皆さんと一緒に考えましょう

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

“痛い”を黙殺するのは「今の時代にマッチしない」…医師が“無痛”乳がん検査を開発した理由

2021-04-22 13:30:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です  記事はテキストに変換していますから画像は出ません

 35歳で大腸がんになってから、実にいろんな検査・検診をしてきました。「中」を診るわけですから、切ったり、刺したり、入れたり、浴びたりと、必ず身体に何らかの侵襲(ダメージ)を受けます。
 当然、メンタルにも負担がかかります。はじめてCT検査をした時は、造影剤を入れる「ドデカ注射マシーン」のようなものがあまりに恐ろしく、子どものように泣きました。
 検査前から「造影剤は身体に良くないけど、いいね?」という同意書にサインをしなくてはならず、検査後も素早く体外に造影剤を排出するために「水分をたくさんとってね」的な注意書きを渡される……そんなものを体内に入れるのです。怖くないはずがありません。
 私の場合、すでに病気が判明していたためやむなくでしたが、これが健康を保つための「検診」なら、あれこれ言い訳をつけて回避したいと思うのも納得です。
「技師さんに、『この検査はそんなに痛くないですから』と言われたりしますよね。そりゃあ我慢できないことはないかもしれないけど、実際痛みを感じているのに、それを『痛くない』と処理されてしまうのって、今の時代にマッチしない気がするんです」
 こう語るのは東海大学教授で、放射線科専門医の高原太郎先生。『世界一受けたい授業』で「医師が今注目する検査」として取り上げられた「ドゥイブス・サーチ」を開発した先生です。東海大学教授(放射線科専門医)の高原太郎先生。
服を着たままで、痛みもない「新しい」乳がん検診法
 変わったネーミングの「ドゥイブス(DWIBS)」とは、画像診断法「Diffusion-weighted Whole body Imaging with Background body signal Suppression」の頭文字を取ったもので、MRIを用いた革新的な乳がん検診法のことなのです。
 40歳以上の女性が無料で受けられる自治体の乳がん検診では、「マンモグラフィ」が使われています。
 冷たい台にペトっと乳房を乗せ、上からぎゅうぎゅうと板で押さえつけておっぱいを薄く、平らにする。人前では決してさらさない部分を蛍光灯の下でぺろんと露出し、さらにそれをプレパラートのように挟んで顕微鏡で観察する理科の実験のような扱いを受けるマンモグラフィ。私はいつも心のどこかを「OFF」にして臨んでいました。
 そんな、健康維持のために「当たり前」のものとしてのみ込まなければいけなかった乳がん検診の「負」の部分を取り去ってくれたのが、ドゥイブス・サーチと言えます。
「がんの検査というと造影剤を使ったCTやPET検査がありますが、ドゥイブス・サーチは磁気を使ったMRIでの検診になります。そのため造影剤の注射もいりませんし、X線による被曝もありません。痛みなし、肌をさらす必要なし、被曝なし、注射なし、待ち時間なし、豊胸術後でもOK、高濃度乳房でもOKというのが、ドゥイブス・サーチの大きな特長です」(高原先生。以降「」内、同氏)
 さまざまな検査・検診で泣きをみてきた筆者からすると、服を着たままで、痛みもなく、身体的ダメージもない検診というのはにわかに信じがたいほどの驚きが。実際ドゥイブス・サーチを体験した人は筆者と同じような感想を持つ人が多いそうで、最新の調査では、受診者の7割がはじめて乳がん検診を受けた人か、3年以上未受診の人で占められていたそうです。
ドゥイブス・サーチを体験してみた
 現在、ドゥイブス・サーチを受診できる施設は全国で25箇所(4月30日時点)。価格は病院によって異なりますが、2万円余りのところが多くなっています(筆者が体験した武蔵野徳洲会病院も税込2万2000円でした)。無料検診も存在する中での2万は高く感じるかもしれませんが、値段に代えがたい価値がドゥイブス・サーチにあることを、後に筆者は実感することになります。
 ということで、武蔵野徳洲会病院でドゥイブス・サーチの体験をさせてもらうことにしました。
 私は体内に避妊リング(ミレーナ)を入れており、矯正中で口腔内に金属部品あり&大腸がんの経過観察中でもありましたが、事前問診ではどれも問題ないとのこと。
 問診後、検査着に着替えたら服を着たままうつ伏せでMRI装置に入っていきます。この時、寝る台の乳房に当たる部分がくり抜かれているので、そのくぼみにおっぱいを入れるだけで準備完了。CTやPET検査のような食事制限もなく、造影剤の注射もなし。待ち時間もなく、筒型の機械の中で寝ているだけで15分の検査が終了しました。問診や着替え、会計などをあわせてもトータル1時間ほどで終わるかと思います。
 痛みや裸体を見られるストレスは本当に皆無でした。が、閉所恐怖症の方は注意が必要かもしれません。筆者はいざ筒の中に入ると、作動音から耳を保護するためのヘッドフォンで周囲の音が感知できず、うつ伏せで視界がない状態もあいまってプチパニック状態に。恥も外聞もなく「怖い怖い」と訴えると、放射線技師の方が検診中ずっと手を握っていてくれました……。皆さんも少しでもなにか感じたことがあれば気軽に技師の方に相談してみてください……!
 そして後日送られてきた検診結果レポートがこちらです(一部、省略しています)。
【所見】
 拡散強調画像(DWIBS法)の全体像において、両側乳房には小さな結節が散見されます。これはがんではなく、良性の病理学的変化と思われ、現時点では特に心配は要りません。
「右わきにしこり(副乳?)」とのことですが、画像上は特に問題となるものはないようです。このためこの点については安心してよいと思われます。乳腺は豊富で、マンモグラフィーを撮影した場合、デンスブレスト(高濃度乳房)になると思われます。
「問診表に『右脇にしこりを感じる。生理前は痛い』と書かれていましたよね。検診受診者の不安や疑問に対し、ドゥイブス・サーチでは結果レポートで必ず返事を書きます。こういった手のかかるサービスを実施している検診はあまりないのではないでしょうか」
 先述したように、私はがん患者であるために同年代の中でもかなりいろんな検査・検診を定期的に受けている方です。それでも、こんなに丁寧で優しい検診に出会ったことはありませんでした。検診当日、肉体的・心理的な負荷がほとんどなかったことに加え、抱えていた不安に対して専門家から「手紙」として返事がくる。「自分」をきちんと見てくれているという安心感があり、値段以上の価値を感じました。黒い点のように見えるのは「結節」といって、「良性のしこり」だという。筆者の場合、このしこりが通常の人よりも多く、今後悪性にならないとも限らないため、1年に一度の検診をおすすめされた。一般のレポートの場合3D映像はつかないが、写真が同封される。「ドゥイブス・サーチがすごいのは、素人目でもどこにどれくらいの大きさの“しこり”があるかが直感的にわかるところ」という高原先生の言葉にも納得。(画像提供:高原太郎先生)

