下記はヤフーニュースからの借用(コピー)です
最新作「いのちの停車場」で待望の医師役
「咲和子の成長のプロセスをお見せできればと思いながら演じていました」と言う吉永小百合さん=東京都内
吉永小百合さんの心には今も、チャレンジ精神が脈々と息づいている。「これでいいと言ったら、もう前に進めなくなる気がする。『一歩でも前進した自分を表現したい』との思いを常に持っています」と語る。 【写真特集】女優たちの和服姿 そんな思いは5月21日公開の主演最新作「いのちの停車場」(成島出監督)からも十分に伝わってくる。念願だった初めての医師役に取り組み、豪華な共演陣と共に、シリアスな終末期医療への問題提起も内包した見応えある人間ドラマを紡いでいる。(時事通信編集委員・小菅昭彦、カメラマン・入江明廣) ◇ ◇ ◇ ―「いのちの停車場」は現役の医師でもある南杏子の同名小説が原作。吉永さん演じる白石咲和子は長年、救命救急の現場で働いていたが、ある事件をきっかけに職を辞し、郷里の金沢で在宅医療の医師として再スタートを切るという役どころだ。実際の医師にマンツーマン指導を受けて役作りに臨んだという。
吉永 企画の候補には最初、南さんのデビュー作「サイレント・ブレス」が挙がりましたが、主人公の年齢が若いことや他でも映像化の企画が進んでおり実現が難しくなってしまった。そんな時に「いのちの停車場」が出版されました。 お医者さん役というと、病院に勤める医師をイメージしていたのですが、今回はそうしたシーンに加えて在宅医も演じられる。とても欲張りにやることができました。 先生方が再現ドラマのように、在宅医療の訪問から帰るところまでを見せてくださり、脈の取り方や血圧の測り方なども教わりました。救命救急の場面は医療機器の会社の研究所を使わせていただき、本番さながらのリハーサルをやってから撮影に臨みました。 救命救急の現場にいるときの咲和子はパキパキしている外科的な感じ、在宅医になってからは「どうやって治療したらいいのか」という戸惑いから入る人間っぽさを重視しました。そこで一人の人間として医者として成長していくプロセスを演じられればと思いました。 1本の作品ですが、2本分をやった感じがしますね。
患者に寄り添う大切さ実感し、考えたこと
救命救急のシーンでは実際の医師の指導を受けてリアルなメスさばきを見せた(C)2021「いのちの停車場」製作委員会
―金沢の実家に戻り、「まほろば診療所」の一員として働き始めた咲和子が出会うのは、「最期の時」をいや応なく意識する患者やその家族たちだ。末期の肺がんを患い自分らしく生きたいと願う女性、寝たきりの妻を老老介護しつつ治療には非協力的な夫、小児がんの娘に迫る死を受け入れられない母親…。物語は、そんな訪問診療の現場で苦闘する咲和子の姿を、時にユーモアも交えて描いていく。 物語の後半、咲和子は骨折をきっかけに衰え、重篤な病に侵された老父(田中泯)を前に、ある選択を迫られ、原作小説とは大きく異なるクライマックスを迎える。
吉永 作品を通して、在宅医療は、治療よりもそれぞれの患者さんの思いに寄り添ってあげることが大事だと初めて知りました。 映画ではさまざまな「人生のしまい方」が描かれますが、私自身は今も健康で体も動かせるので、演じ終わった後もそうしたことを考えることはありません。でも「もし動けなくなったり、運動ができなくなったりしたときにやれることは今から考えておかなければ」ということは今回感じました。 台本が出来上がった段階で新型コロナウイルスのまん延が拡大し、当初はそうした描写を入れようかとの意見も出ました。でも、マスクをした防護服姿では患者さんとの心のやりとりを描くことはできない。このため、設定はコロナ前のある時期のお話ということにしています。でも、看取(みと)りを描いたお話なので、コロナのことを感じられる方もいらっしゃるかもしれませんね。 ラストに関しては、成島監督とお互いに意見をぶつけ合いました。映画では、見る方に(解釈を)委ねるような終わり方になっています。病気の父親に対して、医師として、娘としてどう対処するのか? 咲和子は難しい問題を投げかけられて最後まで悩んでいく。 私自身もそんな彼女をどう表現すればよいのかで悩みに悩みました。二人の悩みがうまく合致するのがよいのかなと思いながら役に向き合いました。
若手共演陣との「アンサンブル」にも心を砕いて
まほろば診療所の面々による群像劇としての魅力も(C)2021「いのちの停車場」製作委員会
―俳優としては「自分に酔えないタイプ」で、作品が終わると反省ばかりだという吉永さん。今、現場で最も重視するのは「現場のアンサンブル」だという。 今回、咲和子を見守る「まほろば診療所」の院長・仙川徹には、「天国の大罪」(1992年、舛田利雄監督)以来3回目の共演となる西田敏行さん。咲和子を慕って診療所で働くことになった医大卒業生の野呂聖二を松坂桃李さん、看護師の星野麻世を広瀬すずさんが演じる。松坂さんと広瀬さんはともに吉永さんとは初顔合わせ。患者やその家族役には小池栄子さん、泉谷しげるさん、石田ゆり子さん、柳葉敏郎さん、伊勢谷友介さんら実力派が顔をそろえた。 吉永 やるときは皆が一つになれるような雰囲気をつくりたいと思います。昔は(まだ若くて)自分ではできなかったけれど、最近はある程度つくってあげることも大事だなと。