第29期世界棋王戦決勝戦三番勝負で、前代未聞の事態が発生。
韓国棋院では、昨年11月から
「アゲハマ(取った石)は、碁笥のフタに置かなければならない。」
という規定が出来たそうです。
1回目の違反は、警告。
2回目で反則負けのようです。
決勝戦三番勝負第一局を勝った柯潔九段(中国)でしたが
2局目は、上記の規定に違反して、この局面で反則負け。
3局目は、微妙なタイミングで規定違反を指摘された
柯潔九段が猛抗議をした末に、棄権。
味の悪い形で、韓国の卞相壹九段が優勝となりました。
日本ルール(韓国も同じ)は、整地の際にアゲハマを使うので、大切にしますが、
中国ルールは、整地の際にアゲハマを使いません。
なので中国の棋士は、そこら辺にアゲハマを適当に置く人が多い。
柯潔九段も新しい規定は知っていたのでしょうが、
盤上に集中するあまり、普段のクセが出てしまったのでしょう。
ここからは、完全に私見です。
近年、椅子対局とネット対局が増えたことにより
この問題が発生したのだと思います。
まず最初に、なぜ新しい規定が出来たのか?
それは、相手のアゲハマを見る行為が有効だからです。
昔は畳の上で対局していたので、相手のアゲハマは見えません。
つまり、アゲハマは自分の頭で計算していたのです。
たとえば、よく現れるこの定石。
黒Aは抜きあとなので、見えなくても1目と数えます。
そして、よくある定石後の形。
この白地は、Bの抜きあとがあるので
僕は5目としか数えられません。
しかし若い人は4目と数えて、あとから
相手のアゲハマを数えて足す人が多い。
椅子対局になり、容易に相手のアゲハマを
見れるようになったこと。
そして、普段から練習でネット対局をしてることも影響してると思います。
ネット対局だと、アゲハマの数は画面上に表示されます。
確かに、あとからアゲハマを足したほうが正確で楽です。
しかし、対面の対局だとアゲハマの数を数え間違えたり、
そもそもアゲハマが多くなると計算不能だと
オジサンは思うのですが。
最近、相手のアゲハマを見て計算してる人が増えたことによって、
アゲハマを見る行為をルールとして、どうするか?
という問題に直面したのだと思います。
国際戦で、相手がアゲハマを見ている時に
自分のアゲハマを手で隠したと人がいるという噂も聞きました。
将棋だと、取った駒を駒台に置く必要があります。
将棋は、取った駒を使えますからね。
罰則までは知りませんが、取った駒を隠す人はいないはず。
1人だけ隠していると、公平性を欠きます。
囲碁もアゲハマは碁笥のフタに置き
相手に見せる必要がある。
両者、同じルールにしないと公平性を保てない。
これが、韓国棋院の考えだと思います。
新しい規定も急に出来た訳ではなく、
韓国棋院は、何年も前から中国棋院に
申し入れていたと聞きました。
ただ、アゲハマの新規定も
「碁笥のフタに入れようとして、落としたら?」
「アゲハマがフタに入りきらなくなったら?」
など、ちょっとした疑問もあります。
以上、完全な私見でした。
盤外での新しい規定により
反則負けとなった柯潔九段は気の毒。
これを機会に、国際戦で統一したルールが出来ると良いのですが。