安全検証、冷静に=iPS臨床申請
時事通信 2月28日(木)21時24分配信
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った細胞は、動物実験で一定の安全性が確認されているが、臨床研究で人間への移植が実現すれば世界初となる。iPS細胞ができる仕組み自体が分かっていないなど、未知の要素も多い。実用化への期待が高まる中、冷静に安全性を検証する姿勢が求められる。
山中伸弥京都大教授がiPS細胞の開発に成功した当初は、がん(悪性腫瘍)になる危険性が指摘されていた。がんに関わる遺伝子を使っていたことなどが原因とみられ、山中教授は作製方法を改良。危険は非常に小さくなったとするが、未知の要素が多く否定しきれないとの指摘もある。また、iPS細胞を目的の細胞に変える際、変化しなかった細胞が残っていると、増殖力が強いため良性腫瘍を作る可能性がある。
初の臨床研究の対象となる網膜の「色素上皮」は茶色く、変化しなかった細胞を見分けて取り除けることが選ばれた理由の一つだ。腫瘍ができても、網膜は発見と治療がしやすいなど、有利な条件がそろっている。
他の多くの細胞でも臨床研究を目指す動きがあるが、条件はより厳しい。万一、安全の検証が不十分なまま臨床研究を始め、望まない結果が生じた場合、iPS細胞の研究全体が止まる恐れがある。患者自身から大量に作れ、拒絶反応を引き起こさないなど優れた点が多いだけに、冷静な検証が必要だ。
研究論文に「深刻な誤り」…医大教授が辞表提出
読売新聞 2月28日(木)12時21分配信
京都府立医大は28日、複数の研究論文で「深刻な誤りがある」と指摘され、学会から論文を撤回された松原弘明教授(55)(循環器内科学)が、辞表を提出したことを明らかにした。「大学に迷惑をかけた」と説明しているという。
論文は、高血圧患者に降圧剤「バルサルタン」を投与すると、脳卒中などのリスクを下げる効果があるとする3本。2009~12年に日本循環器学会誌(2本)と欧州心臓病学会誌(1本)に発表したが、両学会は昨年末と今年2月に、データ解析に「問題がある」として論文を撤回した。松原教授は、これまでの読売新聞の取材に対し、論文の撤回について「集計のミスであり、通常なら修正すれば済む。論文の結論には影響を与えていない」などと書面で回答している。