全体の印象だが、やはり“軍国主義”“軍閥”の用語が目立つ。特に前文と本文前半だ。後半は“言論”。原文はmilitarismなのだろう。現代史研究で使われだした比較的新しい用語なのだが、ポツダム宣言で採用しているのでここで使われるのは自然の流れだろうし、当時は“なるほどり”なしでも読者は理解したであろうが、七十年後の読者にはどうも漠としている。“軍閥”にいたってはもっと漠としてる。民主主義の対極、非民主主義か。アメリカ側から見れば産業も教育もすべてがそこに集中した特殊政治機構。今様に言い換えると先軍政治か。もう一つは陸軍や海軍などの閥を含む、もっと広くて強いきずなの集団を言ったのか。軍人を取り巻くムラか。
一三〇〇年前に官僚制がスタートしたターニングポイントに大和の“まほろば”を描いた歴史書が、今も面白く読まれるように、二十世紀の半ば、時代の節目に推定一〇〇〇万部に現れたこの“連載”は「militarism and speech」として、ずっと先でも重要史料として使われるか。使われるようなき気がするのである。(おわり)
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