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“日本人みんなの父だった”88歳で亡くなった小林亜星さんの意外な功績

2021-10-31 13:30:00 | 日記

下記は文春オンラインからの借用(コピー)です

「この木なんの木」(’73年)や「パッ!とさいでりあ」(’91年)等のCMソング、『魔法使いサリー』(’66年)や『ターンエーガンダム』(’99年)等のアニソン(主題歌)、さらに『寺内貫太郎一家』(’74年)の主役・寺内貫太郎役等俳優としても活躍した、作曲家・音楽家の小林亜星さんが去る5月30日に亡くなった。死因は心不全。享年88。奇しくも「この木なんの木」(正式な曲名は「日立の樹」)や「さいでりあ」等でコンビを組んだ、名作詞家の伊藤アキラさんも本年5月15日の、同じ時刻に亡くなっており、勝手ながらお二人の強い繋がりが感じられてならない。小林亜星さん 
一度聞いたら忘れられない!『魔法使いサリー』の主題歌を考案
 とにかく小林亜星さんの業績はすさまじい。万城目学原作の映画『鴨川ホルモー』(’09年)でも印象的に使用された、レナウンのCMソング「ワンサカ娘」(’61年/歌:弘田三枝子)が亜星さんの出世作だが、この卓越したセンスには半世紀を経てなお驚かされる。
 その数年後、“魔女っ子アニメ”の偉大なる元祖『魔法使いサリー』の主題歌はじめ音楽全般を担当。「マハリクマハリタ ヤンバラヤンヤンヤン♪」のフレーズは生涯、耳から離れることはないだろう。また昭和42年生まれの筆者には『超電磁ロボ コン・バトラーV』(’76年)や、フィリピンでまさかの実写映画化もされた『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(’77年)等の巨大ロボットアニメの主題歌や音楽も忘れられない。というか体の一部と化している。『コン・バトラー』は特にエンディングが鮮烈で、「身長 57メートル 体重 550トン♪」というスペック歌詞により、主役メカの基本設定を学習できてしまうシステムは画期的という他はない。この歌のお陰でコン・バトラーVだけは身長と体重が一生ものの知識となってしまった。「魔法使いサリー」DVD BOX(販売元:ユニバーサルミュージック)超電磁ロボ「コン・バトラーV」VOL.1(販売元:東映ビデオ)
 そんな亜星さんの偉業は、他の有識者の方たちが綴られることと思うので、ここからは亜星さんのもうひとつの顔である、“俳優”という側面にスポットを当てて、故人を偲ばせていただく。
向田邦子さんも脱帽。寺内貫太郎の名演技
 なんといっても驚いたのは、TBS系往年の傑作ドラマ『寺内貫太郎一家』の主人公、老舗石材店の主人で、典型的な頑固親父の寺内貫太郎役だろう。当時小学2年生だった筆者は、芝居の良し悪しも満足に分からぬまま、「この人、なんかすごいな……」と肌で感じつつ毎週『貫太郎一家』を楽しみに観ていた。小林亜星さん 
 ある夜、いっしょに観ていた母がひと言。「この人、ホントは作曲家なんだよね」。「えっ!?」と驚いた私は瞬時に奇妙なデジャ・ビュ感に襲われた。いつもオープニングの「小林亜星」というクレジットが気になっていたからだ。「この名前どこかで……」と思ったらそう、先の『サリー』や『科学忍者隊ガッチャマン』(’72年)等々の主題歌や音楽欄でよく目にするお名前。「こんな人があのかっこよくってオシャレな歌をいっぱい作ってたんだ!?」と驚いた。向田邦子さん 
 この驚きは決して間違ってはいなかったようで、『貫太郎一家』の原作者・脚本家である向田邦子さんは当初、小林亜星さんが実の父親をモデルにした貫太郎役を演じると聞き、「父のイメージとかけ離れすぎ。父がかわいそう」と漏らしたそうだ。ところが実際のドラマを観て、その思いは消し飛んだという。そこには、頑固者でまるで融通が利かないながらも、誰よりも家族を愛し、誰にも温かく接する亡き父親の面影が見事に宿っていた。向田さんは亜星さんを抜擢した久世光彦プロデューサーの慧眼に感服し、以後、プロデューサー(番組スタッフ)のキャスティングには信頼する姿勢を貫いたという。
『太陽戦隊サンバルカン』では、息子のためにゲスト出演
 その亜星さんの実の息子さん、小林朝夫さんも俳優となり(現在は引退)、東映スーパー戦隊シリーズ第5弾の『太陽戦隊サンバルカン』(’81年)で、黄色い豹の戦士・バルパンサーとなって戦う豹朝夫役を演じた。そんな息子のためにと亜星さんもなんと、父親役で第38話にゲスト出演。サブタイトルもズバリ「豹朝夫のおやじ殿」だった。
 サンバルカンの秘密は親にも内緒、てっきり東京に出て真面目に働いていると思った息子がプータローまがいの生活を送っていると知った、亜星さん演じるバルパンサーのおやじ殿は怒り心頭。実家に連れ戻そうとする。だが、息子の真剣なまなざしを信じたおやじ殿は、黙って訳も聞かずにひとり実家へ帰……ろうとしたところを、敵組織・ブラックマグマに捕らえられ……という展開。結局最後は、バルパンサーはじめサンバルカンに助けられ、秘密はバレてしまうものの、再び父子の絆を取り戻すという同作屈指のハートフルなエピソードとなった。「太陽戦隊サンバルカン」VOL.3(販売元:東映ビデオ)
亜星さんの中に息づく、“古き良き日本の父親の魂”
 後年、本話脚本を執筆した上原正三さんにこのお話について伺ったところ、当然のことながら亜星さんが父親役を演じることはあらかじめ決まっていたとのこと。上原正三さん
「僕の父と亜星さんは、外見もイメージも全然違うんだけど、“最後まで息子を信じる父親像”はいっしょ。僕の父も、作家になりたいという僕の夢と想いを信じてくれて、30近くになってもパチンコ暮らしを続けていた僕を、文句も言わずに養ってくれた。“自分のやりたいことをやりなさい”というのが父の口ぐせだったね。亜星さんは、そんな僕の父の想いを見事に演じてくれたし、亜星さんの中に父の面影を見出すことができた。あのお話は僕にとっても忘れられない1本ですよ」と上原さんは語った。小林亜星さんと梶芽衣子さん 
 向田さん、上原さんもその演技に、それぞれの父親の面影を見出したという小林亜星さん。亜星さんの中には脈々と受け継がれてきた“古き良き日本の父親の魂”が息づいているのだろう。亜星さんは朝夫さんやバルパンサー、そして西城秀樹さんや梶芽衣子さんだけの父親でなく、日本人全員の父だったのだ。そう考えると子供の頃、さんざん聞いていた『サリー』などのアニソンの数々は、亜星さんが我々子供たちに聞かせていた“日本の子守唄”だったといえよう。
 亜星さん、素敵な歌の数々、そして、いつの時代も変わらぬ、温かくって厳しい“日本の父親”像をありがとうございました。ゆっくりじっくり天国で骨休めしてください。
岩佐 陽一
いわさ よういち



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