋愛小説:巡り合い


聖志は会社を辞める事を決意し辞表を人事部に提出されていたが、上層部へは届けられず人事部で止まっていた。  
そして、人事部の部長から話があると声を掛けられた。
「時間は大丈夫かな、駿河営業部第一課長、少し話をしようか?」
「はい、時間は大丈夫です」
「君の2つの推薦状は、社員としての営業部第一課の課長として会社にいなければ、上層部に届けても無効になってしまうんだな、会社からの出向していれば問題ないだけどね」
「そうなんですか?あっそうでした、企業規約に記載されている内容の中にあるのを忘れていました、すみませんでした」
「成島奈菜と河野春奈の推薦状の内容は良く調べたんだね、しばらくは営業部第一課の課長と企画部の室長を続けてもらいたい、駿河君の気持ちは良くわかる、野村葉月と関わりがあるとね」
「どうして、葉月の事を知ってるんですか」
「さあ、どうしてかな、君達2人の事は良く知られていたんだ、色々な場所でね、成島奈菜さんの推薦状は既に大学へ届けてあり面接日も伝えているから心配しなくてもいい」
「そうでしたか、ありがとうございます、気になっていたので、安心しました」
「面接してから内定通知書は、成島奈菜さんには届くようになって、営業部第三課ではなく営業部第一課の新入社員として決めているが、課長として面接官をしなければならないね」
「そうですか、どうしてですか?」
「駿河君の辞表は面接官をしてから、上層部へ伝えるが、どうなるかはわからない、駿河君は優秀だからね、企業側の判断としては、どうなるか全くわからんよ」
人事部の部長との話し合いをしていて、面接後に辞表を承認されるだろうと思いの中で聖志は心中での重荷から解放され、安堵して笑える自分がいる事に気づいたようだ。
聖志は今何をすべきか、初心を忘れずに自分の仕事に集中する事だと思ったが。
「成島奈菜(なるしまなな)は、どうなるのか?、聖志のいる会社で面接を受けるのだろうか?」
しかし聖志は成島奈菜の推薦枠1人の推薦状を書いて人事部へ提出していたが、会社で本当に面接を受けるのだろうかと聖志は気にかけていた。
優秀な人材なので他の企業にスカウトされたらと聖志は考える事もあった。
そして聖志は出向している元課長の先輩に連絡を取り、成島奈菜の推薦枠1人の推薦状について相談をしていた。
「人事部から聞いて、成島奈菜の推薦枠1人の推薦状は大丈夫だよ、あまり気にする事はないと思う、人事部が動いたからな」
「そうでしたか、わかりました」
「それから春奈君にも伝えておくよ、彼女には知ってもらう事にしたから」
「そうですね、彼女の性格上、その方がいいですね」
しばらくしてから河野春奈は、推薦枠は1人という事などを他の企業に出向している元課長の先輩から聞いて、就活をする成島奈菜の推薦状は大学へ届けられている事を春奈は知ったが誰が推薦したのかは知らされなかった。
そして、もう1つの推薦状がある事も春奈は聞いたが、その推薦状は誰かとは出向している元課長の先輩は春奈に伝える事はなかった。
なぜ、伝える事をしなかったのか、春奈の性格を熟知しているからで、上層部の役員達からは極秘情報と言われ口止めされていた。
嫉妬深い?いや違う、春奈の卒論レポート内容での野心は、聖志の男性的な卒論レポート内容で、葉月の女性的な卒論レポート内容では無かった為だった。
出向している元課長の先輩は、河野春奈には聖志の持っている男性ならでの野心と、野村葉月の持っている女性としての野心の両方を持てるように携帯電話のメールで接していた。
そして春奈は野村葉月の持っている女性としての野心とは何かと気になり考えるようになっていた。
そんな時に、上層部から春奈は優秀な人材であると認められた事で、春奈は主任として営業をしながら、上層部の役員会で決められた内容で人事部から、聖志の身辺周囲の身辺調査を極秘任務として依頼され実行する事になるが、この先にあるのは身辺調査だけでなく身辺整理もする事になる。
聖志との同棲生活が始まる中で大原桔梗と笠原結衣の2人の名刺には名前と店舗の住所のあり、店舗名が印字されているライターが引き出しの奥に入っていたのを部屋の整理整頓した時に目にした春奈だったが、聖志には見て知らぬふりをして同棲生活をしていた。
人事部からの依頼に答える為には功を奏し、極秘任務で聖志の過去や女性関係などの身辺調査が出来ると春奈は考えていた。
そして春奈は人事部長から紹介された興信所でも聖志の身辺調査を依頼し、その後は大原桔梗と笠原結衣の2人と会い、聖志との関係について聞く事にした。
人事部では履歴書を見て常に新人社員の成績や家族構成や人間関係や性格などの身辺調査をしていたようだ。

