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短編小説:夢からの手紙<後編>

2018-08-25 09:52:48 | 小説:夢からの手紙


夢からの手紙<後編>


病院からの連絡の電話の受話器とり耳を寄せる彼の姿が見える。
「もしもし・・・今、お亡くなりなりました」との事だった。
「なぜ、ボクの電話番号を知っているのですか」と彼は聞いた。
「ご家族に連絡が取れなくて・・・机の上のメモに、この番号が書かれていたんです」と答えられた。
「判りました、今すぐに行きます」という彼だった。
詳細は聞かず彼は「まさか?」と思い、鍵もかけずに部屋を飛び出し、必死で病院に駆けていく。
何も見ず、何も考えず、ただ幻に見え考えるのは、彼女の事だけであった。
病院に辿り着くと受付で、一人の看護師に声を掛けられ、苗字を聞かれ「はい」と答えると、401号室の病室に案内され、入りかけた時、鳥肌が立つような、一瞬何かを感じていた。
病室に入ると白いベットの上で横たわっている彼女の青白い顔をしている姿があった。
彼女の姿を見つめると、彼は思い出した事がある。
彼女との付き合いの中で、彼女から両親や親戚は、誰もいなかった事、そして死別していた事で、施設で育てられ人生を送って孤独だった事を話してくれた事だ。
彼と彼女は、同じ思いで一人ぼっちで生きていたが、何故一人ぼっちだったのか理由は聞いてはいない。
病室で彼女の顔を見る彼は、冷たく、切なく、そして寂しさを感じて、死の運命が理由だったのではないかと感じていた。
彼が彼女と最初に出逢った時とは、全く逆の感情だった。
そして、彼女と出会ってから「希望」というものを教えられた気がしていた彼だった。
彼女を失ってから、彼は彼女の事を思い出すと、彼の瞳には涙が浮かんでいた時だった。
「余命を告知されて・・・きっと幸せだったでしょうね」と、彼には聞こえていた。
看護師が言ったのか?誰が言ったのかは、彼には分からなかった、気にする事はなかったが浮かんだ涙は流れる事はなく冷静になれた。
そして、看護師から彼女の一通の手紙を渡され、彼は彼女からの思いの手紙を読み始める。
「ごめんなさい、あなたの心を迷わせてしまって・・・二人で静かな場所で本当に判り合いたかったの、だっていつも心の中はザワザワとまるで人ごみの歩道みたいだったから・・・」
この一通の手紙を読んだ彼は、後悔しながらも、自分の過去の人生を見つめ直す事になり、彼女との出逢った時の事を「運命」だったのかと思わせてくれたような笑顔の彼女を思い浮かべていた。
彼女からの手紙を読んでから、徐々に以前とは違う心を持った彼となり、全く別人のように人生を送るようになる。
彼は彼女の為に必死に生きる事を選び、必死になって生きる事を始めた。
人生観の全てが変わり、以前とは違う環境で必死に、彼女の面影と共に・・・そして・・・。
全ての環境が変わり、新しい生活になじもうとしている彼の姿が見える。
一生懸命、他界した彼女への思いを心と背中で背負いながら「努力」し生き始めている。
「必ず明日には太陽は昇る、か!」と彼は思いつつ彼は思い出す、これは彼女の言葉であった。
彼の過去の自分からは考えられない事だろう。
気の向くままの生活から抜け出し、自分の思った人生を歩み始め、生きていく為に社会の中で働き、いや彼女の為に生き続け働く彼の姿がある。
彼女の為にも生き続けなければならないと彼は心の中で誓いを立てた。
彼は、社会という荒波に流されながらも、岩にしがみつき流されないように歯を噛みしめる。
そんな彼には、休息など、まして自分の時間など持てるだけの暇な時間はなかった。
彼は、他界した彼女を通して生きる事の難しさを知ったのである。
しかし、彼の生き方は変わっても今までの彼が、おかれていた状況は変わることはなかった。
彼は、懸命に喧嘩をしていた過去を思い出すが、休息もなく、ただ一生懸命に努力し、喧嘩ではなく社会環境の中で働きつめていた。
そんな状況の中で、先輩や頭を下げなければならない上司に、付き合わなければならなかった。
彼は、何時になったら休息を取ることができるのだろうか。
「どうしようもない・・・どうしたらいいのか!」
どうしようもないと、社会人として慣れてきたが、疲れきっている彼は、彼女に誓いを立てた事も薄れながら忘れ、余裕というものもなくなった時である。何もかもに苛立つようになった彼を余計に苛立たせる、新たな彼女と出逢うが、他界した彼女とは正反対の性格の持ち主だった。
しかし、可笑しいことにお互いに名前も知らずというのに、道端で口喧嘩をしているのだ。
彼は、可笑しい事もあるものだと思った。
理由は、どうあれ些細な出来事からはじまった、まるで子供のように、ただじゃれている感じだった。
そんな口喧嘩をした事から、その道を歩くたびに、新たな彼女に出逢うようになった。
そして、いつものように口喧嘩をしている、お互いに何故なのか判らぬままに・・・
彼は彼女と出逢うたびに、不思議な気分に、そそられるようだった。
彼にとって、一つだけははっきりしている事は、彼女と出逢う度に、一番気が休まる時間であるという事だ。
彼は、比較するのはしてはいけないと思いながらも、ある時、彼はずっと以前にあった事を想い出していた。
新たな彼女を見ていると、過去のあの頃の彼と他界した彼女との過去を想い起こすのだ。
しかし、あの頃とは、いや今までにはない、彼には新しい何かを感じていた。
それは新しい風が吹くような癒しや温もりを感じ、嫌な出来事でも受け止めるようにもなっていた。
そして、そうだ、今の彼女とは「本当の恋人同士」というものを彼は感じていた。
過去あの頃に出逢った彼女との思い出には、こんな新鮮さを感じる事はなく、他界した彼女とは、必然的に出逢うべきして出逢ったような気がする彼だった。ましてや、子供のように、少年少女のように、何故かムキになって口喧嘩をすることすらなかった。
彼は、自分の心と向き合いながら、素直に受け入れようと思いながら、人生の時間は過ぎていく。
彼は彼女と出逢う度に「気が休める、なんか楽しいな」と思うようになった。
そうだ、すがすがしく気持ち良く、いつも楽しく感じていたし、口喧嘩は絶えることはないのに、いや口喧嘩は徐々に無くなり静かな生活になって生きている。何時しか彼女と暮らし始めてから、幾日の時間は過ぎていってから、彼には何故か遠い過去の出来事が鮮明に想い出された。
そうあの頃の彼女と彼は、いつもザワザワとした人混みの中で、ただ「不安」というものを抱きながら、お互いに口に出す事なく、言葉にするのが怖かった。
彼は彼女の全ての事が気になっていても、彼女の気持ちを考えてはいなかった。
何を考えているのか理解すらできなかった、きっと彼女も彼の理解出来なかったのだろうか、お互い理解出来なくても幸せになれていたのかもしれない。「不安」を感じていたのは、他界した彼女の覚悟だったのか、人生の余命告知を受け止めた「死」の覚悟だったのか、それは彼女にしかわからない。彼は彼女から聞いた事はないが、幸せだったのかもしれない、お互いに「好き・・・」という言葉はあった、あの頃の「不安」はあったが、一緒にいた事は彼女も幸せだったのかもしれない。
彼が、そんな事を考え思い始めた時だった。
過去の彼女が目の前に幻のように現れ、彼に声をかけて来たのだ。
彼を励まし、慰め、彼女が思っていた事を幻の中で、道端で出逢った彼女への思いを寄せ始めてからだった。
夢に出てくる他界した彼女は、彼に夢の中で話しかけて来るようになった。

