史書から読み解く日本史

歴史に謎なんてない。全て史書に書いてある。

武帝の功罪(時代の終焉)

2019-03-18 | 漢武帝
武帝からの絶大な信任を得て、一時は並ぶ者のない権勢を誇った江充でしたが、彼自身には巷で誇張されるような職制上の大権はなく、その実態は甚だ脆いものでした。何故なら彼の置かれた立場というのは、江戸時代の側用人や現代の大統領補佐官のように、あくまで元首個人の私設秘書官のような役職に過ぎず、その権力は偏に武帝の威光を頼りとしていたからです。従って他の高位高官のように、朝廷内での実績や閨閥を持たない江充は、 . . . 本文を読む

武帝の功罪(君主の直感)

2019-03-16 | 漢武帝
君主の直感について言えば、国家の長い歴史の中でも、特に重大な決定を下す際には、常に主要な因子の一つとなっています。例えば公表こそされていませんが、今も日本の国務大臣は、元首である天皇に対して、内奏という国務報告を行っています。かつて昭和天皇への内奏に臨んだ諸大臣は、問答に表れる先帝の聡明さに驚愕し、国会答弁などとは比較にならないほど緊張したといいます。もともと君主というのは世俗に塗れていないので、 . . . 本文を読む

武帝の功罪(李広と司馬遷)

2019-03-15 | 漢武帝
武帝も晩年になると、漢帝国の発展も既に終息し、帝自身が歴史的な役割を終えていたこともあって、臣下にとって忖度すべきは帝の政治方針などではなく、単に主君の個人的な趣向に過ぎないことが多くなっていました。一見すると臣下の方では基本的に同じことをしているだけなのですが、決定的に似て非なるところは、主君の所信に従い、これを実現すべく尽力するのが忠臣であるのに対して、主君の欲望を見抜き、これに迎合して媚び諂 . . . 本文を読む

武帝の功罪(人事の成否)

2019-03-13 | 漢武帝
郡国に令して毎年有徳者一名を推挙するよう命じた翌年、馬邑に大軍を動員しながらも空振りに終った一件を契機として官軍の再編に着手するなど、着実に親政への移行を進めていた武帝でしたが、解決しなければならない問題は身近にもありました。かつて劉徹は立太子の代償として伯母である館陶公主の娘と婚約しており、即位後はその妻を皇后に立てていました。公主が陳氏という臣下に降嫁していたため陳皇后と呼ばれています。その陳 . . . 本文を読む

武帝の功罪(儒教と道教)

2019-03-12 | 漢武帝
黄老の理念に基づき職務を行っていた漢朝の役人というのは、たといどんな不都合があろうと、基本的には現状をそのまま肯定し、既に出来上がっている体制を無理なく運営することを本分としており、そこに何らかの自発的な改革を求めることは殆ど不可能に近いような集団になっていました。もともと内部の人間が、自分の所属している組織を変えること自体が甚だ困難であるのに、変えないことを是とする思想のお墨付がある訳ですから、 . . . 本文を読む