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緑茶とコーヒーの摂取量と死亡の関係を日本人のデータで分析
緑茶はアジアで広く飲まれており、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患を含む、慢性疾患を予防する効果を検討する研究が数多く行われてきました。世界中で飲まれているコーヒーについても、さまざまな健康利益と関連づける研究結果が相次いで報告されています。
これまでに行われた研究では、例えば、1日に3~5杯の緑茶を飲む日本人は、緑茶を飲まない日本人に比べて心血管疾患のリスクが41%低い、という報告がありました。また、コーヒーについても、適度な摂取は死亡リスクの低下などに関係することが示唆されていました。
今回、大阪大学公衆衛生学教室の寺本将行氏らは、既に脳卒中や心筋梗塞を経験した日本人の死亡リスクに、緑茶とコーヒーの摂取がどのように関係しているのかを調べました。
分析に用いたのは、日本人の生活習慣とがんとの関連を明らかにするために、1988~1990年に全国で開始された大規模研究「Japan Collaborative Cohort Study」に参加した人たちのデータです。今回は、参加時点で40歳から79歳だった人の中から、必要な情報がそろっていた4万6213人(脳卒中経験者478人、心筋梗塞経験者1214人、どちらも未経験の4万4521人)を分析対象にしました。
それらの対象者が研究に参加する時点で申告した、生活習慣、食事の内容、病歴などの情報を抽出し、2009年までの死亡の有無を確認しました。
緑茶の摂取頻度については、「1日に7杯以上」「1日に5~6杯」「1日に3~4杯」「1日に1~2杯」「1週間に1~6杯」「ときどき飲む、または飲まない」の6段階に分類しました。コーヒーの摂取頻度については、「1日に2杯以上」「1日に1杯」「週に1~6杯」「ときどき飲む、または飲まない」の4段階に分類しました。日本ではカフェインレスコーヒーは一般的ではないため、摂取するコーヒーの種類が、カフェイン入りか否かは調べませんでした。
緑茶の摂取量が多くなるほど死亡リスクが低下する傾向
中央値18.5年間の追跡で、9253人が死亡していました。対象となった人々の緑茶の摂取頻度と死亡の関係を、年齢、性別、コーヒーの摂取頻度、高血圧の有無、糖尿病の有無、BMI(体格指数)、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、精神的なストレスの有無、学歴、雇用状態、食習慣(野菜、魚、果物、大豆の摂取)などの要因を考慮して分析したところ、脳卒中経験者と心筋梗塞経験者では、緑茶の摂取量が多くなるほど死亡リスクが低くなる傾向が見られました(表1)。
1日7杯以上の場合、脳卒中経験者では死亡リスクが62%減少、心筋梗塞経験者では死亡リスクが53%減少していました。死亡リスクの低下は主に、心血管疾患による死亡の減少によるものでした。一方で、脳卒中または心筋梗塞の経験のない人たちでは、緑茶の摂取と死亡リスクの間に統計学的に有意な関係は見られませんでした。
次に、コーヒーの摂取と死亡の関係についても同様に検討しました(表2)。年齢、性別、緑茶の摂取頻度、高血圧の有無、糖尿病の有無、BMI、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、精神的なストレスの有無、学歴、雇用状態、食習慣(野菜、魚、果物、大豆の摂取)などの要因を考慮して分析したところ、脳卒中または心筋梗塞の経験のない人々において、コーヒーの摂取量が多いほど死亡リスクが低くなる傾向が見られました。心筋梗塞の経験者にも同様の関係が認められました。死亡リスクの低下は主に、心血管疾患による死亡の減少に起因していました。しかし、脳卒中の経験者では、コーヒーの摂取と死亡の間に有意な関係は見られませんでした。
表2 コーヒーの摂取と死亡リスクの関係
著者らによると、脳卒中経験者における緑茶の摂取と死亡の関係を示した研究は、これが初めてだそうです。今回の分析結果は、脳卒中、心筋梗塞という病気を経験した後の患者の健康に、緑茶が利益をもたらす可能性を示しました。
一方で、コーヒーの摂取は、それらの経験がない人と、心筋梗塞経験者に有益である可能性が示されました。研究者たちは、「緑茶とコーヒーの摂取と死亡リスクの低下の間にあるメカニズムについて、さらに研究を行う必要がある」との考えを示しています。
論文は、Stroke誌2021年2月4日号に掲載されています(*1)。
*1 Teramoto M, et al. Stroke. 2021;52:957–965.
大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。
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