“五万字の歴史書”(一)
終戦の1945年(昭和20年)、12月6日付から新聞に大々的に展開された「太平洋戦争史」の連載。今の感覚で言えば、不思議な出来事なのだ。外国の提供による自国の歴史記述が全新聞に 1週間続いたの。マスコミ研究者の一部の目に留まっていたが、一般には忘れ去られた現象なのである。
日本の近現代史を知るために広く利用されている岩波書店の近代日本総合年表(初版1968年)に1行もない。連載と同じ時期にラジオで『(太平洋戦争の)真相はこうだ』が放送されており、そのことは「社会」の欄で触れているが、似たような内容だと思われる新聞の方は年表のどの欄にもない。岩波の編集スタッフの眼にとまらなかったのだろうか。扱いかねて意識的に外したのかだろうか。継子扱いにしたとしたら、なぜだろう、大いに気になるのである。
昭和が終わった時、すぐに毎日新聞社が出版し,現代史研究に非常に便利な『昭和史全記録 Chronicle1926-1989』も扱っていない。似たようなことを電波で流した『真相はこうだ』の方はある。『岩波年表』にも「12月9日真相はこうだ放送開始」とだけだが、ある。『昭和史全記録』はこんな風に紹介している。
――これはCⅠE(GHQの民間情報局Civil Informastion and Education Section)ラジオ課の若い中尉が脚本を書き、反軍思想の持ち主が満州事変以来の戦争の“真相”を太郎という少年に物語るという形式をとり、10回続いた。事実に反する部分もあり、戦争の記憶から離れたがっていた日本人の心理を逆なでするもので、非難の投書が殺到した。(つづく)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます