ただいま当直中。ネタもないので、抄読会で読んだ論文です。
例によって長いです。ごめんなさい。どちらかというと自分の勉強のために作っているモノを載せているもので…
今回のは面白いです。T2'というのはこの論文で初めて知りました。
では
Radiology.248.2008.979-986
T2' Imaging Predicts Infarct Growth beyond the Acute Diffusion-weighted Imaging Lesion in Acute Stroke
Susanne Siemonsen et al.
T2'画像について
○目的
デオキシヘモグロビン濃度増加に対して感度の良い、局所磁場の不均一(T2')を計測し、脳組織がおかれている梗塞のリスクを示す。
○背景
これまで灌流画像(PWI)と拡散強調画像(DWI)を用いることで、再潅流により回復が期待されるペナンブラを予測できると報告されている。しかし、PWIは良性の乏血領域と真のペナンブラを区別できない可能性が指摘され、過大評価しているのではないかという報告もある。
これらの欠点は、還流不全として捉えられる領域が解剖学的な特徴、年齢、発症からの時間などさまざまな影響を受けるために起こると考えられる。
ペナンブラは、酸素分画の増加によって特徴付けられる。PETではこの代謝異常を検出することができるが、緊急検査として撮像するのは難しい。MRIでこの状態をルーチンに検出する方法が紹介されるべきである。
局所のデオキシヘモグロビン濃度は、T2*WIでの信号変化として認識されるということはよく知られている。よって、T2*の変化は酸素分画の変化を反映するかもしれない。
T2'について
1/T2'=1/T2*-1/T2
T2'は、T2*値のなかでも、デオキシヘモグロビンの影響を反映するとされる(文献16,17)
この研究では、T2'で異常の見られた領域がADCマップで見られる領域より大きい場合、これまで用いられている灌流画像(TTP:time to peal>DWIミスマッチ)より正確に拘束領域を予測できるかをプロスペクティブに調査する。
○Materials and Methods
・症例:100名(男性57名、女性43名)
クライテリア:前方循環の虚血、発症6時間以内の撮像、経静脈的に血栓溶解療法(t-PA)を行ったこと
中大脳動脈領域の50%以上に拡散低下がある症例は除外
出血が疑われる症例は除外
・MRI(合計10分で終了)
プロトコル:FLAIR像、DWI、マルチエコーT2WIとT2*マッピングシーケンス、TOF-MRA
DWI:シングルショットSE-EPI法 b=0,100 ADC値を計算
PWI:GRE法を用いる
ΔR2* (R2*=1/T2*)
ΔR2*=-ln[S(t)/S0]/TE
S(t):造影剤注入後の信号強度
S(0):造影剤投与前の信号強度
TE:エコー時間
それぞれのボクセルについて、S(0)→S(t)の経時的変化からTTPマップを作成
T2マップの作成:FSE法(TEを12,84,150に変化させる)で値をとり、MRI装置で信号強度を計算させて画像化
T2*マップの作成:シングルショットGRE-EPI法 (TEを20,52,88に変化させる)同上
T2'マップは上記の式でボクセルの値を算出し、画像化
・画像評価:2名の読影者が独立して、視覚評価で行う
TTP>ACCミスマッチ、T2'>ADCミスマッチそれぞれのボリュームを評価
初回ADC異常の範囲と、最終梗塞巣(FLAIRまたはCT)を評価
T2'マップに関しては、good, reasonable, poorと評価
T2'>ADCミスマッチは、読影者間の一致率を算出 poor, slight, fair, moderate, substantial, very good agreement
・統計解析
発症時間と、それぞれのミスマッチの関連
閉塞血管と、それぞれのミスマッチの関連 →いずれもFisher検定
感度、特異度、PPV、NPV、T2'>ADCミスマッチ、TTP>ADCミスマッチと梗塞巣増大のオッズ比
○Results 表
画質について:T2'画像は50%以上でgood
ADC低下病変がなかったのは、2/100例
T2'異常病変がなかったのは、5/100例 ADC低下域より小さいと判断されたものがあり
TTP異常病変は、全例で検出された
TTP>ADCは97/100例
T2'>ADCミスマッチは読影者1,2でそれぞれ73,65%(κ=0.53)
T2'病変の有無、ミスマッチと、発症後の時間に関連なし(3時間以前/後):TTP>ADCではあり
T2'病変と、ADC低下病変の大きさと、血管閉塞部位の差はない
MRAのフォローが得られた症例のうち、61%で再開通が確認された。再開通のあった症例では、T2'>ADCミスマッチのPPVが低い。
○Discussion
T2'>ADCミスマッチは高い特異度である(読影者1:0.42、2:0.46)
TTP>ADCミスマッチは特異度が低い(両者ともに0.04)
→その分感度は下がる、つまり梗塞進展の予測はTTP>ADCミスマッチが優れる
再潅流療法群で、PPVが低下したのは血管の再開通があったためである
今回のスタディでは、域値ではなく視覚評価のためにより臨床に近い結果が得られたと思われる
●T2'>ADCミスマッチは、TTP>ADCミスマッチと比べ梗塞巣の広がり予測に関して、高い特異度である。
潅流画像は、なかなか通常の臨床で行うのは難しいと思いますが、T2'法であれば後処理が簡単にできればすぐに応用できそうです。興味のある方は、是非原文をご覧下さい。フリーのPDFです。
例によって長いです。ごめんなさい。どちらかというと自分の勉強のために作っているモノを載せているもので…
今回のは面白いです。T2'というのはこの論文で初めて知りました。
では
Radiology.248.2008.979-986
T2' Imaging Predicts Infarct Growth beyond the Acute Diffusion-weighted Imaging Lesion in Acute Stroke
Susanne Siemonsen et al.
