内分泌代謝内科 備忘録

急性細菌性前立腺炎

急性細菌性前立腺炎の総説

Am Fam Physician 2016; 93: 114-120

急性前立腺炎の診断はほとんどの場合は経過と身体所見に基づく。尿所見も参考になる。CT は必要ない。尿培養は必須。

多くの場合は外来で経口抗菌薬で治療できる。全身状態が悪い、自力で排尿できない、耐性菌のリスクがある場合は入院の上で広域抗菌薬静脈注射で治療する。

急性細菌性前立腺炎は市中感染が院内感染の3倍ある。臨床症状としては、排尿障害、頻尿、尿意切迫の他、尿路閉塞による症状として残尿感、尿勢低下がある。恥骨上や会陰部、直腸の疼痛、射精時や排便時の疼痛、精液への血液混入も来たし得る。

悪寒・発熱、嘔気・嘔吐などの全身症状を認めた場合は敗血症の診断基準を満たすかどうか確認する必要がある。

診察では、膀胱の尿貯留の有無を確認するために腹部を触診し、CVA叩打痛の有無を確認する。性器の視診を行い、直腸診を行う。あまり強く前立腺を触診すると菌血症の原因になり得るので、直腸診はやさしく行う。細菌性前立腺炎では、前立腺は軟らかく、腫大していて、ぶよぶよ(boggy)している。

経過と身体所見から細菌性前立腺炎を疑ったら、尿検査と尿培養を行う。体温38.4℃以上、血行感染の感染巣(黄色ブドウ球菌による心内膜炎など)が疑われる、敗血症の場合は血液培養も行う。35%以下の症例では、尿培養は陰性となる。

起炎菌で最も多いのは大腸菌。緑膿菌、腸球菌、クレブシエラ、エンテロコッカス、エンテロバクター、セラチア、プロテウスが次ぐ。性的に活動的な男性の場合は、淋菌やクラミジアが起炎菌になることがある。

治療方針は全身状態を評価して判断する。入院加療が必要になるケースは1/6 以下。外来治療に失敗した場合、敗血症が疑われる場合、経口接種できない場合、治療抵抗性が予想される場合(最近のレボフロキサシンの使用、最近の経尿道操作)は入院を検討する。

35歳未満または35歳以上で性的に活動的な男性では、淋菌とクラミジアをカバーする。耐性菌のリスクが高い患者では広域抗菌薬静脈注射で治療する。

抗菌薬治療は軽症であれば通常10-14日間(症状が残存する場合は追加で2週間)、重症では4週間。通常抗菌薬治療開始から36時間以内に解熱する。36時間後も発熱が続く場合は膿瘍の除外のために超音波検査を検討する。抗菌薬治療終了後1週間で尿培養を再検する。急性前立腺炎の13%が治療後に再燃し、11%で慢性前立腺炎に移行する。治療後も症状が持続する場合は尿培養を再検する。

合併症としては、尿閉が 10%、前立腺膿瘍が 2.7%で起こる。

https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2016/0115/p114.html

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「感染症」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2022年
人気記事