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アナフィラキシーが怖い人に知ってほしい真実

2021-05-09 16:24:15 | 日記

下記の記事は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です

先の見えない状況が続く新型コロナウイルス感染。切り札として期待されているワクチンに関する報道で、見聞きする機会が増えたのが「アナフィラキシー」という言葉だ。ワクチンの副反応の一つだが、どんなメカニズムで症状が起こるのか。専門家に話を聞いた。
アナフィラキシーの症状とは?
「アナフィラキシーとは、アレルギー物質(アレルゲン)が体内に入った後、数分後から十数分以内に起こる過敏反応のことで、皮膚や粘膜、呼吸器や循環器など、複数の場所に同時に症状が表れるのが特徴です。このうち、急な血圧低下や意識障害が起こるものを、アナフィラキシー・ショックと呼びます」
こう話すのは、日本アレルギー学会「アナフィラキシー ガイドライン」を作成したAnaphylaxis対策特別委員会委員長(当時)で、国立病院機構相模原病院臨床研究センター・センター長の海老澤元宏さん。
ガイドラインによると、具体的な症状は発疹(じんましん)や赤み、かゆみ、唇やまぶたの浮腫、腹痛、嘔吐、喘鳴(ぜんめい・呼吸がゼーゼーする)、呼吸困難、血圧低下、意識障害など、実にさまざまだ。
また、さまざまなものが要因となる。
食品では、子どもに多いのが卵や牛乳で、年齢が上がると増えるのが小麦や甲殻類(カニなど)、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類など。ハチに刺された後に起こる例もあり、抗菌薬や痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)、抗がん剤などの医薬品も要因となる。
「医薬品に関しては、主体となる成分でアナフィラキシーが起こる場合もあれば、添加物で起こる場合もある。実際、新型コロナのワクチンのアレルギーでは、添加物で起こっている可能性が高いとされています」(海老澤さん)
ファイザー社のワクチン「コミナティ」やモデルナ社のワクチンが用いているm(メッセンジャー)RNAは、脂質で包まれた形で製品化されているが、この脂質であるポリエチレングリコール(PEG)がアナフィラキシーの要因といわれている。アストラゼネカ社のワクチンにはポリエチレングリコールは使われていないが、類似物質のポリソルベート80が添加物として入っている。
「ポリエチレングリコールは、私たちが身の回りで使っている化粧品やハンドクリームなどに用いられている成分で、安全性は高いです。便秘の治療薬や大腸内視鏡検査の前処置でも利用されています」(海老澤さん)
ファイザー社のワクチン接種における国内での副反応をみると、男性より女性のほうが圧倒的にアナフィラキシーを起こしている。海外の報告でも同じような傾向だ。
「これはあくまでも可能性ですが、男性より女性のほうが化粧品やハンドクリームを使う機会が多い。ポリエチレングリコールの一部は皮膚から吸収されるので、気がつかないうちにこの物質に対する反応性が獲得されていて、そこに高い濃度のポリエチレングリコールがワクチン接種によって入ったため、過敏反応が起こったのではないでしょうか」(海老澤さん)
では、今回のワクチン接種では、どれくらいの頻度でアナフィラキシーが起こっているのだろう。
100万回接種あたり37件は相対的に多い
厚生労働省の資料によると、2月17日から4月22日までにワクチンを接種した回数は推定で251万7045回。このうちアナフィラキシーとして報告された事例は580件。最終的には違ったケースや不明なケースを除くと、全部で94件だった。100万回接種にならすと37件。インフルエンザワクチンなど一般的なワクチン接種によるアナフィラキシーの発生率は、100万接種あたり1.3件なので、相対的に見てコロナワクチンのアナフィラキシーはかなり多い。
だがその一方で、94件の経過を見ると、回復(有害事象が消失、またはもとの状態まで戻っている)が47例、軽快(有害事象は完全に回復していないが、ほぼ消失、またはほぼもとの状態に戻っている)が43例、未回復が3例(有害事象は継続中である)、不明が1例だった。
「これを見ると、ほとんどの方が改善されています。アナフィラキシーにはアドレナリンの筋肉注射がたいへん有効です。起こった段階ですぐに注射すれば重症化せずにすみます。ですから、むやみに怖がらないでほしいですね」(海老澤さん)
新型コロナのワクチンとアナフィラキシーに関して、日本アレルギー学会の浅野浩一郎さんにも取材した。
同学会は先に紹介したアナフィラキシーのガイドラインのほかに、今年3月には適切にワクチン接種を行うための指針「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」を発表している。浅野さんは、指針を作成した同学会COVID-19ワクチンに関するアナウンスメントワーキンググループの委員長で、東海大学医学部内科学系呼吸器内科学教授だ。
「これからワクチン接種の対象となる方にお伝えしたい。アナフィラキシーは初期対応さえ間違えなければ、筋肉痛や倦怠感といったほかの副反応と何ら変わりありません。適切に治療をすれば、経過を見るために入院してもらう必要があるかもしれませんが、後遺症も残らず回復できます」
