内分泌代謝内科 備忘録

抗 CD3 モノクローナル抗体テプリズマブは 1型糖尿病患者の β細胞を温存する。

テプリズマブ (tepliztmab) : β 細胞を温存する 1型糖尿病の疾患修飾治療
Diabetes Care 2023. doi.org/10.2337/dc23-0675

研究の概要
https://ada.silverchair-cdn.com/ada/content_public/journal/care/pap/10.2337_dc23-0675/3/dc230675gf0ga.png?Expires=1696476548&Signature=q3aKiiPMAHq3~BR0j6I2h6rWpBhp0yPtAA5xtDZfeIItBNrKDj93Rct3YqB2ZX1QdyJBpFCb0g5EI~f4rTfx78g1SGeepTPaHOQoq4Bs5rD87450pQfO9YUEo8fzbuR0fUjAF4MXPGa9ocHY5YA3vcoZWUrM253oCpDEi2ImD6~LUPN9vxzh-~K7qV~v9ejNgvafY5CbC5HgszfoT-KyOS3~1XUzujdsa0RxRPygtIR7ITam8nWzOiPJDrCEgzdYX69vI5XMo-RNlrUPUjnDs2Q7U5gLVJPKQYkN45ATwgXcaVrPsI3i7CB~39DUVeeUOscjme7waqfx7iqAlI5g3g__&Key-Pair-Id=APKAIE5G5CRDK6RD3PGA

目的
2022 年 11 月、テプリズマブは、2 型糖尿病の成人および8歳以上の小児において、ステージ 3 の 1 型糖尿病の発症を遅延させる最初の薬剤として承認された。

※ステージ 1: 自己抗体陽性になる、ステージ 2: 血糖異常が生じ始める、ステージ 3: 1 型糖療病と診断される。

研究デザインと方法
内因性インスリンを維持するテプリズマブの効果を確かめるために,ステージ 3 の 1 型糖尿病を対象とした 5 つの臨床試験(テプリズマブ投与群 375 例,対照群 234 例)における C-ペプチドのデータの統合解析を行った。


結果
統合解析の主要アウトカムである分泌刺激後の C-ペプチドのベースラインからの変化については、テプリズマブ 1-2 コース投与後 1 年目(平均増加 0.08 nmol/L;P<0.0001 )および 2 年目(平均増加 0.12 nmol/L;P<0.0001 )の評価で有意に改善した。

外来でのインスリン使用量の解析も行った。1 年目と 2 年目の評価では、それぞれ 0.08 単位/kg/日( P = 0.0001 )と 0.10 単位/kg/日( P < 0.0001 )の減少が認められた。

さらに、ステージ 2 または 3 の 1 型糖尿病患者 1,018 例(テプリズマブ投与患者の追跡: 1,500患者·年)を登録した 5 つの臨床試験の統合安全性解析も行った。


結論
これらのデータから、C-ペプチドで測定した β細胞機能の維持が複数の臨床試験で一貫していることが確められた。

頻度の高い有害事象としては、リンパ球減少、発疹、頭痛があった。これらの大部分はテプリズマブ投与開始後数週間以内に発現し、多くは治療を行うことなく消失した。

備考
テプリズマブは T 細胞の共通抗原である CD3 の ε 鎖に結合するヒト化モノクローナル抗体である。

もともとは急性移植片拒絶反応と乾癬性関節炎の治療薬として開発されたが、1 型糖尿病のモデルマウスで糖尿病発症の予防効果があることが分かり、1型糖尿病の β 細胞機能の温存効果を検証する目的で、3 件の第 2 相臨床試験と 2 件の第 3相臨床試験が行われた。

所感
獲得免疫の要になる T 細胞のはたらきを長期間に渡って抑える抗体薬であり、やはり安全性が気になる。最大 80%で一過性のリンパ球減少を認め、感染症全体は増えないものの重度の感染症は増えるよう (テプリズマブ投与群 3.5% V.S. 対照群 2%)。がんが増えるかどうかについては長期間観察しなければ分からないだろう。潜在的なリスクと明らかにされているメリットが見合うものかどうか。

https://diabetesjournals.org/care/article/doi/10.2337/dc23-0675/153536/Teplizumab-A-Disease-Modifying-Therapy-for-Type-1
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