胸を「見られたくない」はわがままか
 日本の乳がん検診率は47.4%にとどまっていますが、罹患率は年々増加の一途をたどり、約20年前には30人に1人だった罹患リスクが今では9人に1人にまで増えています。
 高原先生によると、病院などで「なぜ乳がん検診を受けないのか」とアンケートを取ると、「多忙」や「痛み」がその理由の上位を占めるといいます。一方で、ドゥイブス・サーチを使った乳がん検診の“いいところ”を聞くと、「見られないこと」という答えが返ってくるそう。
 考えてみると、「忙しさ」や「苦痛」は受診しない理由として“それらしい”から言いやすい。でも、「胸を見られたくない」という思いは「わがまま」として処理されがちで、「健康のためにはそれくらい我慢するべき」というプレッシャーから声を上げにくいのかもしれません。高原先生(右)と筆者(左)。この日は取材に際して特別に、検診後すぐに自分の画像を見ながら診断していただいた。「がんではないと思うけど……」という言葉にヒヤリとする。(※通常の受診では医師からの直接説明はありません)
 そして「高濃度乳房(デンスブレスト)」であると思われる結果となった筆者ですが、日本女性の半数が高濃度乳房にあたるそうで、基本的に30代は全員がデンスブレストだといいます。さらに高濃度乳房の場合、マンモグラフィではがんの発見率が半分になるというデータもあるということなので、無料検診を受けているからといって、その結果を真に受けていいかは大いに疑問が残ります。
大切なのは早期発見、300施設・受診30万人増が目標
「アメリカでは検診受診者に乳腺濃度を伝えることが法律で義務化されました。しかし日本では自治体の検診で乳腺濃度を記録しているにもかかわらず、それを告知してもらえるかどうかは自治体判断になっているのが現状です」
 高濃度乳房の弊害を知っている方で、すでにエコー(超音波)検診をされている方も多いかもしれません。しかしエコーも万全ではなく、技師によって精度に差が出やすいといいます。そしてやっぱりおっぱいをさらしてグリグリと乳房を押されるので、痛みや恥ずかしさからは逃れられないんですよね……。(画像提供:高原太郎先生)
「ドゥイブス・サーチは乳腺濃度の影響をほとんど受けないので、マンモグラフィに比べてがんの発見が容易です。上の画像を見ていただくとわかりやすいですが、乳腺が発達しているとマンモグラフィでは真っ白に写ってしまって、がんが見つけにくい。まるで雪山で白ウサギを探すようなものですが、ドゥイブス・サーチでは乳腺に阻害されることなく、しっかりとがん細胞が見つけられるのです」
 高原先生は2012年にがんでお父さんを亡くされています。がんがわかったときには、すでにステージ4でした。高原先生はこの経験からがんの“早期発見”の重要性を身に沁みて感じたと話します。
「女性の乳がんは30代後半~50代で罹患率が高い。つまり働き盛りや、子育て世代がなるがんなんです。特にシングル家庭の場合、長期にわたって母親が働けなくなると、一気に家計が危うくなります。でも、ステージ1で発見できれば1ヶ月で社会復帰でき、9割の方が完治可能です。そうすれば金銭的・キャリア的なダメージも最小限ですむ。だから、“早期発見”が大切なんです。
 経営側にとっても、社員の健康を守ることは会社の価値を高めることにつながるでしょう。経験豊富な社員が病気で離職してしまったり、長期的に休んでしまうような事態はビジネスにとっても損です。
 今、40代以上の女性の半数が乳がん検診を受けていません。その数は約300万人と言われています。そのうちの10分の1、つまり30万人にドゥイブス・サーチを受けてほしいと思っています。それが達成できたら乳がん検診率は5%上がります。痛い、胸を見せたくないという理由で検診から遠ざかっている方のためにも、あと300箇所は受診施設を増やしていきたいです」



コメントを投稿