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豊かな老後を生きる3つの黄金律 作家・橘玲氏に聞く

2020-12-22 15:59:26 | 日記

下記の記事は日経電子版からの借用(コピー)です

新型コロナウイルスの感染拡大で、私たちの暮らしや働き方は大きく変わりました。このコロナ禍で、老後への備え方も大きく変わるのでしょうか。
基本的には変わらないと思います。
──長生きで生活費が不足したり老々介護が発生したりする「長生きリスク」が指摘されています。
医療経済学者の永田宏氏は、1987年生まれの男性の25%が101歳、女性の25%が107歳まで生きると予測しています。女性だと60歳で退職してから半世紀生きる計算です。ある意味SF(サイエンスフィクション)の世界で、それが現実になることへの不安は相当なものです。
かつては60歳が定年で、80代で鬼籍に入るのが日本人の人生でした。定年後は20年しかなかったわけです。しかし今は50年の余生を考えなくてはならない。私の母は90歳で元気ですが、コロナよりもこれから10年、20年生きる不安を口にしています。「どんなに嫌でも生きてしまう」のが現実です。
──その現実に、どう対応すればいいのでしょうか。
問題は「老後が長過ぎる」ことなのだから、働いて老後を短くするしかないのでは。60歳から20年間年収300万円で働けば6000万円。80歳の時にこれだけの金融資産があるかどうかで、その後の生活は大きく変わるでしょう。超高齢社会では、経済格差は老後に働ける人と働けない人の間で広がっていきます。
それに加えて、現代社会では生きがいを得る最も効果的な手段は仕事です。趣味が生きがいという人もいるでしょうが、他者からの評価を金銭で「見える化」できるのは仕事だけです。その上中高年になれば、人間関係は仕事を通してつながっていることがほとんどではないでしょうか。
「残酷な世界」で二極化が進む
──高齢者が仕事を見つけるのは大変ではないでしょうか。
マネタイズできるスキルがあれば、年齢にかかわらず経験者を求めている職場はあるのでは。
実用書の中堅出版社の例ですが、退職した編集者だけの「シニア編集部」があるそうです。出社は自由で好きな本をつくればいい代わりに、給与は本が売れた分だけという完全な成果報酬。ところが、正社員の編集部よりもそこから次々とヒット作が出ているという話でした。
シニア編集者にしてみれば、最低限の生活は年金で賄えるわけですから、あとは旧知の著者やスタッフと「老後の楽しみ」として本づくりをすればいい。それで本が売れれば評価は上がり、「自己実現」もできる。まさに理想の働き方ではないでしょうか。
──「そんなに長く働きたくない」という人も多そうです。
私が「これからは生涯現役の時代ですよ」という話をすると、「懲役10年だと思っていたのに、無期懲役なんですか」という顔をされます。でもこれは、上司のパワハラや同僚の意地悪に耐え、部下の尻拭いをしながら「嫌われる勇気」で歯を食いしばって会社勤めをしているからで、好きな仕事を気の合った仲間とやっているのなら、いつまでも働き続けたいと思いますよね。
もちろん、こんなことみんなができるわけではない。これからは「好きを仕事に」できた人とそうでない人の間で二極化が進んでいく。これを私は「残酷な世界」と呼んでいます。
──そんな「残酷な世界」で生き延びるためのポイントは。
どんなことでもいいので自分の専門性(強み)があれば、それを生かしてニッチを見つけ、居場所をつくれるはずです。
問題なのは、日本企業が「何でもやらせられる」ゼネラリストを養成するためにいろんな部署をたらい回しにした結果、社員が一芸を身に付ける機会をなくしてしまったことです。こうして、何の専門性もない退職者が大量に生まれつつある。これが「定年後」の不安の本質でしょう。
──専門性をどこで発揮すればいいのでしょうか
近年はインターネット上で様々なマッチングサービスが提供されています。コロナ禍で在宅勤務の需要が増えていることもあって、一芸がある人には長く働ける環境が整ってきました。
ベンチャーを立ち上げた若者から聞いた話ですが、彼の会社の技術を知った海外企業からいきなり提携を申し込まれた。海外取引の経験が全くないので渉外専門の法律事務所に相談に行ったのですが、数百万円の報酬を要求され途方に暮れてしまった。
そこでわらにもすがる思いで仕事のマッチングサイトに依頼を出したら、「5万円でやってもいいですよ」という人が現れた。半信半疑で任せてみると、どの契約条項を削ってどんな文面を入れるのかまで詳細なアドバイスが返ってきた。びっくりしてその人の家を訪ねると、大手商社の法務部で海外企業との契約をずっと扱ってきて、定年して時間が余ったので、たまにネット経由で仕事を請け負っているという。三顧の礼で顧問になってもらったそうです。