高級クラブと高級料亭に何度か春奈は電話連絡をするが忙しくしていた2人とは話す事が出来なかったが、笠原結衣と大原桔梗と連絡がつき、話し合う時間帯を聞く。笠原結衣と大原桔梗の2人とは、話し合う時間帯が違うが、春奈は有給休暇を取って会う事になり聖志との関係を聞いていく。
聖志と大原桔梗と笠原結衣の出会いの場は、経済界のパーティーであり何度も聖志は出向き名刺交換をしていた姿を何度も見てから笠原結衣は聖志に声を掛けていた。
高級クラブのママの笠原結衣は聖志の事を高級料亭の若女将の大原桔梗に名刺を配る聖志の事を話し、笠原結衣と大原桔梗の2人は聖志と名刺交換をしてから高級クラブと高級料亭に聖志は、たびたび足を運ぶようになり交流を深めていたとの事だった。
聖志の野心的な思いを感じていた笠原結衣と大原桔梗も野心を持っていた事で2人は聖志との深い関係になり、聖志は少しの常連客の情報を得る事になる。
高級クラブの笠原結衣は20歳で雇われママになったのは約3年程で、高級料亭の大原桔梗26歳で雇われ女将になったのは約2年程で、常連客は少なく聖志との出逢いによって常連客は増えていったようだ。
笠原結衣と大原桔梗との愛というものはなく野心的な契約で、聖志は営業をしながら接待場所は常に2軒だけで高級クラブと高級料亭に行く事になっていた。
そして常連客は聖志の接待で少しづつ多くなり、聖志は常連客の情報を得る為のものでもあり、野心を抱く笠原結衣と大原桔梗にとっても聖志の野心にとっても得になる事だった。
聖志の野心とは卒業論文レポート内容で営業成績を上げてトップになり出世する事、笠原結衣と大原桔梗の野心は常連客を増やし早く店舗の年商を上げる事で承諾していた。
そして高級クラブでは徐々に聖志の営業先の常連客が増え1年後には1日の売り上げは100万円を超え1か月の売り上げは3千万円を超え、年商売り上げは3億円前後に達成できスカウトしてホステスも増加、聖志もまた接待で営業成績を上げる社交性という手段で徐々に接待や営業先が多くなり入社1年後には営業成績を上げてトップとなり出世コースを歩き始めていた。
高級料亭での1年後には聖志の接待によって常連客が増え1日の売り上げは30万円から50万円を超え1か月の売り上げは600万円を超え、年商売り上げは1億円前後に達成していた。
大原桔梗と笠原結衣の互いの野心だけでなく野望になり男女の関係となりベットの上では何でも話し合う事や情報の共有が出来ていたからこその事だった。
そして笠原結衣と大原桔梗は聖志から聞いていて、河野春奈の名前だけは知っていたとの事で、春奈は驚きを隠せなかった。
笠原結衣と大原桔梗と自然体で話が出来たのか、それは春奈の男性的な覚悟を持った野心を2人は察知して感じ取り、聖志と同じように思われていたのかもしれない。
また、高級クラブのママの笠原結衣と高級料亭の若女将の大原桔梗は、聖志には他にも関わり深い2人の女性を知っているとの事だった。
春奈は、2人の女性について何度か聞いたが秘密で教えてもらえず、一人は元同棲相手の野村葉月の事は知っていたが、二人目の女性を考えると、春奈自身で調べる事になるが頭の中で浮かんだのは、大学生の生徒で講師だった聖志の教え子の成島奈菜だった。
そして、春奈は推薦状に書かれた成島奈菜へも直接会い、講師と生徒の関係や男女の関係の話を聞く事にした。
聖志との同棲生活の中で、知らない事ばかりだと春奈は思った。
河野春奈の野心とは、聖志の身辺整理で自分と彼女達の身辺調査をしながら、高級クラブのママと笠原結衣と高級料亭の若女将の大原桔梗と何度も会い話し合いをしながら、高級クラブの風美(かざみ)と高級料亭の味深(みみ)からの情報を取り、他の企業から仕事の依頼を取ってくる事でもあったが、この時は無理な事だった。
笠原結衣と大原桔梗の野心と野望での聖志の野心と野望という繋がりは強く、聖志を手放す事は出来ない状況であり、春奈は2人の中に入る隙は全く無かった。
しかし、聖志から出来る限り彼女達から距離を置くように春奈は動き始める事になるが、そう簡単にはいかなかった。 
春奈は時間をかけて聖志から距離を置かせる為のタイミングを見計らっていたが、そのタイミングは何時になるのかチャンスがあるのかと春奈は思っていた。
しかし聖志の天真爛漫で臨機応変な性格を考えると、春奈は聖志の影響をうけ無理をしないよう後は待つだけと考えるようになる。
そして今は春奈が心の中で感じていた自分と聖志の本当の姿とは何か?と考える春奈でもあり聖志との同棲生活の過去を振り返る事にした。
過労による睡眠障害での体調不良になって以来、何も深く考える事なく、ただ卒業論文レポート内容を現実にしようと必死に営業畑の荒波を乗り越えて生きていた聖志だった。
気づいた時には聖志は、桔梗と結衣の2人から彼女達との関わりを持ちながら生きていたが、男女の関係を断つ事が出来なくなっていた。
春奈自身と笠原結衣と大原桔梗、3人の彼女達と関係で、聖志は「愛」や「幸せ」というものを感じることはできず、野心の為だけに男女の関係は続けていた。
彼女達も互いに覚悟と野心という思いの為だけに、お互いに利用しあいながら男女の関係と情報の共有をしただけだったのかもしれない。
聖志は過労による睡眠障害で死を考え思った時点で死神にとりつかれた様に、きっと行く先は地獄だろうと思うようにもなっていた。
春菜が頑なに自殺未遂に拘り思っていたように、確かに死を考えた時点で心の中では気づいたのかもしれないと思う聖志だったと思った。
聖志と春奈の同棲生活の中で、春奈は聖志の本当の思いや本当の心に抱くものを知り見抜いていたが、それは現実的ではなかった。
そして、彼女達との付き合いが長くなると深い関係となっていくにつれ、大学での講師をする聖志は、葉月の夢を見る事が多くなっていた。
「一体誰に恋をして愛しているのか?」と考える聖志の心での思いも何となく春奈は感じ取り気づいてしまった。
恋も愛もない世界で生きているのかと聖志は思うようになり、いつしか春奈に、この男女の関係の付き合いが一つ一つ知られる事になるが、春奈は聖志との同棲生活での男女の関係で、何かを感じて考えるようになっていく姿を見せるようになるが、春奈は気づいていないふりをし聖志との同棲生活を続けていた。
春奈は、自身の今後の先を考えていたようだと思う聖志だったが、春菜の行動と姿を見ていると違和感を感じるようになる。
そして、聖志は過去の葉月との同棲生活の事を思い出すと、自分に都合のいいように彼女達を利用していると感じてしまう。
卒業論文レポート内容の中には書かれてはいない出来事で、長い付き合いの時間(とき)というものは怖いものだと考える聖志だった。
聖志には過去というものが、時間の流れの中で後悔と共に襲いかかり、2人の彼女達との関係を終わらせる事が、どうしても出来ない聖志だった。
だが、聖志は過去の葉月との同棲生活での会話と愛情のある男女の関係の夢を見るのが重くのしかかり自分の弱さに気づいた時には、必死に営業畑の荒波を乗り越えて自分の過去を思い出すと臨機応変の視野は広がり、誰もが弱さを持っていると考えると誰もが失敗しても後悔はあると後悔を乗り越える普段の自分を奮い立たせて死を考えるのではなく生きる事を考えていく。
そして聖志は普段の自分に戻り、普段通りの営業と接待をするようになる。

聖志は営業と接待をしてから、久々に早くマンションに帰ると先に春奈がシャワーを浴びパジャマを着てリビングでテレビを見ながらワインを飲んでいた。営業部第一課での情報では、春奈は他の企業への出張のはずだったが、有休をとって休息をとり聖志との今後の事を考えていたようだった。
お帰りなさいと一言だけ、春奈は声をかけてくると以前の春奈とは違うように感じ取る聖志だった。
以前の春奈との同棲生活の中では、会社での仕事の内容を話し合いをして、どうしたら営業成績が上がるのかと話していたはずだった。
「聖志さん、私たちの為には、生活の中では会社の事は忘れて、会社の会話はしない方が懸命だと思えるの」
春奈の言葉に、聖志は答える言葉はなく、春奈の思いなのか願いなのか解らないが、違和感を感じるが春奈の言葉を受け止める事にした。
春奈への違和感を感じると、聖志の心の中にあるメトロノームで前に進もうとする何かが動き始めていた。
それは優しく暖かい温もりであり、過去の後悔というものが消え始め、葛藤と苦痛という感覚が薄れていくが、聖志は気づく事が出来なかった。
「どうしたんだ僕は、神の言霊か、いったい何が起きてるんだ」
会社の職場ででも、何かが変わって以前の職場とは違う光景が、聖志は見えたり見えなかったりの繰り返しが続いていく。
いつしか春奈は、同棲生活のマンションの部屋では、仕事の話をしないというルールが作られていた。
聖志と葉月の深い関係を考えようになると、春奈は同棲生活の中で、すれ違う時間があり、春奈はルールを作っていた。
聖志にとっては、そのルールは気分を楽にしてくれるものだったが、春奈の聖志への思いは、強気で優しい葉月の姿を思い出させるのだ。
時間(とき)の流れは、葉月の事を忘れる為に、第一課の課長としての営業の仕事に集中し、または男女の関係という快楽で現実から逃げている聖志でもあった。
そして、春奈との同棲生活は4年近くになるが、時間が経つと聖志が葉月との再会を果たすような流れを作る事になる。
両親は娘の春奈の幸せを考えていたようだったが、この3年の間の時は、春奈は実家に電話する事や帰る事もなく両親と会う事はしなかった。

春奈は、何度か両親から同棲相手に合わせるようにと催促されていたが、人事部長からの極秘任務を遂行する為には、今後の事を考えると春奈は聖志を両親に合わせる事は出来ないと考えるようになった。
身辺調査をするたび葉月と聖志の関係を知れば知るほどに、当時出逢った時の様な春奈の聖志への思いは変わりつつあった。
大学の先輩だった聖志に一目ぼれしていた春奈は葉月と聖志が別れ、葉月は離れ離れになった事で、チャンス到来と甘い考えで聖志との同棲生活を始めていたが、2人の強い絆的な思いを感じてしまう様になっていた。
「私にも運命的な出逢いだったの?でも私には運命の中で彼を支えていく役割があったのかな?」
聖志との同棲生活を振り返りながら、春奈は自分の人生の流れを考えるようになっていく。
そして元課長の出向社員の先輩と春奈は長きに渡って葉月と聖志の関係や春奈に対しての仕事での意識改革や様々な事について何でも情報交換をしていた事を思い出す。
徐々に春奈の思いは元課長の出向社員の先輩に傾いていたが、この頃は本当の自分の思いに気づいていない春奈であった。
人事部からの極秘任務で葉月の身辺調査と聖志の身辺整理と、春奈自身の心の整理と笠原結衣と大原桔梗の彼女達の身辺調査で身辺整理等と、主任として今の自分の仕事を両立される事で、春奈は精一杯であったのだ。

春奈の行動や春奈の思いを全く気づかない頃には、聖志は役員会や理事会の会議にも必ず出席し会社で経営や運営の発言が許され、以前よりも忙しい日々を過ごしていた。営業第一課の課長であり企画部の室長である聖志は、企画室では特別に企画のプレゼンテーションや営業部での営業プロジェクトが組まれている。
営業部での営業プロジェクトでは、企画室の部屋では第一課から第三課での営業部の担当者も出席し話し合いをするようになっていた。
以前は企画部と営業部は、別の部署とされていたが企画部と営業部に強い繋がりを作り、聖志は更に会社の年商を上げていく事を考えるよう社員達の更なる意識改革をしていた。
聖志が電話での営業や外での営業周りや接待で役員会や理事会で居ない間は、営業部統括部長の指示によって課長代行の主任となった春奈が役員会や理事会に出るようになり、春奈からの連絡で聖志は役員会や理事会での発言内容の提案書の書面を作成し、聖志は春奈に指示と許可を出すようになっていた。
河野春奈の事で営業部第一課長の聖志は、営業部統括部長と話し合い決めた事でもあった。
「駿河課長、それならば、河野主任のバックアップでフォローして下さい」
営業部統括部長は言い聖志に全て任せるとの事だった。
聖志は春奈の出世させる今後の為に課長代行としての役員会や理事会に出席させ慣れるよう進めていく。