「私は貴方をいつも見つめています。貴方を忘れずに覚えています。貴方もきっと、忘れられないのでしょうね。いつも一人ぼっちで寂しくありませんか?すきです、私は貴方を愛しています。そのままの強い貴方でいてくださいね。でも、あなたの心の中に居る私の事は忘れてください。貴方と出逢い知り合った時の事だけを覚えていて欲しい。私が、貴方と出逢って、本当に嬉しかった。私は、いつでも貴方を想い待ち続けます。私は、きっと変わったと思います。貴方も、きっと素敵に変わっているのでしょうね。いつかまた、ばったり出逢えた時、昔とは違う二人、どうか上手くいきますように。だから、私の分まで強く生きて、何時も自由である貴方と再び知り合える時、そんな貴方を見せてください。そして教えて下さい、ごめんなさい、勝手な私を許してください。良い想い出をありがとう」

彼は眠りから目覚めた時、カーテンを開けると太陽が昇る時だった。
「何故今頃になって・・・」
彼は窓の外を見つめながら、ボーとしている時、婚約して同棲をしていた彼女は不思議そうな顔をしていた。
「どうしたの?ボーととして」
彼は彼女の言葉に答える事が出来なかった。
彼女の一言が、彼が見ていた幻の夢が、一瞬にして彼の頭から消え去っていった。
彼は、この先にある人生で「幸せ」になれるような気がしていたのだろう。