呼吸器内科医として、現在も神奈川県にある大学病院で多くの新型コロナウイルス感染症の患者を診ている浅野さん。重症化したときの状況はもちろん、治ってもなお患者を苦しませる後遺症の状況をもよく知る。だからこそ、「アナフィラキシーを理由にワクチンを接種しないのは、デメリットが大きすぎる」と話す。
アナフィラキシーは怖い。そんなイメージがわれわれにあるのは、全身に一気に症状が表れ、呼吸が苦しくなったり、意識を失ったりするからだ。だが、浅野さんによると、それは適切な初期対応で何とかなるという。
初期対応とは、具合の悪い人をすぐに見つけ、症状などからアナフィラキシーかどうかを診断し、そのうえでアドレナリンを太ももに注射する、というものだ。必要に応じて生理食塩水の点滴も行っていく。
アナフィラキシーが体に与える影響
では、アナフィラキシーになると全身ではどんなことが起こるのか。
まず、アレルギー反応によって、免疫細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され、その作用で血液の液体成分である血漿が血管外へ漏れ出る。唇やまぶたが腫れたり、じんましんが出たりするのは、漏れ出た水分が皮膚や粘膜にたまるためだ。重症化すると、大量の血漿が血管外に漏れて血液量が減るため、大量出血したときと同じように血圧低下や意識の低下が起こる。
さらに放出された化学物質の作用により、気管支や腸管を取り囲む筋肉(平滑筋)が収縮する。呼吸が苦しくなるのはのどの粘膜がむくみ、気管支周囲の筋肉が収縮するためだ。腸管周囲の筋肉の収縮は腹痛や下痢の原因となる。
「実は、こうしたすべての症状を改善するのがアドレナリン製剤なのです」(浅野さん)
そのうえで、血管から漏れ出した血漿(水分)はすぐに血管内に戻らないため、減った血液量を補うために生理食塩水を点滴で入れることもある。また、ヒスタミンの作用を抑えるために、ヒスタミンH1受容体拮抗薬などを使うことも。アナフィラキシーより軽いアレルギー反応のときは、これだけですむ例もあるという。
さらに、高血圧や不整脈の治療で使うβ遮断薬には、アドレナリンの作用を阻害する働きがあるため、持病の治療でこうした薬を使っている人は、アドレナリン製剤の効果が十分に表れない場合もある。このときは別の薬(グルカゴン)を点滴して様子を見る。呼吸が苦しいときは酸素吸入をする。
「接種会場が体育館や公民館の場合、グルカゴンや酸素ボンベなどを準備するのは、現実的には難しいでしょう。そのときは近くの医療機関との連携で、初期対応で改善しなかったら速やかに搬送する対応がとられるはずです」(浅野さん)
抗ヒスタミン薬の服用に注意
「予防のために接種前にドラッグストアなどで市販されている抗ヒスタミン薬などを服用すればいいのでは?」と思う人もいるだろう。これについて「もともと持病の治療のために飲んでいる方以外は、事前に服用しないように」と答える。
「抗ヒスタミン薬を飲むと、アナフィラキシーの初期のサインである皮膚や粘膜の症状が表れにくくなる。重症化して呼吸器や循環器に症状が出るまで気付かない恐れがあります」
では、どういう人は気を付けたほうがよく、どういう人はアナフィラキシーを理由にワクチン接種できないのだろうか。
基本的に、接種する前には予防接種を安全に受けられるかどうか、必ず医師が接種する人に問診(予診)を行う。その際に医師が注視する病気の一つが気管支喘息だという。薬でコントロールできていたり、喘息発作がずっと起こっていなかったりする人は問題ないが、薬を使っても症状がコントロールできていない、あるいは喘息発作が頻繁に出る人は、注意が必要のようだ。
「私たちが危惧しているのは、アナフィラキシーが起こるかどうかよりもむしろ、重症化するかどうかです。気管支喘息がアナフィラキシーのリスクとはいえませんが、万が一、アナフィラキシーを発症したときに喘息発作も誘発されて、重症化する恐れが考えられます。ただその場合も接種できないわけではなく、重症化した際の体制が整っていれば接種は大丈夫です」(浅野さん)
同じアレルギーでも、花粉症やアレルギー性鼻炎、食物アレルギー、ラテックスアレルギーなどはリスクになりにくいそうだ。アレルギーを起こす原因物質がそれぞれ花粉やダニ、ハウスダスト、卵、ゼラチン、ゴムであり、ポリエチレングリコールとは違うためだ。
ただし、過去に原因がわからないアナフィラキシーを起こしている人、医薬品でアレルギー反応が起こっている人は要注意とのこと。これに関しては、厚生労働省がホームページ(厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」)で紹介しているので、気になる人はチェックするといいだろう。
新型コロナワクチンの1回目の接種でアナフィラキシーが起きた人は、原則、2回目は打てない。海外では違うメーカーのワクチンを打つ方法も試験的に行われているが、「勧められません」(浅野さん)。軽いアレルギー反応が出た人は注意が必要になるが接種は可能だ。
有効性については、「1回だけの接種では、臨床試験で明らかになった高い有効性は得られないでしょう。ですが、アナフィラキシーが起こったからといって接種したワクチンの有効性が消えるわけではないので、1回分の効果はあると考えられます」(浅野さん)。
心配な人は誰かの付き添いを
最後に、アナフィラキシーが心配な人に対して、浅野さんは「接種をする際に誰かに付き添ってもらうとよい」とアドバイスする。
接種会場が広かったり、接種後の待機者が多かったりすると、会場にいる医療従事者が十分に目配りできないため、症状の発見が遅れる可能性がある。そんなとき付き添いがいればすぐに気付いて、医療従事者を呼んでくれるので安心だ。



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