春奈は極秘任務の為に、聖志に相談する事もなく興信所に、現在の野村葉月の身辺調査するよう依頼していた。
春奈との同棲生活が4年目に入ろうとしていたとき、リビングのソファーの上に興信所の身辺調査書と書かれた封筒が置かれていた。
その時、マンションの部屋には、春奈の姿はなかった。
聖志は、しばらくの間、その封筒を見つめていただけで、手に触れる事さえできない一時的に恐怖を感じていたが、天真爛漫や臨機応変で自由奔放な社交性のある1つ目の性格で恐怖心を乗り越えられた。
聖志の2つ目の性格では、発想力や行動力の卒論レポート内容を現実的にする為には野心を持ち、どんな事でも乗り越える事で、会社への貢献し会社の年商を上げていき、聖志自身で営業成績を上げる事が出来ていたからだった。
春奈の行動力は速く、ある程度の情報で極秘任務の為に動き始めると、度々、春奈はマンションの部屋に帰って来ない事が多くなっていた。
接待で夜を明かした聖志は、陽(ひ)の光が差し込むと同時に、聖志は封筒を手にとり興信所の調査書の内容を見る事になる。
そして、その内容は現在の野村葉月と家族関係についての内容だった。

聖志と葉月は中学から高校までの同じクラスの同級生であり同じ大学へ入学後には聖志と葉月は同棲生活をしていた。
しかし、同棲生活後の就職には聖志と葉月の思いは、すれ違いの為に葉月は、実家へ帰省していたと詳しい内容が書かれていたが、興信所の葉月の身辺調査の内容には疑問を持つ聖志だった。
葉月の家族の情報も書かれていたが、出向している先輩から聞いていた情報とは、現在の葉月の生活内容や家族の情報とは全く違っていたからだった。
「家族の現在の状況は全く違う、過去の表向きだけの情報じゃないか、適当だな」と聖志は思った。
結婚はせず、葉月の仕事は実家の家業であり気になる事は、子供が1人いる事で4歳になる子供がいる事で聖志は葉月は実家で他の男性との間の子供だと最初は思った。
しかし、聖志は確認したい気持ちがあり、そんな気持ちを抑えながら、いつも通りの仕事を続けていた。
春奈は、封筒が置かれた日から、急に出張となっていて聖志は、なぜ春奈は出張の連絡をしないのか気になった。
常に連絡を取り合っていたはずなのに、会社にいても連絡はなくホワイトボードには出張と書いてあるだけだった。
上司の営業部統括部長に聞いたが、一週間の有給休暇をとり出張扱いにしていたようだ。
聖志は、封筒を開けた時の事を思い出し、封筒は糊付けされていたはず、しかし、その封筒は開けられていた。
先に興信所の封筒の中身を見たのは、春奈である事を確信していた。
何故、春奈はソファーの上に目立つように調査書を置いて有給休暇をとったのか。
有給までとって、春奈はどこへ何をしに行ったのだろうか。
聖志は、仕事中も接待中のときも、春奈の行動を考えていた。
聖志はどうしても、興信所の調査書の内容が気になってしょうがなかった。
春奈は、一週間後、マンションへ帰り仕事へも復帰した。
いつも通りの春奈であったが、聖志はいつも通りではない。
聖志は、戸惑いを感じながら、再び4人の彼女と付き合っていき、男女の関係で快楽で気を紛らわせていた。
しばらくすると、春奈がいつもと違うように感じた事があり、まるで聖志の過去全てを知るかのようだった。
この時、春奈は聖志の事も身辺調査をして、その調査書を手に入れていた。
春奈は、聖志を一目ぼれしていたが、結婚の対象ではなかった。
なぜ同棲をしたのか、それは一目ぼれの片思いからであった。
聖志と葉月との同棲生活は、破綻していると春奈は思い同棲をしたい事を伝えると聖志は、春奈の思いを全て受け止めて同棲生活をする事になっていた。
葉月との別れによって「自殺未遂」「過労による睡眠障害」で体調不良になった時から始まっていた。
春奈にとっては「過労による睡眠障害」とは受け止める事ができず「自殺未遂」と受け止める事で、聖志を自分の恋人にするチャンスだと思っていたようだ。
春奈との3年間近くの同棲生活によって聖志を支えながら、聖志は生きる事を実感し、死を考える事はなくなっていたのだ。
聖志の情報では、春奈他3人の女性と関係を持っている事も知っていた。
春奈の役割は終わりつつあったが心の中では、聖志への思いは続いていたが自分の心の整理を始めていた。
春奈のとった行動は、興信所の調査書に書かれている事が、現在の現実の葉月の情報が本当かどうか真意を確かめる為にも今の聖志を支える為でもあった。
興信所の葉月の身辺調査の内容には疑問を持つ春奈も聖志と同様に疑問を抱いていた。

春奈は、葉月の実家へと向かい、葉月には同棲生活をして何が起きていたのかと、聖志の4年近くの生活の全てを葉月に話す事を決断する。
東京から電車に乗り葉月の実家に行くには約一時間程かかり体は揺られながら、春奈は聖志と葉月の同棲生活の中で、何が起きていたのかを電車の中で考えながら過ごした。
春奈は葉月の顔を見た事はなく全く何も知らず、どういう人物なのか、どういう性格なのか、気になる事が多くなり抱く事のなかった緊張感が芽生えていた。
「野村葉月とは別人だけど顔つきが良く似てる、噂は信じるな、あの2人は繋がってる、いつかわかる」
春奈の心の中では、出向している元課長の先輩からの言葉はメッセージだったのだろうか?と思えてならなかった。
私の役割は偶然だったのか必然だったのか運命だったのかと、頭の中で通り過ぎる思いを抱いた春奈だった
一時間後、実家の住所も顔も知らぬままで駅から降りて野村葉月を探していたが見つける事は出来ず、駅に戻り駅員に聞くと野村家への行き先を聞く事が出来た。
「私は何をしてるのだろう、極秘の為に誰にも聞く事は出来ない」と緊張感から春奈は自分で探してみようと考えてしまった。
そして歩いて約30分の場所で玄関先に野村という標識があり、野村と書かれた標識が何処までも続いていた。
葉月の実家は何処だろうかと思いつつ春奈は実家を探し回り、知っている人を見つけようとするが、この時の時間帯には誰一人と会う事が出来なかった。
一時間歩き続けていた春奈は、バス停のベンチに座り休んでいると、バスから降りてくる人の買い物袋を持った高齢の女性が春奈に声を掛けていた。
「おや、この地域では見ない顔だね、何処から来たのかい」
「東京から来ました、実は野村葉月さんを探しているのですが」
「あれやー葉月ちゃんの友達かい?それなら垣根のある瓦のある大きな門を入って玄関前には家族の名前があるから、すぐ分かると思うよ」
「え、そうなんですか?私は大きな家の前を通ってました、ありがとうございます」
すると、高齢の女性は、駅にある公衆電話から電話をかけて、しばらく話した後で春奈に声を掛けてきた。
「葉月ちゃんの家に電話しといたから大丈夫だからね」
「ご丁寧にありがとうございます」
春奈は葉月に会う事で緊張感があったが、常に冷静で緊張感を持たない聖志の姿を頭の中で浮かべていた。
春奈は、すぐに葉月の実家へと向かい、大きな門を入って玄関前に行くと家族の名前があり、インターフォンを押すと玄関のドアが開いて、お婆さんが出てきた。
「駿河課長の部下の河野春奈と申します、葉月さんはいらっしゃいますか?」
「そうかい、電話があったのは貴方ですね、葉月なら離れの自宅にいますよ、伝えておきますよ」
春奈は離れの自宅前に歩いて行くと、母親らしき声と自宅の中で子供の声が聞こえ、葉月さんの子供の声なの?と思いつつ、離れの玄関のベルを鳴らす。
「はーい、どなたですか?」と子供の声が聞こえドアが開いて、春奈は子供の姿を見た。
春奈は、お母さんは、いますか?と言うと子供は母親の葉月を呼びに行き、初めて葉月の顔と姿を見た時に少しだけ緊張感を持った。
「初めまして、河野春奈さんですよね、どうぞ上がってください」
春奈は、葉月に言われるまま靴を脱いで部屋へ入った。
「どうして、私の事を知っているのですか?」
「聖志と同棲生活をしてる事は知っていましたから」
「実は、聞きたい事あるのですが、教えてもらえますか?」
「何でしょうね、いいですよ」と葉月は冷静に春奈に言った。
春奈は初めて会う葉月の心の強さと冷静さに驚きながらも、自分の出来事と聖志との同棲生活で何があったかを伝える事が出来た。