明日は、彼と彼女の結婚式である。
大きな幸せよりも、むしろ小さな幸せのほうが、一番の幸せのようにも思えた。
彼は彼女と共に、お互いの思いで小さな幸せを大切にするのではないか。
今の彼を見てると、なんだか楽しく明るく癒される日々に包まれ、彼女と幸せになるよう願おう。

過去のあの暗く湿った世界での彼とは全く別人のようだ。
彼にとって新たな出逢いと彼女にとっても彼との出逢いの中で、全てが新しく変わったのだろう。
また彼は過去があったからこそ、変わっていったようだと思っているようだ。
この厳しい世界で、彼は太陽のように輝き、過去の彼女とも生きていくのだろう。
彼の幻の夢の手紙は消えてしまったが、きっと彼の心の中に夢の手紙は刻まれ、新たな彼女と人生を歩いて行くのだろう。
結婚式を終えた二人で何かを築き上げ、様々な人生を歩いている人にも、何かを与えながら歩いて行くのだろう。
そして、彼には過去の彼女は心の中に、結婚した彼女は隣に寄り添う、2人の彼女の為に生きていく。

おめでとう!! 二人の幸福よ、永遠であれ。

幻の夢からの手紙は、彼と彼女を導いていく。

ひかり、広い大地を照らして
こころ、狭い世界を照らして
貴方の輝き、飛んでいく、富んでゆく
からだいっぱい、太陽に包まれてゆく
ふたり、Even what time.
そして、Please tell me.
「おめでとう」
心(しあわせ)、永遠であれ。


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今後、過去のポエム(タイトルなど)の編集して更新してきますので宜しくお願いします