T2'画像について
○目的
デオキシヘモグロビン濃度増加に対して感度の良い、局所磁場の不均一(T2')を計測し、脳組織がおかれている梗塞のリスクを示す。
○背景
これまで灌流画像(PWI)と拡散強調画像(DWI)を用いることで、再潅流により回復が期待されるペナンブラを予測できると報告されている。しかし、PWIは良性の乏血領域と真のペナンブラを区別できない可能性が指摘され、過大評価しているのではないかという報告もある。
これらの欠点は、還流不全として捉えられる領域が解剖学的な特徴、年齢、発症からの時間などさまざまな影響を受けるために起こると考えられる。
ペナンブラは、酸素分画の増加によって特徴付けられる。PETではこの代謝異常を検出することができるが、緊急検査として撮像するのは難しい。MRIでこの状態をルーチンに検出する方法が紹介されるべきである。
局所のデオキシヘモグロビン濃度は、T2*WIでの信号変化として認識されるということはよく知られている。よって、T2*の変化は酸素分画の変化を反映するかもしれない。
T2'について
1/T2'=1/T2*-1/T2
T2'は、T2*値のなかでも、デオキシヘモグロビンの影響を反映するとされる(文献16,17)
この研究では、T2'で異常の見られた領域がADCマップで見られる領域より大きい場合、これまで用いられている灌流画像(TTP:time to peal>DWIミスマッチ)より正確に拘束領域を予測できるかをプロスペクティブに調査する。
○Materials and Methods
・症例:100名(男性57名、女性43名)
クライテリア:前方循環の虚血、発症6時間以内の撮像、経静脈的に血栓溶解療法(t-PA)を行ったこと
中大脳動脈領域の50%以上に拡散低下がある症例は除外
出血が疑われる症例は除外
・MRI(合計10分で終了)
プロトコル:FLAIR像、DWI、マルチエコーT2WIとT2*マッピングシーケンス、TOF-MRA
DWI:シングルショットSE-EPI法 b=0,100 ADC値を計算
PWI:GRE法を用いる
ΔR2* (R2*=1/T2*)
ΔR2*=-ln[S(t)/S0]/TE
S(t):造影剤注入後の信号強度
S(0):造影剤投与前の信号強度
TE:エコー時間
それぞれのボクセルについて、S(0)→S(t)の経時的変化からTTPマップを作成
T2マップの作成:FSE法(TEを12,84,150に変化させる)で値をとり、MRI装置で信号強度を計算させて画像化
T2*マップの作成:シングルショットGRE-EPI法 (TEを20,52,88に変化させる)同上
T2'マップは上記の式でボクセルの値を算出し、画像化
・画像評価:2名の読影者が独立して、視覚評価で行う
TTP>ACCミスマッチ、T2'>ADCミスマッチそれぞれのボリュームを評価
初回ADC異常の範囲と、最終梗塞巣(FLAIRまたはCT)を評価
T2'マップに関しては、good, reasonable, poorと評価
T2'>ADCミスマッチは、読影者間の一致率を算出 poor, slight, fair, moderate, substantial, very good agreement
・統計解析
発症時間と、それぞれのミスマッチの関連
閉塞血管と、それぞれのミスマッチの関連 →いずれもFisher検定
感度、特異度、PPV、NPV、T2'>ADCミスマッチ、TTP>ADCミスマッチと梗塞巣増大のオッズ比
○Results 表
画質について:T2'画像は50%以上でgood
ADC低下病変がなかったのは、2/100例
T2'異常病変がなかったのは、5/100例 ADC低下域より小さいと判断されたものがあり
TTP異常病変は、全例で検出された
TTP>ADCは97/100例
T2'>ADCミスマッチは読影者1,2でそれぞれ73,65%(κ=0.53)
T2'病変の有無、ミスマッチと、発症後の時間に関連なし(3時間以前/後):TTP>ADCではあり
T2'病変と、ADC低下病変の大きさと、血管閉塞部位の差はない
MRAのフォローが得られた症例のうち、61%で再開通が確認された。再開通のあった症例では、T2'>ADCミスマッチのPPVが低い。
○Discussion
T2'>ADCミスマッチは高い特異度である(読影者1:0.42、2:0.46)
TTP>ADCミスマッチは特異度が低い(両者ともに0.04)
→その分感度は下がる、つまり梗塞進展の予測はTTP>ADCミスマッチが優れる
再潅流療法群で、PPVが低下したのは血管の再開通があったためである
今回のスタディでは、域値ではなく視覚評価のためにより臨床に近い結果が得られたと思われる
●T2'>ADCミスマッチは、TTP>ADCミスマッチと比べ梗塞巣の広がり予測に関して、高い特異度である。
潅流画像は、なかなか通常の臨床で行うのは難しいと思いますが、T2'法であれば後処理が簡単にできればすぐに応用できそうです。興味のある方は、是非原文をご覧下さい。フリーのPDFです。