春奈は葉月と会い過労で睡眠障害だったが「死」を考えさせてしまってからの3年間の同棲生活の全てを話す。
あの時は春奈にとって一目ぼれの片思いだったが聖志と同棲生活をするチャンスであって大切な時期であったからだと伝える。
「死」を考えさせてしまった事については申し訳ないと春奈は葉月に涙ながらに誤っていた。
むしろ葉月は、聖志は今でも心の中に置き去りにされた思いであったのだろうと考えていた。
葉月は、春奈に頭を下げ涙を流していた。
聖志に自殺未遂で「死」を考えさせてしまった葉月は春奈の話を黙って聞いて、春奈に救われ聖志は生きる事を考えさせてもらえた事への感謝の気持ちで自然と嬉し涙が流れていた。
「春菜さん、聖志を助けてくれて、ありがとうございました」
葉月は春奈に答えたが、春奈に葉月は本当の真実を伝えていく。
葉月は聖志との同棲生活でのすれ違いや嫌で離れ別れた理由ではなかった。
聖志とは別の会社に就職し勤務していたが、それは問題ではなく、体調に変化があった葉月は産婦人科の病院に行き妊婦となり、葉月は就職して2年後に子供が出来た事を聖志に伝える事はなかった。
大学時期には聖志と葉月は、常にベットの上で互いの講義後のレポートの内容を見せあいながら同棲生活を送っていた。
就職後の聖志は人が変わったような感じで、新人の聖志は営業部第一課で営業に励みなら、大学卒業後に卒業レポート論文を現実に出来るかどうか考えながら働き始めていた。
聖志の愛情に包まれていると葉月は考えていたが、聖志は生活の中では特に変わる事はなかった。
ただ葉月は、これからの聖志の為には、同棲生活を続けるかどうかを考えるようになり出世コースを歩き始めた聖志にとって苦渋の決断をする事になる。
そして、葉月は子供の為に、あえて身を引き、実家に帰省し自然の中で子育てをしようと考えた。
子供が出来た事を伝えたとしたら、聖志の卒論レポートに書いてある野心は、無くなってしまうかもしれないと葉月は考えるようになっていた。
葉月は勤めていた会社に辞表を提出し退職後、写真立てに写る聖志と葉月の2人の写真も残したまま、行き先を書く事はない手紙を残して衣類や家具などを全て残して、聖志の為に自分から離れる事を決めた。
あっけにとられた聖志は、2人の写真を見つめながら、手紙を読みながら冷静になると、本棚にある大学生の時の葉月の全ての講義のレポートや卒論レポートを取り出して読み始めた。
葉月の卒論レポートの内容には、女性としての野心、苦渋の選択、自由な発想、自由な生活などの内容を読みながら、窓を開け空を見上げて、今は葉月の思いを全て受け止める。
そして聖志は、今後の事だけを考え、葉月と同じように自由な発想をして営業に専念しようと考えられるようにもなれていた。
中学では同じクラスの同級生で高校生になると同じクラスで交際を始め、大学生になり婚約者として同棲生活をして就職をしてたが、離れ離れになった聖志と葉月は互いに何かを得ていたのかもしれない。
そして、お互いに聖志と葉月は、未来を見つめていたのかもしれない。
現実的な事だけが興信所の調査の対象となり、葉月の本当の心の中での思いは調査しても無理だったのだろうと春奈は思った。

葉月は覚悟を決めて、聖志には置き手紙を残したが、本当の思いを手紙を書き、出向先の先輩の住まいの住所宛てに郵送していた。
内容は苦渋の決断の事や子供ができた事や実家に帰っている事や実家の方で子育てと印刷会社で仕事をしている事と実家の住所と電話番号が書いていた。
しばらくしてから時々、葉月へは出向先の元課長の先輩から、東京を離れてから実家に手紙が届くようになっていた。
手紙の内容は全て聖志の動向の事ばかりであった。
聖志を営業部第一課の課長に推薦状を書き、先輩は聖志の能力が、どれほどのものか試してみたかった事や、聖志は大学の後輩である事で、大学の准教授と会い、聖志の大学での講義後のレポートの内容と卒業論文レポートの内容の全てを読んでいた事などでレポートに書かれた内容で野心の為に、どう動いていくのかという内容も書かれていた。
そして、能力性を導入している会社では、入社1年目で営業成績はトップとなり、主任に抜擢された事や2年目で先輩の推薦状で営業部第一課の課長に上り詰めた事や聖志の女性関係なども書かれていた。
葉月は、元課長の先輩からの手紙を読み、卒論レポートに書かれた事を聖志は実行している事を知った。
そして、思い通りに出世コースを歩いている事は、葉月にとっては、嬉しくて喜びで、心の中で安堵したようだ。
また、出世コースを全力で歩く事で、過労での睡眠障害であったという事も書いてあり、心配する事もあったが、後輩の河野春奈と聖志は同棲生活を送っている事や春奈の一目ぼれの片思いの事も書いてあり、春奈は聖志の睡眠障害で体調不良を気にして体調管理をしていた事も手紙には書いてあり、葉月は春奈と同棲生活をして良かったと思っていた。
しかし、4人の女性との男女の関係だけはレポートの内容には書かれてはいなかった。
ただ聖志の出世には必要不可欠だったのかもしれないと思う葉月で、出世コースを歩くには、何でもやる天真爛漫や臨機応変で自由奔放な社交性のある性格である事は葉月は、聖志との同棲生活をして気づき知っていた。
多くの人と出会いながら出世コースを歩く事も、予測出来ていた葉月だった。
大学の3年生の時から2人は講義の後で大学の准教授の部屋に呼ばれ、良く話をしていたからだ。
「駿河君には誰よりも発想力や分析力や行動力があるが野村君も同じだよ、男性的な野心と女性的な野心には違いがあるが方向性は同じだと思える、君達は繋がっているようだね」
葉月は忘れる事は出来ない准教授の言葉で、聖志への愛情というものが葉月の心の中で浮かび上がっていた。
聖志の卒論レポート内容と同じように葉月の卒論レポート内容には、子供が出来たとしたらどうするのかと言う事は書いてはいなかったと葉月は気づいていた。
そして、聖志への愛情と子供への愛情を抱くと、どちらかを選ぶか選択肢は2つの愛情があった。
葉月の本心は2つの愛情を求めていた事も考えたが、聖志なら一人でも何があっても乗り越えられる事が出来ると、当時の若い葉月は苦渋の決断をしてしまった。
しかし、先輩からの手紙を読んで、子供だの愛情だけではなく子供を育て聖志の写真を見せながらていくと、聖志への愛情が心の中で強くなっていき、春奈に話をした事で、聖志との同棲生活を思い出す事も多くなっていた。
葉月は、子供には常に父親の写真を見せていると、春奈に話して伝えている。
どうしても、会いたいときは、会わせるつもりであるという。
春奈は、葉月との話を聞いて自分が何をすべきか考えに考え、聖志の身辺整理を考えた。
一度別れたとはいえ、聖志と葉月の2人の間には「絆」というもので結ばれていると春奈は感じ取っていた。
春奈は、一目ぼれの片思いの一時の恋でしかなかったが、葉月と聖志には、巡り合わせる事が、出向先の先輩が言っていたように2人の運命で決まっていたのではないかと考えた。
そして春奈は、聖志の身辺調査と身辺整理をはじめる事になる。
もし他の3人が「野心という絆」で結ばれる事がなければ、自分と他3人との関わり方を身辺整理し、聖志には葉月から聞いた事を全て話そうかと考えたが無理な事だった。
聖志は、春奈に何度も有給休暇の事を聞こうとしたが、新規の企業からの営業で忙しい中で、聖志は春奈に聞いている時間がなく聞く事が出来なかった。
春奈は、会社の業務と人事部からの極秘任務を任され、過去の聖志だけはなく葉月の興信所の身辺調査書の事で精一杯で、聖志には知られないように話す事は出来ない状況でもあった。
何故か春奈の心の中では罪悪感がある事に気づき、聖志との同棲生活の中での葛藤もあり、葉月と聖志の関係を知れば知るほど現実逃避するようで聖志の瞳を見る事が出来なかった。
しかし春奈は聖志の何でも乗り越える事が出来る姿や人脈や行動や考え方等を考えるようになると、気分が晴れるような気がしていた。
そして春奈は、聖志と成島奈菜との過去の身辺調査と身辺整理をする事になるが、過去の聖志と成島奈菜の関係は、講師と生徒だけの関係としか分からなかった。
春奈は、大学での聖志と成島奈菜の関係を調べると、個人講義をしていた事を噂で聞いていたが男女の関係には結びつかず、成島奈菜に直接会い真実を明らかにし話し合いをしようと考えていた。

