佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

放射線科医の日常や、診療紹介、推薦図書などをご紹介します。問い合わせ先等、詳しくはカテゴリー「はじめに」をご覧下さい。

福岡びまん性肺疾患研究会 vol.2

2008年07月01日 20時42分01秒 | 研究会・学会
kuma先生にブログでまで褒めてもらうなんて!・・・嬉しいので調子に乗って、続きの報告をしようかと思います(単純な私)。

私がプレゼンした症例は・・・
32歳女性、数年前検診の胸部単純写真で異常を指摘され、精査。サルコイドーシス疑いで経過観察をしていたが自己中止。4年ほど経って再度近医を受診、陰影の拡大を指摘され、精査が施行された。

完全に無症状。血液検査上、軽度の炎症所見あり、KL-6・sIL2-Rが軽度上昇。IgGが4000台。

HRCTでは中葉と舌区優位の広義間質肥厚、肺門側優位の気管支血管束肥厚、小葉中心性斑状影とやや広範囲に広がる末梢優位のすりガラス影が主体。軽度のリンパ節腫脹と脾腫。一目でリンパ路を侵す病変と思える画像です。この時点での鑑別は(無症状であることも加味し)、diffuse lymphoid hyperplasia, LIP, lymphoma, IgG4 related lung disease,を考えました。サルコイドーシスはdryな陰影が特徴ですが、この症例は非常にcellular/wetな印象で(アバウトな表現ですみません)、否定的だと考えました。

つまり、いわゆるリンパ増殖性肺疾患(LPD)との結論は出ているのですが、特異的だったのがすりガラス影内部に見られる非常に小さな多数の嚢胞でした。LPDではリンパ濾胞の過形成に伴うair-trapのせいか、しばしば嚢胞が形成されますが、この症例の嚢胞はちっちゃくて集簇していて、別の機序・・・線維化に伴うtractionで末梢気腔が拡張?とまで、画像所見をコメントしました。

VATSが施行され、病理は非常に線維化の強いLIP様所見。そして浸潤している形質細胞にIgG4が陽性でした。通常、LIPでもこんな線維化はないそうで、画像も含め、もしかして特徴的なのかな?と思いました。遭遇する機会が少ない症例なので、数は見られないのですが、IgG4関連疾患として、後腹膜線維症や硬化性縦隔炎が含まれることを考えると、納得のいく所見です。

Multicentric Castleman病(MCD)は鑑別じゃないのか?と質問が特別講演講師(神奈川循呼センター小倉先生)の先生から出されたのですが、MCDはもっと全身症状の強い病態と思い込んでいたので、鑑別にはあげていませんでした。後から、kuma先生にも、挙げるべきであったと指摘を受け、反省ポイントになりました。

貴重な症例を読影させていただき、機会を与えてくださった九大胸部疾患研究所の前山先生、症例を提示してくださった久留米大学の岡元先生に感謝したいと思います。よその症例なのでUPすることは出来ませんが、医局カンファででも供覧したいと思っています。

訃報

2008年07月01日 11時00分09秒 | オフタイム
 松浦啓一先生が6/29早朝にお亡くなりになりました。放射線科の大先輩で九大教授から佐賀医大学長まで歴任された、まさに放射の大親分という先生でしたが私などにも「おっ、がんばっとるか?」などといつも声をかけて下さるような先生でした。この場をかりて御冥福をお祈りします。MIZ