短編小説:夢からの手紙<前編>

2018-08-19 12:07:38 | 小説:夢からの手紙


夢からの手紙<前編>


幼き頃から、とても泣き虫な一人の彼の姿がある。
隣人世間の人達から「泣き虫小僧!と言われ、そんな彼は悔しかったのだろう。
彼は、悔やみを心の中で抱きながら、環境の変化と成長と共に、風貌や性格が変わっていく。
どんな誰よりも強くなっていくのだ。
まるで、幼き頃の彼ではなく、別人のように見えるほどに。
どんな事でもどんな人間達にも立ち向かい、身体ごと体当たりといった感じである。
決して休む事もなく、彼は歩くというよりは、人生を走っていた。
彼が、喧嘩をするたび「チンピラ!」と呼ばれ、不良のレッテルを張られる。
彼にとっては、喧嘩!そうするしかなかったのだろう。
何をして良いのか?何をすべきか?自分はいったい、どう生きたら良いのか?
相談する相手もなく、苛立ちの中、ただイライラを喧嘩で、自分自身を癒し和ませる為であったのだろう。
もう誰も、彼に近づいて来るものは誰もいなくなる。
何が面白くて喧嘩をするのか?何故そうまでして殴り合いをするのか?何故?痛い思いをするのか。
彼は、世間に何か「喧嘩の意味」を問い掛けていたのかもしれない。
もし、もしそうだとするなら、彼は走る道に迷いながら、正してくれる誰かを探していたのかもしれない。
彼は、また喧嘩を始めている。
学生同士か?それともチンピラか?いや違う!
カタギではないプロ中のプロだった、くそったれ!
彼は、心の中で叫びながら、引き下がる事なく、ただガムシャラに殴り合いをする。
もちろん喧嘩の結果は見えていた。
着ていたものは、ボロボロ、体中傷だらけ、顔を見れば、赤く腫れ上がり鼻血は止まらない。
耳からは血が流れてくる、口からは血を吐くのだ。彼にとって初めての負け戦である。
しかし、彼にとっては、そうではなかったのだ。
結果はどうあれ泣き言は言わず、歯を食い縛り「やれた!」という満足感が、彼の心の中で気持ちの上にあったのだ。
彼は、口を塞ぎながら立ち上がる、太陽が昇る朝方であった。
野良犬が吠えると共に警官が駆け寄ってくる姿が、ぼんやりと彼の瞳に見えてきた。
「やべぇ!」
彼は、口に出さず心の中で、そう呟いた。
その場にいた誰もがそう思ったのか、いっせいに逃げ回る。
「捕まりたくない!」
彼も必死に逃げ回る。
彼の怪我は、ひどかった為、逃げ回る集団から外され、集団から離れ、たった一人で彷徨い逃れた。
彼は、ある公園の木の下に倒れていた、辺りはとても明るくなっていく。
突然何かが近寄ってきた、犬か?それとも・・・。
しかし、ぼんやりしながらも、とても何か暖かい温もりが感じていた。
はたから見れば、そこには、一人の彼と一人の彼女がいるだけ。
まるで、その彼女は、どこからかタイムスリップしてきたように思えた。
何も聞こえない、何も話せない、ほとんど何も見えはしない、ただ彼女に抱かれていた感じだった。
気を失っていたのか・・・。
気がついた時、彼は、ある部屋にいた。
「何日たったのか?体が動かない、イテエョ!」
そんな事を口ずさみ、眼を開けた後、買い物袋をぶら下げた彼女が部屋の中に入って来た。
彼女は「だいじょうぶ?」と一言だけ言った。
その言葉に彼は何かを感じていた。
生まれて初めて受けた感情だった、暖かさ、そして優しさを・・・。
誰にも相手にされなくなって、一人ぼっちの彼の環境から数年が経っていた。
彼と彼女は相性が良かったのか、この日を境に、二人の交際が始まったのだ。
「だいじょうぶ?」と何度も繰り返し、彼の事をしている彼女の姿は、もう何年も、彼と付き合っているようにも見える。
何日、彼女のアパートで、彼は横になっていたのだろうか?
横になりなりながら彼女を見ていた彼は心の中で彼女に引き付けられ動く、自分自身に気づいていた。
同じように彼女も彼に引き付けられ動く姿もあった。
出逢いによって、二人は引き付け合い、いつしか愛し合うようになっていく。
彼は、体の傷も良くなり鈍った体をほぐすかのように、朝早くから体を動かしていた。
そんな時に、彼女も起きてきた。
「おはよう!」
彼に彼女は眠そうな笑顔で声を掛けるのだ。
心が揺れる・・・お互いに・・・。
二人は、いつも癒しながら楽しかったのだろう。
彼にとっても、彼女にとっても、今までには無い感情を抱いた事だった。
彼と彼女は「このまま一緒に居られたら」と、口には出す事はなかったが、二人の思いは同じであった。
知り合い出逢って、どのくらいだったのであろうか。
癒し合い楽しい日々は、二人にとって、とてもとても短い時間で長い時間を過ごしていたのだろうか。
彼が動けるようになると自宅に戻るが、毎日のように彼は彼女のアパートへ行き、彼と彼女は二人で外出する。
そして、食事や買い物が終わると、たくさんの人達の中で、二人は肩を寄せ合い歩いていた。
恐らく周囲の眼に映るのものは、二人は恋人同士と思うだろう。
しかし突然、なぜか彼女は寂しげな瞳を彼に見せる時があった。
彼は、彼女との付き合いが始まって、初めて見た彼女の姿だったのだろう。
彼女の姿を見て、彼も同じように、二人の関係について考えた。
同時に、二人の心の中で、同じ感情を抱いた時だ、それは「不安」である。
なぜ、そんな思いが浮かび上がってきた来たのか、彼には判らなかったが、彼女には、それが何故か判っていたのである。
確かに彼と彼女は、いつも一緒であったが、それはいつもの大勢の中であった。
共に暮らしてはいなかった二人、彼は変わったように見えて、彼女は変わってはいなかったように見える。
彼女は彼の瞳を見ながら言った。
「ねえ、私達いったい何なの?いつも一緒にいる気がするけど、恋人同士なの?」
この言葉を聞いた時、彼の心は乱れたのだった。
「恋人」なんて彼は考えた事はなかった、彼にとっては息が詰まるようだった。
この時「いったいオレは?」半端な自分に気づき、自分が嫌いになる彼は、周囲の音や彼女の声が聞こえる事がなくなった。
ふと彼は、気づいた時、彼女は少し照れ気味な瞳をしながら「約束ね」と言ったのである。
彼女は、いったい何を言っていたのか、聞こえる彼女の声はなく「約束ね」の言葉で、彼は、うなずいただけである。
この日が彼と彼女の運命を変えたのかもしれない。
その日からというもの二人が出逢う度、ぎこちなくなっていたのでである。
彼は少しずつ彼女から離れ始めているようだった。
それから幾日だったのだろうか?
長い間、彼女とは逢ってはいなかったのである。
何時しか忘れかけていた時である、病院から彼の携帯電話に1本の電話がかかってきた。
「何故、病院なんだ?、何故、ボクの電話番号を知っているんだ?」と彼は思った。

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