ただ成島奈菜が大学3年生の時に、聖志は入社推薦枠1人の時に推薦状を書いて人事部へ提出し、人事部長から聞いて大学へ成島奈菜の推薦状は届けられていた事だけは知ったが、入社面接の前に成島奈菜と会わなければならないと春奈は思っていた。
春奈は聖志と同じ卒業した大学へ行き、恩師の准教授に会い成島奈菜の生徒の事を聞いた。
准教授は経済学部の優秀な生徒だったので、すぐに成島奈菜の事を覚えていて、春奈は成島奈菜の講義後のレポートや卒業論文レポート全てを読ませてもらう。
春奈は成島奈菜のレポート内容には、営業での接し方や社員との接し方や社員としての覚悟等事細かく書かれている事で驚きながら、准教授に成島奈菜が今何処にいるのか聞くと、今の時間なら1人で図書館にいる事を教えていた。
図書館に入ると探し回るが広くて分からず図書館の職員に聞くと、すぐに成島奈菜を見つけ直接あえる事ができた。
春奈は挨拶をし世間話をした後に聖志との関係を聞くが、成島奈菜は無言で春奈の目を見つめながら何も答える事はなく、春奈は男女の関係をストレートに話をするが奈菜は驚く事はなく春奈は会話を続けるが、奈菜は無言で座ったまま冷静で動く事もなかった。
奈菜は冷静に春奈の話を聞いているが、春奈は聖志との男女の関係はと聞くが何も答える事はなく、奈菜が答えた言葉はたった一つだけだった。
「私は講師と生徒の関わりで個人講義もしてもらい講義後のレポートを書くだけで、私にとっては恩師の先生なんです」
奈菜が答えた言葉で、春奈は返す言葉が見つけられず、聖志との男女の関係はあったのかなかったのか全く分からずじまいで伝える事は伝えたと思い図書館から去っていく。
どうしてあんなに感情を見せず冷静でいられるのだろう?と春奈は思いつつ自分と比較すると真逆の人物だと考えてながら何故、聖志は成島奈菜を推薦したのだろうと考えていた。
春奈は世間話の中で過去の生い立ちを聞いてみたが、成島奈菜は何も答える事はなく、何もなかったような感覚を春奈は感じたが奈菜については疑問ばかりである。
春奈は聖志に会った時に、さりげなく成島奈菜の過去の生い立ちと関係を聖志に聞いてみたが、聖志が春奈に聞かれても成島奈菜の過去の生い立ちや男女の関係を話すわけがない。
これで春奈にとっての極秘任務は終了し人事部へ、全ての身辺整理と身辺調査書を作成し提出した。
成島奈菜の過去の生い立ちの全て知っているのは聖志だけだった。
聖志は奈菜に2人だけの個人講義をしているうちに、奈菜の過去の話や思いを知り、河野春奈や笠原結衣や大原桔梗のように野心での関係ではなく自然の流れで男女の関係だった。
「早く大人になりたい」という純粋な成島奈菜の言葉で、聖志は奈菜の思いを全て受け止めていた。
個人講義は図書館での講義だったが、徐々に講義の場は広がり喫茶店から、奈菜の住まいでの個人講義となっていく。
小中高でも他の生徒達との交流も出来なく孤独に生きながら、聖志の大学での講義を聞いていて、奈菜は聖志だけが信じられるという思いもあった。聖志は講義後の奈菜のレポート内容を読んでいて感情的ではなく個性的で純粋な生徒だと思った事で、他の生徒達とは違い、聖志は奈菜に対して気になる存在でもあった。
個人講義は奈菜から頼まれた事でもあり、レポートの書き方や大人になれば野心を持つ事も出来ると奈菜を導いていたからだ。
そして、聖志は成島奈菜を推薦した後では個人講義や男女の関係は少しずつ減り、奈菜は少しずつ大学での講義後のレポート内容の中で男性的でもあり女性的でもあり男性と女性の野心的な内容を書くようにもなり、卒業前のレポート内容では、個性的な社会人としての覚悟まで書いていた。
奈菜が聖志と初めて男女の関係を持った事で個性的で純粋な生徒だけなく、大人になっていたのだろうと聖志は思ったからこそ、営業部第一課へ入社と成島奈菜への推薦状を書いていた。
この時は、聖志は自分の部下として営業マンとしての覚悟を持たせ意識改革をして河野奈菜に接して対応していこうと考えていたのだ。

会社では、就活をする大学生4年生の午前中は入社試験と、午後からは履歴書を見ながらの面接をする時期が来るのは先の話である。
一日10人、一週間の7日間で70人を土日の休みはなく、午前中9時から11時までの入社試験結果を精査をしてから、午後2時からの面接をして、内定者は70人が選ばられる事になる。
聖志は、履歴書と入社試験結果を精査をして面接官として生徒達と接する事になる。
営業部第一課の課長になった時は面接をする事はなかったはず、なぜだろうか?以前は第三課の課長だったはずだと聖志は思った。
聖志が営業部の社員の意識改革や営業部第一課から営業部第三課の役割分担を無くし平等の扱いでフォローするようにして、第一課から第三課の部長職をなくし営業部統括部長という役職を作り、会社の年商を上げた事で会社の体制が変わり企業規則や契約書の内容も変わっていた。
聖志は1人枠の推薦内定者だった為に当時は面接を受ける事なく、すぐに営業部第一課に配属され新人社員として入社してたので良く分からなった。
「以前とは違う対応での内定者を決めるのか?」
企業規則は多くの内容が変わり、契約書の内容も少し変わってる事を聖志は確認した。
推薦状がある内定者となっていた成島奈菜は最終日には、入社試験を受けず面接を受けるだけとなるが、まだ先の話である。


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巡り合い<3>出逢いと聖志の葛藤と後悔

2020-03-29 10:43:25 | 恋愛小説:巡り合い


大学付属の第二経済学専門学校で、何度か聖志が講義をしていくうちに、生徒達とも打ち解けたようだった。
生徒達は、聖志が経済学専門学校での優等生の生徒だったか、卒業してから就職活動をして就職し現在の状況で、どんな仕事をしているのかを知っていく。
しかし、現実的でもあり未知的でもある聖志の講義で生徒達に質問の問いかけに、生徒からの質問は殆どなかった。
疑問を持つ生徒はいても、質問をしてくる生徒達になるとは限らない事は想定内だと聖志は思っていた。
聖志には優等生の生徒達を作りだし、優秀な社会人にしようとする野心的な思惑もあり、それは聖志が苦難を乗り越える体験からだった。
優秀な人材の発掘と人手不足や企業での平等な扱い方、発想力、分析力、行動力、社交性のある社員にする事でもある。
そして、上下関係の関わり方についても講義をし、企業の一社員としての自覚を持たせ、長きにわたり社員を続けられるよう講義をする。
講義中、雨が降り続き、講義が終わると雨は上がり、窓の外から陽(ひ)が教室へ差し込んできた。
聖志は講義終了前の最後に、外を見ながら輝いた生き方をしたければ、疑問があれば、その疑問を解き明かす事だと静かな教室内で生徒達に普通の声でささやいた。
静かな教室内では聖志の声は教室内全体に広がり、その時、生徒達は外を見つめる聖志の後ろ姿の背中を全員が見つめていた。
手を上げた生徒がいたが質問があれば、まずは自分で本でも読んで調べる事だと、講義後のレポートでの提出するよう生徒達に提案した聖志だった。
興味があって手を上げた生徒達の中には、聖志を馬鹿にした心を持っている生徒達がいる事に気づいて理解していた。
経済学だけでなく、人との関わる事の重大さの心理学やコーチング対応等も学んだ聖志でもあり、生徒達との接し方を考えながら実行していた。
何故、聖志は、生徒達に距離を置く事を考えたのだろうか?
単なる興味だけでなく好奇心を持たせ、自己分析や様々な視点を変える事や行動力の速さ等も大切なことである事を、生徒達に伝えようと考えていた。駿河聖志という人物を良く知られていた事で、大学からの依頼と社長の指示で会社命令として、聖志に講義をするよう依頼してきた理由は、そこにあったのだ。過去の大学の学生であった時には、発想力、分析力、行動力、社交性があり未来志向である聖志の人物像は、聖志の周囲には先輩後輩問わず、当時大学内の学生達に知られていて、聖志は学生達に声を良くかけられていた。