自分が役を演じると同時に現場の雰囲気づくりみたいなことにも心を砕くように努めていますね。 (松坂と広瀬は)ともに良い映画に出演してらっしゃる。桃李さんは「新聞記者」(2019年、藤井道人監督)ですごくファンになりました。すずちゃんは「怒り」(2016年、李相日監督)で10代の愛らしい女の子があれだけのお役を演じ切っていたことに感心していました。現場ではお二人の映画に対するひたむきな思いが伝わってきました。 桃李さんは東映のヒーロー番組(「侍戦隊シンケンジャー」)からこの世界に入られたそうですね。すずちゃんはお姉さん(広瀬アリス)も女優さんで、ご自分は全然やる気がなかったけれど、同じプロダクションから誘われて「断ったら悪いかな」と思ってやり始めたとか。いろいろな道があるんだなと思いましたね。 これからそんなにたくさんの映画はできないと思うので、若い世代の俳優さんと一緒のときは、戦争の経験者が語り継ぐように「映画ってこんなものだったのよ」と伝えたい。これからの映画がどうなるかは分からないけれど、何か残していきたいなと思っています。 「北の桜守」(2018年、滝田洋二郎監督)で共演した堺雅人さんはすごかったですよ。撮影待ちの時に「昔はどうだったんですか」と熱心に聞いてくるんです。デジタル化などでこれからの映画はどんどん変わっていくでしょうが、昔のことも覚えていてくだされば次につながっていくのかなという気がしています。
勢いを感じてもらえる作品を
常に体を動かしていたいタイプ。「以前けがをした時にお医者さんに『いつになったら水泳をやっていいですか』と尋ねたら『他に趣味はないんですか』としかられました」と吉永小百合さん=東京都内
―自らは10代で芸能界に足を踏み入れ、60年にわたりトップランナーとして日本映画をけん引し続ける。「映画は自分の子供のようなもの」と公言し、代表作は枚挙にいとまがない。 初めて出演したのは1959年の「朝を呼ぶ口笛」(生駒千里監督)。1960年代は日活の看板女優として数々の作品で魅力を発揮し、フリーに転じた後も邦画各社の作品を縦横に行き来し、今作で出演作は122本を数える。念願だった医師役を演じた今、演じてみたい作品や役柄はあるのだろうか。また、東映が配給した今回の作品の完成直前には、大ヒットした「北の零年」(2005年、行定勲監督)など数々の吉永作品をプロデュースした同社の岡田裕介会長が急逝している。最後に、日本映画界の名物男として知られた岡田さんへの思いとともに、今後の俳優人生の展望を語っていただいた。
吉永 ステイホームの時期に、たまたまテレビで「キューポラのある街」(1962年、浦山桐郎監督)を放送していて、何だか知らないけど見ちゃったんですよ。やっぱり、これはすごい作品だなと自分でも思いました。16歳の時に演じたのですが、今もあれを超えられていないなと。 大人になってから、いろんなジャンルの映画でいろんな仕事をさせてもらいました。市川崑さん(「細雪」「おはん」「映画女優」など)や坂東玉三郎さん(「外科室」「夢の女」)、森谷司郎さん(「動乱」「海峡」)の作品など、好きな映画はたくさんありますが、あそこまで「強い」ものは、もしかしたらまだないかもしれません。 できれば、そういう(「キューポラのある街」のような)作品を残してからやめたいなと思います。(チャプリンは『最高傑作は次回作』と言っていたが)私も同じ思いですね。チャプリンと一緒なんて言ったら申し訳ないんですけど。 先日「徹子の部屋」で黒柳徹子さんに「次はどうなの?」と聞かれて、「探偵なんてどうでしょう?」とお答えしたら、「いいわね!」と言ってくださった。探せばいろいろな職業はあると思うけれど、女性の探偵ってなかなか少ないし、面白いかなと思っています。もしやるなら本格派のミステリーがいいですね。名探偵というよりは迷探偵になってしまうかもしれませんが(笑)。 岡田さんは40年間、いろんなジャンルの映画を考えてくださって、その中で自分も成長してこられた。今後自分がどうなるんだろうという不安がとてもあります。正直、実感がなくて、今でもつい「これは相談してみよう」と思ってしまう。それぐらい存在感の大きな方でした。 ものすごく映画が好きで、昔の活動屋の生きがいを持って仕事をしていらした。私も同じような気持ちを持って、映画の勢いみたいなものを感じてもらえる作品を作ることに腐心しないといけないなと思っています。 ◇ ◇ ◇ 吉永 小百合(よしなが・さゆり)=東京都出身。このほかの映画の代表作に「愛と死をみつめて」「泥だらけの純情」「伊豆の踊り子」「戦争と人間(第二部・第三部)」「男はつらいよ 柴又慕情」「青春の門」「華の乱」「母べえ」「ふしぎな岬の物語」「最高の人生の見つけ方」など。テレビドラマでは映画化もされた「夢千代日記」が代表作として知られる。原爆詩の朗読にも取り組む。2010年度には文化功労者に選ばれた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/33c676d8c35748ef7aac64b425a46d4a4e48d68c?page=1
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