カルフォルニア大学バークレー校特別講義エネルギー問題入門 (楽工社 2014)
福島原発のメルトダウンでどのくらい癌の発症率が増えるのかを試算しているのが興味深い。
広島·長崎の被爆者の過剰発がん症例の研究から、250 mSv の放射線に曝されると発がんの可能性は 1%、500 mSv で 2%、750 mSv で 3% 増加することが知られている。なお、何もなくても癌の発症率は 20%ある。つまり、被爆しなくても私たちは 20%の確率で癌になる。
より低線量でもこの比例関係が成り立つのかは不明だが、ひとまず成り立つと仮定している。
観測された最も高い線量は 220 mSv (平均値はもっとずっと小さい) なので、仮にこの最も高い線量の放射線に曝されながら避難しないで生活し続けた場合、癌の発症率は 0.88%増加する。この確率を域内の人口 22,000人に乗じると 194名。実際には速やかに避難は行われ、平均線量は上の値よりもずっと小さいのでこの推計値は相当に「盛って」いる。
周辺の地域は平均線量が 15 mSv なので、癌の発症率は 0.06%増える。この地域の人口は 4万人なので、0.06%×4万=24人のがん患者が増える。この地域の人々も実際には速やかに避難しており、上記の数字は何も対策をしなかった場合の推計であることは注意が必要。
おそらく癌が増えたとしても 100人以下であり (最大線量ではなく平均線量を用いて計算した場合の推定)、その多くは比較的予後の良い甲状腺癌だろうとのこと。