聖志は講義をする参考の為に、准教授の講義を生徒達と一緒に、准教授の講義に参加し聞いていた。
聖志は准教授に渡していた講義後のレポートの内容が、准教授の講義によって名前は非公開だが、講義で生徒達に公開されていた事に気付く。
准教授は講義が終わると、君達の先輩のレポートを元に参考にしたんだと生徒達に伝えていた。
生徒達は、駿河聖志という名前を知っていたが、もしかしたら講師をしてる聖志のレポートだと気づいていたのかもしれない。
聖志は、講義を始めますと言うだけで、生徒達には自分の名前を伝えてはいなかった。
生徒達は駿河聖志に会った事はないが、優秀で存在感のある人物と思われていた。
当時の聖志のレポートの内容は、他の学生達のレポートの内容とは全く違っていた。
現実的で視野が広く未来志向で、まだ一年生なのに社会人としての内容でもあった事から、聖志ならば学生達の心を動かせると思い、卒業生の聖志に講義の依頼があったのだろう。
講師になって月3回の月、水、金の午前中1時間ほど講義をするたびに聖志は、過去の出来事を振り返る事があり、特に離れ離れになった葉月の事を思い出すが多くなっていた。
学生当時の聖志の同期生から良く声をかけられていたが、学生の頃と就職後まで数年間の同棲生活をしていた葉月の思いを考えていた為に、同期生から距離を置き接する事は、頭を下げ挨拶をするくらいで殆どなかった。
聖志にとって葉月との事は忘れていたはずだが、心の中では葉月への今でも愛する思いが残されていた。

聖志は講義がない時は、春奈、結衣、桔梗との男女の関係を続けていくが、ある時、聖志の講義が終わったあと、授業をさぼり聖志の後をついてくる女子生徒の一人がいた。
聖志の後をついてくるのを知りながら、何もなかったように歩いていく聖志だった。
いつもなら会社へまっすぐ戻るのだが、その日は東京の街をフラフラと歩きながら、鏡やガラス越しに確認する聖志であった、急に立ち止まると彼女も立ち止まる。
常に緊張感の中で仕事をしていたが、これは面白い出来事で気が楽になり楽しめると思った聖志は、久しぶりに仕事の事をを忘れる事が出来た。
細い路地を通りはアクセサリー通りと呼ばれる道を歩き、アクセサリーを見ながら聖志は離れて、彼女は同じようにアクセサリーを見る。
陽(ひ)が暮れ、光り輝くネオン街となりはじめたとき、立ち飲みバーへ入り、ビンビールを2本頼み、隣に一本を置いた。
聖志がビンビールを飲みはじめると、彼女は隣に座り、ビンビールを持った。
「君の名前は確か、成島奈菜(なるしまなな)だったかな?」と聖志が声を掛ける。
「はい、でもどうして私の名前を知っているのですか」と答えた。
講義の時には、講義室の一番前の中央に座っている女子生徒だったし、レポートの提出で名前を知っていたんだよと、聖志は生徒の奈菜に話した。
聖志は、なぜ?後をついてくるのかと聞くと、話しがしたかったとだけ答えた奈菜だった。
そして、ただ黙って同じ姿勢のままで、奈菜の話を聞く聖志だった。

成島奈菜には、両親がいなかった。叔父と叔母に育てられ、高校を卒業すると自立し2年間で貯めたお金で、聖志と同じ大学付属の専門学校へ入学していた。聖志が卒業した経済学の専門学校は2年間と大学2年間で4年間で卒業すると、他の大学よりも専門的な企業に就職率が高いことを調べたと言っていた。
聖志は、四年間居られるかなと言うと、彼女は不思議な顔をしていた。
聖志は、四年間居られたが、それは選ばれた人間のみであることを教えた。
教えると彼女は、ショックを受けたのか、考え込んでいた。
信じるのは自分自身、精一杯やっていると選ばれるかもしれないと、独り言のように話す聖志だった。
ビンビールを一本ずつ飲み終わり、聖志は店を出ると、聖志の後を追うかのように、彼女はついてくる。

彼女は聖志の手をとり、2人はネオン街に消えていくが、奈菜が聖志を引っ張るようにしながら街を歩ていくと、その先にはホテル街を歩いていた。後は、そのまま奈菜と聖志はホテルの中へ入った。
一般の普通に人と、付き合うことが苦手の奈菜は、孤独感で寂しかったのかもしれない。
聖志がベッドへ横になると、奈菜は並ぶようにして聖志の横に寝た。
何がしたいと聖志は聞くが、しばらく返答はなかったが「抱いて欲しい」と言う奈菜だった。
聖志は生徒の奈菜の気持ちを良く考えながら、奈菜の過去の話を聞きながら聖志は、奈菜の心の中での葛藤と苦痛、悲しみや寂しさを感じ取ってしまい、奈菜の過去の生い立ちを聖志は知る事によって、葉月との同棲生活をしていた過去と照らし合わせてしまう。
元同棲生活していた葉月は、恋愛しても「恋」と「愛」は違うと言っていたのを心の中で、ふと浮かんだ言葉だった。
恋や愛でもどちらでも繋がっていたいと思うだけで男女の関係は、誰にでもあるとも葉月は言っていた事も葉月との夜の情事の中で良く話していた事も思い出す聖志だった。
しばらく会話が止まるが、奈菜は聖志の過去を聞くことはなく、その後はベッドの上で男女の関係となり、奈菜とっては初めてとなったようだった。
奈菜は、聖志と共に居る事で他の誰よりも学べると考えていたようだが、男女の関係が続くと何となく野心を抱いているのかもしれないと聖志は感じ取っていた。

聖志が他の女性とも関係がある事を知らぬまま、いや男女の関係が続くと他の女性関係を知ってるかのようだった。
聖志の講師としての契約期間は3年間で、1年生から3年生まで同じ生徒達への講義を続け、生徒達は4年目には就職活動を始める事になる。

聖志と成島奈菜との関係は、3年間を過ぎても関係は続いていたが、奈菜のレポートの内容を見て聖志は考える事があった。
「奈菜、僕のいる会社で面接を受けてみないか、僕は人事にも関わりがあるんだ」と、聖志は奈菜に言っていた。
奈菜は、すぐには答える事が出来ずにいた。
「まだ、就職活動をする期間中で幾つかの企業の面接を受けてみたいんです」と聖志に奈菜は答える。
「そうだね、それは君にとっては良い事だよ、僕のいる会社の面接は最後でいいよ」と聖志は奈菜に言った。
人見知りをする奈菜にとっては良い体験になると聖志は思った。

聖志が営業部第一課の課長と企画室の室長を兼任する事では問題はなかった。
聖志を課長に推薦したのは、元課長で他の同じ企業へ出向していた先輩だった。
課長を経験した社員は人事に関わる事が出来るようになっていたからだ。
会社の売り上げは平行線である為に、会社の売り上げを伸ばしていく為には、聖志を第一課の課長にすれば、会社の売り上げを延ばせるのではないか職員も意識改革出来るかもしてないと考え、先輩にはある思惑があり、聖志にアドバイスをしていた。
そして先輩の思惑通りに、聖志は営業部第一課の課長になり、社員及び社内業務改革提案書を作成し、役員会で全員の役員の承諾を得て、理事会でも承認され会社のトップの会長からも指示が得られ、会社の売り上げは職員の意識改革の提案書から成長戦略によって売り上げは徐々に延びていった。
しかし、大学で講師をして講義をしていく中で知らず知らずのうちに、聖志の精神面や身体面では、重圧感を体で感じるようになり、異変が起きて限界を感じるようになっていく。
講師をしていると必ず講義後にレポートを作成しなければならない、そして大学の後輩である河野春奈のレポートを読んでいると、男性目線でのレポートの内容であった。
自分が学生の頃に書いたレポートの内容と、ほぼ同じ内容が書かれた事に気づいてしまい、春奈との同棲生活をしていたのは、偶然ではなく必然の出会いだったのかもしれないと思う聖志だった。
そして、成島奈菜のレポートは女性目線でのレポートの内容で、過去の同棲生活をしていた葉月のレポートの内容と同じような内容が書かれていた事で葉月の事を思い出してしまう。
徐々に聖志は、葉月への愛を裏切ってしまったと強く感じるようになり、葛藤と後悔という感覚に落ちる事があった。
それが、聖志を追い詰められていくが、あと1年の我慢として考えるが、同棲相手の春奈は聖志の精神面と体調不良を気にしていた。
男女の関係が続き、大学での講師を続け、葉月の事を思い出すたびに、聖志の野心は、いったい何処へ向かうのか?

