佐賀大学病院放射線科アンオフィシャルブログ ~さがの読影室から~

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2009.07抄読会 DSCTによる冠動脈CTAの文献

2009年07月15日 21時04分12秒 | 抄読会
 予報通り、夕方から雨が降りだしました。空は厚い雲が広がってきていますが、西の方は血のように染まって見えます。時々、雷が暗い雲を照らしています。まだ音も聞こえないくらい遠くで。
 
 なんとも不吉な当直の始まり。

 では、今月の抄読会です。


 Dual-Soure CT: Effect of Heart Rate, Heart Rate Variability, and Carcification on Image Quality and Diagnostic Accuracy

Harald Brodoefel et al.
Radiology: 247: 2 2008
●Purpose
・心臓カテーテル検査をリファレンススタンダードとして、DSCTによる冠動脈CTの正診率および、心拍、心拍の変動、石灰化の影響を評価する。

●Materials and Methods
・症例100名(女性20名、男性80名 平均年齢62±10歳)
・バイパス術後、ステント留置後は除外
・冠動脈疾患が疑われ、CAGまで施行された症例
・正診率は、セグメント間および患者間で評価
・正診率および、心拍、心拍の変動、石灰化の画質に対する影響:
 各項目→Multivariate regression
 適正な画質の域値→Simple regressionで決定
・CT撮像
 ・単純CT:Caスコア 
R-R間隔の60%固定で、3mm実効スライス厚。オーバーラップなしでmedium-sharpのカーネルB35fで計算(シーメンスSyngo Calcium Scoring)
・CTA:20mlテストインジェクションでタイミングを決定
造影剤はイオメロン400を80ml注入レートは5 ml/sec 後押しは60ml
・画像評価 臨床情報を伏せて、2名のDr.の合議で決定
 各セグメントについて、視覚的に4段階評価(excellent~poor)
 狭窄は視覚的に高度狭窄(50%以上)を有意ととる
・評価項目
 ・心拍数、心拍の変動(最大と最小の差 15≧、>15でグループ化)、石灰化の影響(Agaston score ≦100, 100~400, >400)
 ・それぞれについて感度、特異度、PPV、NPV、Accuracy、画質
 ・multivariate linear regression analysisで解析
●Results
○画質:2.1±0.6
・excellent 21.7%, good 50.0%, moderate 18.5%, poor or nondiagnositc 9.8% (per segment)
・画質不良の原因;高度の石灰化が100 segment, motion artifactが20 segment
 統計的(multivariate regression analysis)にも、影響を与えるのは石灰化と、心拍の変動であった(P=.015, P<.001)
○心拍と画質(Table 2):心拍数は画質に影響しない linear regression analysisでは、95.2 bpmまで画質は保たれる(good~excellent)
○心拍の変動と、画質(Table 3.):影響は有意にあるが、あまり大きくない linear regression analysisでは29.9まで許容される
○Caスコアと画質(Table 4):Agaston score 400以上で、画質が低下する。スコアの高い症例ほど、評価不能セグメントが増加する。Linear regression analysisでは、Agaston scoreは375.8まで許容される
○Accuracy of Lesion Detection
・セグメント間
 Accuracy 91.9%, sensitivity 91.1%, specificity 92.0%, PPV 75.4%, NPV 97.5%
・患者間
 Accuracy 95.0%, sensitivity 100%, specificity 81.5%, PPV 93.6%, NPV 100%

●Discussion
・DSCTは、心拍数が画質へ及ぼす影響はほぼない
・心拍数の変動は画質へ影響するが、診断精度への影響は少ない
・高度の石灰化病変は、画質および診断精度のいずれにも影響を及ぼす
・64列CTと比較して、DSCTは心拍数および心拍の変動による影響が少ないと考えられる
・Limitation
 症例選択のバイアス(有病率73%)、急性冠症候群を除外している点。合議で読影している点、視覚的評価で行っている点。

 Definitionの優れた時間分解能で、心拍の問題はクリアできても、やはり高度の石灰化が鬼門のようです。
 当施設では、位置決めは前胸部で行って単純での心臓の心電図同期撮像はしていません。方法論としては、造影前にカルシウムスコアを出して、400をこえているようであれば造影せずにCAG、というのも有りだと思います。
 どなたか、見解を聞かせていただければ幸いです。