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部屋に血が付いた大量のティッシュが…中1女子「自分はいらない子」と考えた原因

2021-08-28 12:00:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です

両親の夫婦関係は、ひとつ屋根の下で暮らす子どもたちにさまざまな心理的な影響を与えます。家族内の関係のゆがみが、家族の中で一番弱い立場である子どもに表れると考えることもできます。今回は、そのような症例を取り上げます。
お父さんのような男性と結婚しちゃダメ!
 玲奈さん(仮名)は、幼稚園時代から、おとなしく、手のかからない子でした。小学5年生の頃から、両親の夫婦げんかが絶えない状態となりました。
 お母さんは玲奈さんに、
 「お父さんは、家族よりも仕事や自分の親戚を大切にする人なのよ。そんなお父さんと結婚して、私は失敗したと思う。玲奈はそんな男性と結婚しちゃダメよ」
 と、お父さんに対する不満を繰り返し話しました。
 そんなお母さんに対して、玲奈さんが自分の悩みごとを相談することはありませんでした。
前腕にたくさんの傷痕が
 中学生になった玲奈さんは、帰宅するとすぐに自室にこもるようになりました。中学1年の10月、掃除のため、お母さんが玲奈さんの部屋に入ったところ、血が付いた大量のティッシュペーパーが散乱していました。帰宅した玲奈さんの前腕を見ると、そこには傷痕がありました。
 翌月、お母さんは、玲奈さんを連れて思春期外来を訪れました。初診時の玲奈さんは、うつむいたままでほとんど話をしてくれません。主治医が「死にたくなることがあるのかなあ」と尋ねると、うなずきました。左の前腕に、自傷による多数の傷痕が認められました。
 玲奈さんは、2週間に1度の割合で、お母さんと一緒に通院することになりました。
「自分は消えたほうがいい」と考えて…
 通院が始まって3か月が 経(た) った頃、玲奈さんは、診察室でようやく話をしてくれるようになりました。
 「小さい頃からお父さんとお母さんの仲が悪くて、いつもけんかばかりしています。お母さんはお父さんの悪口ばかりを私に話してきます。そんな話を聞いていると、『私は生まれてこないほうがよかった』と思ってしまいます。消えたほうがいいと考えて、リスカ(リストカット)するようになりました」
 と、泣きながら話してくれました。
 さらに付け加えて、
 「本当は、学校であった嫌なことをお母さんに聞いてほしいのに、お母さんはお父さんのことで頭がいっぱいだから、私の悩みごとなんて相談できません。お母さんに迷惑をかけたくありません」
 とも述べていました。
 主治医は、玲奈さんの同意を得て、お母さんに玲奈さんの今の気持ちを伝えました。
 それからのお母さんは、玲奈さんの気持ちに気づけなかった自分を責めながらも、玲奈さんの気持ちを最優先で考えるようになっていきました。お母さんが、今の玲奈さんの状態を説明すると、お父さんも、玲奈さんの回復には両親の力が必要であると理解してくれたようです。その後、両親は、玲奈さんの前で夫婦げんかをしないよう努めました。
 通院を始めて半年ほど経つと、玲奈さんの自傷はほとんど見られなくなりました。
 診察室でお母さんは、
 「最近の玲奈は、学校であったできごとをよく話してくれるようになりました。これまではずいぶんと我慢していたのでしょうね。これも、私たち夫婦が悪かったのだと思います。私は夫のことを悪く言ってきましたが、玲奈にとっては、血のつながった父親ですものね。私のように割り切ることはできないですよね」
 と述べました。
 その後の玲奈さんは、無事に高校にも合格し、今は演劇部で熱心に活動しています。
親に大切にされることで、自分を大切にできる
 子どもたちは幼い頃から、お父さん、お母さんとの関係性の中で育ちます。夫婦関係が良好であると、両親がともに安定した気持ちでいられるため、余裕を持って大切に子どもを育てることができます。そのような関わりの中で、子どもは「自分が価値ある存在である」と確信できるようになるわけです。
 しかし、夫婦が不仲でけんかが絶えない家庭の場合、「自分は生まれてきてよかったのか?」と、存在意義が不確かなものになります。そんな自分はいないほうがよいと考えて、玲奈さんのように自傷行為に至る子どもたちも現れます。
 もともと他人同士の夫婦が、いつまでも仲良く暮らすことは、なかなか大変なことかもしれません。しかし、子どもたちは、2人の関係をいつも観察しているのです。私たち大人は、自分の子どもたちが、この両親の元に生まれてきてよかったと思えるような夫婦関係をぜひ築いていきたいものです。(武井明 精神科医)



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