気になる春奈は、同じ企業に出向していた元課長の先輩に聖志の状況を伝え相談していた。
メールや携帯電話での会話の中でのやり取りで、春奈と先輩とは聖志よりも深い関係になっていたようだ。
「春菜、駿河の事はきにするな、必ず乗り越えられるよ」
「私は、同棲生活をしていたのに、彼には愛されてはいませんでした」
「そうだろうな、あの2人は繋がってる事に気づいたんだろ」
「でも私は彼の為に何ができるのか考えてしまうんです」
「いいか、君が新人の時に営業部第一課に推薦したのは駿河だったんだ、大学生の頃の君の全てのレポートの内容を読んだようだ」
「私のレポートの内容を見てたんですか?」
「そうなんだ、それで君を推薦枠にして、営業成績がトップになるのを待って、2年目で主任にしたのも駿河だったんだ」
「駿河が愛しているのは君ではなく野村葉月だ、僕は彼女に駿河の生活の全てを手紙で書いて、そして聖志への彼女の思いを確信した」
「私は、どうしたらいいのですか?」
「君に出来る事は駿河の全ての女性関係を整理して彼女に会い、彼女の聖志への思いを知る事だと思う、その後の駿河が自分の意志で決めると思うし課長になると人事権を持てるんだ」
「分かりました、出来る限りの事をしてみます」
「聖志は野心を持ったからこその人生だと思う、それから今後の君をどうするかは恐らく駿河が決めると思う、僕も聖志と同じ野心を持ったからこそ課長になれたのかもしれないな」
「私にも野心を持てるのでしょうか」
「それは君次第だと思う、男の聖志と同じ野心ではなく、女性ならでの君の野心を考えてみたらどうだろうか」
「女性ならでの野心ってどういう事でしょうか?」
「僕も君のレポートの内容を読んでみたよ、君は野村葉月と同じ女性だろ、聖志の様に男性ではないのだからな、今度は僕と顔を合わせよう」
元課長の先輩は春奈の心の中で傷を負わせないように、春奈が自分の本当の思いを考えてしまうように会話をしたようだ。

「野村葉月とは別人だけど顔つきが良く似てる、噂は信じるな、あの2人は繋がってる、いつかわかる」と言われた事を春奈は思い出していた。
どうする?春奈よ、冷静に考え動きだせ、気張れ春奈よと、春奈はコーチングをする聖志との同棲生活をして会社で見て知った自分へのメッセージを心の中で囁きながら抱く。
「野村葉月とは別人だけど顔つきが良く似てる、噂は信じるな、あの2人は繋がってる、いつかわかる」
春奈の推薦者は誰か、新人なら営業部第三課の社員になるはず、営業部第一課に推薦したのは、先輩と聖志だった事を春奈は知る事になった。
そして、聖志の周辺の身辺整理を考えた春奈は、野村葉月と会ってから、主任の春奈には社内で新たな人生の転機が訪れる事は、この頃は知るよしもなかった。


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巡り合い<2>偽りの同棲生活と野心

2020-01-24 10:46:54 | 恋愛小説:巡り合い


病院から警察へ連絡しますかと言われた春奈は、連絡しないように頼み込んだ。
春奈は、同棲していると嘘をつき、更に婚約者であると嘘をついた。
病院の医師からは、もう少し遅ければ命を落としていたかもしれないと言われるが、医師の話を最後まで聞く事はなかった。
しかし救急で搬送された病院は、聖志と葉月に睡眠薬を処方していた病院でもあった。

緊急処置が終わり病室へ運ばれる聖志、病室で目が覚めるのを待つ春奈だった。
大学の先輩であり噂を知り顔を見た事はないが同姓同名の駿河聖志を慕い、尊敬をしていた春奈は、聖志の部下でもあり、仕事のことや女性としての自分の思いを考えていた。
春奈の思いは、聖志と一緒に仕事をするようになってからの巡り合いの一目ぼれでもあった。
春奈は、病院から会社の上司へ次の日に連絡をした。
春奈は、上司に少し重い風邪と嘘をつき、自分もしばらく休みをとると伝えた。
上司は、聖志には婚約者がいるだろうと言ったが、噂ですよと春奈は上司に話した。
春奈は、確かに葉月という同棲相手がいた事を知っていたが、段ボールだだらけのアパートの様子をみて、聖志の状況を見ると同棲相手はいないと感じていた。
もし、自分が同棲相手だったらと考える春奈だった。
決して、会社や警察や誰にも聖志の状況は知られてはならないと思っていた。

聖志が目を覚ましたのは、入院後3日目だった。
聖志は、呆然として、病院の白い天井を見詰めていた。
春奈は、手のひらを振り、聖志の顔の前にだすと、ここはどこだと聖志は言った。
目を覚ました聖志は、春奈を見つめ、冷静な目つきで生きていたのかと聞く。

その時、春奈は聖志は、自殺をしようとしていた事を考えていたが、自殺しようとした事は絶対に知られないようになと聖志は春奈に笑いながら言った。この時の聖志は、春奈の考えている事が分かっていたのかもしれないし、何故か部下の春奈の能力や直感の事を理解していたのかもしれない。聖志は笑う姿を見たのは春奈にとって初めての事だった。自殺をしようとした人が笑いながら言えるのだろうか?と春奈は思い、自殺じゃないのと胸の内で考えたが思考のリセットが早く行動力や理解力も早かった。
聖志は春奈の仕事ぶりを見て、コーチングによって春奈の考え方を理解し指導しながら気づき知っていたようだ。
そして春奈の聖志自身への思いも気づいていたのかもしれない。

春奈の仕事ぶりを見ていると、同棲をしていた聖志は心中では迷いつつも葉月と重ねてしまい、どうしても葉月の事を考えると、都会での仕事が自分に合っているのか考えるようになっていた。
しかし、この時には仕事が中心で、部下の春奈をいかに育て成長させ営業成績でトップクラスの社員にするかを考え、葉月の事は二の次となっていた。
「出向していた先輩にあったのか?」と聖志は春奈に声をかける。
「えっあ、会いました」と春奈は聖志に答えた。
「そうか良かったな、先輩は元一課の課長で出向する事が多くなって、部長に推薦してくれたんだ、君にも推薦者はいるからな」
こんな会話をした後に聖志は目を瞑り眠りにつき、推薦者は誰なのか聴く事ができず、聖志の顔を見ながら、春奈は自分自身の思いを考えながら、色々と迷いながら正直な自分を見つめていた。

正直な自分を見つめると、春奈の目的は仕事のこともあるが、聖志に募らせていた恋(思い)を成就させる事だった。
春奈は聖志と話をした後、ナースコールをした。
病院の医師と看護師が、真っ白なベッドに横になる聖志が病室へ入ってきた。
一通りの処置を施し、次の日には退院できると、医師は春奈に伝え病室を後にして、看護師はベッド周りでバイタルサイン測定し追加された点滴を取り換え病室を後にした。
看護師は早い退院で良かったですねと一言を春奈に声をかけていたが、その言葉で自殺未遂じゃないの?と疑問を持った春奈だった。

明日には退院できる事を営業部統括部長の上司に伝える春奈である。
しかし、まだ仕事に復帰できないことを伝え、上司との話し合いで一週間後の出勤となった。
次の日、退院した聖志は、春奈と一緒にアパートへ戻った。
病院からは一通の封筒を渡されたが、この時は封筒の中にあるものを見る事はなかった。
そして聖志が動けるようになってから封筒を開けると診断書が入っていた。
春奈は聖志の診断書を見て驚きを隠せず診断書を持ったまま、驚き言葉にならず頭は真っ白になり動く事も出来なかった。
「過労による睡眠障害」との診断書を見て、何度もため息をしながら春奈自身の勘違いに気がついたが、自分を見つめ目を瞑り3回深呼吸をして冷静になると聖志への思いと聖志との今後を考えるようになった。
ただ聖志の部下であった春奈は聖志の仕事をする姿を見ていると疲れた感じではなく、葉月という同棲相手との間で精神的に病んでいるようにも見えていたのだ。
春奈は、精神的に病んでいる聖志への思いを今まで以上に募らせていた。
聖志は、なぜ春奈がいるのか聞くが、春奈からの返答はなかった。
ただ、一緒に暮らしてみませんかと言うだけだった。
聖志は24歳で春奈との年の差は2つ、春奈は22歳である。
天真爛漫なのか臨機応変なのか、どうでも良くなっていた聖志は、春奈との同棲生活に同意した。
休みをとっている間に、春奈のマンションに引越しする。
春奈は、業種の違うクライアント企業の社長の娘だった。
春奈が聖志への一目ぼれは、聖志だけが、他の男性と違うような気がしていただけだった。
春奈は、理想が高く、個性が強く、感性に富んでいた。
聖志の部下として、新人でありながら誰よりも仕事を速く覚え仕事ぶりは、聖志の社交性があり行動力と同じような感じていた。
春奈は聖志の気を引くため、そして自分の気持ちを伝えるためだったのかもしれない。