終身雇用というのは逆にいえば「超長期の強制解雇制度」で、それまで培った専門性の価値は定年でゼロになってしまう。これは社会にとっても大きな損失ですが、デジタル化でミスマッチが解消され、眠っていた能力が発見されることが増えていくのではないでしょうか。
■老後は普通預金の活用も
──老後対策としては、働くことに加えて投資も重要な手段です。
若い人に老後のアドバイスをするのは簡単です。長期で積み立て投資をしていけばいいのですから。
今はつみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など税制メリットを享受しなら資産運用できる制度が充実しています。これらを使って、投資先の分散が利く世界株のインデックス型商品に投資するのが王道です。30~40年という時間を武器にして、着実に資産を増やしていくことができます。
難しいのは50~60代です。積み立て投資は長期が前提ですが、それに必要な十分な時間がありません。年齢が高くなればなるほど、株式市場が下落した時の影響は大きくなっていきます。
──年を取ってからの投資はどう考えるべきでしょうか。
十分な金融資産があるなら、余計なことは考えずに普通預金に預けておけばいいのでは。そう言うと「なにをバカな」という顔をされるのですが、普通預金は実はものすごく優れた金融商品です。
貸金庫を使えばかなりの利用料が取られますが、普通預金はそれよりずっと便利で、しかも全て無料です。その上1口座1000万円までは国が元本と利息を保証している。
ネット銀行ならクリックひとつで日本円を外貨に替えることもできるし、ネット証券と連動させておけば、株式相場が大きく動いて絶好の買い場だと判断した時に素早く投資することもできます。コロナ禍で経済の先行きが不透明な時には最適な資金の待機場所なのです。
──コロナショック後、中小型株で投資ブームが起きています。
中小型株はボラティリティーが大きいので、手っ取り早く儲けたい人が短期売買したくなるのは理解できます。特にコロナショック後の上昇相場ではそうでしょう。しかし、短期売買はゼロサムゲームなので、勝ち続けられる人はごく一部です。日本でも欧米でも、8割近い個人トレーダーが3年以内に損をして退場していくとデータが示しています。
それが分かっていて挑戦するならいいのですが、問題は、資産運用のつもりで短期売買している人が少なくないことです。若いうちならともかく、退職後に一発逆転のギャンブルを狙って金融資産を全て失ってしまえば、もはや取り返すことはできません。高齢者はそのリスクを常に頭に入れておくべきでしょう。
■働くことは生きがいに必要だ
──老後をにらんで地方移住する動きも出始めています。
1990年代の終わり頃に海外移住のブームがあったのを思い出します。東南アジアなど物価が安い場所に移住し、年金で悠々自適の暮らしができるといわれましたが、実際には、現地の言葉はもちろん英語すら話せない日本人が海外で暮らすには家賃も含めて高い生活コストがかかる。
だったら、東京郊外に「移住」した方がずっと快適です。都心に比べれば家賃はずっと安いし、買い物はネットやコンビニで十分。何より日本語で生活できます。
コロナ後も同じで、地方移住ではなく郊外への転居が増えていくのでは、と思っています。週に何回かサテライトオフィスに出勤し、テレワークと併用するようなライフスタイルです。
──地方ではなく郊外移住なのはなぜですか。
人間は社会的な生き物なので、仕事を全てオンラインにしてしまうのはやはり無理なのでは。サテライトオフィスで仕事の愚痴を言い合って、月に1度くらいは本社の会議に出て、たまには同僚と飲みに行くという生活は、地方移住では難しいですよね。
──30~40代の間では、投資で資産を築いてアーリーリタイア(早期退職)する「FIRE」を目指す動きが広がっています。
自由な人生の土台はお金です。十分な資産があれば意に沿わない仕事をする必要もないし、配偶者の理不尽な扱いに耐えることもありません。さっさと退職・離婚すればいいのですから。これが「経済的自由(ファイナンシャルインディペンデンス、FI)」で、そこに早く到達しようとするのは理解できます。
ただ、アーリーリタイアを「仕事をしないこと」とするならば、それは定着しないと思います。仕事は社会資本(評価)と分かち難く結びついているので、人的資本を失えば人間関係や生きがいもなくなってしまいます。
米国でもアーリーリタイアした人が、やることがなくなって数年で復職する例が多いと聞きます。だとしたら、「経済的に自立し、好きな仕事を続ける」のがこれからの目指すべき人生設計になるのではないでしょうか。



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