聖志は、春奈の仕事ぶりが気になっていた。
仕事での信頼関係も、うまれていた。
引越し後、聖志と春奈は上司に呼ばれた。
春奈は、聖志が同棲している相手が、自分であることを上司に話をした。
上司にとっては、驚くべきことだった。
各クライント企業同士の情報では、野村葉月との同棲であったからだ。
野村葉月は同棲後、聖志と婚約し、業界を辞め主婦になったという噂の情報が流れていた。
葉月は、聖志と同様、聖志とは違うことで評判が良く、良いときに業界から離れたとも言われていた。
春奈は、葉月とは違い、聖志と楽に付き合うことができた。
聖志は、自分を高めながら生きていることを、春奈は気づいていた。
春奈は、近づきすぎず、離れすぎず、一定の距離を保ったまま聖志と付き合うことができた。
聖志と春奈は、聖志よりも春奈が、ベッドへ誘うことが多かった。
葉月とは違い、ベッドの上では話し合うことはまったくなく、夜の情事を楽しむだけだった。
聖志にとっても、気が楽な同棲生活であり、偽りの同棲生活でもあった。

しかし、気が楽な同棲生活には、野心的な目的もあった。
春奈が大学卒業時のレポートと論文の内容を読んで、葉月と同じような内容の様が書かれているように感じていた。
聖志は春奈が葉月と同じように感じながら、ただ葉月とはある部分で違いがあった。
春奈の第一営業部での仕事ぶりを見ていると、聖志には春奈にコーチングやアドバイスをしながら、営業成績をトップクラスにしようと聖志は自分の役割ではないかと考えていた。
聖志は出向している先輩に連絡を取り、自分の考えを伝えていた。
「分かった、駿河の考えには賛同するよ、後は僕がサポートしていくから・・・」と先輩は聖志に返事をした。
同棲相手が春奈になっている事は、すぐに各企業であくまでも半信半疑の噂として広がっていた。
その噂は聖志を課長に推薦した先輩の耳にも入っていたが、先輩は事実を確認してから社内メールではなく、春奈の携帯電話に何度かメールを送っていた。
「駿河との上司と部下の関係について:出世という野心を持つこと:野村葉月と会ってみる事など様々な事だった」
仕事復帰した春奈と聖志の2人は、仕事も充実したものとなり、聖志は接待にも復帰した。
春奈は、接待をする午前様の聖志に何一つ文句も言わず、テーブルの上に夕食が置いてあることもない。
聖志は、ほとんど仕事を休むことのない、以前のように戻っていく。
土曜日、日曜日は、午後からの出勤をし、日曜日は、ゴルフの接待に上司たちや得意先の上司と付き合うようになっていく。
春奈は、自分の父親の姿を聖志に見ていたのだ。
春奈の父親は、日曜日となると、朝早くから接待を受けにゴルフへ行く。
聖志の行為は、父親の行為と良く似ていたに違いない。
春奈は、母親に聖志の存在の話をしていたが、母親は驚くこともなく、ただ気になり会わせるという条件を春奈に突きつけた。
春奈は、聖志を父親と母親に合わせる計画をたてるが、婚約、結婚という事ではなく、ただ会わせるだけの事だったが、仕事の忙しさで両親と合わせる事は忘れていく。
聖志の接待の場所は決まっていた。
高級クラブ「風美(かざみ)」、高級料亭「味深(みみ)」である。
高級クラブには、笠原結衣(かさはらゆい)二十才、高級料亭には、女将の大原桔梗(おおはらききょう)二十六才がいた。

聖志には接待場所は幾つかの場所があったが、高級クラブの笠原結衣(かさはらゆい)の言葉によって、1つの高級クラブと1つの高級料亭での接待場所に決める事になる。
高級クラブ風美の笠原結衣と高級料亭の女将の大原桔梗(おおはらききょう)の2人には誰にも理解できない深い絆で繋がっていたようだった。
しかし、聖志には結衣と桔梗の2人の絆は理解はできないが、アスファルトの街で生きていく為には「野心」という思いが、聖志と結衣と桔梗の3人を結びつけていたのかもしれない。
この2人との関係は、情報のやり取りだけではなく、男女の関係でもあった。
結衣は、九人家族の一番下、貧しい家庭で育ち、家族へ仕送りをしている。
高級クラブでの格付けは、トップしかないといっていた。
結衣は、聖志に常に自分を指名して欲しいと頼む。
聖志は、上層部から接待に関して、会社の金をいくらでも使う代わりに、会社の利益を上げられるようにと条件を突きつけられていた。
聖志は、クラブへ行くと必ず、結衣を指名する。
情報を取るだけでなく、結衣の病んだ心を慰めるように、男女の関係をする。
結衣の部屋で一夜を過ごすこともある。
結衣とのことは、春奈は知らないことだ。
桔梗は、雇われ女将だが、客の全てを知っている。
黒皮の手帳とはいかないが、頭の中に全ての情報が入っている。
聖志が来れば、聖志が求める対応をし、接待をしやすくしてくれる。
桔梗は、聖志が来ないときでも、聖志のために、来客の情報を何でも話す。
情報は条件付で、桔梗の家に行き、ベッドの上で話され、桔梗はベッドの上では、激しく燃え上がる男女の関係だった。
聖志は、あの時一度死んだのかもしれない、そして人脈も環境も何もかも変わるが、春奈は聖志を自由にさせている。
春奈は、結衣と桔梗のことを知ったところで、何かを言う女ではない。
結衣と桔梗との関係は、深く、深く長く続いていく。

聖志の名前が水面下で広がると、ある専門学校の講師を頼まれる事になるが、その専門学校は聖志が卒業した大学の新しい大学付属の第二経済学専門学校であったが、聖志と葉月が通っている以前から建物は立っていた。
第一経済学専門学校は内装や外観のリフォーム工事の為に第二経済学専門学校を校舎として使用していた。
第二経済学専門学校では雰囲気や内装が全く違い、壁には卒業生が入社した多くの会社の建物の写真が額に入り飾れ、額の下には4年制で卒業した生徒達の名前が載っていた。
社長からの指示により会社では、駿河聖志を大学付属の第二経済学専門学校の講師にすることを聖志に知らせずに引き受けてしまう。
断る事も出来ると思ったが、サラリーマンの聖志は忙しさの中でも、会社の方針には従うしかなかった。
聖志は心の中で人生の何かが変わるかもしれないと思い引き受けた。

経済学専門学校での聖志は、自分が経済学だけの専門学校へ通っていたときの事を思い出す。
初心というものに葉月と聖志が学生として通っていた時期の思いと心の中での囁きにより、離れ離れになった葉月への思いと再会する事になる。
聖志は、会社では第一営業部を任される課長となり、企画部広報室の室長を兼任し、営業部統括部長は企画部広報室も統括部長となっていた。
第二営業部と第三営業部の課長は営業をしてクライアントを増やしていく役割が中心で、クライアントとの企画書内容の話し合いやプレゼンテーションは室長でもある聖志と企画部広報室の社員の6人で対応していく。
忙しい時は第二営業部または第三営業部の課長が対応する事もあった。
聖志は課長と室長である自分が忘れかけていたもの、初心を思い出すことによって講義をはじめる。
生徒たちは、聖志が自分の体験談で講義をする聖志の姿を見つめ、興味津々のようだった。
五十分間、聖志は講義を続ける。
その後十五分間、質問を受けるが、なかなか質問をする生徒はいない。
全く質問がないのが初日の状態であり、その状況は続いていた。
大学付属の第二経済学専門学校での講義は、月3回の月、水、金の午前中だ。


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